朝倉裕人

登録日:2015/10/20 (火) 00:08:20
更新日:2024/04/09 Tue 21:52:15
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朝倉裕人(あさくら ひろと)は、ドラマ『ケイゾク』の登場人物。
『ケイゾク』と同世界観の続編『SPEC 警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係事件簿』にも同名の存在(?)が登場する。

演:高木将大



世田谷区役所の職員で、主人公・柴田純の親友、大沢麻衣子の恋人。
人当たりのよく眼鏡をかけた好青年で、男に目がない一係の木戸彩からも「いい男」と好評を受けるほど。
恋人の麻衣子とは仕事帰りにテニスを楽しんだり、料理を作ってもらったりと、順調な交際関係を続けていた。

その一方で、捜査一課弐係の警部補、真山徹からは向かいのマンションから部屋を監視されている。

第2話の事件で、柴田が役所の資料を調査しに来た時に彼女と初対面する。
その後、第5話において街で偶然会った彼女を食事に誘った。


同時期から、インターネットで柴田に関する情報提供を求めるといった、不審な行動が目立ち始める。
その件で麻衣子は柴田との仲を疑い、ノイローゼ気味になって悩み相談室のHPを頼った挙句、最終的には彼女自身にも不可解な動機でチャット仲間を殺害し、
真相を暴いた柴田の前で自殺してしまった。


麻衣子の事件の真相を突き止めるため再度朝倉に接触する柴田。
そして、彼のことを調査するうちに、好青年と思われていた朝倉の知られざる素性が明らかになる。












以下、ネタバレ


















実は、朝倉は中学生時代ある犯罪の重要参考人として警察の事情聴取を受けていた。

それは、真山の妹・真山沙織を仲間の4人の少年らと共に彼女を強姦した罪
沙織はその直後水死体で発見されており、警察は自殺と判断されていた。

証拠不十分で5人は何のお咎めもなく釈放され、特に朝倉は事情聴取で「無理矢理つき合わされ、見ていただけだ」と主張し、罪は軽く見られていた。

だが主犯が朝倉と直感した真山は、あろうことか街中で朝倉に向けて拳銃を発砲してしまう。
この事件がきっかけで真山は謹慎処分となり、弐係行きが決定していた。


事件以来、朝倉は警察を不審視し真山と顔を合わせるたびにそれをネタに煽り、真山は尻尾を掴むため、彼が再び犯罪を犯し合法的に彼を裁く機会を伺っていた。
だが、そのことすら、朝倉は真山の部屋に設置した監視カメラでお見通しであった。



そして、麻衣子の事件で朝倉が動き出したと感じた彼は、弐係とは別に、独自で行動を起こす。
しかし、行く先々で彼を罠に嵌めるように起こる殺人や、捜査一課一係の早乙女仁管理官が放った内部捜査処理班「SWEEP」のしぶとい追手によって
徐々に追い詰められていく。

真山の無実を信じる柴田も別口で捜査を始めるが、直後何者かに刺され重傷を負い、彼女もまた追われる身に。

それを裏付けるかのように、真山の目の前には彼を嘲笑う朝倉が。

真山の依頼で柴田の手によって朝倉の元へ挑戦状が送られ、朝倉は遂に本性を現し対峙する。
しかし、真山は気付く。


その朝倉は、

「朝倉」ではなかった。































俺はなぁ、お前らとは違うんだよ

俺にとってなぁ、死は無限だ!お前らにとって死は、全ての終わりだ!


壊れた人形…腐っていく肉…

ウジ虫…ウジ虫…ウジ虫ィッ!


ハッ…ハハハハハ!!


土に還れ!生ゴミィ!!






7年前事件を起こした「朝倉裕人」…それは別にいた。

その正体は、捜査一課一係管理官の早乙女仁

本物の早乙女を殺し彼そっくりに整形した後、指紋を消した上で警視庁に潜り込んでいたのだ。

彼が殺人の手段として使っていたのは催眠術の類いの「暗示」。
他人の潜在意識(嫉妬心や憎悪、行きすぎた正義感)を増幅させ、無意識化に殺人、ないし自殺を行わせるのが得意。


その動機はなく、完全な快楽を目的とした異常者であり、犯罪劇を「ゲーム」として楽しんでいる。
いわゆる「サイコパス」に分類され、アニヲタ的には高遠遙一槙島聖護のような「悪のカリスマ」的存在。


その圧倒的「犯罪」のカリスマ性から、中学時代の同級生には恐れられており、レイプ事件も彼が共犯者たちを唆した(恐喝?)ことによるものである。
そして用済みになった共犯者たちを暗示によって「自殺」させている。

