ダンゲロス1969(小説)

登録日:2016/02/09 (火) 23:13:25
更新日:2023/06/26 Mon 06:25:02
所要時間:約 11 分で読めます








「1人の人間としてどう考えているのか。

同じ人間だ。話せば分かる







「ダンゲロス1969は、2015年10月12日にkindleで発売された小説である。著者は架神恭介氏。
表紙イラストは、「鈴木先生」などを代表作に持つ漫画家・武富健治氏が担当。また、前作「飛行迷宮学園ダンゲロス」原案の江藤俊二氏がストーリー協力を務めた。




概要

異能バトル小説「戦闘破壊学園ダンゲロス」シリーズの長編第3弾。
1960年代の日本を舞台に、摩訶不思議な特殊能力を持つ「魔人」である学生たちと警察による抗争の日々。
そして、過去作でも度々挙げられてきた世紀の悪法「学園自治法」が成立されるきっかけとなった「安田講堂事件」の全貌が描かれている。

本作は、広告でも大々的に書かれている通り、シリーズ最大級のエログロに満ちた描写の数々が特徴的
強力な粘着力を持つ精液を飛ばしたりウンコに変えたり幼女のオシッコを操ったりペニスそのものを召喚したりetc...

お下劣色が中々に濃く、自分だけが読むのならともかく他人にはおススメしづらい作品の内容となっている。
しかし、奇抜なアイディアと狂気に満ち溢れた細かな戦闘描写と設定、目から鱗の能力の数々は異能バトルが好きな人間には色々な意味で興奮間違いナシ。
また本作の見所の1つとして様々な人間たちによって紡がれる様々な形をした恋愛の数々があり、一味違うラブストーリーを見てみたい人にも敢えておススメする。

なお、作者の架神鏡介は本作を完成させるのに7年の歳月を費やしており、それゆえに作品の内容もかなりボリュームのあるものとなってしまったため、前二作のように物理書籍として販売することが出来ず、自費出版&流通の電子書籍として販売されることとなった。

さらに2018年3月から、ヤングマガジンサード第4号でコミカライズ版の連載が開始。作画は、1作目「戦闘破壊学園」のコミカライズも担当した「背すじをピン!と」・「オナニーマスター黒沢」などの作品で有名な横田卓馬氏。
しかし、上述のお下劣色の強いストーリーのせいでアンケートでの人気は延びず、さらに作画担当の横田氏が他誌での連載を二つも持ってしまったために執筆スケジュールがとれなくなり、結果、2019年12月に第一部・完という形で打ちきりとなってしまった。

他シリーズ同様、作中で登場するキャラクターや単語・能力の多くは、原作であるインターネット上で行われる多数参加型のウォー・シミュレーション・ゲーム「戦闘破壊学園ダンゲロス」で過去に行われてきたキャンペーン中に、多数の人間によって生み出されたアイディアを元としている
これらは、「二次創作への無断転用可」という独自のルールによって使用されている
元ネタや更なる世界観と設定を見てみたい方は原作wikiの方をチェックしていただきたい。




あらすじ

1965年に起こった「岩波事件」をきっかけに、東京都各地で行われる魔人に対する差別や圧力などの問題を糾弾する学生運動の数々は激化と混迷の拍車が掛かるようになり、警察組織との泥沼の抗争劇が日々繰り広げられていた。

そして1968年、「学園自治法」制定を目指し活動をする魔人・ド正義克也率いるセクト、「東京大学プロテスト魔人連盟」に新たなるメンバーが入ることになった。

彼の名は、 ユキミ。かつて、かけがえのない友人の命を自身が考えた子供心からの悪戯によって奪うことになってしまったことを悔やみ続ける中、せめてもの贖罪の為にと学生運動に参加することを決意した魔人である。

彼は、魔人に対する明るい未来の懸け橋をド正義と「学園自治法」に見出し新たなる一歩を踏む。

しかし彼はまだ解っていなかった。改革の為に繰り広げられる戦いの真髄と泥臭さを。
自身の力が、後の大惨劇を起こすきっかけになる程の恐ろしき「脅威そのもの」であることを――――




(以下、ネタバレが多く含まれる為注意)






用語



・「魔人」
「ダンゲロス」の世界において最も重要な要素といえる存在。

「自身の認識」を「特殊能力」という形で世界に無理矢理組み込ませることができる者たちの総称。
覚醒者の多くは、その能力と共に常人を凌駕する身体機能を手に入れることができる。

魔人としての覚醒は中学2年前後の「自分は特別な存在である」と強く思い込むようになる妄想力の激しい時期、次いで幼児期に多い。
能力の大半が攻撃特化や性的なものであるのも、想像力が豊かなこれらの時期に起因している為。

また稀なケースとして、他の動物やドラゴンロボットや果てはただの食料まで魔人として覚醒する例もある

本作の第二次世界大戦終結後の日本では、戦前の軍部による過剰なまでの魔人賛美をひっくり返すように魔人に対する世間の見る目が一変。特に学校教育において魔人に関する教育内容が、蔑視とも捉えるこのできる否定的な内容に変わってしまい次世代の社会形成を担う学生たちの思想に多大な影響を与えることになってしまっている



