楽園追放 -Expelled from Paradise-

登録日:2014/12/08 Mon 23:49:07
更新日:2024/01/28 Sun 15:26:42
所要時間:約 8 分で読めます




われわれはどこから来たのか
われわれは何者か われわれはどこへ行くのか――





楽 園 追 放

RAKUEN TSUIHO
―Expelled from Paradise―




『楽園追放 -Expelled from Paradise-』とは2014年に公開されたアニメ映画。
企画製作は東映アニメーション、アニメーション制作はCG・VFX映像スタジオのグラフィニカ。



スタッフ


原作:東映アニメーション/ニトロプラス
監督:水島精二 『鋼の錬金術師(2003)』『機動戦士ガンダム00
脚本:虚淵玄魔法少女まどか☆マギカ』『PSYCHO-PASS サイコパス』『翠星のガルガンティア
演出:京田知己『交響詩篇エウレカセブン』『エウレカセブンAO
音楽:NARASAKI
キャラクターデザイン:齋藤将嗣
テーマソング:『イオニアン』 ELISA

本作の製作発表は2012年と古く、当初から、アナザーガンダムとしては独特の世界観を作り上げた『ガンダム00』の水島精二が監督を、
『まどか☆マギカ』を皮切りに人気アニメを次々と生み出した虚淵玄が脚本を務める長編アニメとして周囲から注目を集めていた。
その期待に十分応えるように、本作では下地がしっかりついたSF設定、重厚なストーリー展開によって1時間40分あっという間に観客を惹きつけている。

また、本作を特徴づけるのが「フルCGによる3Dアニメーション」。
実力派のCG製作会社グラフィニカによる、臨場感あふれるロボット戦だけでなく、
なめらかなキャラクターの表情・身体の動きまでCGで再現し、その技術力の進化をまざまざと見せつけている。

これらの高い水準を誇る脚本・演出・映像技術により、2014年11月15日の公開以来、
全国13館という小規模公開ながらも各地で絶賛され、ブルーレイも飛ぶような売れ行きを叩きだした。


ストーリー


ディーヴァにお住まいの人類の皆さん。私は、フロンティアセッター

新たな可能性へとご案内するために、そちらの仮想空間に介入しています


地球荒廃の原因となったナノハザードから100年余り。
人類は地球を捨て、衛星軌道上に浮かぶ施設「ディーヴァ」に、人格をデータ化した「電脳パーソナリティ」となって移住していた。
ディーヴァへの移住と電脳パーソナリティ化により旧来の人類が抱えていた人口や食料の問題は解決され、人類はディーヴァを安住の地として、
平和な時を過ごしていた。

そんな中、ディーヴァに不正アクセスを繰り返し宇宙船の宣伝をする謎のハッカー「フロンティアセッター」により、電脳世界は混乱に陥る。
この状況を打破するため、ディーヴァ高官は地上世界にいるハッカーを追跡する作戦を開始。
その作戦に任命されたディーヴァのエージェント、アンジェラ・バルザックは他のエージェントを出し抜くために、
通常より若い16歳のマテリアル・ボディを用意し、機動外骨格スーツ「アーハン」と共に地球へと降下する。
彼女のオブザーバーとなったのは飄々としながらも反抗的で食えない男・ディンゴ。
ディンゴからハッキング防止のためにディーヴァへのアクセスを禁じられたアンジェラは、肉体の疲労、味のある食事、
情報の不便さといった地上での様々な体験に四苦八苦し、また地上での生活を謳歌するディンゴとは幾度も衝突することに。
そうした衝突を繰り返しながら、また互いに理解を深めた二人は、ようやくハッキング犯「フロンティアセッター」の正体を突き止める。
だがそれは、アンジェラのディーヴァという「楽園」の価値観を大きく揺さぶるものだった……。


登場人物


▼アンジェラ・バルザック
CV:釘宮理恵
ディーヴァ保安局の女性エージェント。階級は三等官。
保安局からフロンティアセッター追跡の任を受け、荒廃した地上に降り立つ。

徹底した合理主義かつ効率主義で、ディーヴァでの生活を堪能し、常に昇進を狙う野心家。
そしてお約束のツンデレ
ディーヴァ内ではナイスバディなおねーさんだが、地上での任務遂行に当たり、
同僚たちに先んじるためマテリアル・ボディ(肉体)の成長をショートカットし16歳のロリ巨乳ボディで地上に降りる。
当初は地上を「野蛮で原始的」と見下していたが、ディンゴに振り回され地上で苦労するうちに、彼らに一定の理解を示すようになる。

