相棒 -劇場版III- 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ

登録日:2015/10/26 Mon 02:50:18
更新日:2024/02/17 Sat 05:37:05
所要時間:約 10 分で読めます






相棒史上、最高密度のミステリー








テレビ朝日の人気ドラマシリーズ『相棒』の劇場版第3作。
監督:和泉聖治
脚本:輿水泰弘
2014年4月26日公開。

前作『相棒 -劇場版II- 警視庁占拠! 特命係の一番長い夜 』から約4年ぶりの劇場作品であり、本作はTV本編Season11とSeason12の間に起こった物語とされている。

また、公開する約1か月前に本作へと繋がる前日談『相棒-劇場版III-序章』がdビデオで配信され、後に一部地域でまとめてテレビ放送された。

なお、本作では三代目相棒の甲斐享と二代目相棒の神戸尊が夢の共演を果たしている。



【あらすじ】


2013年。
以前警視庁特命係で杉下右京と組んでいた神戸尊が特命係の元を訪ねてくる。
神戸が特命係に来たきっかけは、「馬に蹴られて男性死亡」と書かれた新聞の三面記事だった。
事故が起きたのは、ある実業家が所有する孤島・鳳凰島で、その島にまつわる妙な噂が絶えないため、
特命係に「事故を手がかりに島を調査させよ」との密命を警察庁次長・甲斐峯秋から受けていた。
気乗りしないまま特命係の二人は事故の検証を口実に島を調査するため、八丈島を経由し鳳凰島へ向かう。

鳳凰島では元自衛隊員たちが訓練を積み共同生活をしており、事故現場に向かうが、二人は島の人々から歓迎されていない雰囲気を感じ取る。
事故で亡くなったのは、普段は会社に勤め一時的に訓練に参加していた予備自衛官だった。
右京達は調査の過程で事件の鍵となる証拠をつかむが、その矢先に何者かにより襲撃される。それは、島で行われている元自衛隊員の訓練とは異なる計算されつくした手法での襲撃だった。
右京達は事件の真相を探るうちに、防衛省や国の権力者たちが関わる大きな謎に突き当たる……。



【登場人物】




主人公。特命係係長。
特命係の元を訪ねてきた神戸に誘われる形でカイトと共に鳳凰島へと向かう。



もう一人の主人公。三代目相棒。
警察庁次長・甲斐峯秋の息子。愛称はカイト。
劇場版登場は本作が初。





トリオ・ザ・捜一のリーダー。愛称「イタン」。
峯秋の働きかけで鳳凰島へと派遣された。
ちなみに序章では本作に繋がる事件を解決していた。



伊丹の後輩。
何故か後半において出番が無くなる。
彼の活躍は次の劇場版まで待つこととなる。



3人の中では一番のベテラン。
のちにとある事件で警察を去る(S.12)。



■レギュラー陣


警察庁長官官房付。元特命係。
season10最終話で特命係を去ってからも右京達と交流しており、右京とカイトをうまく言いくるめて事件現場の島へと出張させた。


◆甲斐峯秋

享の父親である警察庁次長。
鳳凰島に非合法兵器があるという噂を不審に思い、更にそこで起きた事故の真偽を確かめるため、神戸を通して特命係に調査を命じた。



鑑識課巡査部長。
右京からの連絡で伊丹達と共に鳳凰島へと向かった。



組対課5課長。



警視庁警務部首席監察官で警視。万年監察官。



刑事部参事官。


◆月本幸子

「花の里」の2代目女将



■事件関係者

◆岩代純也
演:瀬川亮

本作の被害者。
民兵を全面的に支援していた若狭産業の社員で予備自衛官であった。
自ら志願して長期の訓練を受けていたが、事故当日に世話をしていた馬に蹴られて死亡したとされる。。



■民兵

◆神室司
演:伊原剛志

民兵のリーダー。
元陸上自衛隊の普通科で三等陸佐。過去の負傷による後遺症で片足が不自由で杖無しでは歩けな
い。
普段の口調は丁寧だが激昂すると急に声高に怒鳴る癖がある模様。


