槙島聖護

登録日:2014/11/15 (土) 23:10:18
更新日:2024/02/25 Sun 16:39:52
所要時間:約 12 分で読めます




きっと彼らは一目見て分かったはずだ。
二人は初めて出会うより以前からああなる運命だったのだろう。
すれ違っていたわけでもない。彼らは誰よりも互いを深く理解し、相手の事だけを見つめていた。

「お前は…狡噛慎也だ」

「お前は…槙島聖護だ」



※この項目は『PSYCHO-PASS』のネタバレを含みます





槙島(まきしま)聖護(しょうご)とは『PSYCHO-PASS』に登場する人物。
同作1期の事実上のラスボス

声 – 櫻井孝宏

銀または灰白色系の長髪をしている男性。
常に微笑を浮かべ、穏やかな態度をとっているが、その本性は極めて冷酷。
1期における数々の事件を起こした犯人の裏で糸を引き、暗躍していた人物。
狡噛慎也が執行官に降格するきっかけになった「標本事件」の裏でも暗躍しており、狡噛にとって因縁の相手でもある。

シビュラシステムに対して否定的な思想を持っており、人間は自らの意志で選択・行動するからこそ価値があると考えている。
犯罪者の犯行に協力や助勢を行っていた目的はシビュラシステムの下で自らの意思で動く人間の魂の輝きをみること。
つまりと同じように人間観察。やっていることはさらにえげつないが。

カリスマ性を持ち、狡噛曰く「他人の精神を支配し影響を与え、まるで音楽を指揮するように犯罪を重ねていく男」
社会制度から逸脱した、言うなれば本来の意味の「サイコパス」じみた嗜好を持つ人物に興味を抱いて接触し、
彼らがその異常性を遺憾なく発揮できるよう協力・援助するため、特に彼に助けられた者からは慕われるが、
何らかの事情で彼らが凡庸な面を見せたりすると途端に興味を失い、協力を打ち切って見捨てる。

非常に頭脳明晰であるほか身体能力も高く、凶器を持った人間3人を瞬殺するなどしているほか、狡噛との肉弾戦にも勝利している。
得物を使う場合には剃刀を好んで用いる。

哲学書や戯曲などの本の引用を交えて会話をする癖がある。
彼のセリフをその辺りの背景を知らずに厨二扱いすると、かえって恥をかくかもしれないので注意。
ちなみに電子書籍より紙の本派。


彼の特筆すべき特徴は『免罪体質』であるということ。
「免罪体質者」とは約200万人に1人の割合で存在すると予測されている特異体質者であり、
本来なら犯罪係数が上がるような行為をしても犯罪係数が上がらない体質を持つ者のことで、
その体質から、例え目の前で彼らが人を殺そうとドミネーターによる執行は不可能。
そんな「免罪体質者」たる彼の犯罪係数は、人を殺す直前であっても「0」。色相はクリアホワイトであった。
彼の行動の原点はここからきていると思われる。




ストーリー中は絶えず陰で暗躍してきたが、王陵璃華子の事件で指揮を執っていた狡噛慎也に興味を持ち、
狡噛と、囮として朱の友人である舩原ゆきを拉致、泉宮寺と狡噛の戦闘を観察した。
その後、追ってきた朱と対峙し、人質としたゆきの首元に刃物を突き付けながらドミネーターではなく猟銃で自分を止めるように迫るが、
朱がそれを出来ないと判断すると、その目の前で躊躇なくゆきの首を裂いて殺害した。

しかし、この一件によって面が割れてしまうこととなった。


そしてついに自ら動くことを決めると、シビュラを無効化するヘルメットを市民にばらまいて暴徒化させると同時に真偽織り交ぜた情報を使って市街を混乱に陥れ、
公安局がその対処にかかりきりになった隙にシビュラの中心部として目をつけていた厚生省ノナタワーを襲撃する。
そして自身を囮に上層階へ向かい追ってきた狡噛と交戦し、圧倒的な実力差で狡噛を追い詰めてトドメを刺そうとするが、朱に不意を突かれて殴り倒され、身柄を確保された。


