小中千昭

登録日:2015/02/08 Sun 00:45:13
更新日:2023/10/31 Tue 16:37:30
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小中 千昭(こなか・ちあき)とは、日本の男性特殊脚本家、小説家である。映画監督の小中和哉は実弟。

【人物】


1961年4月4日生まれ、東京都出身。成城大学(映画記号学専攻)卒業。
幼少期より、映画・テレビ問わずファンタジー性の強いドラマに惹かれる。

10歳の頃より弟の和哉と共に8mm映画を製作し始める。
1971年に『死因不明事件』を製作(未完)、13歳で特撮映画『インベーダー』を完成させる。
それからは大学を卒業するまで年1本のペースで自主制作映画を製作し続け、大学在学中より特殊映像を専門とした文筆活動に手を染める。

1986年にテレビ番組・PRビデオ・展示映像などを手掛ける映像ディレクターとしてデビュー。
翌年の1987年よりフリーとなり、演出業からホラー・SF・ファンタジー専門のライターへとシフト。
1988年にホラービデオ『邪願霊』で正式に脚本家デビュー。

『邪願霊』『ほんとにあった怖い話』などホラー作品で用いたフェイク・ドキュメンタリーを初めとする表現方法は「小中理論」と呼ばれ、
高橋洋・黒沢清らに影響を与え、ジャパニーズ・ホラーのイディオローグ的存在となった。

1992年、和哉夫妻と有限会社こぐま兄弟舎を設立。

また、一時期は高橋洋の紹介で映画美学校の脚本コースで講師を務めていた。


【作風・制作スタンス】


自身が見たい、描きたいと望む物語は「日常に介入する非日常を描くもの」であると語っており、
常に人間の目線で話が進み、現出した非日常に対する登場人物のリアクションを拾ってドラマを描いていくのが特徴。
反面、RPG的な世界観のファンタジー、近未来や歴史ものを苦手としており、作品もそれらのジャンルを忌避したものが多い。

ホラー作家として、全く理解できないながら圧倒的な暴力性を持ってその体験者に襲い掛かる不条理こそが最も恐ろしいと語っている。
そのため、敵の目的・正体が明かされずに物語が完結する場合が多い。

それらを描いていくにあたり、作品ごとに新しく設定を考えるよりも、
多くの作家によって拡張された神話体系を持つクトゥルフ神話を導入した方が合理的であるとし、多くの作品でその要素を盛り込んでいる。
また、そもそも上記したような「世人には理解の及ばぬ不条理な恐怖」というテーマは、クトゥルフ神話の作品群は勿論、
その生みの親たるラヴクラフトの作品全般における特徴でもあり、作風や嗜好・思想と相性が良い題材という理由もあるかと思われる。

そのため一部のファンからは「何を書かせてもクトゥルフにする」などと冗談混じりに言われる事もあり、本人も多くの場合は好きでやっているのだが、
デジモンアドベンチャー02』の「ダゴモンの呼び声」に関しては製作側から依頼されてクトゥルフ風にしたのであって、「無理矢理ねじ込んだ」などと言われることには憤慨している。

デビュー作である『邪願霊』がフェイク・ドキュメンタリーだった事にも現れているが、視聴者の存在を強く意識した手法を多く取り入れており、
ウルトラマンティガ』の「悪魔の審判」「輝けるものたちへ」・『serial experiments lain』の最終話などでは、画面の中の登場人物と視聴者が相互に干渉し合っているかような構図を用いている。

いきなり途中から始まる、固有名詞や専門用語を多用する、明け透けで時には言葉の使い方すら間違った生っぽいダイアローグが特徴。
その他、あらゆる事象に「リアル」なのではなく、あくまで「リアリティ」を追及するべく砕身している。

また、キャラクターの心理描写自体は丁寧なものの、作品全体としてはクールで抑揚の効いた印象を持たれる事が多い。
ウエットだったり、感情移入させる様なドラマは不得手との事で、そのタッチは業界内外から「ドライ過ぎる」と評されている。

