魔法(円環少女)

登録日:2014/10/05 (日) 20:47:00
更新日:2022/02/02 Wed 13:21:08
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今度の、びっくりどっきり魔法人間は、こいつか……




本項ではライトノベル円環少女」内における魔法について説明する。

概要

魔法世界の住人たる魔法使い達が使う、観測する事を起点に自然秩序(物理法則)を意志に従わせる技術の総称。
まず前提として、この世界には我々の住む地球とは違う異世界が多数存在している。魔法世界や三千大千世界と呼ばれるこれらの世界は、我々の住む地球と違いそれぞれの世界が何らかの自然秩序の歪みを抱えている。
例えば、円環世界と呼ばれる世界では振動や回転のような周期のある運動や自然原則が安定していない。その為、揺れるブランコが急に高く跳ね上がる事や、回る車輪が急に止まる事も少なくない。
そしてこれらの歪んだ自然秩序は、その世界に住む人間の観測により歪みの方向性が決まる。そんな自然秩序の歪みにつけこんで、自然秩序を自らの思うさまに歪ませる技術こそが魔法である。

魔法の発動は観測者たる魔法使いの観測を基点とする。すべての魔法使いは自らの故郷の魔法法則を引き連れており、観測することにより今いる世界の法則を自身の故郷たる魔法世界の法則に歪ませる事が出来る。それ故、故郷以外の世界においても故郷の世界の魔法を使用出来るが、逆に言えば故郷以外の魔法を使用することは出来ない。
つまり円環世界に生まれついた以上、その人物は生得的に円環魔導師であり、円環魔導師以外にはどう努力しても成ることが出来ない。

魔法使いはその実力から普通の魔導師、高位魔導師、超高位魔導師に分類され、この三つのランクの間には明確な断崖が存在しており、端的に言えば普通の魔導師が百人集まったところで高位魔導師には勝てないし、同じように高位魔導師が百人集まったところで超高位魔導師には勝てない。
また、これらの他に、「その世界における」最高の魔導師は最高位魔導師と呼ばれており、最高位魔導師ともなればその実力は文字通り「ひとつの世界」と戦うに等しいほどであると言われている。

魔法世界とについて



私たちじゃない。魔法使いが、気安くつるもうとするな。アタシはアタシ、アンタはアンタだ

魔法世界はそのそれぞれの世界が何らかの歪みを抱えているが、必然として自然秩序の歪んだ状態では人間が生存することもままならない。例えば、円環世界においては生命すらも一つの周期運動であるとされているが、この場合、周期運動の安定しない円環世界では生命が生存することすら出来ない。この歪んだ自然秩序を調整し、安定させるものが神と呼ばれる存在である。
神と魔法は一対のものであり、全ての魔法世界には魔法世界毎に違う「自然秩序の歪み利用する術」=魔法と「自然秩序を調整する存在」=神が存在する。

<<地獄>>と<<悪鬼>>



幾万の魔法世界でただひとつ、魔法に見捨てられた世界。ここは<<地獄>>――

魔法世界の住人たる魔法使い達は、我々の住まうこの世界を<<地獄>>と呼び、その住人たる我々を<<悪鬼>>と呼ぶ。その理由は主に二つある。
まず、我々の住むこの世界――<<地獄>>が自然秩序の安定した世界であること。
前述の通り、<<地獄>>を除くすべての魔法世界は例外なく自然秩序に歪みを抱えているが、<<地獄>>には歪みがなく、それ故に歪みを利用した術である魔法も、歪みを矯正する神も存在しない。
そしてに<<地獄>>に住まう我々が、感覚しただけで魔法を消去する能力――魔法消去能力を持つこと。
魔法消去能力についての詳しい説明は本項目に譲るとするが、強力な魔法使いは魔法にこそ自己のアイデンティティを見出している者が多く、感覚するだけで良きも悪しきも区別せず全ての魔法を燃やし尽くしてしまう魔法消去の能力を非常に嫌っている。
この二つの理由が故に<<神>>にも<<魔法>>にも見捨てられたこの世界を<<地獄>>、その<<地獄>>の住人にして魔法を滅ぼす我らを<<悪鬼>>と呼ぶのである。

