ティーガーII(戦車)

登録日:2014/11/07 (金) 02:48:22
更新日:2024/02/22 Thu 21:42:03
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ナチスドイツが最後に実戦配備した戦車、それこそがVI号戦車B型・ティーガーII。
連合軍が「キングタイガー」と呼び恐れた伝説の重戦車である。
あまりにかっちょいい異名だったためにドイツ軍に逆輸入され「ケーニヒスティーガー(王虎)」と名乗るようになった。


外観・設計

外観はT-34の影響を受け傾斜装甲を取り入れているので、パンターの拡大版といった印象を受ける。
幻に終わったパンターIIと部品の互換性を図られた事実もあるが、足回りはティーガーIの発展系であり、ぶっちゃけ両者のいいとこ取り。
拡大版だけあって重量はさらに増え、70トン近くにまでなった。もはや移動要塞…ロシア兵は姿を見ただけで逃げたとか。

性能

攻撃力

ティーガーIと同じく8.8cm砲。
しかし砲身長の延長(56口径→71口径)と装薬量の増大で、初速と貫徹力が大きく向上した。
有効射程内でこの砲に撃たれたら、ほぼ全ての連合軍戦車がブチ抜かれることになるほど圧倒的な威力を誇る。
なんと2,000m離れていても132mm(弾種:Pzgr.39/43 APCBC-HE&装甲板傾斜角:30度)の装甲を貫通するのだから恐ろしい。
硬芯徹甲弾のPzgr.40/43は同条件で153mmだったが、希少資源を使用するために支給される機会は滅多に無かった。
ソ連軍が鹵獲車両で実施した射撃試験では距離400mにおいて、ティーガーIIの砲塔前面(180mm傾斜角10°)と後面(80mm傾斜角20°)の両方を貫通、
車体前面(150mm傾斜角50°)の装甲板は貫通こそしなかったもののIS-2の122mm徹甲榴弾と同様に内面剥離現象を発生させている。
後に105口径8.8cm砲や68口径10.5cm砲へ強化する計画もあったが、どちらもペーパープランで終わった。

初期に作られた50台程度には、ティーガーIの時と同様、採用にあたってのライバル機だったポルシェ社製「VK45.02(P)」用の砲塔が使用されている(砲塔自体の設計はクルップ社が担当)。
もともとは電気で走る車体と共に開発されていたが、その車体が全然出来ない。だが砲塔だけはどんどん出来る。
作っちゃったものはしょうがないので、別会社(ヘンシェル社)が開発中だった車体に乗せちゃった。
それがティーガーIIの始まりである。
弾が当たったら車体に飛び込むようなデザインが悪かったのか、生産性が悪そうな複雑なデザインが悪かったのか、
砲塔の開発はすぐにヘンシェル社に交代させられた。ちなみにヘンシェル社はもともと鉄道車両関係の会社だった。
現場では「ポルシェ?ヘンシェル?知るかよ」という認識だった。だが砲弾が違ったので混乱したらしい。


防御力

一番危ない砲塔正面は、傾斜角10度とほぼ垂直に近い装甲だが厚さ180mmもあり、並大抵の通常徹甲弾では貫通困難。
車体正面も厚さ150mmでこっちは傾斜角50度で十分斜めになっており、実質的な防御力は砲塔正面を上回っている。
つまりティーガーIIを正面から撃破するのは至難の業で、実戦の記録では正面装甲を貫通した事例はない。
ただしソ連軍が鹵獲車両で実施した射撃試験では、自身の戦車砲や大口径加農砲の徹甲榴弾で撃たれた場合に、
砲塔前面は貫通、車体前面も不貫通ながら装甲板内面剥離で戦闘能力喪失という結果を残している。
なおカタログスペック上ではシャーマン・ファイアフライが搭載する17ポンド砲のAPDSや、
M36GMCの90mm戦車砲M3のHVAP等でも砲塔正面は貫徹可能であり、決して不可能だった訳ではない。

