フリードリヒ4世(銀河英雄伝説)

登録日:2015/07/06 Mon 10:47:02
更新日:2024/04/22 Mon 16:28:12
所要時間:約 3 分で読めます






よいではないか。人類の創成と共にゴールデンバウム王朝があった訳ではない

不死の人間がおらぬと同様、不滅の国家もない。余の代で銀河帝国が絶えて悪い道理がなかろう

どうせ滅びるなら…せいぜい華麗に滅びるがよいのだ……



フリードリヒ4世とは、銀河英雄伝説の登場人物。
ゴールデンバウム王朝銀河帝国の第36代皇帝にして、事実上の最後の皇帝。
声:阪 脩(OVA版)/稲葉 実(Die Neue These版)

■[来歴]■

ゴールデンバウム王朝の第35代皇帝であるオトフリート5世の次男として生まれる。
若い頃は放蕩者で、侍従武官であるリヒャルト・フォン・グリンメルスハウゼンなどと共に遊び歩いていた。
先帝から勘当寸前であったことから帝位継承はないだろうと周囲には思われていたが、次期皇帝の座を兄リヒャルトと弟クレメンツが争い、二人とも共倒れの末死亡してしまったので、オトフリート5世の息子で唯一生き残ったフリードリヒ4世が即位することとなった。

皇帝に即位したものの国政には関心がなく、政治は国務尚書のリヒテンラーデ侯に任せきりにして、自分は漁色や趣味であるバラの栽培に専念している。
後世に残るような悪行はないが、これといった功績もない。
権力者らしく中々に好色家でもあるが、それすら歴代皇帝に比べてしまえばさほどではなかった。

若い頃は年上好みだったが、年を取ってから年下好みに変わり、気に入った少女を寵姫として囲っては楽しんだ。
そんな彼が最後に寵愛したのがグリューネワルト伯爵夫人アンネローゼ、後のローエングラム王朝の初代皇帝ラインハルト・フォン・ローエングラムの姉である。
この出来事がラインハルトを反ゴールデンバウム王朝へと向かわせた最大の要因であり、ある意味では彼がいなければ銀河英雄伝説は始まらなかったかもしれない。*1

最後は帝国歴487年(宇宙歴796年)、アムリッツァ星域会戦終了直後、心臓疾患により崩御。
この時ラインハルトは心の中で『あと五年、否、二年長く生きていれば、おかした罪にふさわしい死にざまをさせてやったのに』と憤っていた。



■[人物]■

ラインハルトだけではなく、宰相であるリヒテンラーデ侯やブラウンシュヴァイク公のような門閥貴族にも軽視されており、別に暴君という訳ではないが、凡庸な皇帝だというのが定評。

ただ、全くの凡人かというと、そうは言い切れない所もある。
リヒテンラーデ侯が「ラインハルトがその野望の高さからいずれ簒奪を企むであろう」と注意を促した時には本項冒頭の言葉を放言し、リヒテンラーデ侯を戦慄させている。

本編開始の直前の時期を描いた外伝では、自分の破滅を予感している様子や、ラインハルトの抱く野心が、単に爵位や軍の階級に留まらないことを察しているような発言も。

どうも彼は早くからゴールデンバウム王朝の終焉を予期し、ラインハルトに権力を与える事でそれを行わせようとしていた節がある。
事実、ラインハルトの出世は基本的には自身の武勲によるものではあるが、それでもなお不自然なほど早かった。
ゴールデンバウム朝最後の皇帝は、凡君ではあっても凡人ではなかったのかもしれない。

若年時の放蕩も、衰退していく帝国の未来に絶望していたが故の逃避であったとすれば納得も行く。
王朝の衰亡を見抜けないほど無能ではなかったが、それを押しとどめられるほど有能でもなかった。
この半端な才覚が彼の不幸であったのだろう。

また生まれた家庭の時点で兄弟の醜い争いを直で体験したこと、
自身の生涯でも6人の女性を28回妊娠させたが、6回は流産、9回は死産。
無事生まれた13人の子女の内、生後1年までに4人、成人までに5人、成人後に2人が死亡。
生き延びたのは皇女2人、そして唯一の男系皇太子ルードヴィヒであった。
恐らくは暗殺や陰謀によるものとされるが、家族すら満足に手に入れられなかった事も、虚無的な治世の一因と言えるかもしれない。

コミカライズ版では、より深く彼の心理と最期の瞬間が描写されている。
帝位継承権を巡って争う優秀な兄と弟に対して、次男の彼は凡庸であった。
皇帝になれるわけもなく、親や門閥貴族たちからも一切期待されないような日々。
にもかかわらず転がり込んてきた皇帝の座についた途端、貴族たちは掌を返して彼を持ち上げ始めた。
しかし皇帝は所詮お飾り。実権をリヒテンラーデ侯らが握っているのは明白。
貴族たちがちやほやするのも私利私欲からで、影では自分をこき下ろしているのもわかりきっていた。
そして彼自身の息子や娘を、たかだか皇帝になりたいが為に暗殺する貴族たち……。
故にフリードリヒ4世は、世継ぎを決めてくれとつめかける貴族たちに向かって、こう言い残した。






