シルバーブルーメ

登録日:2011/02/08 Tue 20:27:08
更新日:2024/04/04 Thu 14:08:34
所要時間:約 5 分で読めます






悪魔の惑星ブラックスターから、謎の円盤が地球侵略に飛び立つ。

君達の愛するMACの運命は? スポーツセンターの仲間達は?

レオに戦いを挑んだ新しい敵、円盤生物シルバーブルーメの正体とは何か?

来週もみんなで見よう、ウルトラマンレオ!

(『ウルトラマンレオ』第40話予告)



今より規制の緩かった昭和時代。
特撮において、過激な描写は珍しいものではなかった。

しかしやり過ぎてしまったため、平成、令和の今の世でなお、語り継がれる話がある。
特にウルトラシリーズは、シリーズの数の多さからトラウマとして語られる話が多い。

善良な宇宙人を殺した挙げ句その後に現れた怪獣処理は防衛チームに丸投げという人間の心の身勝手さや闇がこれでもかという位表現された回*1等が良い例だろう。
ファイヤーヘッドの元・バードン
ドラゴリーバラバラにされたムルチ2代目。
この2話は、ウルトラマンのトラウマと言うと必ずといっていいほど名を上げ、
ウィキペディアの2体の項目には、ウルトラシリーズで特に残虐なシーンとして記されている。
両者ともネタにされていることはここでは置いておく


だが、トラウマはまだあった。
大人の事情を超えて、世界情勢が絡んでしまったが故にある怪獣がつくられた。
30年以上過ぎた今をもってなお円谷史上最悪の怪獣として語られ、大人も子供も差別なくトラウマを植え付けていく。
その名前は……



シルバーブルーメ




円盤生物 シルバーブルーメ

全長:0.4~29m(ただし、触手が120mある。また最大サイズは無限である。)
体重:1.2kg~1万t


ウルトラマンレオ』第40話「MAC全滅!円盤は 生物だった!」に登場。


概要

悪魔の惑星「ブラックスター」に巣くう怪物であり、ブラックスターの送り込む生物兵器円盤生物の一体で、謎の男ブラック指令に操られている。
シルバーブルーメ(SilberBlume)は、ドイツ語で「ジルバァブルーメ」、即ち「銀の花」という意味*2である。しかし、名前から連想されるらしい第一印象とは裏腹に、やらかした行為は実にえげつない。

外見は地球上と宇宙空間で異なる。
前者は膨らみきったのような胴体で、後者は形は似ているが、ガラスのような体に内部が透けて見える風鈴。
共通して赤い触手をもち、体構造はタコやクラゲを想像してもらえばだいたいあっている。

お世辞にも強そうに見えないこいつがなぜトラウマとなったのか。それはこいつの能力に起因する。


戦闘能力

  • 武器:黄色い猛毒の溶解液(気化して毒ガス化する)
  • 飛行速度:光速(ただし宇宙空間限定)
この能力でシルバーブルーメが起こした事件こそが、今も多くのウルトラファンに最悪の怪獣呼ばわりされる原因なのだ。
子供向け番組でここまでの悪行をしでかした怪獣は他にいるだろうか?

また小型化も可能で、大皿程度のサイズに縮小し潜伏する能力も持つ。


事件概要

新シリーズに移り、を生やしたダン隊長から歓迎され松木隊員(演じた人はメカゴジラの逆襲のサイボーグ少女桂役の人)誕生日パーティーが行われていた時、
レーダーが怪獣を捕らえるが、それから15秒という速さで基地に激突。基地を触手で包み込み、丸ごと吞み込み始めた。

ダン隊長は即座に隊員たちに「全員マッキーで脱出しろ!」と指示を出し、隊員たちは素早くマッキーに乗り込んで機体を発進させた。
しかし格納庫の出口から触手が這いずり込み、出てきたマッキーはそのまま飲まれてしまった。この時の隊員達の断末魔が非常にリアルで恐い。

このとき、おおとりゲン=レオとダン隊長は戦闘に備えて基地へ残ったため即座に呑み込まれることはなかったが、ダン隊長はもはやマトモに戦える状況でないと判断。
ゲンに対し脱出を命令し、自分はMACの最期を見届けるのだと言い出す。
ゲンは隊長も逃げましょうと言うが、ダン隊長はそんなゲンを張り飛ばし、

お前はレオだ!不滅の命を持ったウルトラマンレオだ!