◆高野志摩子
演:釈由美子

民兵で唯一の女性隊員。
元陸上自衛隊の武器科で三等陸曹。ショートヘアが特徴で岩代とは恋仲だったと噂されるが…。
序章にも登場している。


◆丹波元史
演:神尾佑

元陸上自衛隊の機甲課で陸曹長。
脚を痛めてる神室を除けば一番立場が上であるが、序盤に多少目立ったくらいで扱いはほかの隊員と一緒くたである。
小説版においては最近気が抜けている団員に暴力で言うことを聞かせようと思考してる辺りリーダーの器ではない事がわかる。


◆因幡義典
演:金児憲史

元陸上自衛隊の衛生課で三等陸尉。


◆相模太郎
演:渡邉紘平

元陸上自衛隊で化学科の二等陸曹。


◆三橋謙
演:生島勇輝

元陸上自衛隊で普通科の陸士長。


◆柿沼秀喜
演:中薗光博

元陸上自衛隊で普通科の陸士長。


■その他

◆桂浜泰三
演:六平直政

八丈島警察署の刑事。スキンヘッドが特徴。
岩代が死亡した事故現場の検証のために鳳凰島を訪れていた。


◆若狭道彦
演:宅麻伸

若狭産業の社長。
鳳凰島を所有しており、神室達の援助を行なっている。


◆栗山朔太郎
演:吉田鋼太郎

参議院議員で防衛大臣政務官。
政治的な立場から神室達の支援しているが、彼らが非合法兵器を所持している噂に危機感を抱いているらしく、特命係が島の捜査を始めた際には警察庁に圧力をかけていた。


◆松坂忠義
演:嶋田久作

陸上幕僚監部監理部長・陸将補。
序章にも登場している。


◆多賀周治
演:渡辺大

陸上自衛隊の特殊作戦群。
自衛隊特殊部隊の訓練という名目で部隊を指揮して、鳳凰島を捜査していた右京達を強制的に東京へ連れ戻した。
その後、若狭と共に神室達の元へと訪れ、島に存在すると噂される非合法兵器の真偽を問い詰めるが…。


◆綿貫孝雄
演:風間トオル

防衛省防衛政策局の次長補。
峰秋とはエルドビア大使館以来の旧知の仲である。



【用語】


■鳳凰島
太平洋に浮かぶ、東京都の八丈島からの先にある孤島。
若狭が私有地として所有しており、そこでは民兵と言う民間の自衛官達が訓練のためにそこで合宿のような生活を送っている。

■民兵
自衛隊出身者を中心とする組織。
元自衛隊の神室を筆頭に鳳凰島で軍事訓練を行っている。
円匙(えんぴ)(スコップの別名)による白兵戦が得意である。神室曰く「銃剣よりも重く長く頑丈」。

■非合法兵器
国際的に製造・所持が禁止されている兵器の総称。
該当しているのは主に生物兵器や化学兵器。
本作では民兵が秘密裏に生物兵器を所持している疑いがあるとの事であるが…。



以下、ネタバレにつき注意














相手はスパイだ。生かして返しておくわけにはいかなかった

◆神室司

事件の真犯人。
峯秋や栗山が睨んだ通り、島で密かに生物兵器を隠していた。
しかもそれは細菌兵器で、中身が世界中で悪魔の病気と恐れられていた天然痘ウイルスであった。
民兵で長期訓練を志願した岩代がスパイではないかと疑いの目を向けて、岩代を探らせていた高野を利用したハニートラップを仕掛け、それにより岩代がスパイと確信した。
口封じのために岩代を馬小屋に呼び出し、あらかじめ蹄鉄を溶接した杖で撲殺、馬に岩代の遺体を踏みつけさせて馬に蹴られた状況を偽装した。
その後も生物兵器を隠し続けたが、防衛省が派遣した自衛隊の特殊部隊の介入により観念して製造拠点へと案内した。
そして、取引で特殊部隊に製造拠点を爆破される形で生物兵器の存在を隠蔽されたが、右京の推理で岩代の殺害を暴かれ、抵抗する事なく連行された。その際には…

いずれここへ舞い戻ってくる。全ては元のままだ

…と、意味深な台詞を残してヘリで護送された。
一見リーダー格とした男で仲間思いかつ正々堂々としているように見えるが、
その性格は自分本位…いや、自分に酔っているくせに、姑息な手ばかり使う小物であった。
馬のヤマトに岩代を踏ませる際「すまんな」と格好つけた後本気で殴りつけた上罪を擦り付けるシーンが神室という男の醜態を表してると言えるだろう。