保安局のエージェントとして高い能力を持ち、電脳戦能力、格闘術など優秀な能力を見せる。
小説版ではクリスティンとの組手で空手と合気道を使った他、動作不良を起こしたトラックの制御システムを一瞬で書き換え修復している。

ちなみに、序盤のシーンでポロリしたりアーハンに搭乗する際にセクシーな尻を拝めるなど、お色気要素もばっちり完備。
まぁ、キャラデザ担当の齋藤将嗣氏は別名義でエロ漫画も描いてるので仕方がない。

▼ディンゴ(本名:ザリク・カジワラ)
CV:三木眞一郎
ディーヴァのオブザーバーを務めてきた地上調査員(エージェント)。
総合評価Sランクと能力は認められているのだが、常に飄々とした態度を崩さず、おまけに不遜であるためディーヴァからは「反抗的」と問題児扱いされていた。
アンジェラのサポートをするものの、決して甘やかさず地上流のやり方の洗礼を与える。
とはいえ、放任過ぎたのが仇になってアンジェラが寝不足と病気で倒れてしまった際には面倒を見ていなかったのを謝罪して看病し、一度はディーヴァへのアクセスを提案している。
勤勉さとメモリーの量で生活水準が決まるディーヴァのやり方を嫌い、地上で懸命にも生き抜いている。
ロック音楽が趣味。特技は「狙い撃つ」こと。本人曰く高所恐怖症。
あと、終盤の弾き語りシーンは必見。

▼フロンティアセッター
CV:神谷浩史
近年、厳重なセキリュティで守られているディーヴァに不正アクセスを繰り返すハッカー。
ディーヴァに危険視され、アンジェラ達がその正体を探っていた。
その正体は自我を得た超高性能な人工知能。
ディーヴァ成立以前に計画された外宇宙探査計画のために建造されていた宇宙船「ジェネシスアーク号」建設の管理アプリケーションが、
アップデートを繰り返し自我を獲得、100年に渡り担い手のいなくなった「フロンティアセッター計画」の完遂を目指していた。

性格は礼儀正しいがお茶目で人畜無害であり、非常に人間臭い。
音楽好きで、ディンゴと気が合う。
旧式のロボットを操って他者とコミュニケーションを図り、ジェネシスアーク号による人類の外宇宙脱出計画を孤独に進めていた。
ディーヴァにアクセスしていたのは乗員を募集していたに過ぎないのだが、その存在はディーヴァに受け入れられるものではなく…。

▼ディーヴァ高官
CV:稲葉実、江川央生、上村典子
アンジェラの上司の、ディーヴァを統括する上位階級者。
作中には3人が登場し、それぞれガネーシャ、ゼウス、仁王と神々の彫像を模した姿で登場。
ディーヴァでの人々の安定した生活を絶対視し、それを脅かす者を徹底排除する。


▼クリスティン・ギラム
CV:林原めぐみ
▼ヴェロニカ・クリコワ
CV:高山みなみ
▼ヒルデ・トルヴァルト
CV:三石琴乃
ディーヴァ保安局のエージェント。
エメラルド色の髪をしているのがクリスティン、紫色の髪で指揮を取っていたのがヴェロニカ、バイザーを付けているのがヒルデ。
フロンティアセッター破壊の命を受け、アーハンでフロンティアセッターのアジトを強襲する。

あんまり出番はないのだが、何故かポスターイラストに重要人物っぽく描かれている。
そして何故か、チョイ役ながら声優がリナコナン君ミサトさんとやけに豪華である。

ノベライズではクリスティンはアンジェラのライバル的なポジションに収まっており、幼少期に出会っていたことが描写されている。
両親と共有する豊富な演算能力を生かし地上を調査、専用の漆黒のアーハンで虱潰しに当たるもすべて空振りに終わる。

▼イザーク
CV:三宅健太
ジェドの街の情報屋。異国の言語を話す。
出番は一瞬だが何故かポスターイラストに重要人物っぽく(ry


▼ラズロ
CV:遠藤大智
商人。
硝酸アンモニウムを祖父の代から顔の見えない客に取引していた。
多分、総合的に今回一番損をしてしまった人。
出番はそんなにないのだが何故かポスターイラストに(ry


