ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント

登録日:2014/04/24 Thu 14:21:26
更新日:2024/04/01 Mon 21:49:28
所要時間:約 5 分で読めます






ウルトラマンたちは、なぜ命を賭けて戦うのだろう。異星人である私たちのために。



『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』とは、円谷プロダクションの特撮テレビドラマ『ウルトラマンメビウス』のノベライズ。
光文社の季刊誌『EQ Extra GIALLO』2007年春号から2009年夏号にかけて連載され、2009年に同社より単行本が刊行。
2013年にはお求めやすい文庫版も刊行された。
著者は『メビウス』のサブライターも務めた朱川湊人。


【概要】

直木賞作家である著者が脚本として手がけた「怪獣遣いの遺産」「無敵のママ」「ひとりの楽園」を下敷きに、
新人GUYS隊員の成長物語として再構成された一作。
アンデレスホリゾントとは「異なる地平線」の意味。
基本設定はTVシリーズに準じているものの、本編のパラレルワールド(現在で言うところのマルチバース)であり、カナタ以外のGUYSの面々はミライの正体を周知済みであるため、正体バレしたTV版30話以降から分岐した世界線と思われる。



【ストーリー】

●「魔杖の警告」
CREW GUYSに研修隊員としてハルザキ・カナタがやってきたその日、宇宙から謎の物体が飛来してきた。
その物体はGUYSの攻撃をまったく寄せ付けず、フェニックスネストめがけて落ちてくる――

●「ひとりの楽園」
ほかのクルーといまいち馴染めないカナタに、気を利かせたミライが休日を共にする。
ヒトの心を狙う怪事件を通じて、カナタはウルトラマンの心を知る。

●「無敵のママ
母の容体があまりよくないカナタ。
そんな折、「GUYSの肝っ玉母さん」日の出サユリが宇宙人に乗っ取られる事件が発生する。

●「怪獣使いの遺産」
突然地球に侵入してきたメイツ星人・ビオ。
彼の事が「ドキュメント・フォビドゥン(禁じられた記録)」に記されていると知ったカナタとクルーたちはその対応に四苦八苦する。

TV版ではただの薄い良い話になっていたが、こちらではより深く描かれておりTV版を批判していてもこっちならありという人も。

●「幸福の王子」
GUYSでの研修が残りわずかとなったカナタ。
しかしそこに現れたのは、凶悪そうな面構えの超巨大怪獣だった。



【主な登場人物】

●ハルザキ・カナタ
この物語の主人公。18歳で、身長は162cmと小さめ。
GUYS専科の研修隊員で、その最終過程としてCREW GUYS JAPANに配属された。
自信家で我が強く、CREW GUYSのことを「素人の寄せ集め」と見下していたため、当初はチームに馴染めなかった。
かつて父が乗艦していた宇宙輸送艦「ガーベラ」が異星人の攻撃によって沈められ、
そのショックから母が精神を病んで記憶障害を煩い、カナタ自身の事も忘れてしまったという過去を持つ。
そのためすべての異星人に憎悪にも近い感情を抱き、排除すべきだと考えている。
ウルトラマンに対しては、さすがに(ヒルカワの様に)差別視したり、憎悪こそ抱いていないものの、
「どんな理由で地球を守っているのか怪しいものだ」と懐疑的に見ている。ある意味『メビウス』の世界観から一歩引いたキャラだと言える。
プライベートではバイクを愛用しており、バイク乗りのマリナにピーキーすぎるといわれたガンブレイバーを半ば専用車両として駆ける場面もあった。
専門教育を受けているため総合的には高い能力を有するが、特化面ではGUYS JAPANの隊員達には及ばないため、
他の隊員が割と苦もなく使いこなしていたマニューバモードの操縦に四苦八苦する面も。

ちなみにOV版『アーマードダークネス』にも同名の人物が登場するが、本作とは別人である。

●ヒビノ・ミライ/ウルトラマンメビウス
天然不思議ちゃんな本編の主人公。

「景色がコロコロ変わるのが面白くて電車に乗ってたら仙台まで行ってしまい、帰りの電車がわからない」
「あんこが入ってるからアンパンなのに、メロンパンにメロンが入ってないことを本気で疑問に思っている」
「そのメロンパンを7000円で買えるか心配する」

こんな行動でカナタを困惑させるも、持ち前の優しさでウルトラマンに対して疑念を抱いていたカナタの心を開いていく。

アイハラ・リュウ
熱血な性格ゆえに斜に構えてるカナタとはよく衝突するも、次第にカナタを信頼していく。

●イカルガ・ジョージ
気さくな態度でカナタと接するが、一言多いせいで損する場面が多い。

●カザマ・マリナ
彼女が何気なく話したことが終盤のある事件の鍵となる。

●クゼ・テッペイ
持ち前の知識を活かしたデスクワークで陰ながらカナタに関心される。
トマトが嫌いで牛乳をたくさん押し付けられたカナタと共に日の出さんに文句を言おうとしていた。ちょいと無謀なチャレンジ魂である。

