頭蓋骨絞め/Skullclamp

登録日:2014/05/21(水) 18:04:03
更新日:2024/04/21 Sun 20:26:05
所要時間:約 3 分で読めます




頭蓋骨絞めはマジック:ザ・ギャザリング(以降、MtG)のアーティファクトカード。初出はダークスティール。
「印刷したのが間違いだった」 とさえ言われた、MtG史に残る程の凶悪な装備品の一枚。
MtGをよく知らない人のために書いておくと、MtGでの装備品は装備していたクリーチャーが戦場を離れてもそれだけになって戦場に残り続け*1、後続のクリーチャーさえいれば 今度はそちらに装備させて使い回せる
それを踏まえた上で以下の性能を見ていただきたい。



頭蓋骨絞め/Skullclamp (1)
アーティファクト — 装備品(Equipment)
装備しているクリーチャーは+1/-1の修整を受ける。
装備しているクリーチャーが死亡するたび、カードを2枚引く。
装備(1)((1):あなたがコントロールするクリーチャー1体を対象とし、それにつける。装備はソーサリーとしてのみ行う。
このカードはつけられていない状態で戦場に出て、クリーチャーが戦場を離れても戦場に残る。)



MtG経験者どころか、他TCGプレイヤーのほとんども既に「これヤバくね?」と思っているかもしれない。
「カードを2枚引く」という一文、他のテキストと同居するにはあまりにも強力なのだ。
ではどう強いのか、少し例を挙げてみよう。

  • 1/1のクリーチャーが頭蓋骨絞めを装備する。
→装備したクリーチャーはタフネスが0となり、状況起因処理*2により墓地に落ちる。クリーチャー1体を引き換えに2枚ドロー。
 アドバンテージは1枚。

  • 適当なクリーチャーに頭蓋骨絞めを装備させ、相手のクリーチャーと相打ちになったり呪文で除去される。
→互いにカードを1枚失い、あなたは2ドロー。
 絶対的アドバンテージこそ1枚だが、相手は1枚失い、あなたは1枚得ているため、相対的アドバンテージは2枚。

  • タフネスが2のクリーチャーに頭蓋骨絞めを2枚装備させる。
→装備したクリーチャーはタフネスが0となり、状況起因処理により墓地に落ちる。クリーチャー1体を引き換えに4ドロー。
 アドバンテージ3枚。

そして頭蓋骨絞め自体が除去されない限り、これをいくらでも起こせてしまう



これって、壊れてる。
~綿密な分析をしたセファリッドの言葉



なんかもう「クリーチャーがいるなら入れておけ」と言わんばかりの高性能カードなのは分かってもらえただろう。
これが一枚出てくれば後はクリーチャーを出していくだけでどんどんアドバンテージを稼ぎ始めてくれるのだ。
更に厄介なのは、装備したクリーチャーは死にやすくこそなるがその分火力は上がるという点で、
装備したクリーチャーを放置するとライフを削り取られるが、ただクリーチャーを除去しても相手はアドバンテージを得て、他のクリーチャーに再び頭蓋骨絞めを装備して殴ってくるだけ。
しかも除去されてもその能力でカードを補充どころか逆に増えるため、クリーチャーを一掃したと思っても高確率で次のクリーチャーが現れて、再び装備しやがる。
これだけの性能でありながら設置・装備のコストも不特定マナ1点という驚きの軽さ。
加えてレアリティもアンコモンなので、入手も比較的容易。なにこれふざけてるの?

ウィニーデッキとは特に相性が良く、デメリットである死にやすくなる問題はより無視できる一方、
クリーチャーが小粒で死にやすいのが意図的にドロー能力を誘発させやすいメリットとなり、「序盤の勢いを凌ぎ切られるとそのまま手札から息切れする」というウィニーの典型的弱点が大きく緩和される。


そして、当時最もこのカードの恩恵を受けたデッキがアーティファクト中心の親和である。
全盛期の親和には
  • アーティファクトが墓地に落ちると相手1人にライフを1点失わせられる「大霊堂の信奉者」
  • アーティファクト1つを生贄に一回り大きくなる「電結の荒廃者」
  • アーティファクト1つを生贄に任意の対象へ5点のダメージを与える「爆片破」
といったステキな鬼畜仲間達が揃っていた。
アドバンテージを稼がれる前に頭蓋骨絞めを除去したいが、
こいつらがいると頭蓋骨絞めを除去しようにも引き換えにライフを取られたり、
頭蓋骨締めに除去呪文を撃った返しに頭蓋骨絞めを生贄にして呪文を立ち消えにされ、除去を撃った方がむしろ損をしたりする。
わけがわからないよ。

結果、環境はあっという間に親和一色となり、「親和を使うか、親和をメタれるデッキを使うか」という状況になってしまった。
国外のとある古参強豪プレイヤーをして「頭蓋骨絞めも減衰のマトリックス*3も入っていないデッキはデッキではない」とまで言わしめた洒落になっていない言葉が本当に洒落になっていない現実であった。


流石にこれはマズいと判断されたのか、ダークスティール発売から4ヶ月と2週間後、2004年6月20日に頭蓋骨絞めは禁止カードとなる。
禁止カードの指定は実に五年振りであり、当時のプレイヤー達には衝撃が走った。



これにより上記の親和は失速……



するどころかトップスピードで走り続けた。


「まるで意味がわからんぞ!」 と思った方は親和の記事もお読み頂きたい。

現在はこのカードを使える通常構築はヴィンテージのみで、レガシーとモダンでは禁止カードとなっている。

Q:え、なんでヴィンテージは無制限なの?
A1:これ使う前にゲームが終わるわ
A2:出せても瞬間で壊れるわ
A3:そもそもコンセプトに合わんわ

そう、ヴィンテージではノンクリーチャーデッキや、そもそもゲームを2ターン以下しか行わないデッキがわんさかしてるのである。
またTime Vaultなどの凶悪アーティファクトが多く、Moxの存在からアーティファクト破壊が当たり前のようにメイン投入されるヴィンテージではエンチャントよりアーティファクトの方がはるかに壊れやすい。
昔は『黒である事だけで除去耐性』という言葉があったが、この環境ではアーティファクトであることが除去弱点という特殊過ぎる状況なのである。
また、アグロデッキでは相手の行動を縛るカードを入れて自由を奪った状態で殴ることを当然のようにしてくる上にだいたいそのようなカードは自分にも影響があるので、アーティファクトである頭蓋骨絞めはその点でも居場所がない。

まぁ他にもノンクリーチャーデッキが多い事も含め、アグロ向けカードが全然規制されない事から察して欲しい。


まあおかげで0マナ0/1のコボルドたちにこれを装備させて即死させてドローしまくってストームを貯める【コボルドクランプ】というデッキまで存在しているのだが。もはや完全にドローソース扱いである


カジュアルなどで使うことが可能なら使ってみるのもいいだろう。
親和に入れてもいいし、トークン生成カードと組み合わせてみるのも楽しい。
EDHでタフネス1のクリーチャーを多用するデッキにも居場所はある、はず。
実際、構築済みの統率者戦用セットにも時々収録されてるし。


追記・修正は頭蓋骨を絞めて死亡して2ドローした方がお願いします。

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最終更新:2024年04月21日 20:26

*1 この時クリーチャー共々戦場を離れるのはエンチャント(オーラ)。

*2 その時々に適宜他より優先して行われる処理。ルール上、呪文などでの割り込みは不可能。

*3 アーティファクトを軒並み機能不全に陥らせる効果を持つアーティファクトで、親和メタとして必須の一枚。