恩人三部作(SCP Foundation)

登録日:2016/07/10 (日) 03:32:37
更新日:2024/04/21 Sun 14:37:36
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SCP-147-JP「この檻の外へ」

SCP-147-JPは怪奇創作サイト「SCP Foundation」の日本支部で創作されたオブジェクト (SCiP) である。
オブジェクトクラスはEuclid→Neutralized。

ゼラチン質の身体をもった思考能力を持った生物。要するにクラゲ人間で性別は女性。
19██年に何者かが廃屋の水槽に放置していた彼女を当時12歳の少年が見つけ出し自宅に保護。そこを財団がさらに保護するという流れで収容された。
触手が器用で人語を話し、常時水槽内にいるが体が乾くまで(1~2時間ほど)は陸の上を歩いて行動可能。

職員へはあまり協力的ではなく自ら何かをしようとはしないが、彼女を発見した少年に対してはとても好意的に接し、実験への協力も彼を介した場合は協力的になる。
その為に少年はSCP-147-JP-1として財団施設へ保護されている。

ある日、SCP-147-JPが水槽に戻らないという収容違反が発生。
陸に居続けることは彼女にとって死を意味するのだが水槽に戻ることを拒み、財団職員が強制的に戻そうとしても触手により窒息させ無力化。
SCP-147-JP-1による説得も試みたが彼女はそれすらも無視し立ちつづけた。
ついには立ったまま干からびて死んでしまい、クラスはNeutralizedとなった。SCP-147-JP-1に対しても記憶処理ののちに解放となった。

SCP-147-JPはなぜ自ら死を選んだのか、好意的であったはずの少年の願いすら無視したのかはわかっていない。

























SCP-243-JP「恩人へ」

SCP-243-JPは怪奇創作サイト「SCP Foundation」の日本支部で創作されたSCPである。
オブジェクトクラスはsafe。

見た目はメーカー不明の押しボタン式電話機であり、もともとはAnomalousアイテムの「壊せないが、壊れている電話機」として保管されていた。
しかし、時々なぜか通話が可能であるという特性が判明したためにSCPオブジェクトへと格上げされた。
19██年から20██年に計三回の実験が行われ、二回目の実験により、受話器を持った人物の命を救った者、つまり恩人とつながることが分かった。

三回目の実験にて「恩人がすでに死んでいる場合」を確認するため、過去に消防士に命を救われたが消防士が重度のやけどで死んでしまった経験のあるエージェント█████が選ばれた。
彼女が受話器を取ると恩人と同じ名前の消防士へとつながった。日付を訪ねると消防士はエージェントが救われ消防士が死亡した日を告げる、つまり過去へとつながったのだ。

過去へつながるということはCK-クラス:再構築シナリオ(タイムパラドックス)を起こす可能性がある。
そのためほかのエージェントがエージェント█████に受話器を戻すように要請するがエージェント█████はそれを拒否、あろうことに自身を助けると死んでしまうことを消防士に伝えてしまったのだ。
焦ったエージェント達は無理やり受話器を戻し、結果としてCK-クラス:再構築シナリオは発生しなかったが軽率な行動をとったとしてエージェント█████は左遷させられた。

過去へ干渉してしまったにもかかわらずCK-クラス:再構築シナリオが発生しなかった理由は、消防士が死んでしまうことを分かっていてエージェント█████を助けたからであった。





























SCP-998-JP「外宇宙通信電波」

SCP-998-JPは怪奇創作サイト「SCP Foundation」の日本支部で創作されたSCPである。
オブジェクトクラスはNeutralized。

その名の通り外宇宙から届く通信電波であり、通信相手の知的生命体が言うには「何度か知的生命体とのコンタクトを取ろうと宇宙船から通信を試みた結果、今回偶然地球へとつながった」らしい。
2███/2/12に初めて飛来ししばらくは意味のない文字の羅列だったが、こちらとの交信を知的生命体が解析し学習していくことで会話が可能なレベルにまで至った
しばらくはエージェント█████が通信を担当していたが、ある日複数の大型宇宙船が近づいていることが判明。
それらとの接触に備えるために、最高機密扱いで「国連宇宙監視司令部(United Nations Space Surveillance Command)」(UNSSC)が結成され、通信担当だった彼を含めた数名が一時的に所属する形で通信が継続された。

