ザボエラ(ダイの大冒険)

登録日:2014/02/25 (火) 23:59:10
更新日:2024/03/28 Thu 02:50:31
所要時間:約 14 分で読めます





キィ~~~~~ッヒヒヒ!!

しっかしこいつら人間もちょろいのぉ…

殺されるとわかっとるのにくだらん愛などにこだわってなすがままとは…

こいつらの赤い血にもマヌケのエキスかなんかが入っとるんじゃないのか?



ザボエラとは『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の登場キャラクター。
CV.龍田直樹(1991年版)/岩田光央(2020年版)

【もくじ】

【概要】

魔王軍の幹部である六大団長の一人。
魔法使い系や悪魔系から構成される妖魔士団の軍団長で、肩書は妖魔司教
チビな体躯の890歳の魔族の妖怪ジジイ。

【人物】

魔王軍の中では珍しく自分の保身を何より第一に考える卑劣漢の狸爺。
智謀と出世欲を買われて六大団長に選ばれたらしく、強大な魔法力と陰湿な策謀を使って相手を追い詰め、自分の功績と出世を狙っていく合理的で狡猾な人物。
劇中では
  • ダイとクロコダインの再戦時には前もってブラスを誘拐し魔法の筒に封じておき、人質として使うようにクロコダインに渡した*1
  • バランの離反による失態で追い詰められていたハドラーに助力し、戦いで疲れ切ったダイたち一行を魔香で眠らせ色仕掛けまで使って彼らを無力化した(ハドラーも承知の上である)。
  • 超魔生物となった後初のハドラーとダイとの戦いの後、超魔生物ハドラーはべた褒めされるが彼を改造したザボエラのことに上司が誰も触れずスルーされた焦りから弱ったダイを探して倒し功績を立てようとする。
といった策謀を巡らせていた。

しかし、敵を陥れるだけならまだしも、味方を非常に軽視していることも特徴。
  • 上記のクロコダインへの策については友情などではなく、ハドラーに仮にまぐれだとしても手傷を負わせた相手なので保身を第一に考え、危険な役はクロコダインに任せて自身は策略で役に立ったとアピールする腹積もりだった
  • バルジ島決戦では部下をザボエラの姿にモシャスして影武者にし、クロコダインのに殺させている
  • ハドラーとともにダイたちを闇討ちして失敗した際には見捨てて逃走し、そしてハドラーが死んだと思った際に「役立たず」と零す*2
  • 超魔ゾンビを作り出すため、大魔宮最終決戦では部下たちの体に本人たちには秘密で細工をし、瀕死の部下はわざわざ自分でとどめを刺す。
加えて他人に取り入る事ばかり考えている割に相手の心情や場の空気を読み取る能力が致命的に欠けており、機嫌を取ろうとして余計な事を言っては相手を怒らせる事もしばしば。
こんな性格なので人望も壊滅的で、同じ軍団長でもは彼を毛嫌いしている。
比較的問題なく付き合えていた連中も戦死したり魔王軍から離脱したり性格が変わったりで、終盤はほぼ孤立していた。

またハドラー及び他の軍団長に取り入ることや勇者一行を倒して手っ取り早く手柄を挙げることを優先したため、本来の任務であるベンガーナ王国侵攻を疎かにしていたようだ。
恐らく配下の妖魔士団も小競り合い程度の戦闘はしたようだが、戦車隊にあっさり撃退される程度であり、超竜軍団や魔影軍団の方が遥かに被害を与えていただろう。
そのせいかベンガーナ王は魔王軍を舐めプしており、結果的に世界サミットでベンガーナが協調路線を取るのを遅らせたと言えなくもない。
まぁ、直後にミストバーンの大暴れとダイの活躍で考えを改めたので全体からすれば秒の差だろうけど

【戦闘能力】

老体かつ小柄な肉体相応に身体能力はとても低いようで、魔法・魔力や体内に流れる毒素を使って戦う。
近接戦ではノヴァの剣を躱すのが精一杯で反撃もおぼつかない姿を見ても、後衛や暗殺者向けの能力だろう。
クロコダイン曰く「かつて六団長が集結した際には絶大な魔力で一目置かれていた」とのこと。
しかし、後述のように他人の力を利用することで成り上がろうとする場面のほうが多い。

初登場ではアバンの残したマホカトールに音も立てず、ダメージを受けずに自在に出入りするという離れ業を披露した。
地味ではあるが、このマホカトール、ハドラーでさえ通るために苦心した代物である。
魔力に関しては少なくとも初期ハドラー以上のようだが、極大呪文に関しては作中で披露していないため習得しているかは不明。
肉体への負担を嫌って使っていないのかもしれない。

装備

  • 妖魔の杖
ザボエラが常に持っている杖。先端にクモの意匠が施されている。
一応他の魔法使いキャラ同様、魔法の媒介として用いることができる模様。
もっとも、ザボエラ自身前線に立つタイプではなかったので、使われたのは後述のマホプラウスが唯一。
本人がジジイということもあり、本来の杖として用いられていることの方が多い。
脱獄後はなぜか所持していなかったので、収監された際没収されたか、脱獄の際に失ったものと思われるが、それで別に困っている様子もなかった。

  • 魔法の球
モンスターを収納して自在に出し入れできるアイテム。
魔法の筒の改良型で、一度に何十匹ものモンスターを詰め込むことができ、「デルパ」の号令で球が破裂し大量のモンスターが飛び出て来る。
使い捨てかつ手持ちサイズで繰り返し使える魔法の筒と比べると運用には手間のかかる装置であるが、部隊を組める数の魔物を小スペースで移動、潜伏させられるため軍事的な輸送装置やトラップとして見るとかなり有効。
作中でも処刑場の周囲に多数隠していたこの球の中から魔界のモンスターを大量に解き放ち、伏兵とすることでダイ達を奇襲した。

  • 毒牙の鎖
……こいつでくたばってもらおうかのォ…
このワシの…洋々たる未来のためにな…!!!

