マウント斗羽

登録日:2014/08/22(土) 17:00:00
更新日:2023/11/18 Sat 19:06:51
所要時間:約 10 分で読めます




マウント斗羽(とば)とは、板垣恵介の漫画作品バキシリーズの登場人物の一人。
モデルは言うまでもなく、日本プロレス界の象徴「世界の巨人」ジャイアント馬場
完全にそのまんまである。違うのは名前ぐらい。

「飛び後ろ廻し蹴りが出来るジャイアント馬場が描きたい」という作者の妄想から生まれた、作者曰く最後の必殺技のようなキャラクター。

CV:島香裕/石塚運昇(BeeTV版)


【人物】


身長209cm、体重150kg。本名、斗羽正平
30年間に渡って、第一線でショーマンシップ溢れる王道プロレスを行い続けている日本プロレス界の象徴。

我らが主人公、範馬刃牙も幼いころからファンだったようである。

しかし、その内実は、超巨体から産み出される圧倒的な体力と、30年にわたるレスラー生活で培われた超一流のテクニックを兼ね備えた実力派の格闘家。

規格外の心肺能力を持ち、全身の筋肉に血液を流入させて驚異的なパンプアップを図る事ができ、30年間殴られ続けたことにより、並の格闘家とは比べ物にならないほどの打撃や出血に対する免疫度を誇る。

これらの事実は、確かな眼力を持つ刃牙でさえ、相対するまで気付かなかったほどである。


かつて、街頭テレビに大勢の観衆を集める人気レスラー力剛山の試合を見て、弟子入りを志願。*1
「自分の身体を活かして人を喜ばせたい」という、格闘家としては不純な動機であった。

当然力剛山にぶん殴られるが、「プロレスは客を喜ばせてナンボ」、「ケンカが弱くてもいい」というプロレスの本質を誰よりも理解していた力剛山に入門を許可される。

入門後は実力の伴わないショーマンレスラーとして活躍していたが、やがて転機が訪れる。師、力剛山の死である。

モデルの力道山よろしく暴漢に刺されて死亡した力剛山の葬儀の場で、「プロレスラーもケンカとなればあんなもの」という
周囲の嘲りを聞き、師の教えに疑問を持つようになる。

「プロレスラーは何があってもケンカに負けてはいけない」、「プロレスラーはリングの外でこそ強くあらねばならない」という信念を持つに至り、過酷なトレーニングを自身に課し、屈強な肉体を手に入れた。

その後、遠征先のアメリカではヒールレスラーとして蛮勇を振るい、勝ちに勝ちまくった結果、ジャイアントデビルとまで呼ばれるようになり、その勢いは時の世界チャンピオンルー・テーズすら敬遠したと言われる。

帰国後は大日本プロレス*2を設立し、「明るく楽しい」プロレスに従事していた。


元同門のアントニオ猪狩からは、その巨体やスター性を嫉妬され続けていたが、斗羽自身も猪狩には複雑な感情を抱いており、「(猪狩のように)自分だけのための興業をやってみたかった」と猪狩に語っている。


【来歴】


『グラップラー刃牙』の地下闘技場編で初登場。
自身のプロレス団体に所属する花田純一がプロレスを舐めた態度をとったため、路上で制裁を加えた。

範馬刃牙との対戦権を得ていた花田の代役として、地下闘技場に出場。観客、そして読者の度肝を抜いた。

次期挑戦者の権利を得ていたテコンドー使いの金田が激昂して襲い掛かってくるも、十六文廻し蹴りで一蹴。


刃牙との試合でも序盤から猛攻を仕掛け、一流空手家なみの蹴り、重量級ボクサーなみのブロー、アマレスなみのブリッジを駆使して刃牙を追い詰める。さらには、飛び後ろ廻し蹴りまで披露して、身体能力の高さと有り余る才能を見せつけた。
作者板垣の妄想が結実し、『グラップラー刃牙』の方向性が決定づけられた瞬間でもあった。

刃牙の反撃でダウンを喫するも、刃牙の未来を思い封印していた必殺技を解禁。
150kgの超巨体でバク宙を行い、全体重を乗せて地面に激突させるという超荒業であり、花田を一撃で仕留めた技である。

技を決め、勝利を確信した斗羽であったが、こなした真剣勝負の少なさが災いして刃牙のタフネスを見誤り、復活を許してしまう。

もう一度バク宙を仕掛けるも、刃牙が自らジャンプしてバク宙に加速することで、空中で止まらずに両者の身体は一回転。
高速で両足が地面に叩きつけられたことにより、巨体を支え続けてきた右膝が限界を迎えてしまう。

もはや勝利は望めず、血と暴力を好む地下闘技場の観客さえも棄権を勧めるほどの状況下にあっても
まだ闘いをやめようとしない斗羽の姿に敬意を表した刃牙の渾身の蹴りを右膝に受けて敗北。

最後の意地か、倒れる間際に刃牙の首筋に斗羽の代名詞ともいえるチョップを見舞っている。

「10年前の斗羽さんなら最後のチョップで首をヘシ折っていたハズ」という刃牙の嘆きには、現在がその10年後であることを無念がりながらも、名誉ある敗北を手にすることができたと満足げな表情を浮かべていた。



その後、最大トーナメントにリザーバーとして出場。
他のリザーバーは色々とひどいことになってしまったので、リザーバーとしては唯一の出場である。

夜叉猿ジュニアの乱入で戦闘不能になったロベルト・ゲラン、加藤清澄のリザーバーとして、二回戦で烈海王と対戦。

試合前には、高所から落下し、自動車に激突して破壊するというパフォーマンスを見せ、プロレスラーの肉体の頑強さを見せつけた。

刃牙との試合で負傷した右膝が完治していなかったため、キックでの砂かけなどアメリカ遠征時を彷彿とさせる反則すれすれの攻撃を仕掛け、速攻で勝負を決めようとしたが、烈には全く通じず、右膝を責められて約一分で敗北を喫した。


