バビロンの大淫婦

登録日:2016/12/28(水) 23:42:08
更新日:2023/12/11 Mon 23:01:21
所要時間:約 6 分で読めます







女は紫と赤の衣を着て、金と宝石と真珠で身を飾り、

忌まわしいものや、自分のみだらな行いの汚れで満ちた金の杯を手に持っていた。



その額には、秘められた意味の名が記されていたが、それは、


大バビロン、みだらな女たちや、地上の忌まわしい者たちの母


という名である。





―「ヨハネの黙示録」第17章第4-5節より






バビロンの大淫婦(Whore of Babylon)とは「ヨハネの黙示録」に登場する女性であり、都市である。
大バビロン(Babylon the great)」「神秘のバビロン(Mystic Babylon・Mystery Babylon)」「大いなる娼婦(Great Whore・Great Harlot)」
「娼婦とすべての忌まわしきものの母(THE MOTHER OF HARLOTS and abominations of the Earth)」などとも呼ばれる。

【概要】

バビロンの大淫婦」はヨハネ黙示録の第17~19章で「黙示録の獣」とともに描写されている。
獣に乗り現れ栄華をほしいままにするが、乗っていた獣に裸に剥かれ引き裂かれ喰われたあげく
神の裁きを受けて焼かれてしまうとされる。

○外見

その姿は女性のものであり、風貌や年齢・美醜については明らかにされていない。
宝石や黄金、真珠で飾られた紫と赤のきらびやかな衣をまとい、手には黄金の杯を持つ。*1
その杯は忌まわしいものや自身の淫らな行いで満たされているとされる。
彼女の額には自身の秘められた名として、上記の「大バビロン」「娼婦とすべての忌まわしきものの母」の名が刻まれている。

そして彼女は荒野のただなかに、赤い獣に乗って現れた。
その獣は全身に神を冒涜する名で覆われており、7つの頭と10本の角を持っている。
この獣の詳細については当該項目を参照。

○人物像・行動

彼女は黙示録17章の冒頭で天使から「多くの水の上に座っている大淫婦」と紹介される。
多くの水」とは「さまざまの民族、群衆、国民、言葉の違う民」を指す。
つまり彼女はその美貌で王をたぶらかし手にした杯で民衆を酔わせ、彼らの上に君臨する存在であるのだろう。
そして彼女はキリスト教徒や聖者を血祭りにあげ、その血に酔いしれているという。

また彼女は「地上の王たちを支配している『大きな都』」でもある。
そこではさまざまな贅沢品の取引が行われ、地上の商人たち・海の船乗りたちに莫大な利益をもたらしていたともされる。

○末路

私は女王であり孤独ではない、だから悲しみを知ることは無い」と豪語する彼女であったが、
神の裁きを受けて乗っていた獣に服をはぎ取られ裸にされたあげく、引き裂かれ喰われてしまう。
そして一日のうちに死と悲しみと飢えに襲われ、火をかけられ燃え落ちてしまった。

彼女によって富や権力を得ていたものは嘆き悲しみながらも彼女を打ち捨てて去り、
すでに民衆も信徒も失われていたその地はあらゆる悪霊や魔獣の巣窟となった。

【解釈について】

「ヨハネの黙示録」全体がそうであるように「バビロンの大淫婦」についての記述も様々な暗喩、隠喩を含んでいる。
彼女が従え、そして彼女を裏切る「獣」は「ローマ帝国」もしくはそれに象徴される「強大な国家権力」を暗示するとされるが
女性であり都市である「バビロンの大淫婦」が何を指すものかについては諸説存在する。

○過去説

「バビロンの大淫婦」とは、ヨハネの黙示録成立以前に起きた出来事を暗示しているものだとする説。
つまりはその名の通り通り「バビロニア」、もしくはその地域に存在した国家群を指しており
「獣に乗った淫婦がキリスト教徒たちの血に酔う」とは、
ローマ帝国が異国民に操られキリスト教徒を迫害している」という風刺、もしくはプロパガンダだという説である。

○現在説・未来説

「ヨハネの黙示録」を「予言書」としてとらえ、今現在起きていること・もしくはこれから起こるものを指すという説。
淫婦・獣はそれぞれ「ローマ・カトリック教会、もしくはローマ法王」と「その影響下にある国家群」を指し、
権力と癒着し堕落した教会の風刺」であるとするという説。
また「国際連合」と「常任理事国」、「ユダヤ人」と「アメリカ合衆国」を指すといった解釈もある。