ただ、<<地獄>>の「自然秩序が安定している」という特質に関しては魔法使いに対してもメリットがあり、完璧な自然秩序を持つ<<地獄>>では魔法による現象も安定しており、高度で精密な結果が必要な魔法研究にはこの<<地獄>>はうってつけの場所であるとされている。
反面、魔法を消去するだけの<<悪鬼>>に関しては本当に嫌われており、なまはげよろしく「悪いことをしたら悪鬼が来るぞ」などと子供の躾の文句に使われる程である。

とはいえ、<<悪鬼>>達の魔法消去も完璧ではなく、あまりに大出力の魔法や、性質的に魔法消去に強い魔法の場合、魔法消去を越え<<悪鬼>>達に何らかの影響を与える事がある。
これらの奇跡のかけらを感じた<<悪鬼>>たちにより記録として残された魔導師達の行いが、今日まで残る神話やおとぎ話であり、太古の魔法使い達は神の祖形とされている。

魔法の分類

魔法は大まかに「魔力型魔術」と「索引型魔術」二つと、地獄特有の魔法「カオティック・ファクター」に分類される。<<地獄>>以外の魔法世界に存在する魔法は全てが魔力型魔術か索引型魔術のどちらかに属しており、カオティック・ファクターはそのどちらにも所属していない、本来ありえない「<<地獄>>の魔法」である。本パートではそれぞれの魔法について説明する。

魔力型魔術

自然秩序の乱れを<<魔力>>として観測し、それをとっかかりに自然を操作する魔法。
わかり易い「魔法」であり、自身の引き連れた自然秩序の歪みを起点に、世界に対し自身の意志を押し付ける事で自然を思うさまに操る事が出来る。
魔力型魔術には自然のものを操る魔法が多く、比較的魔法消去に強く、エネルギーも大きい事が利点。反面、精緻な制御が難しく、円環大系においては「周期運動を操る」というように「それのみ」に特化した魔法であるため出来ることと出来ないことの差がはっきりしているため、索引型魔術程の万能性は無い。

索引型魔術

あるものとあるものが同じである根拠、真実有たる形相(エートス)が観測出来る世界で発達した魔法。
索引型魔術の魔法使い達は<<索引>>を用いて、まるで辞書を引くように世界の構成要素を実体化させる。例えば、黄金の<<索引>>を持つ索引型魔術の魔法使いが居ればその人物は索引を引く事で無限に世界から黄金を引き出す事が可能となる。
この<<索引>>を引く発動キーとなるものが魔法世界毎に違っており、例えば「音」が発動キーである「神音大系」と呼ばれる魔法においては、それぞれのものを表す索引に対応する音を鳴らし、その音を自身が観測する事により世界から「そのもの」を引き出す事が出来るのである。
この発動キーとなるものは<<魔法媒介>>と呼ばれており、媒介がそのまま引き出される真実有と直結しているため、理論上は文字通り「万物」を引き出す事が可能な魔法であるものの、<<魔法媒質>>がどのものを引き出すかは基本的に試してみないと解らないため、全ての<<魔法媒質>>を知りえない限り万能とは程遠い。
また、索引型魔術師は自身が観測しただけで魔法を引き出してしまうため、暴発しやすい事が欠点として挙げられる。例えば、神音大系の場合、<<地獄>>のアーティストによる歌のようなありふれたものであっても神音魔道士が観測した時点で<<索引>>を引いてしまうため、自らの意志に依らず魔法を発動してしまう事もあったりする。

混沌因子(カオティック・ファクター)

地獄にのみ存在する、魔力型にも索引型にも分類できない特殊な魔法の総称。
本来魔法が存在しないはずの<<地獄>>において、然し事実として存在する例外中の例外。独自のルールで発動する魔法であり、魔力型索引型の分類が効かないばかりか、カオティック・ファクター間においても共通項が殆ど無く、<<地獄>>にのみ存在する魔法であるという以外にはよくわかっていないというのが現状。
自身の世界の歪みを利用するはずの魔法が、歪みの無い<<地獄>>に存在するということで魔法観を揺るがすということで”混沌因子”と呼ばれている。
もともと数が少ない上、高位魔導師と戦える程のものとなると更に希少。