UNSSCが結成されてからすぐに、宇宙船には大規模な戦闘用兵器と推測される装備が搭載されていることを確認されUNSSCの事務総長は先制攻撃を提言。
国連に主張が却下されると事務総長は自身の周りを武装隊で固め、宇宙船の兵器が活動していることを確認したうえで先制攻撃を強行することを決定。

だが攻撃予定日の数日前に通信を担当していた財団職員が武装隊に殺害される事件が発生、エージェント█████が懐から退職届を取り出そうとしたところを勘違いしてしまったのだ。
エージェント█████は何日か前からやめたいという話を周りにしていたらしい。
この事件により事務総長は裁判所へ出廷、先制攻撃は延期された。

それから数日後、宇宙船は接近を停止し「ごく小規模な反乱が発生したため、母星へと一時的に帰還する」という通信とともに宇宙船は地球から遠ざかっていった。
それに伴い地球からの攻撃は中止。その後、数か月間通信がなかったためUNSSCは解体されクラスが現在のNeutralizedへと変更された。

通信相手の宇宙船内で何があったのかはわかっていない。


























SCP-147-JP 1、「でも、あの子は違いました。私に外の世界を見せてくれました。短い間でしたが、それは素晴らしい瞬間でした」


SCP-147-JP死亡後の担当職員への事情聴取抜粋
博士:
彼女は「あの子にはこれから色々な未来が待っていて、無限の可能性があるんだ。
あの子はいつか消防士になりたいと言っていたが、そうはならないかもしれないし、その通りになるのかもしれない。
誰かをひどく傷つけてしまうかもしれないし、その逆に誰かの命を救うことになるかもしれない。
どちらにせよ、今のこの状況ではそうした可能性を持つ事さえあの子には無理なことなのだ。

私自身がそれを奪っているのかもしれず、それは耐えられない。
私はほんの一瞬だけれども、あの子のおかげで自由を得る事が出来た、それでもう充分だ。

自分があの子にしてあげられることは1つなんだ」と言っていたよ。

エージェント:
それが何なのか、心当たりはありますか?

博士:
心当たり? 私たちはそれを見たじゃないか。
























SCP-243-JP 2、過去と現在。ふたりがそれぞれ選択した、たった一つの冴えないやり方。


実験に立ち会った者の手記、一部抜粋
「連行される前にエージェント█████は
 「思い出した。あの人、私を助け出す時に『大丈夫だぞ、█████』って言ってたの。私そのとき、何でこの人は私の名前を知ってるんだろう、って思ったのよ」
と言った。

私は今でもその時のことを考え、あの消防士のことを考える。CKクラスが起こらなかった原因はひとつだろう。
あの消防士は自身に待ち受ける過酷な運命を知っていながら、少女を助けるために、火の中へ飛び込んだのだ。
果たして、それにはどれほどの勇気がいるのだろうか。」

