ストーリーテリングについては、通常用いられる帰納法(予め結末を想定する方式)を酷く嫌っており、
一つずつアイデアを積み上げていく演繹法でなければ面白いものはできないと語っている。
キャラクターの設定についても、必要に応じてライブ感で決めていく事が多い。

脚本は自分の出したプロットから作っていきたいという姿勢から、プロットを各脚本家に配ってストーリー全体をコントロールするシリーズ構成という役職に懐疑的であり、
自分がその立場を務めた場合は、参加する脚本家に話数の前後の繋がりも含めてプロットから考えて貰い、シリーズの縦軸として必要な事を適宜付加していくというスタイルを取っている。

また、頭の中で場面を完全に思い描かないと書けない体質であり、擬音を多用し、ほとんど字コンテに近いト書きを入れている。
本来は邪道とされる作法であり、難色を示す監督や演出家も少なくない。

MBSの丸谷嘉彦プロデューサーは小中を「天才肌」と評価して認めているが、喧嘩をするとキレるタイプであると語っている。
自らの正当性を主張するためには徹底的に議論をする事も辞さず、『ティガ』の第3話「悪魔の預言」の打ち合わせにて、ウルトラマンのキャラクターの方向性を巡り、当時既にベテランであった村石宏實監督を相手に一歩も引かずに大バトルを繰り広げたのは有名。
(村石監督がティガと預言者の対話シーンを書き足したところ、ウルトラマンが喋る事について反発し、強弁の余り机を強く叩いた事があった)
TBSの橋本洋二プロデューサーと仕事をした際も、「これほど作家(テレビ脚本家)に折伏された経験は無い」と苦笑いされたという。


【評価】


長々と書き連ねてきたが、とどのつまりは非常にアクの強い作家である。

その独特の広がりを持ったハイブローな作品に魅了された者も多いが、悪く言えば「独り善がり」、ともすれば「意味も無く難解」な作風であり、
原作付き作品を改変してしまう事も多いため、辛辣な批評を下される事もしばしば。

人によって評価が違うどころか、ある作品では小中の作風を支持する者も、別の小中が関わった作品を見てブチギレる事さえある程。

ローエイジをターゲットとした作品では、そういったテイストは抑えられ、
その構成力や描写力がストレートに生かされるために高く評価される事が多い。

かつては非常に多作であり、ホラー映画から女児向けアニメまで幅広いジャンルの作品を送り出し、良くも悪くもサブカル界を賑わせてきたが、
2009年の『地獄少女 三鼎』を最後に脚本家としての活動をほとんど停止しており、一線を退いたかのような仕事が多くなっていた。
2016年始動予定の師匠シリーズ』映像化プロジェクトにて久々に脚本として参加する事が発表されていたが頓挫。
その後は実写映画『VAMP』の原作・脚本や小説版『ウルトラマンティガ』の執筆など、テレビ以外の媒体での作品発表がメインとなっている。

活動停止していた理由に関しては、ユリイカのコラムで「近年のアメコミ由来の『ユニヴァース』や異世界転生ものなど、世界観を蔑ろにする作品の台頭に辟易していた」と述べている。


【主な参加作品】


◆映画
  • 死霊の罠2/ヒデキ
  • くまちゃん
  • DOOR III
  • THE DEFENDER
  • バニパルウィット 突然!猫の国
  • ガラスの脳
  • 蛇女
  • 稀人
  • まだらの少女
  • ミラーマン REFLEX
  • キノの旅 病気の国 -For You-
◆テレビ
◆ビデオ
◆ゲーム
  • ありす in Cyberland
  • serial experiments lain
  • 吸血姫夕維〜千夜抄〜
◆著書
  • scenario experiments lain the series
  • 深淵を歩く者
  • ホラー映画の魅力 ファンダメンタル・ホラー宣言
  • ですぺら
  • 恐怖の作法:ホラー映画の技術
  • 光を継ぐために ウルトラマンティガ



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最終更新:2023年10月31日 16:37