また、<<地獄>>特有の魔法ではあるものの、魔法の一種であるため当然ながら魔法消去による影響を受ける。

魔法を用いた技術

概念魔術

魔法であっても通常は「原因」が有り「結果」が生じる事に変わりは無い。概念魔術はこのルールを破り、世界に「結果」を押し付け、逆算的に「原因」を生成させる事ができる。使いこなせば強力な魔法であるものの、高位の魔導師でしか使えない他、「魔法を制御する魔法」は魔法消去でいの一番に破壊される魔法であり、それが組み込まれた概念魔術は魔法消去に非常に弱い。

魔法構造体

概念魔術を細密に構成して、結果から原因を生成させるだけでなく、「~ならばこうする」などの条件分岐を組み込んだ魔法。
魔法で作成した機械のようなものであり、魔法生物もこの一種に分類される。

化身(アバター)

自然秩序の歪んだ魔法世界においては、「魔法使いがここにいること」自体すらあいまいな現象である。実際、歪んだ自然秩序のもとで魔法使い自身を記述しようとすると、導き出される回答もまた今の自分とは違ったものとなる。この「歪んだ自然秩序のもと導き出された自分自身」は魔法の道筋により解析されたものであるため、魔法として使用することが出来る。魔法により導き出された、もうひとつの自身のありようを現実世界へと引きずり出したものこそが「化身」である。
化身はそれぞれの魔法体系によってその性質も異なるが、それぞれの化身についての詳しい説明は後述。
作中では、多くの魔法使いが化身をポンポン使えているためあまりありがたみがないが、実際にはかなりの高等技術であり、化身を使える魔法使いの方が寧ろ希少。その全てがそれぞれの魔法体系における切り札のようなものである。


魔法大系

本パートでは、作中に登場した魔法大系について魔力型魔術に属するもの、索引型魔術に属するもの、カオティック・ファクターに属するものの順で簡単に説明する。

魔力型魔術

円環大系



……でも、あたしは、ここにいる

振動や回転のような、周期運動の安定しない世界で生まれた魔法大系。周期運動するものに魔力を見出し支配する魔術。
この魔導師達は特に好んで電子を扱い、雷撃による攻撃を得意とする。
円環大系の特徴は、世界のいたるところに魔力を見出し、それを集める事からくる魔力型魔法大系最高出力の超攻撃力と、高機動力である。反面、防御に関しては紙と揶揄されるほどに弱く、円環魔導師の基本戦術は超高出力を活かした遠距離破壊か、高機動力を活かしたヒットアンドアウェーにある。
いかづちを好んで扱う円環魔導師達は、太古の昔におけるインドラ、帝釈天、ゼウス、あるいはトールといった権威ある雷霆神の祖形であると言われており、実際、それらの神話の残る地域では円環魔導師達がその痕跡を残しているらしい。
  • 破滅の化身(アバター・ルイン)
円環大系魔術における化身。
円環大系では魔法使い自身がここにいるという現象もまた、一種の閉じた円環である。その円環を幾何学的(あやとりのよう)に変化させ、小さな円環をいくつも作り出す事で自身と全く同一の自分をいくつも作り出す事が出来る。平たく言うと影分身。
この化身を使用する事で手数や攻撃力を倍々ゲームのように増やすことや、魔法の制御を他の自分と分担する事で大魔術を発動させる事ができる非常に強力な化身であると言える。
然し弱点も存在し、作り出された術者自身は全てが同一の自分自身であり、使用には全員が全く同一であるという条件を満たさなければならない。その為、たったひとりがほんの僅かでも負傷等により変質してしまった場合、「同一の自分自身」ではなくなってしまうため術者は消滅――ありていに言えば死亡してしまうのである。
ちなみにこれでもある程度改善されており、発明当時は生身しか増えないせいで小石に触れても即死だったため、現在では自分以外にも自分の装備・手持ち品が分身でも自分に含まれるようになっている。