◆高野志摩子

神室の共犯者。
岩代の恋仲と思われたが、実は神室を強く慕っており、彼の為なら好きでもない男の愛人になる事も辞さなかった。
右京に犯行を暴かれた際には、隠避の罪で神室と共に連行された。
一見知的な美女に見えるが負けず嫌いで感情的になりやすく、往生際も悪いという性格。
また本場の自衛隊には手も足も出ず、鼻血が出るくらい痛めつけられてしまった。
結果的に右京の話術に乗せられて余計な口を滑らせたことが仇となり追い詰められる事になった。

◆岩代純也

実は若狭の指示で鳳凰島に派遣されたスパイであり、潜入する過程で恋仲と思っていた高野のハニートラップで正体がバレた末に殺害された。
挙句島の神室一派達にはどこかなめられてたり、ハニートラップに引っかかったりと情けない姿を見せ続けていたが、馬のヤマトを可愛がっていたり、優しい性格だったようだ。

◆その他民兵達

神室の下で国を守るために訓練していたようだが、実は戦闘力は大したことがない。
円匙による不意打ち気味に自衛隊を襲撃し最初は有利に戦うも、結局形勢逆転され全員完膚なきまでに叩き潰された
神室の機転でなんとか「勝利」は得たものの、正規の自衛隊からすれば彼らは「兵隊ごっこ」の域を出ていなかったのだろう。
それでも神室の事は慕っており、彼が去った後も島で訓練を続けていたが…。

◆栗山朔太郎

生物兵器の存在の真偽を確かめるために若狭を通して岩代を民兵へと潜入させていたのだが、実は生物兵器の正体である天然痘のウィルス株が神室達に盗まれた事に気付いており、警察の捜査で事実が公にされるのを恐れて、自衛隊の特殊部隊を派遣して一度右京達を東京へと強制送還させた。
余談であるが、演じた吉田鋼太郎氏はS10-1『贖罪』で、元裁判官で大学教授の大森誠志郎を演じており、大森も自身の誤審を隠すために「一事不再理」制度を利用し、真犯人を無罪にさせており、こちらは栗山以上の極悪人だった。



◆若狭道彦

栗山の指示で岩代をスパイとして島に送り込んでいたが、生物兵器の噂がデマだと願っていた。
それ故に生物兵器の存在が確信された際には、神室を「テロリスト」と非難して怒りを露わにしていた。


◆多賀周治

防衛省の指示で訓練という名目で部隊を率いて、右京達を一度島から追い出した後、神室達の元へと訪れた。
「何も無ければそれで良し、あった場合は全て破壊して証拠隠滅」と、神室達から生物兵器の有無を聞き出した。
そして、生物兵器の製造拠点へと案内された際には時限爆弾を設置して爆破、証拠隠滅の任務を果たした。



※更なるネタバレ













享「はいストップ!、ストップ!!」

右京「訓練はここまでです」

享「島から持ち出した生物兵器が発見されました」

右京「あなた方にも生物兵器の製造の罪、同じく所持の罪を償っていただかなければなりません」


爆破されて跡形も無くなったと思われた生物兵器が、まだ残っていたのだった。
万が一に備えて、自衛隊が来る前に一部のウィルス株を岩代の私物に紛れさせ、わざとデタラメな宛先を書いて八丈島に送り込んでいた。*1
そして、荷物が一時的に配送センターに保管されるように仕向け、連絡が来た際にはタイミングを見計らって適当な口実をつけて島に送り返してもらい、島に残った部下達に後を継がせようとするのが神室の筋書きであった。
ウィルス株をトラックで輸送していたところ、トリックに気付いた右京の連絡を受けた伊丹達によって宅配便で送られる途中のウィルス株の輸送を阻止されてしまい、当然残った民兵は生物兵器製造の罪で全員逮捕された。

その後、右京と享は東京拘置所で神室と面会していた。
自分をテロリスト扱いして、生物兵器を作った目的を問い詰めた享に対し、神室は「万が一敵に攻撃された時に反撃する為に備えるそれなりの武器」だと語った。

