ガメラ 大怪獣空中決戦

登録日:2009/11/05 Thu 03:59:49
更新日:2024/04/22 Mon 00:15:01
所要時間:約 5 分で読めます




「緊急連絡!海竜丸、座礁!」
「こんな岩礁があってたまるか……!」


『超音速の大決闘』


「ただの鳥じゃなか!」
「翼長約15メートル!しかもこいは、人ば襲う!」


『ガメラ 大怪獣空中決戦』は、1995年3月11日に東宝系にて公開された怪獣映画。

俗に言うガメラシリーズ平成三部作の第一作で、ガメラ誕生30周年記念作でもある。
ゴジラシリーズなどでお馴染みの「超兵器」が存在せず「現実に日本にもし怪獣が出たら」といったシミュレーション的要素が含まれた怪獣映画で、そのため「正しい実情を伝えること」で協力許可が厳しい自衛隊も全面的に協力している。
そのこともあり、まずお目にかかれないような自衛隊の武器などが多数登場する。
また、日本テレビが制作に関わっていることを活かし、怪獣の出現を実際のニュースキャスターが実際のニュース番組のセットで報じるという演出も行われており、リアリティの追求に余念がない。
でも怪獣の体重には突っ込まないように。

タンカーを海上で座礁させた謎の岩礁と、ある島で発見された人を食う鳥という2つのファクターが収束していき、東京での二大怪獣の決戦に繋がるストーリーは極めて評価が高い。
同様の構成の怪獣映画としては往年の怪作「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」や、2014年版「GODZILLA ゴジラ」がある。
特撮シーンでは「人間の目の高さから見上げたカメラアングル」いわゆる『等身大』にこだわり、怪獣の巨大さを強調した事で有名である。

1996年第27回星雲賞映画演劇部門・メディア部門賞受賞。
とかく厳しい評価が下りやすいキネマ旬報ベストテンに特撮映画として初めてランクインした作品でもある。
(二作目は本作特技監督の樋口真嗣が監督を務めたシン・ゴジラ

しかし一方で業績という点では伸び悩んだ。
観客動員数90万・配給収入5.2億円という数値は、四ヶ月前に公開された「ゴジラvsスペースゴジラ」(観客動員数340万・配給収入16.5億)や同年の「ゴジラvsデストロイア」(観客動員数400万・配給収入20億)に比べるとかなりの差があり、制作費の回収としてもギリギリだったという。
とはいえ決して爆死というレベルではなく、新しい可能性も感じられると言うことで、シリーズ化が決定した。

また、ここからガメラの戦いにおける各都市破壊が定着したともいわれる。

本作の最初期の構想である、小中兄弟によるプロット「小中ガメラ」は小さき勇者たち~ガメラ~デジモンテイマーズにも影響を与えた。

◇あらすじ

太平洋上でプルトニウム輸送船「海竜丸」が水深3000mの地点で座礁する事故が起き、警護していた海上保安庁の米森はそこで謎の漂流環礁と遭遇する。
その後あちこちで謎の環礁の目撃例や被害が多発。民間保険会社が環礁の調査に乗り出した。米森は担当に草薙に無理やり頼み込んで調査に同行。

米森達は遂に環礁を発見。環礁の上からは、不思議な石版と大量の勾玉が発見された。そして環礁は突如発光、海に投げ出された米森は巨大な目玉を目撃する。

同じ頃、九州の五島列島・姫神島で、島民が「鳥や! 鳥やぁぁ!」という無線を最後に消息を絶つという事件が発生。調査に呼ばれた鳥類学者の長峰真弓はそこで、島民を喰らったと思われる巨大な怪鳥を発見する。
政府は希少な生物であるとして、怪鳥の捕獲を決定。福岡ドームに怪鳥を誘い込む作戦を決行する。
作戦は成功し、2匹を捕獲するが1匹が福岡ドームから逃げ出す。
その時、博多湾にあの環礁=巨大生物が上陸。怪鳥の一匹を倒し、周りの建物を破壊しながら、ドームに向かって行く。予期せぬ事態に博多は大混乱に陥る。怪鳥も鉄格子を強力な光線で切断し、脱出、捕り逃してしまった。巨大生物も円盤のような姿となって、怪鳥を追って飛び去っていった。

――最後の希望・ガメラ、時の揺りかごに託す。災いの影・ギャオスと共に目覚めん。――

石板に記された碑文から、巨大生物をガメラ、怪鳥はギャオスと呼ばれることになった。政府はギャオスの捕獲にこだわる一方でガメラを危険視し、ギャオスを追うガメラを攻撃する。ギャオスは、餌となる人間を求め東へと向かう。

◇登場人物

・米森良成
本作の主人公。海上保安庁巡視船「のじま」一等航海士。八洲海上保険会社の環礁調査に同行した際、環礁から現れたガメラの第一発見者となり事件に関わることになる。
さらに発掘した勾玉を浅黄にプレゼントし、人類とガメラが繋がるきっかけを作った。
「朱鷺は人を喰いませんよ」

・長峰真弓
本作のヒロイン。福岡市動物園に勤務する、鳥類学者。姫神島でギャオスの群れを発見したため、政府から捕獲・攻撃の作戦立案を依頼される。政府の役人相手にも物怖じしない芯の強い女性。
ガルーダの設計には関わらないし、忍者の息子と結婚して娘達のプロデューサーになったりもしない。
「平田先生のです……」

・草薙浅黄
シリーズ通してのヒロイン。勾玉によりガメラと心を通わす高校生。勾玉のせいかガメラとダメージがシンクロする。
因みに演じた藤谷文子はかの『スティーヴン・セガール』の娘である。
「私行かなきゃ」