錬金大系



礼節を知れッ!服など子どもの着るものだ

「対象物」と「ほかの部分」を分ける<<対象の境界>>が曖昧な世界で生まれた魔法大系。観測した対象とほかの部分を分ける「境界」に魔力を見出す。彼らはその自然秩序につけ込み、境界面の性質や範囲を操作する。
例えば、自らの肉体を対象とし「境界の内側から見た外側は、自らにとって比重の重い液体である」と定義する事により、空気中をまるで水の中を泳ぐように飛翔することも出来るのである。
また、この魔法世界においては対象たる「自分」を特別視する文化を持っており、魔導師が混じりっけ無い「自分」を衆目に晒す――つまりは全裸であることも珍しくない。実際作中における錬金魔導師は、ただひとりの例外も無く、男女の区別も無く、全員が全員基本的に全裸である。そしてその錬金魔導師の発言から、錬金世界全体が裸族の世界である事が明らかになっている。文化が全く違う魔法世界だから仕方ないね。
  • 聖別の化身(ディバイド・アバター)
錬金大系における化身。
自らの皮膚を「境界」として扱う錬金魔導師が扱う、自身のもう一つの皮膚とも呼ぶべき「第二の境界面」であり、その形状は術者自身を覆う実体のない膜のようなものと表される。
自らの体と同様にこの境界に対しても魔法を作用させる事が出来、例えば、とある錬金魔導師は触れたものの性質を変化させるこの化身を剣のように扱うことで、なにものをも切り裂く無双の武器としていた。

相似大系



――弟よ。今のおまえは驚くほど、私と”似ている”

世界自体が、かたちが同じものを「同一なもの」だと勘違いする世界で生まれた魔法大系。形が相似したものの間に魔力を見出し操作する。
形が相似な複数のものの間に「銀弦」と呼ばれる魔力の弦が結ばれ、銀弦で結ばれた相似なものどうしを同じ状態にする魔法。例えば、同じ形の剣を複数用意し、それらの間に相似弦を結ぶ事で、一本の剣で多数の剣を操作したり、傷ついた人間と健康な人間の間に相似弦を結ぶ事で傷ついた人を健康な状態に相似させ、傷を癒したりすることが可能。
高位の相似魔導師であるほど、曖昧なものの間に相似の弦を結ぶことが可能であり、超高位魔導師ともなると、あれとそれは「分子が相似の形状であるため」という理由で相似弦を結べる程のチートと化す。
その性質上、小さなもの・少量のものを用いて大きなもの・多数のものを操作する事を得意とし、古代の相似魔導師達はひと握りの水と大洋を相似させよく大津波を起こした事から、海神神話の祖形だとされている。
円環少女最大の萌え要素と名高い浅利ケイツの所属する魔法大系でもある。
  • 原型の化身(アーキタイプ・アバター)
相似大系における化身。
人間は皆、神の似姿であり、人の原型はみな相似であるという観測から生まれた化身であり、その能力は他人を術者の強制的に相似させる事。
本来、異なる魔法世界を引き連れた他人に対し直接魔法を作用させる事は非常に難しく、自分と他人を相似させ、魔法を作用させるこの化身は魔法のひとつの到達点であると言える。

因果大系



放て、<<大逆天王>>ッ!

現象の因果関係に魔力を見出し操作する魔法大系。
物事の因果を逆転させたり、因果を途中で止めたりする事が出来る魔術。
例えば、水を熱してお湯を作るという行為に対し、
1)まず熱い火があり
2)火がやかんへと熱を伝え
3)やかんから中の水へと熱が伝わる
という因果の流れに魔力を見出し操作する事で、「やかんを温めた熱が中の水へと伝わらない」ように因果を繋ぎかえ、水温を低いまま維持したり、「やかんに熱が伝わる因果」を全て遮断する事でやかんも水も両方温めないようにすることも出来る。
化身については作中未登場であるが、その代わりか因果魔導師は「因果巨兵」と呼ばれる魔法構造体を作成できる。
これは、空気や水等の自然現象を操作して作り出したいくつものパーツを組み合わせる事で作り出される「自然を機械として思い通りに動かす」魔法であり、解りやすく言えば自然現象をパーツとした巨大ロボである。
因果巨兵は各因果魔導師毎にその形も性能も違っており、基本的に一人で作るが複数人が協力する事で更に強力な因果巨兵を作り出すことも可能。