お前の命は、お前1人のものでないことを忘れるな!行けぇぇぇー!

と叫び、ゲンを強引に送り出した。

ダン隊長がゲンを送り出すときのBGMはウルトラセブンのBGM*3であり、非常に熱い。


結果的にレオへ変身することで脱出できたおおとりゲンを除き、ダン隊長=セブンを含めた全員が殉職した(後述)

かつてギロ星獣の事件でトオルは「僕はもうMACなんかいらない」と言っていたが、それが最悪な形で現実になってしまったのである…。

さらに地球に飛来したこの怪獣は街のど真ん中に襲来。買い物をしていたゲンの親友である猛、恋人の百子、弟分であるトオルの妹カオルが行方不明になった。
地球に降り立ったゲンはMAC隊服とヘルメットを身に付けたままトオルと合流し、三人の行方不明を知る。
傷ついた人々であふれた病院へ行き、ゲンとトオルは三人を探すが見つからない。
もしかしたら無事に生きているかもしれない…そんな希望を口にしたとき、死亡者名簿が張り出された。その大半はデパートにいた多くの人だった。

そこに記された野村猛、山口百子の名前が映る。そして一字ずつ……















と、3人全員の名前がそこにあった。

MACの同僚のみならず、スポーツセンターの仲間たちも円盤生物の餌食になってしまったゲンは、
ダンの最後の言葉を胸に刻み、命ある限り新たなる敵らと戦っていくことを決意したのであった。
ここでやっとCM入り。前半約10分足らずでゲンを取り巻く舞台が大きく変わってしまうというものすごい展開である。

CMが明けて化石のような姿に小型化したシルバーブルーメは小学生に拾われ、理科の先生に預けられる。
生物か無生物か調べようとした先生がこいつを火で炙ったために本性を表し、溶解液で溶かして頭から食らい殺した。

これで充電完了したのか、翌朝元の姿に戻り、小学校を襲撃するが、そこにレオが登場。
降りしきる雨の中、ついに仇敵への戦いを挑む。しかし決して復讐に我を忘れず、小学校を守って戦うヒーローたらんとする姿がそこにあった。
生徒と教員の避難を優先し始めは全力で戦えなかったが、全員が避難したのを確認した後、
触手を振りほどくと、体内からマックステーションの残骸と破片と、冒頭で隊員が脱出するときに乗っていたマッキー2号(とわかりにくいが3号も)を引きずり出し、スパーク光線で止めを刺した。
ちなみにこの時のレオは小学校と子供達を守るために懸命で、怒りに我を忘れてはおらず、最初の頃から格段に成長しているのがうかがえる。
或いは単に悲しみで涙すら枯れ果てていたのかもしれないが。

マッキーを引きずり出したシーンについては、「体内で隊員が生きているかもしれない可能性に懸けた」「中に仲間の痕跡がある内は止めを刺したくなかった」など諸説あるが、ドロドロに溶けて黄色に変色した機体を見て、誰もが希望を失ったことだろう。


以上の通り、この怪獣はゲンとトオル以外のレギュラーキャラ全員*4を殺害している。
ちなみに防衛チーム・ウルトラマンの壊滅・殺害を試みた宇宙人・怪獣は何体もいる(バット星人のように基地の機能停止に成功した例もある)が、どれも未遂で終わっている。
だが、シルバーブルーメはナックル星人ベムスター、バット星人がやった事をわずか10分ほどしかも一体で成功させているのだ。
与えた被害もウルトラシリーズでトップクラスと言われ、その生々しい描写と相俟って今も残るトラウマとなったのだ。

ウルトラセブン(モロボシ・ダン)を含めMAC隊員を基地ごと丸呑みにして全滅させ、
地球降下後にはレオ(おゝとり・ゲン)の恋人・友人・家族同然に接していた3人が買い物に来ていたデパートを襲撃し、多くの市民も巻き込まれ死亡、
更にはトオルの学校の先生といった数多くの一般市民と主人公の近しい人々をまとめて殺害するという、ウルトラシリーズ史上類を見ない暴虐を働いた。