暗示術を使って、何の罪もない普通の若者を自分の影武者に仕立て上げ、用が済んだら彼を殺害させた。


自分に因縁をつけてきた真山に執着しており、犯罪者、捜査一課刑事の立場の両面から彼を追い詰めていった。

真山をつけ回したルポライターのKEEを真山の仕業に見せかけて殺し、精神病の振りをしていた最後の共犯者を真山が面会に来たタイミングで自殺させ、
さらに真山と柴田の情報収集の手足として利用していた弐係警部補の谷口剛をも操り、柴田を刺させ、真山に罪をなすりつけるために自殺させている。

麻衣子に暗示(柴田への嫉妬心の増幅)をかけ殺人者に仕立て上げたのもこの手段によるもの。


遂に真山と柴田をSWEEPの手によって追い詰めた朝倉は、部下の手によって真山を撃たせ、激昂し自分に銃を向けた柴田をも撃つ。

勝利は目前に思われたが、早乙女の行動の不信な点に気付いた野々村係長が彼の指紋を調査したところ、朝倉の指紋と一致したことが判明。
それを証拠として、捜査一課の面々を引き連れ逮捕に現れる。


正体を暴かれるもなおも朝倉は狂気の高笑いを上げるが、意識を取り戻した真山によって銃弾を十発以上も撃ち込まれ、絶命した。



キ、キモチイイ…



だが、早乙女の遺体から検出された指紋は、朝倉のとは一致していなかった。

つまり、本物の朝倉はまだ生きている…。




特別篇/映画の朝倉

柴田が昏睡状態になった数か月間姿を現していなかったが、柴田が目覚めた時と同時期に、真山の元に「お待たせしました。ゲームを再開します」というメッセージが届く。
「快楽殺人者の朝倉は復讐とかしたりしない」という理由で、当初真山はあまり問題視していなかったが、この後彼の元に朝倉から謎の電話が届いている。
この時彼は「僕はみんなと仲良くやりたいんですよ」という謎の言葉とともに、何故か妹の沙織の声(?)を真山に聞かせている。

案の定、朝倉はこの時も仕込みを怠らなかった。
彼は事件の真犯人・中田英二を唆し柴田を殺人劇へと巻き込み、さらに昏睡中の柴田にも暗示をかけていた。
中田の自殺によって暗示が作動した柴田はナイフを自身に振り上げるが、真山が身を挺して彼女を庇い、重傷を負う。

そんな中、定年した元弐係の壺坂は、朝倉の指紋がSWEEP隊員の班目重友と一致したと特定。
決着をつけるために班目と会うが、この時壺坂と班目は互いに互いを朝倉と勘違いしており、半ば同士討ちの形で、壺坂の用意した手榴弾で二人とも爆死してしまう。


そして、柴田と真山は新しい事件の依頼のため死後の世界「黄泉の国」に繋がるという曰くつきの孤島・厄神島で連続殺人事件に遭遇。
柴田の推理で事件は解決するが、直後火山活動が活発になり、赤い霧が島中を包み込んだ。



そこで二人が目にしたのは、彼らにとって思い入れの深い人々。
柴田の実父・純成、麻衣子、沙織、彩、壺坂。みな死んでいった人達だ。
そして彼らを率いていた者こそ朝倉だった。


朝倉は自分の目的を語る。

「僕の使命はヒトの命を永遠のものに転化させる事だ。命が永遠に続くこの世界には憎しみがない。みんな愛し合っている。僕も愛されている」
「僕を認めてくれるね?」


死後の世界で、自意識を融合させ、皆が愛し合う世界を作ることが、彼の目的だった。
…それなんて人類補完計画だよ、と思うかもしれないが。

黄泉の国を牛耳った彼は、彼らが忘れられない死者を使って柴田と真山を誘惑する。
この時、真山の目の前の朝倉は斑目の姿をしているが、この時の彼は斑目本人でもあり、おそらく意識を完全に朝倉と同化させている。
(また、壺坂の推測通り現世では斑目になりすましていた可能性が高い)


だが、彼の思想は死者達に否定される。

壺坂「愛も憎しみもない人間はただの野ざらしの人間だ」
彩「何が永遠の命じゃ。たった1人のな、愛した男の中で生き続けられたらな、それで十分じゃ!」
沙織「お兄ちゃん、さよなら」

彼らは再び死を選ぶ。

「何故憎しみ合う。何故みんな仲良く出来ない。何故ひとつになれない!!」
叫ぶ朝倉に、真山と純成は言い放った。


「「お前なんかとひとつになれるか」」


父と麻衣子と再び永遠の別れを経た柴田と再会した真山は、彼女をボートに乗せて沖へと逃がす。
そして、怒りに燃える朝倉の真の姿が真山の前に現れた。
この時の朝倉は何故か全身黒塗りの野生児のような様相で、演じた高木将大は「鬱積したものが一気に溢れた、野生に返った朝倉」と評している。
体中に爆弾を括り付けた彼はナイフを取った真山と激突。
その後海上で爆発が起こり、厄神島も火山活動により沈没した。
真山の生存は確認されたものの、その後の朝倉については一切が不明である。