ザボエラの魔力と数百種類の毒素を染み込ませた禍々しい刃が備わったペンダント型アイテム。
これを雁殺しのように振り回したあと目標に向かって投げつけると、光弾となって対象に襲い掛かる。
毒の威力は凄まじく、掠っただけでも相手は死に至るほど。

呪文

死の言葉。
パプニカの老剣士バダックに対して使用。
ただこの漫画のザラキは「相手を死に誘う不気味な声が聞こえ、その声に負けた時に絶命する」という遅効性のものらしく、即死系呪文ではない。
即死でなくとも耳を塞いで耐えている間も相手を無力化できるので、使う状況次第では恐らく戦士系であるクロコダインやヒュンケルなどにかなり有効だったと思われるが、結局バダック爺さん以外に使うことはなく殺すことも出来なかったためパッとしない結果に終わった。
ぶっちゃけバダック程度ならベギラマ一発撃ってれば瞬殺だったろうに

  • モシャス
変身呪文。
自分だけでなく他人も変身させられるようで、バルジ島の戦いでは祈祷師を自分の姿に化けさせてクロコダインの攻撃から逃れるための身代わりにした。
テラン王国ではマァムに化け、ポップを騙す際に使用。
ポップも修行を唐突に切り上げて帰ってきたマァムの態度を彼女らしくないと怪しんだものの、未熟さと惚れた弱みでまんまと騙されてしまう。
これにより後述の毒素を注入され動けなくなってしまった。
ザボエラらしい卑怯なやり方とも言えるが、この作戦の立案にはハドラーも関わっている可能性が高い。*3

閃熱中位呪文。
マトリフとベギラゴンを撃ち合っていたハドラーに加勢すべく使用した。
ベギラゴンを習得しているのかは不明だが、作中のベギラゴンとイオナズンは両手でなければ使えないためにどのみち使うことはできなかった。

マホプラウスを使用する時に「ワシとサタンパピー全員分のメラゾーマ」と発言している。
そもそもこの作品のメラゾーマはある程度実力のある魔法使いにとっては常識レベルの呪文なので、仮にも妖魔士団長のザボエラが使えないということはないと思われる。
明言はしていないが、ヒムに捕まった時に抵抗して放った呪文もこれであろう。

  • イオ
爆裂系呪文。
ロロイの谷に隠していた魔法の球を岩肌から露出させるために使用。原作では一度に8発ほど放っていたが、アニメ版では地道に1発ずつ放った。

  • マホプラウス
集束呪文。
敵味方の呪文を受け、それを自らの力として取り込み、自分の魔力と合わせて放つ大技で、彼の使用する技としては最強のものらしい。
作中ではメラゾーマ十数発をぶっ放そうとしていたが、割って入ったヒムのオリハルコンのボディには当然の如くノーダメ―ジ。そしてこれ1回だけの出番だったので凄さがあまり伝わらなかった。バルジ島の戦いあたりで使ってたら有効だっただろうに。
魔法の威力はほぼ手下の雑魚モンスターのメラゾーマによるものとは言え数が数だけに、メドローアすら弾く伝説の武器『シャハルの鏡』を一撃で粉砕したカイザーフェニックスを除けば本作最強のメラ系呪文に値する威力があったはずである。
ポップもこれを見て禁呪と戒められているフィンガーフレア・ボムズを撃ったとしてもハドラー親衛騎団に効かないと確信し、メドローア習得の切っ掛けとなる。

前述の威力を誇示したものの、ほとんど他人任せだというのにさも自分自身の大技であるかのような形に仕立てるためか単行本の必殺技辞典では卑怯な技扱い
発想自体は勇者の呪文であるミナデインに似ている*4が、MPだけを供給する(デイン系呪文を使える必要はない)ミナデインと異なり、
協力者自身が攻撃呪文を使えるのだから「マホプラウスで集めなくても集団で攻撃呪文の弾幕を張ればよくね?」という別案が通るのが問題。
特に本編の局面だと、ヒム1体では面制圧射撃には対処しきれなかっただろうし、後に大魔王バーンもこの通りに「質より量」の戦術転換を行っている。
そして、ドラクエの世界だと武器攻撃は「攻撃力を上げて敵の守備力を超える」必要があるが、呪文攻撃は守備力を無視するのでマホプラウスで単発の威力を上げること自体意味が薄い。
意味があるとすれば、爆弾岩のような一撃で仕留めきれなかった敵からの反撃が怖い時くらいのものである。

また、取り込める呪文は術者自身が使えるものに限られるが、性質上敵からの呪文であっても吸収して打ち返すことが出来たと思われる。
しかしその場合、「メドローアに見せかけたベギラマ」などというものを作れる世界なので、例えば「見た目はメラゾーマそっくりの不安定な魔力の塊」を作って取り込ませ、
異物混入で制御不能に陥り、メラゾーマ十数発分の盛大な自爆という策士策に溺れる末路をザボエラが迎えていた可能性もある。最後の相手がクロコダインでなくマトリフあたりだったらそういう形で出番を得ていたかもしれない。

  • 拡散魔法弾(名称不明)
瀕死の部下のモンスターを超魔ゾンビの部品とするためにこの技で皆殺しにした。爆裂系呪文とは違うようだが、ノヴァが呪文と口にしていたことから呪文の一種のようである(既に瀕死とはいえ数百匹のモンスターに狙い撃ちできるのは地味にすごかったりする)

特技など

  • 光の環(名称不明)
ハドラーが大魔王バーンを追い詰めた際、ザボエラが乱入してハドラーをこの技で縛り付けた。
このときのハドラーは、死の淵から甦って(舐めプしてたらしいとはいえ)あのバーンさえも追いつめるほどの強さだったが、その彼の力をもってしてもすぐには外せず、ブロックが隠された力を発動させて救出しなければ成すすべなくそのままバーンに倒されていた。
新アニメ版でも正式名称は不明のままだったが、「自分も動けないが相手も動けない」という味方のサポート専用の能力だと明らかになった。

  • 体内を流れる毒素
体に数百種に及ぶ多種多様な毒素が流れており、それを体内で調合。混乱や麻痺、催眠、即死など、様々な効果を持つ毒薬を作り出して爪から注入する。
この毒は大魔道士が扱うキアリー(解毒呪文)でもなかなか治癒できなかった。
そして彼の扱う最上級の毒ともなると、ザオリク級のエネルギーで回復を行わないと解毒出来ない。
上述のようにポップを行動不能にしたほか、最終盤ではクロコダインを操るために用いようとしたが…。

  • 魔香気
ザボエラが体内に持っている毒素から作り出した瘴気。
バランとの戦いで疲弊しているダイ達に眠りの魔香気を放ち、より深い眠りに落とした。
効力は高く、ベギラゴンのぶつかり合いによって大地が抉れる程の大きな物音が生じても起きる事がないほどだが、竜の血の影響で強い耐性を得ていたポップには効き目が薄かった為、上述のようにモシャスでマァムに化け爪から直接体内に毒素を注入した。
アニメではなぜかアイキャッチとして採用、ザボエラ(及びザムザ)の活動しているシーンでは最初から最後まで登場し印象に残る。

  • 超魔合成
超魔ゾンビの生成に使用。
大量のモンスターの死体を宙に浮かせ、ザボエラのもとに結集。そこから粘土をこねるように超魔ゾンビを作り上げていく様は中々グロい。


【科学者としてのザボエラ】

超魔生物となったハドラーがダイたち一行にとってどれほど脅威になったかは、ハドラーの項目を参照して頂こう。
超魔ゾンビも、ロン・ベルクの必殺技がなければ止めることはほぼ不可能だったと言ってよく(後述)、科学者としての彼の頭脳は、最終決戦付近に至るまで存在感のあるものだったのだ。

前回の課題をすべてクリアして初めて“改良”と言う…!!

