柳家喬太郎

登録日:2015/09/20 Sun 00:20:00
更新日:2024/01/13 Sat 11:08:13
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柳家喬太郎(1963年11月30日~)は東京都出身の落語家。
師匠は柳家さん喬。出囃子は「まかしょ」。紋は「丸に三つ柏」。愛称は「キョンキョン*1」。落語協会理事。

経歴

本名は小原正也(おはらまさや)
小学校3年生まで世田谷区で育ち、その後横浜市に移住。中学時代に落語と出会う。
ジャパン大学高等学校から、ジャパン大学商学部経営学科へと進学。落語研究会に入り「砧家駄楽」として活動。
卒業後は福家書店に就職するも、落語への情熱は冷めず約1年半で退職、落語家になることを決意する。
1989年に柳家さん喬に入門。二ヶ月後には新宿末広亭にて初高座を演じる。
その後1998年には、「午後の保健室」でNHK新人演芸大賞を受賞、2000年に真打に昇進した*2
2016年には、映画「スプリング、ハズ、カム」で主役を演じる。

1998年のNHK新人演芸大賞の受賞により面白い落語家として名が知られるようになり爆発的な人気を得る。
2009年(平成21年)発行の『今おもしろい落語家ベスト50』(文春MOOK)では立川談春などのそうそうたる顔ぶれを抑えて第1位に選出された”超”実力派
しかし実力派だがそれに驕ることはない。大学の落研時代は歴史に残る天才とまで呼ばれたレベルの実力者だったが、師匠である柳家さん喬にはそれを「垢のようなものだから徹底的に落とさないといけない」とかなり厳しく言われたという*3
そのさん喬を崇敬しており、50歳になった折には入門した頃の師匠の年齢と自分を比較して「それを考えると『ダメだなオレ、まだこんなんじゃ』という結論にしかならない」とまで言っている。
就活サイトのインタビューによれば、売れていない頃はアダルトアニメの声優までやってたんだとか。こんな大天才でも苦難の時期はあったのだ。 竿役の方がいい声してそう


芸風

古典から新作、滑稽物から怪談までこなすオールラウンドプレイヤーであり、「落語はその時聴いて面白ければそれでよし」をモットーとする。
オールラウンドというと「どれもそつなくこなす」というイメージになりやすいが、彼の場合はどちらもやたらレベルが高い。1位を取った実力は伊達ではないのだ。
新作は「寿司屋水滸伝」や「東京ホテトル音頭」などのカオス系から、「ハワイの雪」「八月下旬」などのいい話系と幅広く、歌ったり踊ったりと本当に何でもありである。
ウルトラマンとのマッシュアップ的な噺、江戸川乱歩の怪奇小説「赤い部屋」などを翻案した噺なども演じており、冗談抜きで「なんでもあり」
「本当に怒ってませんか?」

大きな特徴として、「マクラ(落語で本題に入る前の部分。アニメでいうアバンタイトル)」がやたらめったらに長いことが上げられる。
演目の半分がマクラなことはざらであり、30分の持ち時間のうち25分をマクラで埋めるという快挙を成し遂げたこともある。
内容もカオス極まりなく、例えば「時そば」のマクラでは、駅のホームの立ち食い蕎麦屋のコロッケそばについて延々と語り続け、終いには「まさかそばに入れられるとは思ってもいなかったコロッケ」の一人芝居まで始めている。
ちなみにそういう個性派の例にもれず、このマクラの部分がやたら面白い。たとえば「飲み会の幹事をやっている大学生の真似」をこの歳の人がやる。
しかもめちゃくちゃ上手い。
「皆さんの考えてることは同じです!分かります!『分かったから早く落語に入れよ』という」

本編にメタなネタをや下ネタを入れることも多く、「やっぱ古典にしときゃよかった」などとぼやいたり、テレビ収録で落語のチョイスをミスり「来年この会無いかもしれない!」と嘆いたりと、大抵は後悔していることが多い。
「「放送できるんですかね?」だと?、いいんじゃないのかいNHKじゃないんだし!」

古典新作共に脇役に強烈な個性を持たせることが多く、百面相のように変化する顔芸と相まって、新作はカオスと化し、古典は古典と思えないような味付けとなっている。
「奇 っ 怪 な る 顔!」

また、落語界きってのウルトラマンファンであり、古典新作問わず隙あらばネタを捩じ込んでいる。
「そんな風に切られたのは、過去に二代目のバルタン星人ぐらいのもんですよ!」

「落語家=笑点の大喜利メンバー」「落語はまんじゅうこわいとか寿限無とかやってる伝統芸能」という認識の人はまずキョンキョンを聞くことを強く強くオススメする。
いろんな意味でやりたい放題で、こんな落語家がいたのか!?と驚くこと請け合い。「赤い部屋」は原案をさらに鋭くブラッシュアップしてるけど、「お菊の墓」に至っては原型があるんだかないんだか……。
まずは何もかもがカオスな「寿司屋水滸伝」あたりからどうぞ。



主な代表作


午後の保健室
「エンドウ君~殺すわよ」

一人署長
「危険です。相手は凶暴な寄席芸人ですよ」

お菊の墓
「三十ばかりの火の玉が、天井に向かってスパーン!スパーン!スパーン!スパーン!スパーン!グルン!グルン!グルン!グルン!回りますってぇと、レーザー光線でO! KI! KU!

寿司屋水滸伝
「江戸前♡」

ほんとのこというと
「ごめんなさい!」

夜の慣用句
「天に代わって悪を討つ」

ハンバーグができるまで
「合挽きの豚と牛に、鼠の魂が!」



追記・修正はコロッケそばを食べてからお願いします。
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最終更新:2024年01月13日 11:08

*1 小泉今日子の愛称「キョンキョン」と引っかけている。マクラの部分で大学生に「おぉ~い!キョンキョ~ン!」と呼ばれて「ぶっ殺してやろうかと思った」と話すなど、彼の強烈な個性を印象付ける材料のひとつになっている。

*2 落語界は基本的に「先に入った人が偉い」世界なのだが、そのとんでもない実力から12人抜きで真打になる(抜擢真打)という真正実力派。一緒に抜擢真打となったのは笑点の橙色でお馴染みの林家たい平

*3 落語家は弟子を取るときに「落研経験者(天狗連)か?」ということを尋ね、弟子が書いた師匠回顧録には必ずと言っていいほどこの質問が出てきて、経験者の場合は「変な癖がついている」としてそれを徹底的に矯正するところから始めさせられるという。