決めて…おったのだ……もう何十年も前から余は………




何一つ決めてやるものかと…………





31年の治世最初で最後の決断を下した皇帝は、困惑する家臣たちを前に満足してこの世を去った。

■[係累]■

  • リヒャルト

兄。開明的ではないが、勤勉で教養に富み思慮深く有能な人物だったという。
長男であり、順当に行けば彼が第36代皇帝になるはずだったが、父であるオトフリート5世を弑逆する計画を立てていたとされ処刑される。
が、実は帝位を狙った弟クレメンツの工作により着せられた冤罪だった事が後日発覚した。

  • クレメンツ

弟。行動力に恵まれ明朗快活な人物だったという。
三男ではあるが、いかんせん次男のフリードリヒが上記来歴の通りの人物だったため、リヒャルト処刑後にはフリードリヒを差し置いて次期皇帝の座を有力視されるようになった。
が、実はリヒャルトの項に記載した通りすべては彼の工作によるものだった事が発覚。廷臣たちは多数が処刑され、彼本人は自由惑星同盟への亡命を図るがその途中で「事故死」した。

  • アマーリエ・フォン・ブラウンシュヴァイク

娘であり、本編で言及された時点では既にオットー・フォン・ブラウンシュヴァイク公に嫁いでいる。

  • クリスティーネ・フォン・リッテンハイム

娘であり、本編で言及された時点では既にヴィルヘルム・フォン・リッテンハイム侯に嫁いでいる。
道原氏の漫画版においては
「次の皇帝の父親になりたくて私と結婚したのでしょう?だったらそのためにがんばりなさいよ!!(意訳)」と夫に詰め寄る気の強い女性として描かれている。

  • エリザベート・フォン・ブラウンシュヴァイク

孫であり、アマーリエとブラウンシュヴァイク公の間に産まれた娘。皇位継承権者。16歳(フリードリヒ4世崩御時)

  • サビーネ・フォン・リッテンハイム

孫であり、クリスティーネとリッテンハイム侯の間に産まれた娘。皇位継承権者。14歳(フリードリヒ4世崩御時)

以上の4名はほぼ名前だけしか登場しておらず、人柄などは不明。またリップシュタット戦役後の運命も不明である。
また、OVA外伝『奪還者』においてはエリザベートおよびサビーネには遺伝的な欠陥(具体的な内容は不明)がある事が発覚している。

  • ルードヴィヒ

息子であり皇太子だったが本編開始時点で故人。
後に皇帝となるエルウィン・ヨーゼフ2世の父親でもある…が、実は彼の死没年とエルウィンの誕生年には齟齬があったりする。
…気にしないでおいたほうが良さそうである。

  • エルウィン・ヨーゼフ2世

直系の孫。
血筋的には彼が皇位継承1番手になっていてもおかしくなかったが、2人の外孫よりもさらに幼く、いかんせん政治的な後ろ盾が無かったために半ば無視されていた。
が、利害が一致したラインハルトとリヒテンラーデ侯が後ろ盾になった事により皇帝として即位。当時5歳。
リップシュタット戦役後、フェザーンと帝国旧体制派により自由惑星同盟へ連れ去られ、銀河帝国正統政府の皇帝として祭り上げられる。
同盟降伏後には正統政府の構成員だったランズベルク伯に連れ去られ行方不明に。その後ランズベルク伯が逮捕された際に「死体」が発見されるが、その死体は同年代の別人の死体だった事が発覚。
結局その後どうなったかは不明である。

性格はこれまでまともに育てられていなかったためか自我の抑制が効かず、わがままなもの。
帝国から同盟へ移動する際に乗船した貨客船の船長(彼はエルウィンの素性を知らなかった)には「ちゃんとしつけてくれ、うちは山猫を運ぶ業者じゃない(要約)」と言われるほど。
また後日、帝国正統政府樹立宣言の中継を見た船長曰く「ローエングラム公が野心家か簒奪者か知らんがあのがきが皇帝じゃいずれ自分の国を齧り倒すだろう、他人のせいなものか」との事。

■[余談]■

若い頃は放蕩者で、総額54万帝国マルクもの借金を背負っていた。
しかも父親である先帝が金銭では締まり屋だったため、借金に追われて酒場の店主に土下座までしたこともあった。
これに対して貸し手側はさすがに気まずくなり、もし帝位に就いたら20倍にして返済する旨の証文を受け取り、実質的に債権を放棄した。
が、政争の果てに意外にもフリードリヒ4世が皇帝に即位したため、この証文は守られ、店主は借金の支払いを受けた。



追記・修正は借金を20倍で返済してからお願いします。

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最終更新:2024年04月22日 16:28

*1 ちなみに、もちろんネタだろうが。もしアンネローゼを連れて行ったのが商人だったら「銀河商人伝説」が。画家だったら「銀河画家伝説」始まったかもしれないと、インタビューで作者の田中芳樹氏が述べている。