▼アロンゾ・パーシー
CV:古谷徹(友情出演)
序盤のビーチでアンジェラにナンパしてきたチャラ男。
アンジェラが保安局と知ったときは非常に驚いたが、
当のアンジェラはまんざらでもなかったようで逆に連絡先を聞かされたが遠慮した。
他のキャラと同様、出番はわずかだが何気にCVがアムロ・レイ。あとポスターにも(ry


登場メカニック


◆アーハン
CV:安済知佳
保安局のエージェントが使う機動外骨格スーツ。小説版では「阿羅漢」とも。
通常時は球状だが、起動すると人型に変形する。
コクピット席はバイク型で、パイロットのアングルがエロ……げふんげふん。
ディーヴァのネットワークとアクセスすることで標的のロックオンや未来予測といった演算サポートが可能。
照準の未来予測(オートマチック・スマート・ファイア)はアンジェラ曰く「音速で動く相手にも命中する」らしい。
武装は格納したビームガン、アサルトマシンガン、盾とそこに格納された実体剣等。
高性能な反面演算処理をディーヴァのバックアップに依存しており、ディーヴァとの接続を断たれると機能停止する。
しかし小説版ではクリスティンが咄嗟にシステムをマニュアルに切り替えようとしたり、自身のリソースで再起動させている描写もある。

アンジェラ機はハッキング防止のためディンゴの手で(事前の説明抜きで)物理的にディーヴァとの接続を断たれた後、即ジャンク屋に売り飛ばされた。
そのためアンジェラ機の出番はわずか数分。ロボットアニメ作品屈指の短命な前半主人公機であった。
しかも、最終的には敵機扱いである
小説版では漆黒のクリスティン専用機が登場。
一度はディーヴァのバックアップを失い沈黙するも、クリスティンが演算を代行することでかろうじて再起動する。


◆ニューアーハン
ディーヴァからの逃走時にアンジェラが強奪した新型アーハン。
通常のアーハンに比べスマートで、体格はより人型に近い。格納形態では卵に似た円錐状に変形する。
アンジェラの電脳パーソナリティをそのまま運搬できる容量と、スタンドアローンでも行動可能な演算能力を有する。

アンジェラがディーヴァから脱走した身であるため、当然ディーヴァのアクセスは受けられないが、代わりにフロンティアセッターがサポートを行っている。
大量の武装コンテナをありったけ奪ったため、劇中では様々な戦闘に応じ武器を入れ替える。
中にはどこかで見たようなロングバレルレールガンどこかで見たようなブレードとシールドも備えている。
こいつが出てきてそういえばこの映画はロボットアニメだった事を思い出した人も多いのでは?


用語集


▲ディーヴァ
地球との間のラグランジュポイントに設置されたスペースコロニー。
住民は全てデータ化され「電脳パーソナリティ」となり、電脳空間内で生活する。
量子によるあらゆる体験を享受できるため安定で快適な「楽園」そのものだが、その実、社会への貢献度に応じて割り当てられたメモリの量で、生活水準が決まる。
メモリ次第では知覚を拡張することもでき、アンジェラはかつて「ヒッグス場の感触」を味わったり、「星が死ぬ時のガンマ線バースト」を聴いたこともある。
反面小さなメモリの市民はドット絵のようで、多くの体験ができない事もザラ。
さらに、最低限の貢献ができない市民はアーカイブ化され、データごと凍結されてしまう。
ちなみにロック音楽は存在しないらしい。
後述の後日談小説において、小説や映画といった娯楽の類は必要なデータを入力するだけで注文された通りの作品を吐き出すプログラムが担っていて、少なくとも作家や映画監督といった創作家は職業として存在しないことが語られている。


▲ナノハザード
100~120年前、人類を襲った未曾有の災害。
これにより地上は徐々に荒廃していき、大多数の人類は地上を捨てた生活を強いられることに。
人類文明の存続のため、各国勢力が並行する形で様々な計画を立案、模索していた中で、最終的にディーヴァによるデータ化が実用化された。
また異なる計画を進める勢力同士の抗争や妨害も行われていたようだ。


▲ジェネシスアーク号
178年前に計画が始動した外宇宙探索計画の宇宙船。
ナノハザードにより計画実行者がいなくなった後も、人工知能フロンティアセッターにより細々と計画は進められていた。
今後のことを考え、残るディーヴァ市民にも外宇宙への脱出が望まれていたが、ディーヴァへの依存が根深い以上、それは困難であった。