という彼の言葉、およびその行動から明白な彼の価値観から推して、科学者としては基礎理論研究よりは実利的・実用的な面を重んじるタイプの人物のようである。
また、科学技術に関しては妙な秘匿癖のようなものを持っていて、あまり自分からは明かしたがらない。
超魔生物や超魔ゾンビの研究では、ハドラーやミストバーンに対し隠れて独自研究しているのにそれが当のハドラー等には見抜かれていて出せと脅されうろたえると言う形になっていて、
これは言うなれば軍団長の職務と合わせると「仕事をせずプライベートで学術的に意味のあるテーマを執筆し、当人はそれを隠せているつもりだったが上官に筒抜けで見透かされている軍人」のようなものである。
そりゃいくら研究が凄くても組織の気風や性質に関係なくその姿勢は評価されないだろう。
研究者としては凄いのに研究職ではなく表舞台の策謀家としての評価を望むザボエラの能力と技術と願望のズレが起こした事態とも。

他作品のマッドサイエンティストキャラは、「自分の研究さえ邪魔されなければ他はどうでもいい」「良好な研究環境を与えてくれる組織には感謝するが、別に出世欲はない」というキャラクター設定であることが多いことを考えると、「マッドサイエンティストなのに出世欲の塊」というザボエラはなかなか異色なキャラであると言えなくもない。
その辺の「妙な人間臭さ」も悪役でありながら一種の魅力に繋がっているのかもしれない。

超魔生物

「魔力の扱いには長けるが、代わりに肉体面が貧弱」という妖魔士団全体の悩みと欠点を克服すべく考案された技術。
本編で初めて超魔生物として登場したのはザボエラの息子ザムザ
魔族の体に様々なモンスターの長所のみを取り入れ、移植することで作るある種のキメラで、ザボエラの研究の集大成である。
作品が違うが、ドラゴンボールセルが近いだろうか。
ザムザ曰く、その最終目標は竜魔人に変身したバランにも匹敵する力を得ること。
戦闘中に受けた傷が高速再生したり、防御力、攻撃力も変身前とは比較にならないほど上昇する。
欠点は「超魔生物化すると呪文が使えないこと」「生命力を著しく消費し、寿命を縮めること」の2つ。
だが、ザボエラは変身能力として一時的に超魔生物化するのではなく、
体そのものを完全に超魔生物にすれば、魔族に戻れなくなるものの超魔生物になりながら呪文を使用できることを発見し、魔族であることを捨てる覚悟をしたハドラーを強化することに成功した。

2020年版アニメではダイと超魔生物ハドラーの初対決を悪魔の目玉を通して見ているアニオリシーンが追加。その際、神が作った竜の騎士を自分が改造した超魔生物が超えた=ワシ自身が神を超えた=ワシこそが神!!
…という発言をしている。何言ってんだコイツ

ちなみにその戦いの後、ハドラーが大魔王バーンにお目通りに行く際、アニメでは原作と違いザボエラが後ろからついて来るが、自分が入る前に部屋の扉を閉められたため外からバーンとの会話を盗み聞きするシーンに変更されている(なお水晶玉は懐から出して原作通り八つ当たりで破壊された。「解せぬ。」)


超魔ゾンビ


超魔!! 合成〜〜ッ!!!


ザボエラが部下の魔物達の死体を魔法で合体させて作り上げた怪物。
屍肉の集合体故に超魔ゾンビ自体には自我はなく、ザボエラ自身がゾンビ内に入って操作する一種のパワードスーツである。
ザボエラ曰く「究極のパワーアップ」

超魔生物への改造は、ザムザやハドラーの例を見ても分かる通り寿命を削るほど凄まじい肉体への負荷を伴う上、閃華裂光拳などの有効な攻撃方法が存在している。
しかし、閃華裂光拳は回復呪文を攻撃に転用する技。それなら「既に死んでいるゆえに生体活動が存在せず回復魔法を受け付けない死体を自分が操るならば通じない」と言う逆転の発想から生まれた。
また、超魔生物の強さこそ認めるものの「他人を改造するならともかく自分がなりたくはない!!」と考えていたのも開発の動機に含まれている。
操作はあくまでも(武術的に素人な)ザボエラ本人が行うため、ロン・ベルクのような達人の動きにはついていけず機動力や反応性に劣り、また呪文も使えず武器のボーンスキュルも星皇剣に斬り付ければ折れてしまうなど、火力も高いとは言えない。
そのため、防御面はいざ知らず総合力で見れば明らかに超魔生物には劣るが、「自身は武術の達人ではないが、それでも強い肉体を得たい」「自分の体に負担をかけたり寿命を縮めたり、危険を冒したりはしたくない」というザボエラ本人の理想にはより適合したものだと言える。

そのスペックは腕力勝負でもクロコダインを圧倒しており、並大抵の呪文も効かない。
数百体のモンスターの屍肉が固まったことで脅威的な物理耐久力を持つのが大きな特徴。
  • 痛覚を持たずあらゆる衝撃を吸収するゴムのような弾力ある肉質。
  • 屍肉の毒素が凝縮した結果武器の刃が肉体に食い込むと武器が腐食し、ゾンビに食い込むだけで打ち抜く事ができず、そればかりか武器が抜けなくなって手放さざるを得なくなる。
という二重の防御によって桁違いのタフさを発揮する。
更に作中実際に作った超魔ゾンビの体積が大きく、ノヴァの生命の剣のような、多少はダメージを与えられる武器でもそうそうザボエラ本体までは攻撃が届かないという極悪仕様。

ただ、超魔ゾンビの体に邪魔されるからか操作に忙しいからか、呪文を使えないという超魔生物の問題点が復活している。
仮に呪文の使用も可能だったとしても、超魔ゾンビ破壊後にはザボエラですらルーラも使えない程に衰弱していたので、まだまだ改良の余地があった模様。
もっともミストバーンに見捨てられたため、事態を打開するためにやむを得ず見切り発車的に使った感が強かったので、弱点そのものは分かっていた可能性がある。
それに、魔法が使えないという欠点を補って余りある猛威を振るっていた。
死肉でできているため再生能力はなく、武器が食い込んだり貫通したりしている描写もあるため、時間をかけてダメージを蓄積させれば倒せそうだが、作中ではミナカトールの魔法陣を守らねばならないためにそのような持久戦に持ち込む余裕はなかった。

「あの古狸め 叩かれてやっと手の内をみせおったわ」

超魔ゾンビはザボエラの理想である「自分の肉体は一切傷つかずに思い通り動かせてなおかつ一方的に敵をいたぶれる能力」を体現したもので、ノヴァは「最低の発想」と戦慄している。
雑魚を数だけ集めても勇者の必殺技や呪文などでまとめてなぎ倒されるような世界なので合理的ではある*5が、
そのために自分の部下に細工をした上に部下が全滅するか、生きている部下を皆殺しにしてにして使いつぶすことが大前提であるため、ノヴァの言った通り下衆の所業でしかない。ノヴァが批判したのはこの欠点であろう。
仮に超魔ゾンビで勝てたとしても、ザボエラは部下たちの信用も失ってしまった可能性が高い。
さらに言えば、超魔ゾンビを作れるほど程の死体がある=自軍が実質壊滅している状況でないと発動出来ないという事でもあるので、窮地を打開する切り札とも言い難い。
この点は敵兵の死体でも再利用できる不死騎団のアンデッド軍団のほうが汎用性に勝るか。