・草薙直哉
浅黄の父親で八洲海上保険会社に勤めている。
海運業に多大な混乱を与えている漂流環礁の調査を命じられ、調査隊を率いて海へと乗り出す。
環礁の正体がガメラであると発覚後も、オブザーバーとして政府の対策班に加わり、様々な知見や推察を述べるなど非常に聡明。
米森の無茶な頼みを聞き入れ、部外者である彼を環礁調査隊に加えるなど度量の深い人物。
立場上、家を空けることも多いようだが一人娘への愛情は深く、親子仲は良好である。
「お前より鳥を選んだのさ」

・大迫力
長崎県警の刑事。長峰と共にギャオスを発見する。頼りない発言が多いが、長峰を引き止め、ギャオスの捕獲場所として福岡ドームを提案するなどの活躍を見せる。
今後もシリーズのレギュラーとして登場する。
「ありました……。あるですよ!あるとですよ!!」

・斎藤雅昭
環境庁審議官。米森、長峰の意見を無視しギャオス保護、ガメラ討伐の決定を終盤まで覆さなかった。
多分北京原人とかZECTとかとは関係ない。
「朱鷺以上に、重要な野鳥と言えるかもしれん!」

・佐竹自衛隊一等陸佐
ギャオス捕獲とガメラ攻撃の指揮を執る。体長や上陸時の被害者数から斎藤同様ガメラを危険視していた。
教師と二足の草鞋は履いていない模様。
「もう太陽も我々の味方をしてはくれないようだな」

・タクシー運転手
バリケードを強行突破し、浅黄を富士山の裾野まで送り届けたノリのいいおじさん。
「あはははははは、一遍こういう事やってみたかったんだよ!」

・道弥
長峰の後輩の大学院生。長峰の依頼でギャオスの染色体の分析を行う。
「ギャオスは進化の帰結としてではなく、最初からあの形で完成していたとしか考えられません」

・大野自衛隊三等陸佐
ギャオスへのミサイル攻撃を指揮。別世界では怪獣王にも戦いを挑んだ。
「芝公園に墜とす」

・巡視船「のじま」船長
米森の上司。冒頭下記のセリフで盛大にフラグを立てる。
演じているのは昭和ガメラシリーズに三度出演経験のある本郷功次郎氏。
「日本まであと少し、何事もないことを…」

・輸送船「海竜丸」船長
プルトニウムを輸送する貨物船の船長。
水深3000mの海域で船が座礁するという奇々怪々な事態にも冷静に対処する。
その特徴的な声質で古参のゴジラファンには気づいた者もいるかもしれないが、演じているのは昭和ゴジラシリーズ中期の顔役とも呼べる名優・久保明氏。
同時期の平成ゴジラシリーズに宝田明氏や佐原健二氏といった昭和シリーズの名優が出演する中、同氏だけは一切姿を見せなかっただけに、チョイ役とはいえ平成ガメラに出演したのは当時のファンを驚かせた。
「それが…環礁の方から勝手に離れていったようなんです」

◇怪獣

ガメラ
復活した海の大怪獣。人々を救うためギャオスと戦う。

ギャオス
超古代文明が生み出した最悪の生物。
巨大な翼で大空を自在に飛び回り、人間を餌にして繁殖する。

◇舞台となった都市

・福岡
九州の大都市。当時完成したばかりの福岡ドームがギャオス捕獲作戦の要として採用され、ガメラに破壊される。
作戦司令部及び誘導ヘリのコールサイン「ハリーホーク」「ハーキュリーワン」にニヤリとしたあなたはファン。

なお、前年にはスペースゴジラ福岡タワーを占拠ゴジラMOGERAと戦いを繰り広げており、福岡は2年連続で怪獣、それも日本を代表する二大怪獣ゴジラ・ガメラに襲撃された都市となった。
これは偶然ではなく、当時の配給会社がどちらも東宝であったことから狙ってやっていた模様。
住み分けのため、ゴジラでキーとなる福岡タワー及びヒルトン福岡シーホーク(福岡ドームの隣に位置するビル)はガメラには登場せず、
同じくガメラでキーとなる福岡ドームはゴジラには登場していない。
(ガメラ3でも同じように、ゴジラが襲わなかった京都駅をガメラが決戦の場とし、ゴジラが壊した京都タワーが生き残るという小ネタが存在する)

・東京
日本の首都。人口密集地を目指すギャオスが最後にたどり着き、東京タワーに営巣する。
我が物顔で人を食らうギャオスと、復活した守護神ガメラの最後の決戦の地となる。
夕焼けに佇むギャオスは特撮史上に残る名カットと名高い。

序盤で「東京に来るかしら?」「来たら面白いんだけどなー!」「やだ怖ーい!」と抜かすヴェルディファンのカップルに爆発しろと念じた観客はきっと多い。
そして、爆発しろとは言ったがあんな目に遭えとは言ってない!とトラウマになる。

◇余談

今作で、ギャオスの存在が公になった際に日本政府が希少動物として保護を決定する場面があるが、実際には人を喰らった危険動物を保護対象にすることは現実的に絶対ありえない事とされる
だが、怪獣が出現すればすぐに戦車や戦闘機を持ち出して攻撃ドカーン☆がそれまでの怪獣映画のセオリーだっただけに、まずは捕獲・保護してから調査という一見理知的に思える判断を、今作のリアリティ重視の象徴の一つとして見るファンもかつては結構多かったらしい。
なので、昔馴染みの野蛮な武力排除が実は現実路線だったと知らされた時は、かなり微妙な気分にもなったとか。

この映画で使われている爆風スランプの「神話」という歌は非常にガメラの作風にマッチしており、かなりの名曲。
一度は聴いてみてほしい。




追記・修正は、映画館で怪獣を見てからお願いします。

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最終更新:2024年04月22日 00:15