神室「やられた時、あなたはどうやって反撃するつもりだ? それとも、やられた時には友人が代わりに仕返ししてくれるとでも思っているのか?
もしそうだとしたら相当おめでたい。我々がアテにしているその友人は我々に危害を加えるかもしれない連中とも手を組もうとしている
約束通り、やられた時にやり返してくれるなんていうのは幻想ですよ…自分の身は自分達で守るしかないんですよ
そんな簡単なごく当たり前の事からどうしてみんな目を背けるんだ?
私は決して自分から危害を加えたりしない…そこは決定的にテロリストとは違います」

当然「だとしても非合法兵器を持っていい理由にはならないでしょ」と享から正論を言われるが、神室はその事を理解しつつも……*2

神室「ならば聞こう。核兵器は良くて、生物兵器や化学兵器は何故ダメなんだ?
核兵器を持っていい国と、いけない国があるのはどうしてだ? 一体そんな事を誰が決めたんだ?
生物兵器や化学兵器は非人道的だからダメなのか? なら核兵器は人道的な武器なのか?…矛盾だらけじゃないですか。そんな矛盾の中、我々は唯一世界中の誰も侵す事のできない権利を持っている、そう防衛権です。自分を守る権利、私はその権利を行使したいだけなんです。そしてその権利を行使するためにはそれなりの備えが必要なんです。ただ、それだけなんです」

そして、世界で唯一誰にも侵す事のできない権利である防衛権で武力を行使したいだけだと主張した。

右京「あなたのような方はいずれ可能になったならば平気で核兵器をお持ちになるのでしょうねぇ」

神室「当然でしょう、核兵器以上に平和が担保される武器は存在しません。原子力の平和利用を本気で考えるならば核兵器を開発すべきですよ」

享「本気で言ってますか……?」

神室「もちろん」

右京「核兵器によって担保される平和ですか…僕にはそれはひどく脆い危ういものに思えますがね」

享「ええ…人間は過ちを犯します。犯した罪は償えばいい…けど、こと核兵器に至ってはその過ちをどう償えるんですか?」

神室「……あなた方は重い病に冒されている…“平和ボケ”という名の重い病に。我らが友人によってもたらされた悲しい病に」

右京「あなたの方こそ、冒されてますよ。…“国防”という名の流行病に」

国防の重要性と核不拡散の矛盾を訴えた神室の主張は結局右京達には受け入れられず、拘置所内での会話が終了した。
拘置所を後にした右京と享は歩きながら、日本で生まれたサバイバルゲームや防衛の矛盾について語り合っていた。

享「知ってます?サバイバルゲームってこの日本で生まれたんですって」

右京「そのようですねぇ」

享「戦争なんて遠い国の出来事だからですかねぇ」

右京「そもそも何を守るために戦うのでしょう?」

享「えっ?」

右京「故国ですか? それとも家族や友人、あるいは自らの命…どれも正当です。大切なものを脅かされようとしたら人はそれを守ろうとする
その結果、相手を殺める事になっても正当化されますまた新たな戦いが起きる、殺し合いを繰り返す
…所詮、命のやり取りによって大切なものを守るという行為は大いなる矛盾を孕んでいるんです」

享「ええ…」

右京「どこかに出口はないものでしょうかねえ。矛盾の無い晴れやかな出口が…」

享「杉下さん…」
右京「はい?」

享「ありますよ、きっと。……出口、ありますよ」
右京「そう…信じたいですね」


【余談】

劇場版「相棒」のノベライズは、ネタバレ防止のためか結末が劇場版と違う事が多いが、劇場版Ⅲに関してはスクリーンとほぼ同じストーリーである。
しかし、映画では語られなかった部分がいくつかあり、ほぼモブ同然だった神室一派の心境(暴力も辞さない考え)や、カイト君の電話の内容、高野志摩子の狂信など、地の文等でわかりやすくなった部分は多い。

インドアエンタメ総合誌の『エンタミクス』の創刊号となる2014年5月号では、本作と『名探偵コナン』の劇場版作品である『異次元の狙撃手』の公開日が1週違い*3であり、プロモーション時期が合致したという理由で右京と江戸川コナンのコラボが実現している。



追記・修正はサバゲー感覚で孤島の捜査をしながらお願いします。

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最終更新:2024年02月17日 05:37

*1 上記の台詞である「いずれここへ舞い戻ってくる。全ては元のままだ」の主語は神室自身ではなく生物兵器にあった

*2 この時「そんなことは分かっている!」と怒声を上げている

*3 公開日は『相棒』より『コナン』が先だった。