……ぶっちゃけ「閃華裂光拳対策に全振りしすぎじゃね?」とも評価されがち。
状況が状況だったので猛威を振るったが、仮にポップかマトリフ、あるいはヒュンケルがいたら鈍重な肉鎧などメドローアやグランドクルスの格好の的なので一瞬で消し飛んでいただろう。
まぁ状況を読んで的確な手札を切るのも策略のうちと言えばその通りであるし、上記の通り単にまだ試作段階で完成していなかった可能性も有り得る。
まぁ、グランドクルスはともかくメドローアはザボエラ幽閉後に初めて使われ、バーンとの初戦で使ったのを目撃されたかも不明なので対策できてないとしてもやむを得ない点はある


【作中での活躍】

初登場時はハドラーすら凄まじい衝撃と共に打ち破ったデルムリン島の光の魔法結界を音も立てずに通り抜けるというなかなかのインパクトを見せた。

デルムリン島へ侵入後、ダイの養父であるブラスを攫い、初戦でダイに撃退されたクロコダインに対して「このままでは魔王軍に居場所がなくなるぞ」と脅しつけ、誘拐したブラスを人質にする作戦に協力させる等、序盤から下劣な策を取った。

表舞台に立つのはクロコダインだが、策を授けたのは自分であるため地位の向上に繋がると部下と共に笑っていた。
しかし、彼は戦士としての誇りに迷いを生じた末に敗北。密かにその遺体を回収し、復活させるために蘇生液に浸からせたが、再び見に来た時にその姿はなくなっていた。
……後にヒュンケルも指摘しているが、もしクロコダインが迷いも何もなく正面きってダイ達との再戦に挑んでいたとしたら、間違いなくクロコダインが勝っていた。
結果論で言えば、ザボエラの策がダイ達の成長とクロコダインの離反を招いてしまったのだ。

ハドラーと共に地底魔城を訪れた際は、「ヒュンケルがバーン様に気に入られている」という話を聞き、取り入ろうと目論む。
手始めに捕虜としていたマァムを弄べるようにする事をほのめかすが、かえってヒュンケルの逆鱗に触れ「六団長の恥」と一蹴され逃げ帰る。
この時点から「他人に取り入ろうとする癖に他人の心情を推し測ろうとしない」性格が端的に示唆されていた。

バルジ島の戦いではミストバーンと共に自ら出撃し、初めてダイと対面。バダックにザラキを放って苦しめる。
しかしダイに合流したクロコダインの加勢により劣勢を覆される。
クロコダインから卑劣者として殺意を向けられるが、部下の妖術師をモシャスで自分の姿そっくりに変身させ身代わりにして逃げ去った。

その後、ダイの額に謎の紋章が浮き出たことについてバランに話したため、バランにダイの正体を気づかせる要因となった。

そのバランがダイたちに撃退された後、休息中のダイ一行をハドラーと共に襲撃。
マァムに化けてポップに近づくと不意打ちで戦闘不能にした。
ポップにトドメを刺そうとするが、駆けつけたマトリフによって片腕を切断されて阻止される*6
マトリフと戦うハドラーに加勢して優位に立つも、ダイによって呪文を跳ね返され撃退される。

ハドラーが死んだと思って「力添えを続けてきたのに役立たずが!」と吐き捨て、今度はミストバーン辺りに取り入ろうとするが、直後に生きていたハドラーから「オレとお前は最早一蓮托生。切り捨てるなら命はない」「超魔生物の研究をオレのために使え」と脅しつけられる。
以降は「魔王軍の科学者」というポジションが強調されるようになる。

しかし、自らが超魔生物へと改造・強化したハドラーがバーンへの謁見を許された場面で、誰一人改造を行ったザボエラ及び妖魔師団の功績について一言も触れなかったことに焦り、自らの手で直接ダイを仕留めて功績を立てようとする。
元同僚であったクロコダインにも居場所がなくなったのだろうと看破されるも、優位に立ちダイを仕留めようとして放った魔法がヒムに止められて失敗。許可なく独断で軍を動かしたということで処罰されてしまう。
それでも、ハドラーは自身を超魔生物に改造した功績と、そのために息子を亡くしたことを踏まえ、頭が冷えるまでの幽閉処分にとどめている。
一皮剥けたハドラーにとってもはやザボエラは重要な存在ではなくなったが、超魔生物改造前に「もはやおまえとオレは一蓮托生」と言っただけあり、温情をかけられている。

ハドラーとバーンの戦いの際、バーンを一瞬追いつめたハドラーを背後から魔法で拘束し、*7
バーンを救出するという特進ものの功績を挙げ、「魔軍司令補佐」の肩書を得てミストバーンの部下になった*8

しかし、その後でさえ、「どうせ捨て石にされてくたばる奴」とハドラーを貶したことが原因で当のミストバーンにマジギレの末罵倒されている。
バーンを何より優先するミストバーンが、曲がりなりにもバーンの命の恩人を、バーンに逆らったハドラーを貶したという理由でマジギレするのだから、ミストバーンのザボエラに対する評価はこの時点でマイナスに振りきれていた可能性が高い。
まあそれまでの所業が、自身の保身ばかり考え、行動についても敵どころか味方すらも食いものにするものばかりだったので、その評価も当然と言えるだろう*9

そして最終決戦。
ミナカトールを発動しようとするポップに猛毒の鎖を打ち込もうとするが、メルルの妨害を受け、ポップ覚醒のきっかけを作ってしまった。
更に、その後地上に集まったアバンの使徒抜きの軍団に魔王軍の強力な魔物たちが大苦戦してしまう。

旗色が悪くなったと見たザボエラは「バーンパレスに戻ってバーン様をお守りする」とミストバーンをぶつけて自分だけ逃げようとする。
しかしとっくに愛想を尽かしていたミストバーンにそんな詭弁が通じるはずもなく、逆に「この場の人間どもにすら敵わないお前が今バーンパレスにいるダイ達相手に何が出来る」と言い負かされてしまう。
言葉に詰まるザボエラに、ミストバーンは淡々と「人生のツケというヤツは自分にとって最も苦しい時に必ず回ってくるものらしい」と告げる。つまり今がその「最も苦しい時」なのだと。
上にも下にも絶対に勝てない相手がいて、そして味方の筈のミストバーンは自分を全く信用していないというこの状況さえザボエラは理解できていなかった。
「自分のために他人を利用してきたザボエラだったが、既に逃げられる場所などない上に魔王軍の中でもっとも自分を信用していない味方」を利用しようとして逆に魂胆を見破られたザボエラは何も言い返せない。
それでも情けない声で自分を呼び止めるザボエラにミストバーンは

…たまには自分の手足を動かせ…!