・「岩波事件」
本作の物語のはじまりともいえる、1965年に起こった魔人女子学生リンチ殺害事件。被害者は岩波文子
事件発生から2日前に千葉市内の一区で突如発生し、2日後には千葉市内全域にまで拡大した言語的障害の原因が魔人である岩波だということを断定した1人の警察官が、放課後の緑谷中学校の教室にいた岩波を拳銃で射殺したというもの。

その後警察官は、障害の二次被害である暴動の過熱化と世界規模に及ぶ障害の感染拡大を未然に防いだとして無実の判決を言い渡される。
しかしそれから数か月後、フリーライター・灰賀ウェイがゴシップ誌にて岩波の能力の範囲が僅か2メートルであったこと、一区内から千葉市内全域にまで及んだ言語障害が一種の集団ヒステリーによって生み出された結果であることを暴露した

灰賀の説が一部の学者たちよって次々と裏付けられていく中で、当初「事実無根」を発表した警察側が事件発生直後にはそれらを全て把握していたことを認める謝罪会見を開く。
これをきっかけに多くの魔人学生の怒りが爆発。魔人差別を批判・問題視する学生運動の火に油を注ぐ形となってしまった。



・「学園自治法」
魔人・ド正義克也が1967年に発案し、1969年の「安田講堂事件」で起こった大惨劇をきっかけに成立することとなった、全国の学園を治外法権特区にする為の法律
社会からの思想的影響から学園と生徒たちを保護すること、次世代の学校教育という成長の礎から魔人に対する差別意識を排除することを目的としている。

また、この案が形成されプロ魔連に掲げられる以前の学生運動はどれも本来の目的である魔人差別問題の解消に繋がることのない無軌道なもので、混迷極まる状況を生み出し続けてしまっていた。

そして――――
成立以降の未来においてこの法の下、全国各地の学園で番長グループと生徒会、魔人教諭たちによる壮絶な殺し合いが絶えることなく勃発するようになり、一般人の中の魔人差別意識がさらに膨れ上がるという最悪の結果を生み出すこととなる。

このことから後に、かつての学生たちが最も将来を憂いていた次世代の人間たちからは「世紀の悪法」と呼ばれるようになる。



・「安田講堂」
魔人セクト「東京大学プロテスタント魔人連盟」の活動拠点である東京大学敷地内に建てられた講堂施設にして、学生たちと警察たちの決戦の舞台

1967年、学内で結成されていた別のセクトによって講堂は一度不法占拠されており、東大当局は機動隊の導入を実行したことがあった。
問題は難なく解決したものの、この対応によって多くの学生たちがかつての「岩波事件」で生じた一方的な暴力性を思い起こすことになってしまい、彼らとこれまでの運動に無関心であった学生たち、一部学者たちが痛烈な批判を当局に浴びせた。

これにより現在不法占拠を行っているプロ魔連に対して、東大当局は更なる評判の悪化を恐れ大きく出ることが出来ず、警察側からの介入案も頑なに拒み続けざるを得ない状態となってしまう
一方でこのことに注目した各過激派セクトは、「日本最大の学府である東大の一丸死守」という理由を常套句に潜伏先移住の件に関してプロ魔連と交渉を行っている。



・「EFB級指定能力者」
効果範囲が発動地点から周囲10キロメートル以上にも及ぶ破壊能力を持つ魔人たちの総称。通称「EFB能力者」。
名称の由来は1891年にロシアで確認された、たった1度の発動で村1つを滅ぼした大規模氷結能力から。

EFB能力者の存在を知った各国政府はその後、外交における強力な切り札として自国に存在するEFB能力者の調査と彼らの保護に力を入れるようになる。
また第二次世界大戦中、アメリカが核兵器の開発に成功した事を知った他各国内では早急なEFB能力者発見が重要課題となった。

敗色濃厚であった日本も例外ではなく、EFB級能力による戦況の一発逆転を狙うべく総力を挙げて奔走した結果、1人のEFB能力者を発見することに成功した。
しかし、1945年5月14日に日本政府はポツダム宣言受諾を表明。逆転の一手を託そうとしたEFB能力者が、当時僅か5才の情緒が未だ覚束ない少女であったこと。彼女の中に秘められた能力が、惑星1つを滅ぼしかねない超弩級の威力を孕むものであったということから無条件降伏を受け入れ、彼女の徹底保護に移行せざるを得なかった。



・「英語検定」
そのままの意味もあるが、「ダンゲロス」の世界においては英単語を叫びながら拳や蹴りを突き出すことで強力な打撃を生み出す、格闘術の1つという意味も含まれている。
英語スラングを織り交ぜた独特の呼吸法を基礎とし、丹田により練られた英語を駆使することで真の力が発揮される
これを極めた者は、竜をたった一撃で屠ることができるんだってさ。駅前留学で手軽に習うことができる。