身柄を輸送される最中に禾生の姿をした、かつての仲間であり「標本事件」の犯人、藤間幸三郎の面会を受け、シビュラシステムの真実を告げられる。
そして藤間からシビュラへ加わるように勧誘されるが、槙島はスウィフトの「ガリヴァー旅行記」に出てくるバルニバービの医者を例えに出しながら皮肉ると、
「審判やレフェリーは趣味じゃない」と言ってこれを拒否、藤間幸三郎を殺害して行方をくらます。

次は日本の食料自給を壊滅させるバイオテロの計画を立てセンターを襲撃。
一係と交戦、征陸を爆弾で死に至らしめ、宜野座に重傷を負わす。
その後狡噛と2度目の交戦をし、ナイフで傷を負わされ、トラックで脱出しようとするも朱に阻止される。
この時「そうか…君は…」と意味深な言葉を残している。

最終的には麦畑の中で狡噛に追いつかれ、リボルバーによって射殺された。


狡噛は槙島に対して、「槙島が自分が特異体質だと知ったとき、疎外感を覚えたことが彼の行動に起因しているのではないか」と分析しており、
狡噛から自身の孤独を指摘されると、「この社会に孤独でない人間などいない」と言葉を返すが、自分が孤独であることは否定しなかった。
しかし、真実がどうであったかは不明。

彼の最後の顔はどこか満足げな、穏やかな微笑みであった。




◆彼が関わった主な犯罪者


  • 金原祐治
声 – 鶴岡聡
ドローン製造工場の作業員。
同僚達からの職場いじめを1年間も受け続け、その復讐心から、匿名で提供されたプログラムを使用してドローンを操り、事故を装って同僚3名を殺害した。
狡噛の陽動にはまってボロを出し、執行・確保された。
プログラムを提供したのは槙島であったことが示唆されているが、匿名で接していたためか、槙島は彼が確保されても放っておいている。

  • 御堂将剛
声 – 水島大宙
ソーシャル・ネットワーク上の人気アイドルアバターを崇拝しており、言動を完璧にトレースすることができることから槙島に興味を持たれた。
槙島の手を借り、自分の意にそぐわない行動をした人気アバターの保有者を殺害、成り代わっていた。
その事を公安に突き止められ、槙島も彼への興味を失ったことから見捨てられ、宜野座達に執行されて死亡した。
自分が乗っ取ったアバターを「イデアに近い存在」と思っていて、そのアバターを使って人類を導くという誇大妄想に取りつかれていた。
ノベル版ではそのことについて填島から「 自分の孤独を強化してるだけ 」と冷たい言葉を投げられた。

  • 王陵璃華子
声 – 坂本真綾
高名な芸術家である王陵牢一の娘で私立桜霜学園に在籍する女子高生。
槙島と狡噛を結び付けるきっかけとなった人物。
自分と同じ学園に通う女子生徒を殺害し、槙島の協力を得て彼女達の死体にプラスティネーション処理を施し、
オブジェに加工して公園のような人の目につきやすいところへ晒すという猟奇殺人事件を起こす。
狡噛に真相を見抜かれ、執行寸前に逃亡したものの、槙島は既に狡噛へと興味の対象を移していたためか彼女に対する興味を失っており、
槙島の手引きで泉宮時に『獲物』として提供され、槙島が自分を切り捨てたと察した時には既に泉宮寺と彼のドローンに追い詰められていたが、
猟銃の銃口を眼前に突き付けられても気丈な態度を捨てず、泉宮寺も槙島にいずれ切り捨てられると皮肉交じりに警告したところで射殺された。
その後、遺骨は彼の嗜好品であるパイプへ加工された。

なお、新編集版では実際の殺人事件により彼女のエピソードがカットされたため、槙島と狡噛の因縁が分かりづらくなっている。
(ニコニコ一挙放送及びDVD/BDには収録)

  • 泉宮寺豊久
声 – 長克巳
帝都ネットワーク建設の会長で、槙島に資金や技術を提供している110歳の老人。
全身サイボーグ化のパイオニアとして脳と神経細胞以外の全身をサイボーグ化している。
他者の死に自らの生を感じており、猟銃や罠、猟犬型のドローンを使役しながら槙島から提供された人間を狩猟と称して狩り、
犠牲者の骨を材料に使ったパイプを作製して収集・使用して愉しんでいた。
槙島と共謀して狡噛を狩りの対象として追い詰めていったが、逆に狡噛の奇策にハマって執行された。
彼は自分を「槙島と同じ楽しむ側のプレイヤー」と語っていたが、槙島が彼のことをどう思っていたのかは不明。