とこれまで楽をして出世することしか考えなかったザボエラの性根への侮蔑をこの上ない正論で論破。「何の成果も無いまま逃げ帰れば処刑されるだけだ」と冷笑と共に突き放される。
そして言うに事欠いて「共に戦ってきた仲間を見捨てるのか!」などという、全く以て似合わない「正義の使徒どもの金看板」のような台詞まで持ち出して縋るが…

仲間か…それほど付き合いの長い「仲間」ならば…こういう時に私が何と答えるのかも十分承知している筈だが…?

!!!…だっ…「大魔王様のお言葉は」っ…

…そう、「全てに優先する」のだ…!

今度こそ完全に論破され、ダイ達迎撃のためにバーンパレスに戻ったミストバーンに戦場に置き去りにされた。
これまで他者を踏み台にしては保身ばかり図って来た男が、自分の所業が巡り巡った形となって最後の最後で切り捨てられる側となったのだ。
しかも、ハドラーを侮辱した後のミストバーンからの死刑宣告も「強者とは強い奴ではなく、最後まで戦いの場に残っていた奴」と内心で軽んじていたザボエラだが、「今、自分が置かれている状況はまさに持論が最も最悪の形で覆された」瞬間でもあった。

たった一人になったかつての同僚を流石に憐れむクロコダインは、ザボエラに降伏するよう勧告。

ザボエラ、こうなればもう他に手はない。降伏しろ
このままバーンパレスに帰っても処刑される。かといってこの人数を相手に勝てると思うほどお前もバカではあるまい

…バカ?バカか……くっ…くくくっ……クヒャ~ッハッハッハッ!!!
笑わせおる!笑わせおるわ!よりによってバカの代表みたいなお前に、このワシがバカ呼ばわりされるとはなぁ!!

しかしザボエラはそんなクロコダインの最後の情けを哄笑ともに一蹴。その場に倒れていたモンスター達の死骸を、自身の奥の手たる超魔ゾンビへと超魔合成する。
そのパワーと毒素で暴れ回る超魔ゾンビであったが、ロン・ベルクの捨て身の一撃の前に超魔ゾンビも敗れ去った。
一応、ミストバーンと互角に渡り合うロンを戦力として使えなくしたこと自体は、かなりの戦果ともいえるのだが…それでも切り札を潰されたという意味では精々相討ちも良いところ。

尚もギリギリ生き残っていたザボエラだったが、もはや逃げる魔力も策もなく這って逃げるのが精一杯。そんな彼を見つけたのはかつての同僚クロコダイン。
ザボエラはまだ策があると揺さぶるが、クロコダインは「何があろうとも保身だけは欠かさない筈のお前がここに居る時点で、もう万策尽きている」と、ハッタリだとあっさり見抜く。

バカの代表にハッタリを見破られながらも、ザボエラはまだ諦めていなかった。自分が知恵比べで負けるはずがないと考え、ついに惨めな命乞いをする。
流石のクロコダインも、戦う力のないザボエラには手を差し伸べ許すことにした…

(クロコダイン!やっぱりおまえは底なしの愚か者よっ!!)
(ウドの大木!!いやっ…ワシの人生の踏み台を作るための…材木じゃああっ!!)

ザボエラの体内には何百種類もの毒素が流れている。
カスっただけでもクロコダインの意識を奪い意のままに操る猛毒を爪に入れ、ザボエラは最後の反撃を狙っていたのだった。
勝利を確信したザボエラは本性を露わにしてクロコダインに襲いかかった!

そおらああっ!!!!





しかし、クロコダインには読まれていた!!

さっと手を引かれてザボエラの手はあえなく空を切り、更には上に準備してあった斧の柄を腕の上からドシンと落とされ、身動きもとれなくなった。
そして…

頭の悪いオレだがだまされ続けたおかげで、一つ物を知った…
それは……!

この世には、本当に煮ても焼いても喰えぬヤツがいる!
…という事だ!!


まっ…待ってくれェッ!!!クロコダイッ…

演技ではない本気の命乞いも最早通じず。
闘気弾を食らい、ザボエラは服を残して煙を出しながら溶けて消えてしまったのだった。おそらくは体内の大量の毒素が術者の死で暴走し、自分自身が溶けてしまったのだと思われる。
自身が手掛けた超魔生物と同様、死体さえ残らない末路をたどったのである。
材木は材木でも、「踏み台」ではなく自らの「処刑台」を作ってしまったと言えよう。
正に、ミストバーンが言ったように「己のために他人を利用してきたザボエラの人生のツケが一番バカにしていた相手に逆にだまし合いで負けて殺されるという形で回ってきた」瞬間であった。

六大軍団長に選ばれる実力を備え、その頭脳で敵はおろか味方さえも翻弄し続けたザボエラ。
だがその最期は散々侮り利用し続けた「頭の悪い」相手*10に得意の謀略で負けるという哀れなもので、最初にハッタリが見破られた時点で既に負けていたことさえ分からない有様だった。
クロコダインは彼を正真正銘のクズと評し、一度は甘言に乗せられた自身のことを顧みつつも、
かつては魔王軍内で一目置かれるほどの強大な魔力を持ちながら、こうして堕落に至ったことには憐れみさえ感じたのであった。


【評価】

作中でも卑怯なキャラとして味方の魔王軍から「ダニ」「煮ても焼いても喰えぬ奴」「ドブネズミ」などなど軽蔑的な扱いをされていたのが目立ち、いい扱いは全くされていない。
魔王軍における卑怯者と言えば、ザボエラの他にフレイザードやキルバーンも当てはまるが、
フレイザードは出世欲のために自らの命を削る事も厭わなかったし、出世とは無縁で目的も異なるキルバーンは基本的に裏方に徹していて魔王軍の邪魔をすることはなかった。
それに対しザボエラは、自らが傷ついてでも結果を出そうとする覚悟を持たず、出世欲から裏方に徹するということもなかった。
その中途半端さも、彼の評価を貶めた要因と言える。

ただ、あまりにも作中での評価が低かったせいか、一部の読者で評価しようという声もなくもない。

ザボエラの能力は、先述した通り決して低くなかった。
特に超魔生物や超魔ゾンビを作り出した科学力は、序盤どころか終盤に至るまで脅威であった。

「自分の肉体は一切傷つかずに思い通り動かせ、なおかつ一方的に敵をいたぶれる能力」という彼の理想はその工程と相まってノヴァから最低の発想だと誹りを受けたが、長所だけ見れば兵器開発のコンセプトとしては至極真っ当かつ王道的なものであり、更にザボエラは明らかに体力などに劣るということもあり、最低だが合理的な発想ではある。