また、コレと同じ技術体系として「ラーメン」もある。コチラは未だ使用人数は少ないものの、今後の伸びしろに期待できるモノらしい。



・「転校生」
ある条件を満たすことでなれる魔人の更に上位の存在にして、別世界からの刺客たち

過去シリーズでは魔人としての特殊能力に加え、彼ら共通の特性である「無限の攻撃力防御力
これらの力に慢心しようとしない思慮深さ、時には大胆ながら常に一歩引くことに重きを置いたフットワークを以てして多くの魔人たちを苦しめた。

しかし今作では劇中でその存在について少し触れられる程度の描写しかなく、直接登場することはない。と思ったら――――






各勢力

登場人物たちに関しては、各項目を参照(随時更新)


東京大学プロテスタント魔人連盟
東大安田講堂を拠点に活動する魔人セクト。通称「プロ魔連」。1967年11月9日発足。議長はド正義克也。

「相手は人間。話せば分かる」、というド正義の信条でもある「徹底した言論と議論による問題解決」を組織全体の基盤体制としており、他の過激派セクトと一線を引いた穏健派の団体として周囲から認識されている。
主な活動内容の方も、ビラ配りやデモ行進など合法的なものとなっており、警察との衝突をなるべく避けるようにしていた。

その地道な活動を続けてきた甲斐もあり、本作序盤の1968年5月時点で共生党協力の下、「学園自治法」法制化が行われるまでに漕ぎつくことに成功。
以降現在の世論からの印象を崩さない為、他セクトへの更なる呼びかけを行うようになる。

一方で、魔人インター合法部事務所で起こった警察官による大量虐殺事件の真相を、インター議長・白金光留と共に調査しマスコミにリークすることで世論を一気に学生側へと傾かせる為に動くことを決定する。



革命的魔人主義同盟
早稲田の某大学施設に潜伏する過激派セクト。通称「革マジ」。魔人・アトランティス鈴木が書記長を務める。

過激派セクトの中でも群を抜いた武力闘争を行使している集団。
更には内ゲバも凄惨を極めており、「味噌汁」と呼ばれる独自の処刑法を用いてスパイ疑惑がある構成員を次々と拷問・殺害している。
彼らもまた他セクトと同様暴力によるお祭り騒ぎを楽しんでいるに過ぎず、その先の作り上げる未来には言葉だけの関心しか抱いていない。

警察側にはかなりの恨みを買われており、幹部たちの行動範囲には組織内部を始め常にスパイが潜り込んでいる。

1967年12月頃から書記長のアトランティスの組織不在が続いており、現在の活動の方は小康状態となっている。
それに対して看過を許さないプロ魔連の方から常に呼びかけが行われているものの、双方の意見の堂々巡りが続いている。



警視庁公安部(魔人公安課)
テロリストやカルト教団など、国家体制自体に害を及ぼす者たちの捜査をあらゆる手段を以て行う超法規的組織。現部長は烏丸昭。

警視庁以外の警察組織には自分たちの行動・素性の一切を秘密としている為、他の警察官からの印象は悪い様子。
また公安部内でも部署ごとの情報共有は行わず、烏丸部長と公安課長・池松叢雲の両名が各部署に赴き捜査状況を把握するだけとなっている。
更に烏丸は各部署の刑事を同部署の上司の意思を通さずに独断で動かす権限を持っているため、部署内においても刑事それぞれが同僚の行っている捜査内容全てを知っているわけではない。

部署の中でも魔人公安課は、対魔人の為に結成された部署なだけに異色極まりないものとなっている。

どれぐらい異色なのかというと、本作の下ネタの約8割を彼らが担っていると言ったほうが手っ取り早い

高い手腕を持つ魔人刑事たちは実際非常に頼もしい存在であるが、一部の刑事たちによるトラブルが度々問題となっており、人員不足が深刻な現状彼らに対する措置に腕を拱いてしまっている。



魔人解放インターナショナル・その他
「魔人インター」はプロ魔連発足時から長く協力関係にあるセクトである。

それ以前は有名な過激派セクトの1つとして警察からも警戒されていたが、魔人・白金光留が議長に就任してからは広報活動を重視した大人しい組織となる。

しかし、1968年5月に突如起こった魔人インター合法部事務所虐殺事件によって親友を失った合法部幹部・学習院哲人が警察との徹底抗争の意を唱える。
これに対し白金は、警察側が近い内に魔人インターとの激突を未然に防ぐ為に自身を微罪逮捕という名目で拘置すること、それによって哲人を含む構成員の説得が困難になることを見越した上でプロ魔連に安田講堂内での潜伏を希望する。
ド正義はこれを認め、同時に白金と共に虐殺事件の犯人である公安部刑事と行動していた警察官との接近を試みるために調査を行うことを決める。















































「頼む!お願いだ。どうか、どうか止まってくれ。







同じ人間だ。話せば分かる、分かるはずだろう!?







もう一度考えてくれ。時間がない。











頼む、止まってくれ!頼む!












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最終更新:2023年06月26日 06:25