メグリムジャー(MtG)

登録日:2014/07/21(月) 17:37:37
更新日:2023/12/25 Mon 15:56:32
所要時間:約 4 分で読めます




メグリムジャー/Meglim Jarとは、Magic the Gatheringにおける史上最凶のコンボデッキである。


メインコンボは、非常にシンプル。


記憶の壺 / Memory Jar (5)

(T):記憶の壺を生け贄に捧げる:各プレイヤーは、自分の手札のカードを裏向きのまま追放し、カードを7枚引く。次の終了ステップの開始時に、各プレイヤーは自分の手札のカードをすべて捨て、これにより自分が追放した各カードを自分の手札に戻す。

偏頭痛 /Megrim (2)(黒)
エンチャント

対戦相手がカードを1枚捨てるたび、偏頭痛はそのプレイヤーに2点のダメージを与える。

《記憶の壺/Memory Jar》を起動させたターンを、戦場に《偏頭痛/Megrim》をセットした状態で終了する。たったこれだけである。
それでどうなるか。
終了ステップの開始時(まぁ、ターンの終了時だとでも思ってくれるといい)に、対戦相手は記憶の壺で引かされた7枚のカードを墓地に捨てる。これで偏頭痛が発動し、14点のダメージが入る。
二回壺を回す、もしくは偏頭痛が2枚あれば28点ダメージ。当然、相手は死ぬ


「5マナもかかる《記憶の壺/Memory Jar》を二回も回す必要があるんじゃ、たいして強くないんじゃね?」と思ってはいけない。
まず記憶の壺自体が、(簡単に言うなら)手札を全て追放する代わりに7枚引ける、単純にぶっ壊れたドローカードだということ。例えば《暗黒の儀式/Dark Ritual》なんかのマナ加速で失ってしまった手札もすぐに補充できるし、コンボパーツ(追加の記憶の壺とか偏頭痛とか)を探すのにも使える。コンボパーツなのにドローソースも兼ねているという無駄の無さ。

そしてもう一つの強みが、コンボの成立条件の緩い事である。記憶の壺・偏頭痛のどちらが二枚でも、それら三枚をどの順番で出しても
ほぼ勝利条件に達する。この手の大ダメージコンボには「先にAを出してからB」というパターンが多いのだが、
このメグリムジャーはダメージ関連がターン終了ステップにまとめて処理されるため、コンボ回している間はどっちを先に出しても
関係ないのだ(マナにもドローにも関与しない偏頭痛を最後に出すのが定番)。


それに加えて、こんなカードとか

修繕 / Tinker (2)(青)
ソーサリー

修繕を唱えるための追加コストとして、アーティファクトを1つ生け贄に捧げる。
あなたのライブラリーから、アーティファクト・カードを1枚探し、そのカードを戦場に出す。その後あなたのライブラリーを切り直す。

こんなカードとかがたくさんあったら…

魔力の櫃 / Mana Vault (1)
アーティファクト

魔力の櫃はあなたのアンタップ・ステップにアンタップしない。
あなたのアップキープの開始時に、あなたは(4)を支払ってもよい。そうした場合、魔力の櫃をアンタップする。
あなたのドロー・ステップの開始時に、魔力の櫃がタップ状態である場合、それはあなたに1点のダメージを与える。
(T):あなたのマナ・プールに(3)を加える。

答えは言わずもがな。平均して3ターン、速ければ1ターンでゲームが終わる*1


ちなみにこのデッキ、当wikiにも項目のあるMoMaが成立したウルザズ・サーガの次のエキスパンションであるウルザズ・レガシーの登場により成立した(キーカードの記憶の壺がレガシーのカードであるため)。「マジック最悪」と謳われるアレよりも、さらに酷いこのデッキの登場により、MtGは長い暗黒時代を迎える…ことにはならなかった


トーナメントで使用可能になってから僅か二週間後、記憶の壺は禁止カードに指定されることになる。それも、当時このカードを使用出来たほとんどの構築レギュレーションで。唯一、Type1(現・ヴィンテージ)でのみ1枚制限に留まったが、このレギュレーションは禁止カードが(ほぼ)存在せず、かのパワー9でさえ1枚は使えると言う環境であるため、実質「可能な限り最大限の禁止・制限」がかけられたと言って良い。
ちなみに、当時はDCI(MtGのルールとかを決めてるとこ)による緊急声明まで発令されたらしい。

さらに余談ながら。上記の事柄は全てスタンダード、つまり使えるカードが2番目に少ないフォーマットである*2。さてこれが、黎明期のぶっ壊れカードまで使える環境だったら、どうなるか?

その当時はマナ加速とかサーチカードとかへの規制が今と比べてぜんぜん緩かった事もあり、前述したType1で組まれた完全版のメグリムジャーの1ターンキル率は、実に90%まで達したと言われている*3。ここまでくると、もう本当に先攻後攻決めのジャンケンとかコインフリップで勝者が決まる。
マジックの歴史にはこれ以降も色々おかしいデッキは現れたが(例・ロング・デック)いくらなんでもこの水準には達していない。史上最凶というのは冗談でもなんでもないのだ。
当然こんなデッキが許されるはずもなく、また他にもいろいろな事情もあって、その後の制限改定では新たに18枚のカードが制限カードに書き加えられることになった。


これぞまさしく、最短最多最速。(最速だけはのちに抜かれるが)


ちなみに、本家(?)のMtG Wikiには、当時のスタンダードのメグリムジャーのデッキリストが掲載されている(まともな大会で活躍する暇も無かったため、あくまで暫定だが)。そのデッキに採用されたカードのうち、いずれかのフォーマットで禁止されたことのないカードは、土地を除く10種39枚中僅か二種、7枚のみである(コンボパーツの《偏頭痛/Megrim》3枚とサーチカードの《直観/Intuition》4枚)。何か間違っていませんかね?


MoMaとかと比べての数少ない美点(?)は、実質3枚コンボで決まるため相手のソリティアに付き合う時間が短くてすむことだが(漫画も用意しなくてもいい)…って、そんなの何の慰めにもなるものか!!まあ記憶の壺でドローとかしなきゃいけないのは変わらないんだけど回数がずっと少ない。

また、このデッキには決定的な弱点カードというものが存在する。自分も使ってる偏頭痛/Megrimである。
対戦相手に先に偏頭痛を出されると、手札を捨てる処理の都度敵方の偏頭痛が先に処理されるため、メグリムジャー側が死んでしまう可能性が高いのだ。
偏頭痛はMoMaのキーカードである精神力/Mind Over Matterにも有効なメタカードだった*4ため当時の黒単などがよく積んでおり、先に出されると悶絶ものだった。
デッキの性質上、MoMaと違って転覆/Capsizeなどを搭載しづらいのもキツイ。


追記・修正は偏頭痛で28点ダメージを与えた・与えられた人だけがお願いします。



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最終更新:2023年12月25日 15:56

*1 スタンダード版ですら1ターンKILL率は5%前後あったとされる。あのMoMaと大差ない。

*2 一番少ないのはブロック構築。ちなみにウルザ・ブロック構築でも記憶の壺は当然禁止。

*3 《Time Walk》による追加ターンでの決着を含む。

*4 ドリームホールや実物提示教育の能力を逆手に取られ、精神力に対応して偏頭痛を出されるとMoMa全体が半身不随に陥る。