撫物語

登録日:2016/08/17 Wed 00:48:21
更新日:2022/08/13 Sat 11:24:01
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一万時間の法則。

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自分さえ、手に負えない(・・・・・・)のが青春だ。





『撫物語』とは、西尾維新作『物語シリーズ』の第21作で、1000パーセント千石で書かれた小説。
講談社BOXより出版。
主人公・阿良々木暦をめぐるメインストーリーが完結した「その後」を描く「オフシーズン」の第3弾。

かつて蛇に巻き憑かれ、一時は神となった少女、千石撫子を語り部とする。

中編をまとめたオフシーズンの前2作とは異なり、1巻通して1つの物語になっている。


第零話 なでこドロー

神から人間に戻り、不登校ながらも漫画家という夢を目指す日々を送っていた。
しかし夢を追いつつも現実に追いつめられる彼女は、斧乃木余接の力を借り、自身の姿を模した式神を作り出す。
だが4体の式神は撫子の元からばらばらに逃げ出してしまい───



【登場人物】
  • 千石撫子
「その私がいたところにこの私を案内してください──私、私を捜してたんです!」
本作の語り部。人間に戻って以来、阿良々木月火や余接の協力のもと漫画を描く日々を送っている。
しかし学校にも行かず将来も不透明な状況に、両親が業を煮やして中学を卒業したら働きに出るよう告げられてしまう。
1年足らずで漫画家としての成果を見せる手段として、撫子を模した式神を生み出すことを余接に提案され、実行する。
だが直後に式神は逃げ出してしまい、彼女らを捕らえるため余接とともに奔走することになる。
式神らと区別するため今撫子と呼ばれることも。

半ば成り行きとは言え、式神らの回収のためかなりアグレッシブに動きまわることとなる。
彼女にとって特に近寄りがたい場所である学校や阿良々木家に侵入することも。
また、式神たちとの対決では結構な勇敢さや対処能力を見せた。(元から追い詰められればかなり思い切った行動に出る面はあったが)

かつての自分を模した式神と対面することで、徐々に自身を見つめなおしてくことになる。
物語終盤ではそれまで引きずっていたとある未練に、式神への約束という形で区切りをつけた。


式神らを追う中で、式神を作り出した時の応用で絵に描いたものを実体化させる術を会得する。
また、式神を捕らえる上での対処能力を評価され、臥煙伊豆湖に怪異関係の仕事を手伝わされることとなる。
M町在住の某漫画家がひどく羨みそうな状況である。


  • 式神
撫子が描いた自画像を元に余接の術で生み出した4体の式神。
撫子の過去の一時期を模した姿・性格を有する。(実際とは多少異なる部分もあるが)
本来、漫画の制作を共に行わせるために作られたものの、その目的は現在の撫子のスタンスであるために式神の意志とは相容れず、
顕在化した直後にばらばらになって逃げ出した。
元が紙であるため、生みの親である撫子が紙に挟みこむことで、再び絵に戻る。また単純に大きなダメージを与えても消滅させることが可能。
便宜上、余接によってそれぞれの呼び名が付けられた。

ネタ的な意味で、ドラえもんだらけが説明として挙げられている。



○おと撫子
「撫子が悪かったです。ごめんなさい」
化物語・なでこスネイク』すなわち作中で最初に登場した時の姿を模している。
髪も期間も最も長かった形態。服装は七百一中学の制服。
4体の中で最も内気かつ非力。そのため他の式神に服や所持品を奪われたり囮に使われたりと不憫な立ち位置。
結果として上半身裸にブルマ、あるいはスク水といった姿で町中を彷徨うこととなる。文中でルマ撫子、クール撫子などと呼ばれたことも。
他者を寄せ付けないスキルを持ち(余接は「人見知りゆえの人払い」と表現した)、上述の格好でも捕まることなどはなかった。

ネタバレ
他の式神に利用されていたように見せかけ、実際には利用していた黒幕的存在。
服や所持品も本当はおと撫子から差し出したものであり、更に知恵を貸すなどして他3体および探索側の行動をコントロールしていた。
それらは自身のある目的を達成するための時間稼ぎであり、その目的とは──



○媚び撫子
「夢を追ってひたむきに努力とか、そんな恥ずかしいことしないでよ、恥ずかしい」
偽物語・かれんビー』に登場した頃の姿を模している。
暦を自宅に招いた時の、カチューシャで前髪を上げ、露出度の高いキャミソールを身につけた出で立ち。
逃げ出した後おと撫子と服を交換し、制服姿で七百一中学校の撫子が在籍するクラスに紛れ込む。
式神としての能力で周囲の認識を操り、クラスメイトと違和感なく溶け込んで本物の撫子にショックを与えた。
クラスメイトと全く中身の無い会話を繰り広げる様子はまさしくステレオタイプな「ちゃらちゃらした今時の女子中学生」