完全大系



だから、僕ら完全魔導師は体のうちからどんな世界でも引き出せるのデス

「観測した対象に人が頭の中に持ったイメージ」と「現実」の区別が曖昧な世界で発達した魔法大系。
完全魔導師は、観測者の脳内に描いたイメージに魔力を見出し現実を操作する。
完全魔導師は、現実を脳内のイメージに近づけるように魔力を操作し魔法を行使する。魔力もイメージであるため、その魔法は常に術者のイメージの内側に囚われ続ける。
「なんでもできる」ような万能の魔法に思えるが、実は制限やリスクも存在する。それは完全大系の魔法は、術者自身のイメージを世界に対して押し付けるものであるため、、他人に対して作用させる事が出来ないという性質にある。完全魔導師が魔法を作用させられる唯一の例外は、観測者たる本人のみであり、それ故「他人には魔法を直接影響させられないが、自分は常に魔法により歪められる危険性を孕む」という事である。これは、完全魔導師自身が「絶対に勝てない」と恐怖してしまったモノは明確な弱点となりうるという事である。
その為、完全魔導師は生まれた直後に厳重な封印を施される事となる。この封印は七つあり、完全魔道士としての腕が認められる毎に一つずつ外されてゆく事となる。七つ全ての封印を解かれたものは少なく、現状では世界に数人のみと言われている。
  • 万有なる化身(ユニバーサル・アバター)
「人間の中には、あらかじめ世界の全てが内包されている」という観測に基づいた完全魔導師の化身。自分の中の世界を現実に引き出す事により、引き出された世界の自然秩序を思うがままに操る事が可能となる。

精霊大系

自分自身の枠が曖昧な世界で育った魔術大系。万物に魔力を見出し、対象と自分の区別を曖昧にする事で生み出される「精霊」と呼ばれる擬似人格を操作する魔法。治療や防御を得意とするが、詳しくは不明。
円環少女第三のヒロインと名高いベルニッジの所属する魔法大系である。
  • 理想の化身
理想的なもう一つの自分自身を生み出す化身であるらしいが、詳しくは不明。作中では虎坂井レイの魔剣がこれにあたるそうな。

混沌大系

関係性をもつものの間に魔力を見出す魔法大系。ものとものとの関係により得られた魔力は複数集まると、魔力と魔力の間の関係にも魔力を発生させ、この無限ループにより無限に魔力の影響範囲を拡大させられる魔法。
然し、魔力はある一定以上に成長すると<<走狗(デミアン)>>と呼ばれる擬似生物の形をとり、自律するため混沌大系の魔法を完全に操作することは不可能とされている。
化身は不明。

索引型魔術

再演大系



再演魔導師は世界を一冊の本として感覚する

観測者たる人間の仕草を索引として過去を書き換える魔法大系。遥かな未来に世界を救うと言われているマイトレーヤ、弥勒菩薩の祖形たる魔法。
再演魔導師は、世界の歴史の流れを、人間を「アルファベットのような文字」として記述した一冊の本として観測する。その本に記された人間という文字を書き換えることによって、未来から「過去の人間の行動」を操ることで歴史を書き換える。
ただし、操る事が出来るのはあくまで人間の行動であるため、心を操る事は不可能な他、ほかの魔法大系のように自然秩序を操る事は出来ない。
また、再演魔導師に関わりの深い人間に対する干渉はその精度が極端に落ちるという弱点を抱えている。自然現象を挟めない再演魔法は、<<悪鬼>>の魔法消去にも極端に弱く、<<悪鬼>>の行動を操ることも出来ない。
魔法使いを直接操る事のできる唯一の魔法大系であり、その存在は<<悪鬼>>同様に魔法使い達からは忌み嫌われている。
実際に60年前、とある国家に加担した再演魔導師達はほかの魔法使い達を操り戦争を行い、それによって再演魔導師は完全に滅ぼされたとされていた。
最後の再演魔導師、倉本きずなが発見されたところから「円環少女」の物語は始まり、全ての鍵を握る魔法大系の一つである。