また特定の団体ではなく思想・教義を指すとする説もある。
バビロニア的な宗教観(偶像信仰・魔術・政教の一体化など)、それに教義の多様な解釈を認める寛容な姿勢といった
キリスト教の教義を換骨奪胎してしまうようなものを男を骨抜きにする悪女「バビロンの大淫婦」になぞらえることも多い。

ただこれらの解釈はいずれも政治的なレッテル貼りの意味合いが強く 、
そのまま鵜呑みにしてしまえるようなものではないのだが…

【登場作品など】

ヨハネの黙示録自体は有名であるが、バビロンの大淫婦はあまりメジャーなキャラクターとは言えない。
黙示録の登場人物の中でもその解釈が分かれやすく、しかも政治的な問題をはらみやすいので扱いが難しいのだろう。
それでも後代のいくつかの作品などにその名を見ることが出来る。
その中でも比較的知名度が高いと思われるものをここでは取りあげる。

○ババロン(ベイバロン)

二十世紀最大の魔術師にして稀代の山師アレイスター・クロウリー
彼は自ら作り上げた魔術体系の中に、バビロンの大淫婦を「ババロン(Babalon、ベイバロンとも)」という名の女神として組み込んだ。
女性の性的衝動や母性を神格化したもので、男性原理を象徴する「獣(Therion)」と対となる。

クローリーはしばしば自分を黙示録の獣たちの王(Master therion)であるとうそぶいており、
自分のパートナーである女性、すなわち妻・愛人たちのことをババロンと呼ぶこともあった。
また彼が監修したトート・タロットでは、(ストレングス)に替わる欲望(Lust)のカードのモチーフとして獣にまたがるババロンが用いられている。


近年の作品ではテレビアニメ「蒼穹のファフナー」に登場する赤い機体「ベイバロンモデル」 や
真女神転生シリーズで相手を魅了する特殊攻撃「ベイバロンの気」などにその名を見ることが出来る。


○マザーハーロット

真女神転生シリーズにおける「バビロンの大淫婦」の呼称。
大淫婦の額に刻まれていた名(冒頭の記述参照)からとったものと思われる。

初出は真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE-マニアクスの隠しボスで種族は「魔人」。
これまでのシリーズで「ペイルライダー」が登場していた枠に、他の黙示録の騎士やトランぺッターとともに満を持して登場。

緋色で多頭・有角の獣にまたがる赤と紫の衣の女性という、
顔が髑髏であることを除けばきわめて原典に忠実なデザインでありながら
金子一馬氏の手によって描き出されたその姿は圧倒的な迫力と存在感で多くのプレイヤーを魅了した。

後続のシリーズでも最終ボス級の敵、あるいは最強ランクの仲魔・ペルソナとして登場し、
マザーハーロット」の名はバビロンの大淫婦の多くある名の一つとして定着しつつある。

○ソドムズビースト

大人気スマホゲーム「Fate/Grand Order」…のアーケード版、Fate/Grand Order Arcadeにて、 
Fateシリーズを代表するとある人気キャラクターのIFの姿として登場。CVは元となったキャラクターと同じ丹下桜氏。
またの名前は『堕落』の理を持つ人類悪、あるいは黙示録の赤い竜。キリスト教徒にとっての最大悪とされる存在である。
その容姿は…血のような液体を纏った全裸という、ゲーセンのゲームにしては非常に大胆なもの。
型月世界において「竜種」が「幻想種の頂点」でありヤバい存在だと長年散々叫ばれ続けた中で登場した「黙示録の赤い竜」ということで、
Fate/Grand Order Arcadeの全国のプレイヤーが総力を挙げて倒すレイドボスという豪華な位置に立つことになった。


○Beast and the Harlot

ヘヴィメタルバンド「アヴェンジド・セヴンフォールド」の楽曲。
バビロンの大淫婦について歌っている。

追記・修正の際は彼女のもたらす災いに巻きこまれぬようお願いします。








その後、わたしは、天の大群衆が大声で唱えるのを聞いた。



ハレルヤ! 救いと栄光と力とは、わたしたちの神のもの。

その裁きは真実で正しい。

みだらな行いで地上を堕落させたあの大淫婦を裁き、

御自分の下僕たちの流した血の復讐を、彼女になさったからである。」



また、こうも言った。



ハレルヤ! 大淫婦が焼かれる煙は、世々限りなく立ち上る。」







―「ヨハネの黙示録」第19章第1-3節より


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最終更新:2023年12月11日 23:01

*1 紫の衣は王が着るもので権力の象徴、金の杯は神聖なる儀式に用いられるもので宗教の象徴とされる。