SCP-998-JP 3。幾千の星々と、退屈な夜を越えて。たまたま2人は出会った。



処理が完了しました。交信ログを復元しました。


交信ログ抜粋
a:ネェ █████ 地球の人って野蛮ナノ?
b:うーん 時にはそうかも どうして?
a:こっちの偵察隊が地球ニハ兵器がタクサンあるって
b:あぁ 地球じゃどこの国も持っているんだ 残念なことにね
a:私タチのネイルードが地球人は危険デ こっちを攻撃スルつもりだって
b:ネイルードって?
a:軍人タチの中で一番偉いヒト ミンナその人の言イナリ 今宇宙船ニ兵器を装備しだしてる
b:そんな 地球の人はそっちと争う気はないのに
a:私タチのほとんどノ人もソウ思ってる
b:確かに、地球の人たちは全員が平和主義とは言えないが だけど僕の母は、自分の命を顧みなかった人の手で火事から救い出されたんだと言っていた 人ってのはそういうもんだ
a:ソノ通りだと思う デモ、そうは考えられナイ人も中にはいるの 残念なガラね
b:少なくとも、君と僕は違う そうだろ?
[データ破損]
b:こっちも攻撃の準備を始めてるようだ UNSSCってとこのネイルードが無理矢理に同意させた これからこの通信も制限されるだろうね
a:戦争になるノ? 私、█████たちと戦いタクナイ
b:僕もだ
a:ねェ、█████
b:何だい
a:私タチがネイルードを止めレバ 戦争は起きないカナ
b:本気で言ってるのかい
a:ネイルードは戦争を起こしたがってル 自分の権力がさらに増すカラ そっちのネイルードもそう思ってるハズ
b:確かにネイルードがいなくなれば、戦争は起こらないかも…… でも無理だ 不可能だよ
a:█████、このままジャ、私タチの両方に多クの死者が出ル……! ドウにかしないト
b:どうにか、ってどうするつもりなんだ?
a:こっちのネイルードに反発シテル人たちを集めて、何トカシテ引きずりおろすノ
b:そんなこと出来るのかい?
a:時間さえアレバ
b:どれだけあればいい?
a:アト1週間は
b:[入力待ち]
b:分かった、君を信じる 僕が何とか時間を稼いでみるよ
a:ホントに?
b:うん 多分、うまくいくはずだ
a:まさカ、キケンなこと?
b:いや ちょっとしたことさ、心配しないで
b:[入力待ち]
b:そうだ、このことがばれないように、ここの交信ログは全部消しておくよ
a:私もこっちのを消してオク
b:君に会えないのが唯一残念だよ
a:私モそう思う
a:[出力待ち]
a:ネェ█████、全部終わっタラ マタ私と話してクレますか?
b:もちろんさ
b:[入力待ち]
b:それじゃあゼメルア、成功を祈ってる また、いつかどこかで
a:じゃあマタ、█████。 いつか、どこかデ
[通信終了]






















"勇気"ある"恩人達"の話







恩人三部作とは、上述のSCP-147-JP、SCP-243-JP、SCP-998-JPの三つの項目の通称であり、SCP-243-JPのタイトル「恩人へ」からこう呼ばれている。

全てgrejum氏の作品でありgrejum氏作者ページや作品のコメント欄にてつながっていると明かされた。

一つ一つはごく普通のSCP記事であり関連性はないように見えるのだが注意して読むと…。

+ ヒント
各作品のタイムスタンプが
SCP-147-JP:19██
SCP-243-JP:20██
SCP-998-JP:2███

+ 各記事のつながり、ネタバレ注意
ある勇気ある少年がSCP-147-JPを助け出し、自宅へと匿っていたところをSCP財団によって保護された。
しかしSCP-147-JPが生存する限り、SCP-147-JP-1の少年は財団にずっと管理され続ける。
SCP-147-JPが自害することにより、少年は記憶処理を受けて財団から解放された。

少年は幼いころの夢である消防士となって、自らの身を顧みず少女を救助した。
成長してSCP財団エージェントとなった少女は、自分が焼死することを覚悟の上でSCP-243-JPを使って消防士を救おうとした。
しかし消防士は自らの死を知っても行動を変えず、彼女を炎の中から助けだした。
あの時のSCP-147-jpのように、、、

やがて彼女は母親となり、死を知りながらも自分を助けてくれた消防士の話を息子へ語り聞かせた。
そして勇気ある消防士の話を聞いた息子は、勇気を振り絞って時間を稼ぎ、二つの文明を救った。



本作の作風を支持するかどうかは人によって意見が分かれるようだが、
SCP-243-JPが +470 以上の高評価を受け、日本支部の殿堂入りを果たしていることなどを見ても、本作が日本支部で多くの支持を集めていること自体は確かと言えよう。

作者は異なるがSSの「お別れの教科書」、「きっとどこかで、そしてどこかに、」を合わせて読むと話のつながりがわかりやすく、感動がさらに倍になるのでお勧め。
みんなが頑張って世界を救った物語



追記・修正は勇気を持ってからお願いします。


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