他人を利用することを重視しすぎたあまり前線で戦う機会が無かったせいか、実戦における勘が欠落している節が垣間見え、呪文が得意なことは間違いないが実戦は得意ではない様子がうかがえる。
いかんせん肉体が貧弱すぎるのは確かだが、その呪文能力をもっと真っ当に活用する意識を持って努めていれば、もう少し実戦でも活躍できていそうな感はある。

また、魔王軍が結成された当初はその強大な魔力で一目置かれていたとクロコダインも述べている。
ハドラーもダイとの決戦時に「思えば魔王軍六大団長は最強のメンバーだった」とザボエラを含めて省みて、その敗北の原因を「指揮官であるオレの心に野望と保身以外の感情がなかったからだ」と分析している。
何かが違えばその末路は違ったかもしれないと思わせるだけの能力はあったのだろう。
散々ザボエラを罵倒したミストバーンでさえ、超魔ゾンビを出したザボエラを見て「これで地上は何とかなる」と言っていた点からしても、能力面についての信頼だけは最後まで持っていた節がある。

ザボエラは数少ない、離反しなかった軍団長と言う点は評価はしても良いだろう。
最後にクロコダインに見つかった時にも、本気で降伏しようとは全く考えていなかった。
人格面を評価されたキャラは信念に基づいた決断とは言え、基本的に魔王軍を裏切っている。
…とは言え、どう見ても裏切らなかったのは忠義などではなく、保身を第一に考えていただけ*11なので、強いて評価すべき点とまでは言い難い。

そもそもザボエラが徹底的に不遇な感じに陥ったのは、前述の通り、あらゆる点で、周囲を利用して自分だけ甘い汁を吸おうとしたという精神性が周囲にバレバレであったことが最大の原因であり、
多少見るべきところがあったとしても、敵も味方も彼を軽蔑するのは当然の話である。

また結果だけ見るとザボエラの策略はハドラーを強化したことでバーンを危機に陥らせたり、メルルを傷つけたことでポップの覚醒を促すなど裏目に出てしまったことが殆ど。
特にクロコダインに卑怯な人質作戦を実行させた結果、それを悔いてダイ側につくきっかけを与えてしまったのが致命的である。
クロコダインがザボエラの策に頼らず正々堂々と戦えば勝っていた、というのはヒュンケルのみならず作者も認めている設定だったりする。

ただし、彼にとって不幸だったと言える出来事もいくつかある。
  • 最も意気投合出来そうで、連携も取れそうなフレイザードをはじめ、取り入ろうとした軍団長などが次々離反・戦死し、取り入り先を乗り換えることが必要になってしまった。乗り換えが不要ならば、ザボエラの性格もここまで露呈しなかった可能性はある。
  • そもそもフレイザード以外の軍団長は武人系の人物ばかりだったので策を受け入れてもらえなかった。さらに知らなかったとはいえ、よりにもよって魔王軍の事実上のNo2であるミストバーンのコンプレックスを土足で踏み躙っていた。
  • 策そのものは感情面を配慮しなかったり、味方のことを気にしなければいずれも効果的ではあったが、いずれも想定以上の実力を相手が発揮して失敗してしまい、それどころか怒りを煽った結果、敵の強化や味方の裏切りに繋がった。
  • 功を焦った独断専行とは言え、ハドラーと戦って消耗したダイを襲ったことを、ハドラーの武人としての拘りから軍規違反ということで握りつぶされた*12
  • 常に保身を考えていて既に評価は落ちる所まで落ちていた状態だったため、マホプラウスが評価されなかった。
……同情できる点もあるものの、ここらもよくよく考えれば大体は味方のことを気にしないゲスいことばかり考えたことが巡り巡った自業自得と言える。
信頼を損なうのは簡単だが、取り戻すのは難しいのである。
成功していれば、結果オーライでザボエラが評価された可能性もあっただろうが、不成功に終わってしまえば、例えその原因が不運であろうと「人間関係が破壊される」という最大級のリスクを負わなければならないのがこの手の策謀なのだ。

優れた科学力・魔法力・智謀があったことは確実であるし、周囲の力を借りるという基本戦略も方法によっては十分有りだろう。
例えば力を借りた相手に感謝の念を持って立てることを忘れず、魔王軍のために尽くす姿勢を見せていれば、同じ策を使って失敗しても評価はだいぶ変わっていたはずである。
ザボエラは他者に感謝をしないどころか、味方の神経を逆撫でする言動で味方を怒らせることすらしょっちゅう。
作戦のためやむを得ず他人を怒らせても仕方ない…というのならばともかく、明らかに作戦に関係のない言動でも他人を怒らせまくっており、場の空気が致命的に読めない。
ミストバーンに黒の核晶について問い詰められた時など、「ハドラーに埋めたのはバーン様と思ったので、自分の一存で取り外すことはできない」とでも言えばバーンへの忠誠第一のミストバーンのこと、ザボエラを軽蔑したくてもできなかったはずである。
せめて表面だけでも出世欲を抑えて自身だけでなく味方のことも考えていけばもっとまともな過程・結末を迎えていたことは想像に難しくない。
内部のごたごたが原因で敵が十分に力を発揮できず自滅というのは少年向け作品の王道というか勝利補正として不可欠な存在でもあるのだが

というか、実際の所、自分の立場を本当に把握できていたか怪しい部分がある
ハドラーと戦って消耗したダイを襲った時の事を思い返してもらいたい。この時ザボエラは自分の居場所がなくなっていると思って独断専行に出たが、
そもそもダイを追い詰めるほどハドラーをパワーアップさせたのは誰だっただろうか?ザボエラである
そう、この時点でザボエラは魔王軍の最高幹部のパワーアップに貢献したという立派な功績があるのである
ハドラーもその事をしっかり評価していたし、ザボエラ嫌いのミストバーンにしても、この時点ではハドラーの体内の黒の核晶を知らない為、ザボエラの功績を否定する理由が何もない。
つまりその点をきちんと主張すればここで功を焦る必要などなかったはずである。*13
何故いつもは甘い汁を吸おうとするのにこういう時だけそれをしないのか…

また、最終決戦の際に魔軍司令補佐に出世した事を自慢する一幕があるのだが
  • 前述の通りハドラーや他の軍団長が居なくなったことによる単なる繰上り
  • 魔軍司令補佐という事は魔軍司令のすぐ下な訳で以前の軍団長時代とほぼ同じ*14
  • 同格だった筈のミストバーンが上司になったので相対的にはむしろ降格
と、何だか単に肩書に誤魔化されているようにも見える。それとも最終的に生き残っていればもうどうでもいいのだろうか…。

また、後述のスピンオフにおける描写を見る限り、そもそも魔王軍に所属する前は単なる在野の科学者であり、軍人として人を使った経験も人に使われた経験も致命的に不足していた疑いすらある*15
基本的な頭は良いので、恐らく書物などから戦略などは学んでいたのだろうが、それは現場での体験が伴っていないまさしく「机上の空論」でしかなかった…
と考えると、割と辻褄が合う部分が多い。
ザボエラの策略は軍事的には妥当だったり効果的な部分は多いのだが、それはあくまで「敵も味方も全てが事前の計算通りに動いた場合」にしか有効ではない。「こう動いてくれれば勝てる」とだけ押し付けても、現実に存在する人材はチェスの駒と違ってその通りには動いてくれない。
言うなれば、「駒の動かし方」はわかっていたが、「人の動かし方」がわかっていなかったことがザボエラの策略家としての大きな欠陥だったのかもしれない。

しかし出世欲が強いとは言え、自分自身が魔王になるくらいの野心もないのに何故?という感じがしないでもない。

クロコダインに命乞いした時の

……でも… 怖かったんじゃよワシは!
他の六大団長に比べ、ワシだけがあまりにも非力!
こうして、策を弄する事以外に、ワシが生きていく道などなかったんじゃっ…!!!