+ その秘密
実は「人間の願いのかたち」を具現化したカオティックファクターの一種で、ゆえに通常の魔法とは逆に「人間やその行動への干渉」だけに特化している
ゆえに神音大系の神聖騎士団等は、地球を再演大系の世界にし「再演の神」を降臨させることで自らの主義を叶えようとすることになる。
本編終了後発表されたQ&A『円環少女質問企画』で「再演大系が最大限力を振るうため未来に《増幅器》を送る=《増幅器》のいる「ラストページ」(人類の終焉)を確定させる」)
というとんでもない設定が明かされた。そのため「《増幅器》の未来送信」・「最後の魔法使い」が確定した本編世界は…。詳細はQ&A本文を読んでほしい

神音大系



神意、生命に宿れり

音を媒介に奇跡を引き出す魔法大系。音を媒介としているためか、音楽技術が非常に発達している。
一万年以上の研鑽の末に築かれた広汎かつ複雑な進化が特徴的な魔法であり、発見された索引の数も群を抜いて多く、ひとりの魔法使いが神音大系の全てを極める事は不可能とされている。
<<地獄>>において唯一神信仰を広めた魔法大系であり、天使のモチーフとされている。
現代の神音魔導師達は、神のいない世界でありながら、それでも信仰を捨てない<<悪鬼>>たちにひどく感動し、この<<地獄>>に神を降臨させるため日々精力的に活動している。
そのために作られた組織「神聖騎士団」は、「協会」と呼ばれる、一千以上の魔法世界をまとめ、<<地獄>>における魔法使いたちの活動を管理する組織と一万年以上に渡って絶賛敵対中である。一つの魔法大系が一千以上を統べる魔法組織と敵対しなおかつ同等に渡り合っている現状からも、神音大系がいかに協力な組織であるかがうかがい知れるであろう。
なお、神聖騎士団達は<<地獄>>の国家であるアメリカと密な関係を築いており、その為協会側魔法世界において「英語」は卑俗な言語として扱われている。
  • ゆらぎの化身(シャドー・アバター)
神音大系における化身。
「私自身」を表す神音を奏でることにより、もうひとりの自分を生み出す魔法。
自分を増やす魔法であるという点は円環大系における破滅の化身に近いものの、破滅の化身のように二人以上の自分を生み出す事は出来ないため、攻撃力や手数という点では破滅の化身に劣る。とはいえ、破滅の化身のように自己同一性を保持する必要が無く、傷ついても消滅する心配はないため、破滅の化身よりも手軽に使用することが出来、応用力も高い。
これだけでも恐ろしい魔法であるが、ゆらぎの化身にはさらにそれを発展させた<<精霊騎士>>と呼ばれる技術がある。これは「私自身」を表す神音を自分以外にも奏でられるようにすることにより、術者の死後も誰かが索引を引く事で死亡した術者を呼び出せる、という技術であり、神聖騎士団の切り札というべきものである。
<<精霊騎士>>まで至った神音魔導師は、例外無く高位以上の魔導師であり、単体の戦闘能力も高い他、「私自身」の神音を奏でる楽器さえあれば何度でも呼び出せるため、たとえ戦闘で倒したところで最短五分もあれば復活してしまう、敵対者にとっては悪夢のような存在である。