●アマガイ・コノミ
事件の説明役が多く、本編より陰が薄め。
しかし自身の経験から、ある怪獣を捕獲する際意外な作戦を提案する。

●サコミズ・シンゴ
飄々としたGUYSの隊長。
各国首脳が使う特殊回線のパスワードを知っていたり、
高速旋回するガンブースターで次々と打ち出される怪獣の電撃をすべて弾き返すなど謎めいた部分が多い。

●トリヤマ・ジュウキチ補佐官
上級職なのにギャグ要員。
防衛軍時代にギエロン星獣の地上攻撃作戦に参加し、同僚が今も放射能の後遺症で苦しんでいるらしい。

●アライソ整備班長
GUYSのメカを一手に引き受ける親父さん。
メンバーと距離を感じていたカナタを元気づけようと、色々な逸話を語って聞かせる。
なお、科特隊のイデとは面識があった模様。
そしてカナタに特別に見せた"最初のメテオール"が、後に思わぬ活路を切り開くことに……

●調査部員ヤマナカ
銃身を切り詰めた二丁のスーパーガン・コンバットタイプを自在に操る名物調査員。
地球に潜伏していたシャプレー星人を射殺した。
「ぶったるんどるぞ、シャプレー星人!」
気づいた方もいるだろうが、かつてTACに所属していた山中隊員その人。

●メイツ星人ビオ
「怪獣使いと少年」(帰ってきたウルトラマン)に登場したメイツ星人の息子。
メイツ星でも触れてはならないとされた父の悲劇を忘れさせないために独断で地球に侵入し、
(理不尽な理由で惨殺されたとはいえ、
 メイツ星人側の無断で地球に侵入して環境を調査するという行為も侵略準備と取られても仕方ない行為であったため、
 「地球側の残虐行為を追求しない代わりにこちらの行為についても謝罪しない」という政治的決断が下されていた)
父を殺した犯人やその協力者の引き渡しを迫るなど一方的な交渉を行う。
テレビシリーズと比べ、ややシニカルな印象を受ける。

後に母星に宇宙船だけを返し(母星に帰れば父の件を蒸し返した罪で処刑を免れないため)、地球に滞在することにしたようだが……



【登場オリジナル怪獣・ロボット等】

●魔杖
第1話「魔杖の警告」に登場。
怪獣でも宇宙人でもロボットでもない「兵器」、更に詳しく言えば「射出兵器の砲弾兼メッセンジャー」という
テレビシリーズにはない異質極まりない存在。
見た目は簡単に言えば銀色の超巨大なダーツの矢で、羽の後ろに某ロリコン嫌いの妖怪のような、
血走った白目に青い瞳の巨大な目玉が乗っているというもの(瞼というか皮膜で包まれており、瞼を閉じているとただの球体に見える)。
作中では上記のダーツやカンザシ、魔法使いの杖のようと言及された。
宇宙からまっすぐ地球へと向かい、シルバーシャークGによる砲撃を物ともせず、
重力や摩擦といったあらゆる抵抗を無視して一直線に大気圏内へ突入。
そのまま目標地点であるフェニックスネストへと「着弾」しようと迫る。
迎撃に出たガンウインガーのスペシウム弾を逆に制御不能にして地上に着弾させようとする、
メビュームシュートも効かず、逆に雷を発射してメビウスに大ダメージを与える等の強力な力を持っていたが、
最後にはメビウスの決死の攻撃で真っ二つにへし折られ、「着弾」失敗に終わった。
死亡(機能停止?)寸前にカナタと目を合わせ、眠るように瞼を閉じている。

メビウスによるとこの「魔杖」は警告として送られてきたもので、メテオール技術に手を出した人類が
またも「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」を始めることを危惧した宇宙の何者かが、
「もっと力がある者は宇宙にいくらでもいる。調子に乗るな」という意思を込め、文字通り釘を刺すために発射したらしい。
(実際、ただの射出兵器でありながら上記のような様々な力を見せている上に、もっと巨大なサイズであったら防ぎようがなかったと劇中でも語られている)

●ナーガ
第3話に登場したサーペント星人が操るロボット怪獣で、なんとあの宇宙竜ナースの強化型である。
当初は物質転送円盤として部隊の地球進攻用ゲートとして機能。
やってきたGUYSを迎撃するために本性を現し、サーペント星人の円盤部隊を守りつつ光弾を乱射して周囲に被害を与えたものの、
サコミズ隊長に撃った光弾を全て跳ね返されるという反撃を受け、メビュームブレードで首を全部切り落とされた上に本体をメビュームシュートで爆散させられるという念のいったやり方で倒された。
なお、名前こそナースに近く関連性もある蛇神のものだが、首が3つに増設されている。
本当のモチーフが丸わかりである(おまけに書籍版巻末付録にもしっかりと記載されていたりする)。

