会津若松虚偽告訴事件

登録日:2016/04/26 Tue 23:50:17
更新日:2024/04/30 Tue 07:01:58
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会津若松虚偽告訴事件とは、2000年と言う時代の節目の中で福島県会津若松市にておばちゃんの小さなウソから無実の男性Aさんの人生が崩壊した事件である。


当時のおばちゃんは、その時40代後半だったが、新婚さんだった。
おばちゃんは「夫の気持ちを確かめたい」という気持ちを起こし、ついウソをついてしまった。



「家に上がってきた男の人に襲われてレイプされそうになったの・・・」



おばちゃんの言うことを信じた夫は怒った。



「なんということだ!!その男を捕まえてもらわなければ!!

警察を呼ぼう、誰にやられたんだ!?」



妻を信じ、犯人に怒り、警察に行こうと妻を励ます夫。


「どうしよう、今更ウソなんて言い出せない・・・」



警察で事情を聴かれたおばちゃん。ここでやめておけばよかったのに、その時たまたま仕事で夫を訪ねて家に来たAさんを犯人に仕立て上げた。
そして、警察に対して口からでまかせを語ったのだった。

この時点では、証拠はおばちゃんの証言しかない。
しかし、おばちゃんの証言がウソであるという証拠もないし、おばちゃんが夫には被害を打ち明けたことは間違いなく事実だった。
また事件に前後してAが家にやってきたことは事実。
Aさんが疑わしい、捜査しなければならないとなるのはやむを得ない所であった。
結局警察はAさんの逮捕状を取り、Aさんは逮捕されてしまった。

Aさんは、確かにおばちゃんの家には行ったが、レイプ未遂どころか、トラブル一つない。
何が何だかわからないAさんだったが、厳しい警察の取調べに対して、Aさんはなんとか否認を続けた。
検察はここで状況を怪しんだ。証拠がおばちゃんの証言以外ないからである。


「おかしいな?電話機を投げ捨てたという割には電話機に傷もない。

暴行の痕跡も見当たらないようだ。

おばちゃんの証言だけで裁判で有罪にするのは難しいかもしれないな。」


結局検察は証拠不十分として裁判にはせず、Aさんは19日で釈放されたのだった。*1






だが、釈放されたAさんには地獄が待ち受けていた。



「レイプ魔と親戚でなんかいたくない!!」 



実名報道をされた結果、Aさんは親戚からレイプ魔と疑われ、息子は妻から離婚されてしまった。


「レイプ魔が社長やってる企業と取引したら、うちの評価にかかわる。

取引は打ち切りにさせてもらうよ。」


20年以上も資材販売会社を経営していたAさんだったが、取引先にもレイプ魔として知れ渡ってしまった。
結果として、Aさんの会社は次々と取引先から取引を打ち切られ、1年で会社は廃業するしかなくなった。
Aさんは50代になって、パートで細々と暮らすことになってしまった。Aさんの会社で重役になっていた息子も失業した。
Aさんが20年以上築き上げてきたものを全て壊すには、19日間の身柄拘束と実名報道でも十分すぎたのだった。



全く身に覚えのないレイプ魔の疑いで人生を滅茶苦茶にされたAさんは民事裁判でおばちゃんを訴えた。
裁判所はおばちゃんが意図的にウソをついて告発したと認め、賠償金を支払うように命じた。

それでも、おばちゃんは相変わらず自分のやったことの責任を認めようとしなかった。
それどころか裁判でもなおウソをつき続けるおばちゃんに対して、Aさんは伝家の宝刀を抜いた。
おばちゃんを虚偽告訴の罪で警察に訴えたのだった。

自分が刑事裁判で訴えられて、やっとおばちゃんの態度は変わった。罪を認めてAさんに謝り、たったの5万円を送ってきた。
そこでおばちゃんが語った事件の動機が、

「夫の気を引きたくてウソをついたら、引き返せなくなって・・・」

ということであった。


しかし、Aさんの失われた20年以上の生活は戻ってこない。
確かにおばちゃんはAさんを陥れたり、恐喝をしてやろうと思っていた訳ではなく、夫の気を引きたいという可愛いウソがピノキオの鼻のように大きくなってしまったのだった。
だが、それがAさんの人生をぶち壊した言い訳にはなる訳がない。

それだけではない。
こんなおばちゃんがいたら、日本中のレイプの被害に遭ったと訴えてきた人たちに対し、警察や裁判所は「この人も構って欲しくてウソ言ってるんじゃねーの?」と疑わなければいけない。
警察に訴えるだけでも大変な決心を必要とするレイプの被害者にとって、「ウソつき」と疑われることほど辛いことはない。
このおばちゃんは、被害者に対しても絶対にやってはいけないことをしてしまったのだ。

おばちゃんは実家に頼んで150万円を用意して、Aさんに払ったりしたが、もう遅すぎた。

一審で懲役1年の実刑判決を言い渡されてなお、刑務所に行きたくない、執行猶予にしてほしいと控訴したおばちゃん。
ちなみに検察の求刑は懲役2年6月。一審判決はこれでもかなりの温情判決だったと思われる。
しかし仙台高等裁判所は、

「全く身勝手」

「その動機及び経緯に酌量の余地はない」

「犯行後の対応も非常に悪質」

と一蹴。控訴を退け、懲役1年の実刑判決が維持された。
おばちゃんはウソをついてまでその気持ちを確かめたかった夫と離れ、寂しく刑務所におつとめすることになった。

おばちゃんはもう刑務所を釈放されていると思われるが、夫との縁がどうなったかは、残念ながら不明である。


おばちゃんが、警察に話を持って行かないで、夫にウソでしたごめんなさいと打ち明けていれば。 
せめて、犯人をAさんと名指ししたりしないで、マスクとグラサンをかけていて顔のよく見えない謎の犯人に襲われたことにしておけば。
Aさんの人生も滅茶苦茶にならなかったし、おばちゃんも刑務所には行かないで済んだはずだった。*2

始まりがたとえ小さなウソ・小さな間違いも、覆い隠そうとすることで取り返しのつかないことになってしまうのである。

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最終更新:2024年04月30日 07:01

*1 後にAさんから警察や検察の捜査にも問題があったとして国家賠償訴訟が起こされたが、請求は認められなかった。

*2 存在しない犯罪の被害にあったと通報するのも犯罪だが、立ちションと同じレベルの罪なので刑務所に入ることはまずない。