宣名大系



鴉木メイゼルの、嗜虐的変態性を名付けて『S』と定義する

術者が想起したイメージを媒介に索引を引く魔法大系。索引行為が脳内でイメージするだけで完結するため、前もって複雑な魔術イメージを「定義済み概念」として脳内に保持する事で強力な魔術を手軽に扱える事が強み。
然し、魔術の効果が及ぶ場所も術者の脳内イメージであり、直接現実に引き出す事が出来ないため、あらかじめ対象を「貪欲の化身」で捕獲し、対象に直接魔法を流し込む必要がある。
脳内のイメージが索引行為に直結しているため、起こす奇跡の自由度が高く、通常の魔導師では扱えない抽象概念についても扱うことが出来(前述の「S」では「S」に意味を追加することで心理負荷を与えた)、対象に直接魔法を流し込むため殺傷能力が高いという利点が挙げられる。
反面、事前に「定義済み概念」を脳内に保持しておく必要があり、戦闘における自由度が低く、魔術手順が煩雑で時間がかかる事が弱点として挙げられる。
  • 貪欲の化身(アバター・ヴォラスティ)
極めて可塑性の高い「術者自身」のイメージがこの化身の正体。
化身を対象にかぶせる事により、術者と対象のイメージを曖昧にする事で自身の脳内のみに存在する魔法を対象に流し込む。
性質上、宣名大系は化身を使うことが魔法の使用の絶対条件であるため宣名魔導師であれば化身を使用できる。

聖痕大系



もっと強く!もっと激しくお撃ちになって!

触覚と痛覚を索引として奇跡を引き出す魔法大系。
索引行為が非常にマゾい難しい魔法であるが、その分魔法の出力は索引型魔術最大。全魔法大系中最も魔法生物の扱いに優れた魔法大系であり、作中における聖痕大系の発動は、化身を除きそのほぼ全てが「魔法生物を飛び出す」という形をとっている。また聖痕世界は既知魔法世界中最も過酷な世界であると言われている。つまり住民全員がマゾヒスト……。
  • まどろみの化身(レサージ・アバター)
聖痕大系における化身。
聖痕大系において世界とは「感覚されるものの総体」である。故に聖痕魔導師にとって時間とは「魔法化された主観時間」のことにほかならない。魔法化された主観時間は、まどろみの化身を以て「共有されるべき時間」を侵食する。そして聖痕魔導師の主観時間は、まるで走馬灯のように極度の恐怖や苦痛によって引き伸ばされている。
つまり、自らの時間感覚を世界の時間に侵食させることにより、走馬灯で引き伸ばされた主観時間を実際の時間に影響させることで加速させ、術者本人を高速で移動させる事ができるのである。
自身の超加速という単純ながらも強力な化身であるものの、主観時間が通常の感覚に戻ってしまえば(有り体に言えば走馬灯の状態から覚めてしまえば)化身が意味のないものとなってしまうという弱点を持つ。

天盟大系



我、神殿の乙女マチルダ・クリストッツァは召喚する――。我、初めに『たいき』に結線する『きいと』

しりとりを行う事により魔法を発動する魔法大系。しりとりを行う事で生まれる、言葉と言葉の間にある「言葉の魂たる行間」を索引としている。
しりとりをする際は、そのイメージを固めるためにそのものを指差しながら答えなければならないが、その性質上、「愛」や「正義」などの抽象概念をしりとりに使うのは非常に難しい。
最終的にたどり着いた言葉をイメージとして魔法を扱うため、例えば最後の言葉が「火」や「炎」であれば炎系の魔法が行使される。
高位の天盟魔導師になるほど少ない行間=少ない言葉で魔法を発動することができる。
化身は不明。

賢猟大系



我々の世界における大魔導師とは、精神の強いものでなければならない――
そう、強力な魔法につながる”味”を犬のウ○コが持っていたら、それを迷わず口に入れるのが大魔導師であり強者だ!

感覚した嗅覚と味覚から奇跡を引き出す魔法大系。
今までの説明と上記のセリフでわかると思うが、うん、つまり、まぁ、そういう魔法。犬のウ○コの味は聞いてやるな。
因みに遊び盛りの男子小学生の上履きの、絶妙な苦味と酸味の調和によって大魔術「龍の吐息」が発動するらしいぞ!