彼の正体、催眠術の秘密、整形にしてはあまりに異常ななりすまし、人外と思しき描写……それらの謎は一切明らかにされることなく、
朝倉裕人の件に関してはほとんどが謎のまま、『ケイゾク』の物語は終わりを迎えた。


しかし、10年後…





















『SPEC』の朝倉

声:井上真樹夫

この『SPEC』ではご存知の通り、「人間の脳が普段使っていない90%の部分を活用した能力」=SPECが自明のものとされており、
要するに超能力の存在が肯定されている。

事実、柴田は超能力の存在を信じており、前作第5話の犯人・鷺沼聖は本当に予知能力を持っているという描写が存在した。
『ケイゾク』の続きから「超能力者は大勢いる」と話が出てもおかしくはない。

なので、前作における朝倉の奇怪な能力についても、「SPEC HOLDER」として説明がつく。

なお、柴田は公安部の部長となり、SPEC HOLDERの事件を取り扱う、第五課未詳事件特別対策係を設置し、直接は登場していないものの、
裏でかつての上司野々村の手助けをしていた。
しかし一方で真山は「殉職した」とさらっと語られており、おそらくSPEC HOLDERの事件に巻き込まれたものと考えられる。

朝倉本人に関しても、本編中は名前すら出てこなかった。

しかし。



完結編「結~爻ノ篇」において、地球生命であるガイアの意思を無視して先人類達が人類を滅亡させ歴史をリセットする計画を進行させていた。
当麻紗綾は自らの「ソロモンの鍵」としての力―――並行宇宙を渡る力を利用し、滅びの運命のない宇宙(バブル)とを融合させ、
先人類達を自分もろとも無間地獄に追いやることに成功する。
それを覚えているのは、当麻を殺して全てを無くした男、瀬文焚流だけだ。


何事もなかったかのように巡りゆく世界の中で、一部始終を見ていたと思しき、男と女の声がした。

世界の歴史が、時折巻き戻されていることに気付く者は、やはり誰もいないようだな

生物が保つ意識の数だけ世界はある。そしてある面積以上の重なりだけが認識され、時にそれがこの、世界と呼ばれる

本当の意味での世界や時間を知る者は居なかったわ。当麻を除いてはね

当麻はその無闇地獄の中にいる訳か

そして再び歴史は繰り返す。波のゆくさきのように

行きましょう、朝倉







朝倉の正体について

『ケイゾク』、『SPEC』を併せて考えると、朝倉の正体がぼんやりと見えてくるだろう。
おそらく、ラストのセリフから察するに(朝倉裕人が声の主と同じであれば)、朝倉は先人類の一員である
しかも、『SPEC』劇中に登場した先人類(セカイ、ユダ、潤、卑弥呼)らよりも上の存在にいると推測される。
そして、一緒に話していた女性はガイアの可能性がある。

これは、『ケイゾク』でマインドコントロール、顔を変える、憑依、死者への干渉等、あらゆる異能力を使う描写があったことからも裏付けられる。
実際、『SPEC』でも、セカイ達はあらゆるSPECを自在に使うことが出来(というのも、SPEC HOLDERとは先人類の子孫だからである)、
潤を除く彼らは「霊体」として、いかなる物理攻撃も効かなかった。
また、ユダは他人の肉体に憑依することが出来、朝倉も整形ではなく憑依の能力を使ったとすれば、早乙女や斑目と短いスパンで入れ替わる離れ業が出来た
説明がつく。

あるいは、「朝倉」の本体は霊体そのものであり、人間の肉体を移り変わっていっただけなのかもしれない。
厄神島で現われた黒い朝倉こそ、本体である霊体だった可能性がある。


…しかし。
だとすると、何故朝倉は女子中学生レイプなどという最低な犯罪に手を染め、真山徹という人間に何故執着していたのか?
それはおそらく、朝倉の抱えた最大の謎だろう。



だが、いずれにしても真相は闇の中だ。
答えは、監督の堤幸彦かプロデューサーの植田博樹のみぞ知る。
もし何らかの形でケイゾクサーガ第三章が世に出た時に、明らかになるのかもしれない


ちなみにSPECの最後で朝倉と語り合う女の声は田島令子が担当。
松本零士作品で言うと、ハーロックとエメラルダスの会話になる。


『SICK'S』の朝倉
主人公の御厨静琉の中で蠢く得体のしれないものとして登場。


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最終更新:2024年04月09日 21:52