だがシルバーブルーメの攻撃は、これから始まるブラックスターとブラック指令のレオへの残酷かつ苛烈な攻撃の序章に過ぎなかった。


「今度こそ負けるものか!ブラックスター2号機、ブラックドーム!来ぉおおおおおおい!!」




どうしてこうなったのか

たった一話でこれ程の被害が出た理由は、冒頭に書いた時代背景にある。
現代社会や日本史の授業で学んだ人も多いだろう。オイルショックが当時起こったのだ。

そのため、セットの維持やスタッフの給料に掛かる費用が増大し、番組を続けるのが困難に陥った
この事態に円谷は、レギュラーをトオルなど一部を除いて退場させて人数を減らし、かつ基地セットを放棄することで番組を維持するという苦渋の選択をしたのだ。

故に『ウルトラマンレオ』第40話は死者にあふれ、この怪獣が最悪と呼ばれる原因となった。
真の原因はブラック指令ではなく、時代だったわけだ。

ちなみに「オイルショックが無ければ全滅しなかったの?」とよく言われているが、
もう一つのテコ入れ案である「ウルトラ兄弟が円盤に乗り戦う」が採用された場合でもMACの壊滅が前提条件であったため、どっちにしろMACは壊滅する運命にあった。

やっていることがほぼ同じであるベムスターやナックル星人との違いはやはりここにある。

この事件以降、ウルトラセブンの安否は長らく不明となり、後の作品でも設定上の本人が登場することはなかった(平成セブンはあくまでもパラレル)。
最終回にてセブンがレオの夢枕に立ったときの言葉「今沈んでゆく夕日が私だ。そして、明日昇る朝日がお前だ」を根拠に死亡説を唱える者もいた一方、
ウルトラマン80』第44話での妄想ウルトラセブンを見た時の猛と涼子の反応が死者の復活や行方不明者の発見に驚く様子でなかったため、生存説も根強かった。

時は流れて2006年、映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』でついに本人が登場。
ウルトラの母に救われたという設定を与えられて公式に復活を果たした。

仲間が、それも上司として守るべき部下たちが目の前で犠牲になり、あまつさえ自分だけが生き残ってしまった一件は、やはりセブンにとってもトラウマらしく、
ウルトラマンメビウス』第46話の客演で「俺が受けた悲しい想いだけは、君に味わわせたくはない」とダンはヒビノ・ミライ=メビウスに語っている。
またこれは愛する人や家族同然の仲だった人や共に戦い友情を育んだ仲間を一度に失ったレオにとっても辛い出来事として焼き付いているようであり、メビウス34話にて「(一人で)リフレクト星人を倒してみろ」と言いながら、メビウスが隊員を人質に取られたときには(この出来事が重なったのか)激怒し、迷わず助太刀に入っている。


派生作品

内山まもるの漫画版『ウルトラマンレオ』では小学二年生掲載版の第11話に登場。
映像作品同様に地球攻撃の尖兵として登場し、MAC基地を全滅させて地球に襲来するも、
死を決して変身したセブン(映像作品とは異なりMAC全滅時にレオに救出されている)がMACの巨大ミサイルを抱えて神風特攻したことで大ダメージを負う。
最期はセブンの意思を継いだレオが、遺品のアイスラッガーを獲物とした新技「アイスラッガーダイナマイト・カット」で真っ二つに切り裂かれた。
なお、テレビ本編とは異なり、セブン/ダンはこの特攻で本当に死亡しており、
後の『ザ・ウルトラマン』におけるジャッカル大魔王のエピソードでウルトラマンキングの奇跡によって他の兄弟共々復活を果たしている。

PS2で好評だった『ウルトラマン Fighting Evolution 3』にもCPU専用だが参戦。
プレイヤーはウルトラマンレオとしてシルバーブルーメと戦うことになるが、
投げ技(掴みコマンド)でレオが腹(?)の中から変色したマッキー2号を引きずり出す等、忠実に原作再現されており、全国のお父さんのトラウマを復活させた。
(CEROもあるから)明確な虐殺シーンが無かっただけマシか。