普通弱いとされる側面や後面についても80mmの装甲厚を確保しており、並の戦車の正面装甲レベル。
ティーガーIと同じ厚さだが、車体程ではないものの傾斜していたために耐弾性が向上している(垂直換算で92mm相当)。
T-34の41.5口径76.2mm砲やM4の37.5口径75mm砲から通常徹甲弾で撃たれても殆ど抜かれなくなったが、
T-34-85の51.6/54.6口径85mm砲、M4の52口径76.2mm砲、A34コメットの77mm砲へ対しては防御力不足だった。
なお41.5口径76.2mm砲については、ティーガーI対策で導入されたBR-350PやBR-354Pを400~500m以内で使用すれば貫通可能である。

さすがに上面は40mmと薄いが、それでもこの厚さだと敵機の機銃や曲射弾道の大口径榴弾くらいじゃ撃破できない。
が、衝撃までは消せるはずがなく、部品が外れ、乗員は打ち倒された。

機動力

無敵に近い攻防性能を与えられた代償として70トンもの超重量となってしまった車体を動かしたのは、
パンターと同じマイバッハ社製のV型12気筒液冷ガソリン・エンジンであるHL230P30(700hp/3,000rpm)である。
その結果、エンジンは常にフルパワー状態で、それでも出力不足であるため機動力は良好とは言い難かった
(最高速度41.5km/h、最大巡航速度38km/h、平均不整地速度15~20km/h、路上航続距離170km、不整地航続距離120km)。
当然いつも全力のエンジンは無理しまくっており頻繁に故障する。
ティーガー以上の重量を支える足回りもまた頻繁に故障する。
とにかくクソ遅いくせにやたらめったら故障する本車は、作戦のお荷物になることしばしばだった。
ついでにいつもフルパワーということは燃費も最悪であり、補給面の負担も最悪。リッター162(メートル)
ちなみにペープープランにはパンターに試験搭載されたGT101ガスタービン・エンジン(1,150hp/14,000rpm)へ換装する案もあったそうだが、
燃料消費量は従来搭載していたガソリン・エンジンの倍であり、仮に実用化を果たしても更に燃費が悪化しただろうことには想像に難くない。
ちなみに同エンジンは当初ティーガーI用として着手されたが、サイズ上の問題でパンター用に変更された経緯がある。
設計段階に留まったGT102やGT102Ausf.2ではGT101よりもコンパクト化、GT102に熱交換器を追加したGT103では燃費が改善される予定だったという。

活躍

初陣はノルマンディー上陸作戦で、12両が参戦。
その後重戦車大隊に順次配備され、バルジの戦いや春の目覚め作戦といった大戦終盤の戦いに姿を見せるようになる。
しかしティーガーIでさえ1,400両弱が配備されたのに、ティーガーIIの500両弱は如何にも少なく、戦局を変えるまでの効果はなかった
(1500両以上発注されていたが、生産スケジュールの遅延や戦略爆撃の影響で、試作を含めても492両に留まった)。
そもそもただ移動するだけでも難儀なこの戦車は、泥に足を取られて動けなくなり放棄されるといった「戦闘以外での損耗」が極端に多く、
十分な働きができないまま無為に数を減らしてしまった。
しかしいざ戦闘となればその能力はまさに恐るべきもので、敵戦車の2倍から3倍という一方的なアウトレンジ攻撃と、
一発の貫通も許さない強固な防御力で無敵の名を欲しいままにした。