●アルビノ・ギラドラス
第5話に登場した怪獣で、『ウルトラセブン』で登場したギラドラスの同族だが、体色が白い。
初代と同じく天候を操る能力を持つ他、口から光弾を発射する能力を新たに披露している。
シャプレー星人に使われているのも初代と変わらず、セブンにしたように天候を吹雪に変えてメビウスを苦しめるも、
自身の攻撃を逆に周囲の温度を上げる篝火として利用され、調子を戻したメビウスに倒された。

●ユーゼアル
第5話「幸福の王子」に登場した巨大怪獣。
全長200mというウルトラシリーズ屈指の巨体を持つ怪獣で、地球にオタマジャクシのような姿で突入したかと思うと
ベムスターの飛行形態にビーコンの突起を付けゴルバドスの体表で包み、顔はギエロン星獣エレキングのような尻尾をつけた」
と表現されるいかつい姿へと変貌。「数年前に遭難した宇宙探査艇の通信を流しながら地球を飛び続ける」という奇妙な行動を始める。
当初は仮称としてギガンティアと呼ばれていたが、メイツ星人ビオからの情報で本来の名称が判明。
メビウスも名前だけは聞いたことがあり、宇宙でも幻とされるほど珍しい怪獣で、
「飢えた星に食べ物をもたらす」「遭難した者を故郷の星へと連れ帰ってあげる」
という、「宇宙の天使」とまで呼ばれる善性の化身のような存在であることが判明する
(飛行している時でさえ、衝撃波を緩和して周囲に被害が及ばないようにしていたほど)。
今回地球へやってきたのもその性質によるもので、宇宙人の攻撃により遭難した探査艇の生存者サエコを発見し、救難艇を体内に取り込む形で保護して地球に連れ帰ってきたのである。
しかし、誘導して地上に着陸させた際に地球侵略にやってきていたシャプレー星人の生き残りが忍び込み、
ユーゼアルのコアを手にしてしまったことで事態は急変する。

実はユーゼアルは「攻撃を受けるとそれを無効化出来るよう体質を自在に改変できる」「コアを手にしたものの意思と同調・融合することが出来る」という二つの性質を持っており、それを手にした者は宇宙の王にさえなれるとまで言われるほどの力を保有していたのである。
要は防御型で融合・操縦可能なイフという、想像するのも恐ろしい怪獣になり得るのだ。

シャプレー星人と融合した結果、背中から巨大なシャプレー星人の半身が出た「シャプレー・ビースト」と呼ばれる形態へと変貌。
GUYSやメビウスの攻撃も即座に適応して無効化し、最早打つ手無しと思われたのだが、ここで思いもよらない事態が発生。
突然シャプレー星人が苦しみだしたかと思うと、断末魔を上げて両者もろとも体が崩壊してしまった。

なんとユーゼアルは細胞が嫌気性で、酸素を浴びるだけで体が崩壊していくという性質も持っていたのだ。
にもかかわらず、ユーゼアルは体内でコールドスリープしているサエコが死なないように酸素を生成する器官を体に作って酸素を与え続け、
酸素が大気中に恒常的に存在する地球へ助けたサエコを送り届けに来たのである。
いかつい形態になったのも酸素に可能な限り耐えられるよう体を守るのと、
地球に何度か近づいた際にユーゼアルの力を狙う宇宙人に攻撃されたため、攻撃をかいくぐって地球にサエコを送り届けるために防御を固めた結果だったのだという。

無事サエコは保護されたものの、ユーゼアルの体で残ったものは茶色に変色して硬化したコアだけとなってしまった。
せめて残ったコアだけでも宇宙に返してあげたいと思い、カナタらは大気圏外まで昇ってコアを宇宙空間へと解放する。
そこでカナタが目にした奇跡とは――――



【余談】

前述の通り、TV版との分岐はメビウス中盤からであり『ウルトラQ』から『ウルトラマン80』までの話は、TV版同様「過去に起こった出来事」とされている。
そして「小説」作品故の自由度を使って、過去作の登場人物や防衛チームの装備が登場するなどTV版以上に昭和作品との繋がりが強く描写されている。

昭和作品以外の小ネタも1つだけ登場。
ジョージ曰く、「USAの連中は、やたら独自で改造してパワード何とかって名前を付けたがるけど、どれも今イチなんだよなぁ」との事。

文庫版も発売されているので、一度手にとって読んでみてはいかがだろうか。




追記・修正は、ウルトラマンから年賀状を貰った人がお願いします。

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最終更新:2024年04月01日 21:49