漫画『大怪獣バトル ウルトラアドベンチャー』では、こともあろうにレイブラッド星人に乗っ取られるという悪夢のコラボで出現。
その特性はレイブラッド星人が合体したことにより、触手で触れただけで相手の生気を吸い尽くすという極悪なレベルに強化されており、
レイオニクスバトルに敗退したザラブ星人メトロン星人ミイラにしている。
(なお、この二人は『スーパーヒーロー作戦』でDG細胞に寄生されたコンビでもある)
更にキール星人ヴィットリオの操るEXゴモラまでも捕食しようとするが、主人公イオの操るゴモラの超振動波を受けて爆発四散した。
しかしレイブラッド星人はシルバーブルーメを切り捨てて精神体のみで脱出しており、
宇宙人たちを捕食して得た生体エネルギーで実体化(外見は子孫であるレイモンにそっくりである)した。

ゲーム『ロストヒーローズ2』では敵キャラとして登場。
ウィンド・キューブのMACステーションを襲撃し、ビギナ・ギナを触手責め&丸呑みしてデビル・キューブへと連れ帰った。
幸いなことにビギナ・ギナは完全に消化されていなかったため、シルバーブルーメ撃破後には無事に救出された。
後のキューブにも雑魚敵として登場するが、即死技を持っているので速攻で倒そう。

ウルトラマンサーガ』の未公開シーン及び同作のディレクターズカット版ではレオと戦う怪獣兵器はタイラントとなっているが、当初の案ではブラックエンドと共にシルバーブルーメが候補に挙がっていたという。

ウルトラマン物語』では、ウルトラマンタロウが幼少期に見ていた訓練映像という形で登場したが、『レオ』本編の映像を流用したために「タロウ以前にレオが地球に来訪していた」という矛盾した状態になってしまっている。
ちなみに『レオ』本編で食べられた教員を演じていたのは、その『ウルトラマン物語』以降の作品でタロウの声を演じる声優石丸博也氏である。
タロウまで食うとはこの怪獣……。



ウルトラ怪獣擬人化計画

デザインを担当したのは爆天童氏で、背中の空いたセーターと巨乳を完備した銀髪褐色っ娘に仕上がっている。
元ネタが元ネタなだけに、二次創作の類では朝マック(意味深)を嗜む彼女の姿が多く描かれている。
爆天童によるマンガ『ウルトラ怪獣擬人化計画 ギャラクシー☆デイズ』ではブラック指令ノーバと共にメトロン星人のボロアパートで暮らしている。

アニメには『怪獣娘(黒)』から登場。担当声優は高橋未奈美氏。
両袖から強力な溶解液を放ち、手加減すれば人体に影響がない程度に抑えることもできる。
一見すると明るい性格の大食い娘だが、上司であるブラック指令がヒーヒー言う所が大好きという生来のいじめっ子気質である(ペガッサ曰く「絶対Sだ」)。


余談

シルバーブルーメが初登場した回のサブタイトルは衝撃すぎた為か、しばしばファンの間でパロディされることがある。
……ただし、『ウルトラマンジード』に関しては公式自ら「フクイデスト全滅!先生は宇宙人だった!」とパロディしていたりする。





追記、修正は、誕生日の日にマックで一息ついてからお願いします。

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最終更新:2024年04月04日 14:08

*1 但し、その人間たちにも考慮する事情や劇中世界の状況からしても仕方がない部分があったり、その宇宙人にも若干の落ち度があったことは事実である。

*2 ドイツ語の"Silber"と同語源の英語(silver)とはつづりと発音とが異なる。この名前は実は純粋なドイツ語で出来ている

*3 より正確にはセブン当時のBGMの再録。この他にもレオの劇伴はセブンのものの再録がいくつかある。

*4 ただし、第40話時点でのレギュラー陣はほぼ全員が死んだものの、第28話を最後に物語からフェードアウトした大村さんや、殉職することなく途中で物語からフェードアウトした準レギュラーのMAC隊員が多数いる他、円盤生物編では美山家の母子が新レギュラーとして追加された。