派生型

ヤークトティーガー

このままでも最強のティーガーIIに、さらに強力な55口径12.8cm砲を積んだ駆逐戦車型
(射程1kmで弾着角60°の場合、71口径8.8cm砲の165mmに対して、55口径12.8cm砲は200mm貫徹可能とされる)。
そこまでする意味あるのか…?
とはいえ、ソ連が初速約1,000m/sの8.8cm Pzgr 39/43(APCBC-HE)すら耐えうる装甲厚だったIS-3及びIS-4重戦車、
後にG1MBT(戦後第一世代主力戦車)に分類されるT-54中戦車を当時開発してた事を考慮するとそうとも言えなかったりする。
ちなみにティーガーIIを更に上回る大火力は、なんと建物ごしにM4中戦車シャーマンをぶち抜いて撃破した記録が残されている程。
装甲も最大250mmと狂った仕様。カタログスペック上は、英17ポンド砲のAPDS、米90mm砲M3のHVAPも通用しない。
武装強化策として66口径12.8cm砲や74口径12.8cm砲(初速1,100m/s)への変更も検討されたが、こちらもペーパープランに終わった。
なお55口径12.8cm砲は調達が難しかったため、ティーガーIIと同じ71口径8.8cm砲で代用するプランも存在した。

....だが、というか、やっぱりというか重すぎた。
その重さは足回りやエンジンに無理をさせ、すぐに壊れた。
壊れたら壊れたで回収するための機材がないため、壊れたら自爆処理ばかりだった。
車体は組みあがるとほぼワンパーツだったためでかくて重くて、動かないどころか作れない戦車でもあった。


登場作品

そんな男のロマンがミッチミチに詰まった「第二次大戦最強の戦車」ことティーガーIIだが、映画やアニメなどの創作作品では微妙に扱いが悪いことが多い
やっぱり「ドイツ代表!」の「強い!」「戦車!」としては先輩のティーガーIの、「最硬!」「最強!」「最重!」としては後輩のマウスの印象が強すぎるせいだろうか。

映画


「バルジの大作戦」

非常に珍しい「キングタイガー」が活躍する映画。
主人公属するアメリカ軍を散々に蹴散らしながらも、ラストにはガソリン入りドラム缶をぶつけられて次々撃破されるというクッソ情けない悲壮な姿には、ドイツ軍ファンならだれもが涙を濡らし……?
……あれ、でもこの戦車なんだかティーガーIIにしては砲塔が丸っこいし、なんだか車体もヌルっと曲面だし………これってもしかして……
……まあようするにアメリカ陸軍の戦車であるM47パットンが(無改造で)「キングタイガー」役を務めているということ

アニメ

ガールズ&パンツァー

アニメ本編でのラスボスにあたる黒森峰女学園の副隊長、逸見エリカが搭乗する。
八九中戦車(舗装路で最大25km/h)でも乗用車並みの速度でぶっ飛ばせてしまうガルパン戦車には珍しく、悪路で脱輪する描写がある。

ゲーム

World of Tanks

ドイツのtier(戦車のレベル)8、重戦車枠で登場。
ポルシェ砲塔とヘンシェル砲塔が両方用意されているという心憎い仕様に加え、なんと計画案に過ぎなかった68口径10.5cm砲まで装備可能。
……なのだが、ゲーム内性能的には悲しいことに「雑魚戦車」の一言に尽きる。
というのもこのゲーム、時代ではなく性能で戦車がランク分けされているため、史実では遥かに新型となるIS-3やカーナヴォンなどが同格ライバルになってしまっているのだ。
砲塔正面装甲が250mmとか300mm、下手すれば400mmとか越えちゃうようなこのtierにおいて、ティーガーIIの185mmはあまりに貧相。
そして当然というか機動性は劣悪、火力も特に優れているというわけでなく、総じて「凡庸」としか言えない戦車となってしまっている。
しかし知名度のせいか初心者プレイヤーからの人気だけは高く、劣悪な性能+初心者の未熟な技量の合体事故が多発する結果となっている。
後のアップデートで砲塔正面装甲が245mm、金弾のAPCRは貫通285mmで360dmgと、高貫通高初速高精度を活かせばなんとか戦えるようにはなった。

ライトノベル

ゼロの使い魔

13巻から、地球から召喚されてロマリアの地下墓地に保管されていた兵器のひとつとして登場。
作中ではタイガー戦車としか呼ばれないが、挿絵ではどう見てもティーガーⅡ。
ガリア軍の侵略に対抗するため持ち出されて大暴れする。


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