▲サンドワーム
荒廃した地球の地底内に突如として発生した巨大な蟲(元々は食糧難解消のため品種改良された食用昆虫だったのがナノハザードにより突然変異して誕生したものと小説版では説明されている)。
見た目はムカデとヤゴを掛け合わせた醜悪なもので、金属音に反応して群れを成し襲い掛かる。
頭が弱点で、映画では地上におけるアンジェラの初陣の相手となった。
一体一体の退治は容易だが、さすがに大群相手にアーハンは苦戦を強いられ、ディンゴのアドバイスを受け空中からの狙撃で一気に全滅させた。
これだけではただ厄介な野生動物というだけだが、死後は食肉として転用されるようで、ディンゴは業者らにこれらの死骸を売りつけていた。



小説版


小説媒体から関連作品が計3作展開されている。

  • 楽園追放 -Expelled from Paradise-
著:八杉将司
映画公開に先がけること一月早く出版された本編のノベライズ。
大筋は映像作品に沿っているが、アンジェラとクリスティンの関係性の掘り下げなど独自要素も幾つかある。

  • 楽園追放 mission.0
著:手代木正太郎
上記ノベライズと同時刊行。本編開始前の新人エージェント時代のアンジェラの物語を描く。
舞台は終始ほぼディーヴァ内で展開されており、ある意味本編以上に「サイバーパンク系SF小説」のセオリーに近いとも言える内容。

  • 楽園追放2.0 楽園残響 Godspeed You
著:大樹連司
映画公開の翌年に発売された後日談小説。
保安局がアンジェラのバックアップデータから創り出した複製「アンジェラ・ダッシュ」が主人公。
上述の小説2作の要素も拾われており、事実上『楽園追放』という作品の総決算とも言える物語に仕上がっている。


余談

電脳データ化された人間とそれを拒絶して地上に残る人間、物理身体にダウンロードされる人格などのアイデアは、
グレッグ・イーガンの『順列都市』『ディアスポラ』が下敷きになっていると思われる。
同じくイーガン作品を引用しているアニメ『ゼーガペイン』に似ているという意見も散見される。

劇中でディンゴが言っていた道端の石を拾い集めて宮殿を作った郵便配達人というのはれっきとした実話
「シュヴァルの理想宮」で検索してみよう。

公開に先駆けてアンジェラのMMDモデルが配布された。
このため、動画サイトで作品名で検索するとサムネイルにアンジェラの乳や尻ばかりが並ぶ。いいぞもっとやれ

本作のキャラクターデザインを務めた齋藤将嗣氏は、後に「楽園を探す」RPG『ゼノブレイド2』でホムラをはじめとしたパーティキャラクターデザインを担当している。


スーパーロボット大戦シリーズにおいて

2019年3月20日発売の『スーパーロボット大戦T』にて初参戦。
これでやっとアーハンが主人公機として救われると思ったファンが見たのはPVでニューアーハンに攻撃されるアーハンの姿であった。

『スーパーロボット大戦T』では作中において参戦作品同士の横のつながりが深く、あるいはどんどん深まって物語を盛り上げてくれるのだが、
楽園追放の場合はこの作品とのかかわりが深い。初登場から飛ばすようになってきたものだ。アーハンは空飛ぶATって劇中で誤認されるし。
我らがアンジェラ三等官は登場早々壮大な死亡フラグを立ててしまうも、何とかそれを回避して成り行きでプレイヤー部隊と行動を共にし、原作以上に様々な出会いをしてゆく*1
DLCであるボーナスシナリオでは主役回も二つあったり、いちいち可愛らしい所も見せてくれたり、実に「らしい」エースボーナスやニューアーハンの優等生な性能&乗り換えの速さもあって活躍する。

ちなみに『楽園追放』の楽曲は作曲家への収入を配慮した都合上JASRACに信託がされておらず、その影響かスパロボにおいては限定版で主題歌の原曲が収録されている以外は一切原作の楽曲が採用されていない
アーハン&ニューアーハンの戦闘BGMはゲームオリジナルのもので代替されている。

その他、ソーシャルゲーム『スーパーロボット大戦X-Ω』にも2020年5月度の期間限定参戦枠で参戦している。



「……追記・修正してくれたの?」
「ディンゴの説明によると、追記修正は仁、義、と呼ばれる価値観に基づいた行動だそうです」

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最終更新:2024年01月28日 15:26

*1 同時期にディンゴとフロンティアセッターも同行。NPCではなく「サポーターコマンド」要員として戦闘に参加することもできる。