真面目に説明すると、自らの体臭や血の味でも魔法が発動することから、最も早く生まれた魔法大系の一つであるとされている。
賢猟魔導師達は、正確に魔法を発動するため、常に自分の口や鼻に対し注意を払っており、混じりけの無いにおいを嗅ぐためにガスマスク等で自らの嗅覚を遮断している者が多い。
魔法技術としては自身の肉体を強化する魔法に特化していると言われている。
化身は不明。

カオティック・ファクター

<魔獣使い(アモン)>

万物の根源たる原初の霧「気」から、この地球上に存在するありとあらゆる自然物を発生させる魔法。専任係官、神和瑞希のカオティック・ファクター。
<気盾>に代表される強力な防御魔法や、食物や動物の生成など、その応用力は非常に高く、同様に生存能力も高い魔法であるが、「自然物を発生させる」という性質から、自然物以外は発生させられないため、他の魔法に比べるとやや攻撃力に欠ける。
<<地獄>>における、霧や霞を食べて生き、多くの動物を使役すると言われる仙人の祖形。
  • 《到達の化身》
作者の公式ブログ記事「円環少女質問企画」で判明した化身。
自身の肉体自体を自然現象に変える力を持つ(最終巻で使用)。

<蛇の女王(アスタロト)>

術者の体から切り離された「魔法卵」から、万象のあらゆる現象を生み出す事のできる魔法。元専任係官、武原舞花のカオティックファクター。
上記のみでは、<魔獣使い>と同様の魔法に思えるが、その最大の違いは自然現象しか生み出せない<魔獣使い>に対し、自然ならぬ奇跡すらも生み出すということ。この特性から、<蛇の女王>は<魔獣使い>の進化系ではないかとされていた。また、万物を生み出すこの魔法は、索引から奇跡を引き出す索引型魔法とも酷似しており、索引型魔法が「ありとあらゆるもの」を引き出すことに成功したら、この「魔法卵」が発生するのではないかと言われている。
とはいえ、完全に<魔獣使い>の上位互換という訳ではなく、弱点として「魔法卵」を術者の体を削って生み出す点が挙げられる。<魔獣使い>の「気」が、世界中に偏在するのに対し、術者の体から生み出される「魔法卵」は使うたび術者の体が削られる事となる。この点は、「魔法卵」から術者の体のパーツを生み出す事で補填可能であるものの、「魔法卵」から生み出されたものは魔法であるため、魔法消去を受けると術者自身が消えてしまう可能性を孕んでいる。
  • 《輪廻の化身》
「円環少女質問企画」で判明した化身。
自分の複製を作る事が出来、死の直前に発動すれば完全なる複製(つまり自分のスペア)を誕生させ、生きている状態で使えば「<蛇の女王>とは違う魔法大系に属する自分」が生成される。
但し「別な魔法大系を使う素質がある自分」がいても知識は「<蛇の女王>を使えるオリジナルの自分」と同一なため育成時間的に実用性が薄く、本人も複製作り放題に心理的嫌悪感があったため多用されることは無かった。

<破壊(アバドン)>

観測した全てを破壊してしまう魔法。専任係官、八咬誠志郎のカオティック・ファクター。
文字通り、物質魔法を問わず、全てのものを破壊してしまう魔法であり、破壊されたものは青い炎を上げながら消滅する事となる。その消滅のしかたから、オレンジ色の炎を上げて魔法を消去させる魔法消去能力と関係があるのではないかと言われているが関係性は不明。
<<悪鬼>>以上に忌み嫌われた能力であり、魔法使いのみならず、全てのものに対し強力な効果を発揮するものの、感覚するものには当然、自分の体も含まれており、そのままでは<破壊>は術者自身の体すら破壊しかねない。
その為、術者の八咬誠志郎は普段、魔法消去者たる<<悪鬼>>を傍に置くことで、この魔法を常に破壊させている。


最後に

一部の魔法使いは表面上変態に見えるものの、その行為は故郷の世界では常識であることが殆どである。
なので例えばあなたが、空飛ぶ全裸を目撃したり、小学生の靴を食べるガスマスクを目撃したり、高速移動するマゾヒストを目撃したりしてもむやみに変態だと決めつけず、魔法使いの可能性を一考してみる事をおすすめする。


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最終更新:2022年02月02日 13:21