  • チェ・グソン
声 – 増谷康紀
槙島の片腕で腕利きのハッカー。槙島と共に多くの事件の陰で暗躍していたほか、シビュラシステムの秘密を何年間にも渡り探っていた。
槙島と共にノナタワーを襲撃、その地下にあったシビュラシステムの根幹を確認するも、直後に禾生と対峙し、ドミネーターで執行されて死亡した。
ちなみに紙の本よりも電子書籍派。

  • 藤間幸三郎
声 – 鈴村健一(ドラマCD)、榊原良子(禾生壌宗)
3年前の標本事件の犯人で監視官時代の狡噛の部下であった佐々山をはじめ、多くの人間を殺害、プラスティネーション処理を施し、オブジェに加工していた。
槙島からは技術提供を受けていた。
刑事課二係に確保されていたが、免罪体質者のためにシビュラシステムの一員に加わっていた。
禾生としての義体を使用し、確保されて輸送中の槙島の前に現れ、シビュラシステムの秘密を明かすと同時に勧誘するが槙島に拒否され、その際に義体ごと破壊される形で殺害された。





◆主なセリフ


「信じられないかもしれないが、僕は君たちのことが好きだ。
 昔からよく言うだろう?愛の反対は憎悪ではなく無関心だ。興味がないのならわざわざ殺したり痛めつけたりはしないんだ」


「そろそろ底が見えてきた。何者としても振る舞うことのできる君自身が、結局のところは何者でもなかった。
 君の核となる個性は、無だ。空っぽだ。君には君としての顔がない。
 のっぺらぼうだからこそ、どのような仮面でも被ることができたというだけだ」


「美しい花もいずれは枯れて散る。それが命あるものすべての宿命だ。ならいっそ、咲き誇る姿のままに時を止めてしまいたいと思うのは、無理もない話だね」


「さあ狩りが始まるぞ。白々開けの朝。野原は馨しき香り。森の緑は濃い。ここで猟犬を解き放ち、声高く吠えさせよう。
 真夜中になるとここは、何千もの悪魔やシューシューと威嚇の音を立てる蛇、何万もの子鬼や体の膨れ上がったヒキガエルどもが集まって、身の毛もよだつ狂乱の叫び声を上げる」
(シェイクスピア「タイタス・アンドロニカス」の引用)


「君たちは何を基準に善と悪をより分けているのだろうね」


「僕は人の魂の輝きが見たい。それが本当に尊いものだと確かめたい。
 だが己の意思を問うこともせず、ただシビュラの神託のままに生きる人間たちに、はたして価値はあるんだろうか?」


「本はね、ただ文字を読むんじゃない。自分の感覚を調整するためのツールでもある。
 調子が悪いときに、本の内容が頭に入ってこないことがある。そういうときは、何が読書の邪魔をしているか考える。
 調子が悪いときでも、すらすらと内容が入ってくる本もある。なぜそうなるかを考える。
 精神的な調律、チューニングみたいなものかな。調律する際、大事なのは紙に指で触れている感覚や、本をパラパラとめくったとき瞬間的に脳の神経を刺激するものだ」


「正義は議論の種になるが、力は非常にはっきりしている。そのため人は正義に力を与える事ができなかった」(パスカル「パンセ」の引用)


「僕はね、この人生というゲームを心底愛しているんだよ。だから、どこまでもプレイヤーとして参加し続けたい」


「天の国は次のようにたとえられる。ある人が良い種を畑に蒔いた。人々が眠っている間に、敵が来て、麦の中に毒麦を蒔いて行った」(マタイによる福音書の引用)


「この社会に孤独でない人間など誰がいる?」


「そうか…君は…」




誰だって孤独だ。誰だって虚ろだ。
もう、だれも他人を必要としない。
どんな才能もスペアが見つかる。どんな関係でも取り替えが利く。

そんな世界に、飽きていた。

でも、どうしてかな?
僕が君以外の誰かに殺される光景は、どうしても思い浮かばないんだ。


「なあ、どうなんだ?狡噛、君はこの後、僕の代わりを見つけられるのか……?」



「いや、もう二度とごめんだね。」



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最終更新:2024年02月25日 16:39