その後は、刃牙対猪狩戦の解説・驚き役として登場。猪狩が刃牙を攻めているときはやけに嬉しそうであり、猪狩がスタンド状態から関節をとられたときは驚いていた。



そして、トーナメント終了後、東京ドームを舞台として今も語り継げられる名勝負が繰り広げられる。
そう、『グラップラー刃牙 外伝』アントニオ猪狩とのキレイで、ていねいで、真剣なプロレスである。
本来無観客で行われるはずであったこの試合は、一人の青年の尽力で東京ドームを埋め尽くす観客が集まることになった。



「マウント斗羽とアントニオ猪狩が人知れず試合をしていいワケねェだろォォォッッッ」


現実世界ではついに実現しなかった「ジャイアント馬場vsアントニオ猪木」であり、
ジャイアント馬場が死去、アントニオ猪木が引退し、プロレスラーとしての両者の記憶が完全には薄れていない当時だからこそ描かれた作品であり、作者自身もが描くタイミングは今しかない、と語っていた。


猪狩の「骨を断たせて肉を斬る」の言葉通り、両者の持ちうる技を互いに受け合う、王道のストロングプロレスが繰り広げられた。


試合途中には斗羽の回想が入り、プロレスラーにならざるを得なかった大巨人の苦悩が描かれている。

人並み外れた巨体と身体能力を持ち、プロレスのエリート街道を走り続けたマウント斗羽であったが、心から望んでプロレスラーになったわけではなかった。

建築家、教師、画家…一般人同様の平凡な夢を持っていたが、巨体ゆえに好奇の視線から逃れることができず、周囲に迷惑をかけてはいけないという巨体ゆえの負い目も手伝って、「巨体で人を喜ばせることのできる」プロレスラー以外の選択ができなかったのである。


それぞれの想いを乗せて、一進一退の攻防が続き、遂に猪狩の必殺技・卍固めが完璧に決まる。

斗羽の力が消え、勝利を確信した猪狩が技を外すも、その瞬間渾身の十六文キックが猪狩の顔面に突き刺さった。

己の不覚を悔やむ猪狩であったが、追撃が襲うことはなかった。斗羽はリングに倒れ伏し、ピクリとも動くことはなかったのである。

満場の斗羽コールが東京ドームに響き渡るも、遂に斗羽の身体が動くことはなかった…。


懸命の治療もむなしく、斗羽の命の灯が再び灯ることはなかった。

激闘の末の結果を予測していたのか、遺言が用意されており、そこには生涯の敵であり、兄弟であり、障害物であり、そして親友であった猪狩に対する想いと、マウント斗羽への決別が記されていた。

猪狩もその思いに応え、葬儀委員長として全ての後始末を終えた。


マウント斗羽は40年の人生に終わりを告げ、斗羽正平として永遠の眠りについたのである。




追記・修正は名勝負を目に焼き付けてからお願いします。

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遺書には「訪ねてほしい男」についても記載されていた。
その遺言に従い、パリのモンパルナスの丘を訪ねる猪狩。

そこにはベレー帽をかぶりキャンバスに向かっている画家が――







「斗羽正平さんッッッ!!!
いや〜〜〜バレバレだわ」



「やっぱり?」


…実はその死は偽装であり、当人はここで「斗羽正平」として画家としての余生を送っていたのであった。
体格が体格なので、知る人が見ればバレバレであるが。



その後は長らく出番がなかったが、夢枕獏とのコラボ小説『ゆうえんち-バキ外伝-』のエピローグでまさかの再登場。
変わらずパリで絵を描く生活を送っていたところに猪狩の訪問を受ける。
長年戦いから離れていたことで膝は完治しており、背後から声をかけた猪狩に対し椅子に座った状態から跳躍して空中回転しながら逆に持ち替えた絵筆で攻撃するという離れ業を見せた。*3

実は猪狩と斗羽は力剛山から角界に2000年受け継がれた因縁を継いでいた。タケミカヅチと名乗る男に率いられた戦闘集団が世界中で日本への復讐のために戦力を磨き続けているという途方もない話で、力剛山もその刺客だった龍金剛の挑戦を受けて敗れたのだった。
海外遠征中に挑戦を受けた猪狩はそれを受け、その時思いついた戦士達をタケミカヅチ達と戦う闘士として挙げた。その中に斗羽も入っていたため呼びに来たのだった。斗羽も快諾して日本への帰国を決意する。

しかし肝心の戦いが始まったところで物語が終わってしまったため、その後のことは不明。*4

なお猪狩とは『グラップラー刃牙 外伝』以降会っていなかったようで彼の顔の傷に驚いていたが、猪狩から「シコルスキーってぇ、ロシア人に不覚を取ってね」と聞いただけで彼が客のいないところで戦ったことを察し、「おれたちは、客のいるところで闘ってナンボだからねぇ」と語っている。


死を偽装して自分の夢を叶えた方が追記・修正お願いします。

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最終更新:2023年11月18日 19:06

*1 学生服を着ていたのでモデルとは違ってプロ野球選手ではなかった模様。

*2 全日本プロレスのもじりであり、現実の団体とは無関係。連載当時は現実の団体は設立されていなかった。

*3 猪狩はそれを右手で受け止め、右目の3ミリ前で止めている。

*4 これは打ち切られたというわけではなく、エピローグという事からもわかる通り最初からそのつもりで書かれている。