という言葉も、まるっきりの嘘という訳でもなく、本音も混じっていたのかもしれない。
超魔ゾンビの巨体でクロコダインを圧倒した時には「きっと以前のワシはお前から見るとこんな風に見えたんじゃろう」「いい気分じゃぞいっ!巨人の気分というのはなァッ!!」とも発言している。
正統派の戦士たちを「マヌケ」「頭が悪い」と見下すような態度はコンプレックスの裏返しだったのかもしれない。

後に電ファミの記事でも作者から「深層心理的に自分に自信がないため、息子すら手駒にするような自己中心的な生き方をしてしまう」と明言された。

とはいえ、肉体的には非力でもザボエラほどの多才ぶりなら他の面で仲間や軍のために貢献する道はいくらでもあったのだし、他人を踏み台としか考えていない時点で同情の余地はないが。

ミストバーンによるとバーンからはフレイザードと共に出世欲と智謀を評価されて六大団長として選ばれたとのことで、その点については最後までブレることはなかった。
しかしこれは魔王軍の目的である「最強の軍団を作るというバーンの戯れ」のために「強い軍団を作るにはこうした様々な個性が揉み合うことが必要不可欠だったから」であり、要するに切磋琢磨を目的とするものであった。
そのコンセプトを見誤り、自分以外の個性を軽んじ利用し、最後まで生き残ればいいと考えてしまったのがザボエラの最大の過ちなのかもしれない。
もっとも彼がどうしようもなく小物で、とんでもない下劣で非道な敵だったために、
ダイの大冒険が上手く回った部分も多いので(クロコダインの蘇生などもしかり)、悪役としては彼も重要なキャラだったと言えるだろう。

【勇者アバンと獄炎の魔王】

この頃はザムザと人間界の辺境で暮らしていたらしく、当時は在野の研究者だった。
ハドラー率いる旧魔王軍に自らが作り出したモンスターを提供しており、ハドラーから『俺の部下になれば、世界の四分の一を与えてやる』と勧誘を受けていたが、「自分は隠居がお似合い」と何度も断っており、魔力で威圧されてもより強い魔力で跳ねのける気骨も見せた。
こうした過去を踏まえると、やはり「魔力ではなく策謀を頼りにするようになったのは他の六大団長の強さに気圧されたから」というのは事実かもしれない。

しかし下劣な性格はこの時から健在で、何度も断ったのも「後々安く見られないよう自分の価値を釣り上げる」為の根回しだとザムザに嘯き、息子の研究成果も平然と自分の物にしているという相も変わらずのダニっぷり。
しかもこの時ザムザの額にグラスを投げつけており、この頃からすでに毒親だったようだ。

ハドラーが凍れる時間の秘法によって封印されてからしばらくして、サババに隠匿されているのを発見、魔力を封じる結界が張られていた為、クロコダインに依頼して特に被害も出さずにハドラーを奪還する活躍を見せた。

…と、そこまでは見事な知略で良かったのだが、
  • 協力を要請し引き受けてくれたクロコダインを乏す発言
  • ハドラーを助けたのは自分だと恩着せがましく主張する
  • ハドラーにかけられた呪法について、「解き方がわからなければいつでも頼りに来い」と上から目線*16
と、わずかな期間で旧魔王軍に(旧魔王軍をけなしていないにもかかわらず)悪印象をこれでもかというほどにまき散らす。
これには仲間内には温和なバルトスも不快な顔を隠せず、知性を何よりも貴んでいたガンガディアに至っては

……全く!憧れない…………!

と酷評した。
強いてプラスな点を言うならば、ガンガディアに「知力が高ければ良いというものでもない」ということを反面教師として学ばせることが出来たことくらいか。


そうした経緯もあってか、正式に配下入りしたのは大魔王バーンの台頭後であった模様。

【主な人間関係】

息子。
実の息子であるが親としての愛情は持ち合わせておらず道具としか見ていない。
ザムザからも「オレが死んでも涙も流さないだろう」と断言されている。
しかし、能力に関しては認めており、切り札である超魔生物の研究を任せていた。
ザボエラの奥さん、つまりザムザの母親についてはそもそも存在するのかどうかも怪しいと読者に色々な可能性を予想されていた長年の謎だったが、YouTubeで配信されているダイ好きTVにおいて、作者の三条陸は夫の命を狙いかねない極悪な美女魔族で、ザムザは母の事をほとんど覚えてないだろうと答えている。
やっぱり真っ当な関係性では無かったが、夫婦仲はともかく、一応ザボエラがちゃんと結婚して子どもを作ってた事に安堵した者もいるだろう。「絶対試験管ベビーだろお前」とか思ってすまない、ザムザ…。

ザボエラがブラスを人質として使う作戦を思いついたのも「ダイがブラスの身を案じて攻撃できないだろうから」よりも「子は親に逆らえないから」という理由が先に来ている。
ザボエラは「親子」そのものについて「強固な主従関係」といった解釈をしているのかもしれない。

上司。
物語中では太鼓持ちの如く持ち上げる姿がよく見られたが、それは彼の歓心を買って手っ取り早く出世したいからであって忠誠心はサラサラない。
ハドラー本人からは智謀と技術を高く評価されている一方で、「魔王軍で最も狡猾で残酷な頭脳の持ち主」「油断も隙もない男」と称されている。つまり上司にすら信用されていない。
そしてハドラーが死んだと思った際は「役立たず」と吐き捨てるが、直後に生きていたハドラーから「オレとお前は最早一蓮托生。切り捨てるなら命はない」と脅しつけられ、彼の命令でハドラーを超魔生物に改造した。
ザボエラを軍団長に抜擢した上に命令無視等の勝手な行動に対しても寛大な対応をしてくれたが、ザボエラは恩を感じるどころか逆恨みした上に彼を裏切っている。

