セカイ系

登録日:2014/12/31 (水) 15:32:00
更新日:2023/07/08 Sat 16:03:31
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「覚悟を決めた。世界を滅ぼそう」


「わたしも他の人なんか知らない。みんな死んじゃっても知らない。私も浅羽だけ守る。わたしも、浅羽のためだけに戦って、浅羽のためだけに死ぬ」


セカイ系とは、物語形態のひとつである。


【概要】

まず一口に「セカイ系」と言っても、そもそも「セカイ系」という呼び方自体定義があやふやに曖昧なまま広まった概念であり、色々な場所で色々な使われ方をしている名称・俗称である。

敢えて大雑把な特徴を簡単に説明するならば、「主人公とヒロイン、及びその周辺を中心に世界規模の問題が進行する物語」といったところだろうか。
かといって主人公一行が腕っぷしだけで人知れず世界の敵に立ち向かう作品世界規模の問題がすぐそばにいることに主人公と周辺人物だけが気付いてしまう作品を思い浮かべてもらうと困る。むしろ物語の舞台がやたら広大な前者とはある意味で真逆と言えるかもしれない。

90年代から00年代前半に多く見られた作風で、最初はそれらを批判する目的で使用された。特にセカイ系の代表として挙げられる『セカイ系三大作』は
の三作とされ、これらに共通する特徴に『主人公の心理を重点として描写している』ことが挙げられる。

というのも、セカイ系は元々
  • 主人公とヒロインの関係がそのまま世界の危機や滅亡に関係している
  • 主人公の周辺のみが完全に中心となり社会や世間、世論が一切登場しない、関係ない
  • 主人公の心理描写を過剰に表現しすぎている
などの、いわゆる「エヴァっぽい」点を批判するためのレッテル…平たく言ってしまうと「お前らの間だけでなんもかんも完結してんじゃねーよ」というツッコミを短く表したものだった。

元はと言えば当時あった「少年向け作品の題材は、身近な話題か世界の危機かの両極端」という発言が
(対照的な例として前述したドラゴンボールと同じ掲載誌の作品群を数えてみてもこれ自体は一理あるのではないだろうか)
「その両方とも含んだ作品が今流行っている」と曲解されたのが始まりだとか。

現在ではその批判的な意味も薄れ、単に1ジャンルとしての使い方が定着している。

【ジャンルとしてのセカイ系】

主に主人公とヒロインを中心として、心理描写が非常に多い物語をざっくりと「セカイ系」と呼ぶことが多い。ラブコメや学園物とも相性がよく、それらと組み合わせて使われることも。
ただ本当にざっくりとした区分けなので、日常をただ過ごすだけの話や、『エヴァ』のように完全な非日常を戦う話、平和な日常と危険な非日常を繰り返す話など、とにかく受け取る人のさじ加減でいくらでも判別することができる。

重要なのは先述の通り「主人公の内面描写と主人公自身」であり、たとえば『エヴァ』の最終回は「それまでの伏線も状況も全部ぶん投げてシンジが自分の居場所を見つけておしまい」という、中々に人を選ぶものであった。
『エヴァ』がセカイ系の始祖であり定義の指針とされているのは、分類上は一応「ロボットアニメ」でありながら、その実シンジの葛藤や自尊心などの精神面を主として扱った作品であったため。

セカイ系はあえて主人公とその周辺しか描かず、精神世界の描写を多くすることによって読者及び視聴者を感情移入しやすくしたり、共感を得易くすることができる。
つまり人間関係を狭い範囲に限定することで、逆に『主人公たちの物語』を強く描写しているのである。そのためセカイ系を楽しむ上で何より重要なのは、彼らのセカイに没頭することである。

ただ逆に、セカイ系はあくまで主人公とその周囲だけに重点を置くため、社会や国家、それこそ世界を描写しない、あるいはすることができない。
それによって現実感のない、纏まりのない物語になってしまったり、数人しかいない主人公のコミュニティ…つまり『主人公のセカイ』だけが世界の危機にどうだこうだと向き合い、存在し危機に瀕しているはずの『世界』が物語に全く絡んでこない点を「作者の独りよがり」と批判されてしまったりする。

しかし何度も言うようだが、セカイ系を観賞するにあたって重要なのは「主人公のセカイに没頭する」ことであって、隅から隅まで世界観の全貌を知りたい人、純粋なストーリーとして作品を楽しみたい人など、物語全体を俯瞰してみるタイプの人にはそもそも向かないジャンルと言える。*1

受け手に深く登場人物の内面に接してもらう、あるいは受け手が物語世界の一部になったと感じるよう誘導するため、意図して主人公の周辺までの描写しかしないのが特徴かつ人によっては欠点でもあり、そもそも世界観や周囲の描写の少なさに突っ込むこと自体がはっきり言って野暮
どれだけ世界観が壮大で裏でとんでもない事態になっていたとしても、その作品にとって重要なのはその中心にいる僅かな登場人物たちの内面であって、決して物語世界の行く末やその他の人々ではない…という前提を、何なら触れる前から理解しておく必要がある。

この様に「セカイ系」とは比較的メジャーなジャンルでありながら、実際は相当に人を選ぶ作品群なのである。*2



追記は世界を滅ぼしても一人のために修正できる人がしてください。

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最終更新:2023年07月08日 16:03

*1 逆に数少ない描写からでも要素を汲み取り世界の全体像を推察する、所謂「考察勢」にとってはおあつらえ向きのジャンルだったりするのだが。

*2 そもそもこういったジャンル分け自体、それに分類される作風が苦手な人避けとして機能している面も少なからずあるため、極端な話「人を選ばないジャンルなんてない」と言えるといえばそう言えなくもないのだが。