○逆撫子(さかなでこ)
「うるせえ、騙されるか!お前を殺して俺様は休むんだよ、ああん!?」
囮物語』にて月火に前髪を切られ、当時のクラスで大暴れした時の姿を模している。
他との区別のため、浴衣姿で描かれた。前髪も気も、異様に短い。
性格は極めて凶暴で攻撃的。阿良々木家に侵入して撫子を待ち伏せし、おと撫子が持っていた彫刻刀で襲いかかった。
丸刀ははらわたをえぐるためのもの。


○神撫子
「ふふふ(中略)ふふふふふ(中略)ふふふぶぶぶぶ(中略)ぶぶぶ──ぶっ殺すんだ♪」
『囮物語』終盤から『恋物語』にかけての神の力を得た撫子の姿を模している。
当然ながら戦闘力は圧倒的。おと撫子を囮に余接を北白蛇神社までおびき寄せ、バラバラに破壊した。
式神でありながら式神を作り出すことができ、最後に籠城した場所では100体の撫子を盾兼目隠しとして使った。(全て上半身裸にブルマ姿)



「『例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)』──僕はキメ顔でそう言った。あ、しまった、言っちゃった」
暴力陰陽師・影縫余弦の式神人形。現在は阿良々木家で月火の監視を主に行っている。
その任務絡みで撫子を協力させて以来、撫子の部屋に入り浸るようになる。
月火についての愚痴を言いにくる一方、撫子のデッサンモデルを務める。
自身の特性を生かし、一定のポーズを何時間も続ける、必要に応じて体の一部を外したり体型を変化させるなどモデルとしては極めて万能。

撫子に式神を作ることをもちかけ、撫子のイラストを元に4体の式神を作り出す。式神の逃亡後は一時撫子と別行動で追跡を始める。
神撫子に敗北し体をバラバラにされるも彼女の居場所を探る手段を残す。体も撫子の協力で不完全ながら修復され、神撫子との決着である役割を果たす。
式神らをとらえる際に起きたことの様々な後始末も行った模様。


  • 忍野扇
「僕は何も知らないよ──きみが知っているんだよ、千石ちゃん」」
式神らを追う撫子の前に現れ、随所で協力することとなる。ここでの性別は男。やたらと撫子に「初対面」を強調する。
訳知り顔で不気味な振る舞いをするため、撫子には警戒されている。
媚び撫子の捕獲で活躍を見せるが、終盤で大きな見当違いをして撫子に以下のように罵倒される。


「ぜんぜんちげーよ、ああん!ここじゃねえよ!どこだよここは!
アパートに火をつけるとか、そんなことする奴がいるわけねーだろ!俺様のことをなんだと思ってんだ!?
そんな察しの悪さで、なぜしたり顔で颯爽と登場しやがった!
てめえを轢くからクルマを降りろ、それが嫌なら今すぐ、直江津高校に向かえ!直江津高校の正門前だ!」

※発言主は逆撫子ではなく、本物の撫子です。念のため。


撫子の部屋に通い、漫画執筆を手伝っている。
直接の登場は少ないが、その奔放な生き様に撫子や余接はだいぶ辟易している模様。


人脈を活かした情報提供で撫子の式神捜索をサポートする。
しかし最後まで詳しい事情は知らされずにいた。

撫子のことを今でも気にかけており、本人も知らない進級後のクラスも把握していた。


式神捜索中の撫子に声をかける。直前にブルマ一丁の式神撫子を見かけていたため彼女がいじめを受けていたと思い込んでいた。
大学入学時に髪型をボブカットに変え、一人暮らしを始めるなどイメチェンを試みるも失敗し、学校にも馴染めていないと語る。

撫子とは昔阿良々木家で出会っただけの関わりだったが、育は撫子のことをよく覚えており、話を聞こうと試みる。
怪異のことを知らないため正確な現状を知ることはなかったが、撫子の悩みに真摯に応えていた。
これまでの登場作品での情緒不安定さはだいぶ和らいでいる。撫子には「育お姉ちゃん」と呼ばれていた。
大学が暦と同じところである模様。

撫子が神となっていた間は命を狙われていたものの、以降の接触は一切なかった。
撫子が逆撫子を封じ、阿良々木家を出ようとしたタイミングで阿良々木家に電話をかける。
驚いてうっかり受話器を取ってしまった撫子に、電話の向こうで同様に驚いたようである。




一万文字の法則。
どんな分野でも、一流と呼ばれるような項目は、必ず一万文字以上の追記・修正をされているという調査結果があるそうです。


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最終更新:2022年08月13日 11:24