同僚。
上述の通り、凍れる時間の秘法で封じられたハドラーの救出を依頼された時に一度会っている。
謀略や卑劣な行いを好むザボエラとは反りが合わなかったものの、その魔力と智謀には一目置いていた。
後にザボエラを討ち果たした際も敵も味方も含めてただ一人その死を惜しんでいた。
クロコダイン自身は特に頭が悪いわけではない(ポップ等には及ばないという描写が時々ある程度)のだが、
ザボエラが唆した卑劣な手段にクロコダインが乗ったことがあるのが余程印象に残ったのか、以降もザボエラは一貫してクロコダインの頭は悪いものとして侮っている。

同僚。後に上司。
当初はこれといった絡みはなかったが、物語後半でミストバーンがハドラーの後任として魔軍司令になると様相は一変。
「自分の成り上がりだけを目指してうろつくドブネズミ」「私はお前のような奴を絶対に信じない」とボロクソに扱き下ろされ、その後も溝は埋まらないまま最終決戦でとうとう実質的に見捨てられるに至った。
前述のハドラーの件が決定的にザボエラへの不信と嫌悪に繋がったのは間違いないだろうが、例えそうでなくとも自力で強くなれないなりに戦闘センスを磨き続けて来たミストバーンにとって、強大な魔力と高い頭脳を持つにも拘らず他人に取り入って功績を掠め取る事ばかり考えているザボエラの態度は正しく地雷ド真ん中だったと思われる
しかしザボエラもザボエラで、いくら自分より上の地位に出世したとはいえ元同格の同僚によくあそこまで媚び諂えるものだ。

ただ、尻に火がついたザボエラが超魔ゾンビを引っ張り出した際には「これで地上はなんとかなる」と安堵した様子も見せていたので、人格評価は別として戦力としては一定の評価はしていた模様。

【余談】

息子のザムザが生まれた約200年前は人間に換算すれば60歳前後。
別作品のじじい並みのお盛んじじいである。
この時はハドラーもまだ人間でいえば10代の小僧っ子。バーンの地上支配計画も準備段階で、科学者としてならば比較的穏やかな日々を過ごせていた筈である。
そこから約200年後、魔族とはいえ老い先短い身で、若い五人に囲まれた中いきなり六大団長に抜擢されたのだから、焦る気持ちも分からなくはない。
……まぁ息子のザムザからすらも「オレが死んでも涙も流さないだろう」と断言されていて実際その通りっぽいので、ザムザが生まれる前からああいう性格だった可能性の方が高い。

肩書きの「妖魔司教」の立ち位置は作中では全く説明されなかったので、どういう意味合いなのかは不明。
少なくとも作中での振る舞いは科学者・魔道士・策謀家としての側面がほとんどで、宗教家らしい面は皆無である。
ひょっとすると、魔王軍にスカウトされる前に所属していた組織での役職名をそのまま引っ張ってきているのかもしれない。
あるいはもっと単純に「悪魔神官」の上司だから「妖魔司教」ぐらいのあまり深い意味合いのない肩書きなのかもしれないが。
そもそも「一度口を閉じれば数十年は喋らない」とされていたミストバーンが「魔影参謀」なくらいだし
一応、(科学技術的な手法だが)味方の蘇生を担当してはいるので、ドラクエ的な意味での「神父」に近い立ち位置ではある。ザオリクとかは使えないが、まぁ本作では失われた古代呪文なので致し方なし。

2020年版を演じる岩田氏は『動物戦隊ジュウオウジャー』にてクバルを演じているが一応の目的(出世)を果たし、敵に傷跡を残せたザボエラとは違いあちらは目的は愚か敵に傷跡を残すことが出来ず一人惨めに散るというザボエラ以上に悲惨な末路を辿った。
ただ破滅を導いた一番の理由はザボエラと同様自身の目的の為に他者を踏みにじって来たことだろう。



えらくあの記事が気になっとるようじゃが、ええっ?
…なんだったらワシの呪文で追記・修正してやろうか?
アニヲタどのは腕は立つが 項目編集にはまるっきり奥手じゃからのぉ…
ギェッヘッヘッヘッ…!!



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最終更新:2024年03月28日 02:50

*1 言葉巧みに危機感を煽ったとは言え最終的に使ったのはクロコダインの意志である

*2 この際、生きていたハドラーに「俺とお前はもはや一蓮托生だから手を切るなら殺す」と脅される

*3 「ポップがマァムに好意を抱いている」事実を確実に知っているのはバルジ島で彼らと戦ったハドラーであるため

*4 因みにフレイザードの氷炎結界呪法も部下たちと協力して使う技

*5 とはいえ流石に魔界の精鋭数百体はコストパフォーマンス的に良いのかと言う疑問は残る。「自軍が」ではなく「自分が」安全と言うのも合理的思想と呼べるか怪しい。

*6 2020年版では切断はされず、炎系の呪文で焼かれる形に変更されている

*7 ハドラー視点で見ると「温情で幽閉処分にとどめたにもかかわらず恩を仇で返された」となるが、ザボエラ視点だと「超魔生物に改造してパワーアップさせてやったのに幽閉させられた」という認識になっている。

*8 とはいえ、他の4団長がいなくなった後なので相対的な地位は特に上がっていない。というか目ぼしい幹部がほぼ殉職もしくは離反しているので、「出世」というより「繰り上げ」といったほうが正しいか

*9 魔力の刃も維持できないほどバーンが消耗したタイミングでハドラーが裏切った遠因には「黒の核晶に気づいていながら改造を施し、黒の核晶のことをここに至るまで黙っていた」ザボエラにも責任の一端があるとも言え、あくまで結果論なのでミストバーンも直接責めはしていないが、薄笑いを浮かべながら言われたのではハドラーを直接爆破する役を回されたミストバーンがムカついても不思議ではない

*10 もっとも、クロコダインは全編通してわりと機転のきく男ではあるが。

*11 なにせバーンは軍団長全員を平気で相手に出来るぐらい非常に強い

*12 ただし、バーンは前述したように侵略そのものは余興に過ぎなかったせいでハドラーの行為もバーン視点からすれば別に咎めるようなことではなく、ミストバーンからの評価も言わずもがな。また、合理的ではあるが、魔王軍視点からしても結局のところ『仲間を利用して美味しい所だけをかっさらおうとする行為』だったと言える。

*13 そのフォローのためか、アニメでは上記の通り直前のハドラーのバーンとのお目通りに同行しようとして一人だけ拒否られたという場面が追加された。

*14 一応妖魔士団以外の魔物全軍を従える立場ではあるが数が大分減っているだろう上に自分が勝手に動かせる訳でもない。

*15 単純に経験不足という意味ではフレイザードもそうだが、あちらは経験の不足を天性のセンスで補っている部分があり、さらに策を実行する際も極力自分の手で行うことで「他人任せによる不測の事態」に備えている。

*16 しかも、ザムザの口ぶりからして自分も解き方がわからないような代物であるにもかかわらずそんな大口をたたいている。