機動戦士ガンダム THE ORIGIN

登録日:2011/06/23 Thu 12:09:01
更新日:2024/03/13 Wed 15:15:27
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誰もが待っていた。これが本当のガンダムだ

機動戦士ガンダム
THE() ()ORIGIN(オリジン)


月刊ガンダムエースに連載されていた漫画。全24巻(本編全23巻+番外編1巻)
機動戦士ガンダムのキャラクターデザインを務めた安彦良和が初代を再構築するという、まさしくオリジン(始まり)に帰った作品となっている。
因みにガンダムの産みの親である富野由悠季は「自分以外が作ったガンダムは(この作品も含めて)クソです」と言っていたりする。Gガンダム褒めてませんでしたっけ?

ガンダムエース自体がこの作品を連載する為に刊行されたようなもので、創刊号から現在に至るまでほぼ表紙を飾り続けていた、文字通りの「看板作品」。


アニメのシナリオをなぞるだけでなく、今まで語られなかったシャア・アズナブルの人生やルウム戦役の詳細等が初めて描かれている。
これはいわゆる「引き延ばし」の策ではあるが、絶大な人気を誇る初代ガンダムのバックボーンが細かに描写されている点から言えば、他の作品のそれとは一線を画していると言える。
しかしその割を食って主人公であるはずのアムロが2年も登場しなかった時期があり、一部でネタにされる事もあった。




【設定の変更】

本作は初代「機動戦士ガンダム」を再構築した作品であり、一応大まかな流れはTV版・劇場版の「1st」をなぞるが、各種設定はかなり変更されている。
例としては
  • ガンタンク、ガンキャノンがザクより早く開発、量産されている
  • 各MSのデザイン変更
  • 原作では試作機だった多くの機体が量産されている
  • 初期に死んだブライト以外の士官が生き残っている
  • テム・レイが軍人でない
  • アムロがガンダムの詳細を知るのは父の端末から資料を覗いたから
  • オデッサで発射された水爆は弾道弾ではなく爆撃機からの発射、アムロの迎撃方法も異なる
  • ジャブロー戦とオデッサ戦の順序の入れ替え
  • ア・バオア・クー攻防戦の流れが全く原作と異なる(主にセイラのせい)
等。
正直書き切れない為、他は割愛させて頂く。


【登場モビルスーツ】

右肩にバルカン、オプションで左肩にショルダーキャノンを装備可能。角が黄色い(ただし劇場版ではツッコミを防ぐためか白ツノ)。
当初はコアファイター(に当たる存在)を搭載していなかった
作中、2度の改造を行ったためバリエーションが3種ある(初期型、中期・ジャブロー基地改修、後期・マグネットコーティング)


  • RX-78-1 プロトタイプガンダム
ガンダムの試作1号機。
いかにもテスト機らしい黄色い塗装と、ゴーグルタイプのカメラアイが特徴的。
サイド7に侵入したザクを迎撃するが、物量差に押されて苦戦し、最終的に倒したザクの爆発に巻き込まれて大破した。
なお、安彦氏はMSVでお馴染みの黒いプロトタイプガンダムの存在を知らなかったようで、
「ガンダムに試作機があったら面白いかと思ったら、もう存在していてショックを受けた」と語っている。


ザクⅠに対抗して作られた量産型MS
初期型は3本指で、ホワイトベースがジャブローについたとき五本指に改修された。
頭部はザクの胴体に取り付け可能。通称キャノンザク。紛らわしい
これ等の設定は言及されてはいないがザニーの設定を踏襲した可能性が有る*1

また、一年戦争以前に量産されたタイプもあり、右肩にはキャノンではなくバルカン砲を装備している他、手持ち火器は実弾マシンガン。
連邦のMSに対する理解不足から、火力偏重のバランスを欠いた設計になってしまい、2倍も数で劣るザクⅠ*2に一方的に惨敗、更に救助者を踏み潰してしまう最低の初陣を飾った。
テム・レイにとっても不本意な仕上がりのようで、『ザクを対戦車バトルタンクとするならこちらは対人戦車』『これは、MSではない』とこき下ろされている。

安彦氏曰く、初期型が3本指なのは連邦の未熟なMS開発技術を表現する狙いがあったが、実際に描いてみると作画が大変で仕方なかったとのこと。


カテゴリはMSではなくバトルタンク。
顔が従来のものと異なる他、腕の武装がミサイルランチャーではなくマシンガンになっている。
また、車高が低くなり、コアブロックも無い。そのため上半身は旋回できる。グレー単色のカラーリングもあって、より戦車の発展系という印象が強くなった。
回想シーンでデモ隊を轢殺したシーンはトラウマものである。
既に旧式とされているものの、艦砲にも耐えうる正面装甲と射程の長さは驚異的であり、
正しい運用思想を理解したパイロットが乗れば、複数のザクⅡを一方的に蹴散らすこともできる。
スレッガーに至っては、ザクを体当たりで岸壁にぶつけた挙句にゼロ距離射撃で粉砕という荒業を見せた。


頭部がジム・コマンドのようなデザインになっている他、サーベルの位置が逆になっている。
原作では中盤でようやく登場したが、本作ではガルマ戦死直後に投入と『08小隊』の設定を踏襲している(かどうかは不明)。
意外にも原作ではそんなシーンが1度も無かったアムロが搭乗してズゴックを撃退したり、
ガンダムが大量生産された(あながち間違ってはいない*3)と勘違いしてパニックに陥ったジオン部隊を一方的に蹂躙するなど、地味に活躍度合いが上がっている(凸)

中期型はより多彩な武装に対応しており、ガンダムと同じビームライフルやハイパーバズーカを装備した機体も頻繁に登場した。


  • RGM-79 ジム(後期型)
ア・バオア・クーに投入されたタイプ。
「ホワイトベース隊の戦果の秘訣は部隊編成にあり」という判断に基づき、装甲と反応速度を強化した白兵戦型、
大量のミサイルと2連ビームキャノンを備える中距離支援型、両肩にキャノン砲を備えた長距離砲撃型の3種類が開発された。
特に白兵戦型はガンダムに迫る高い総合スペックを誇り、セイラの操縦でブラウ・ブロを撃破している。


特に変更無し。
本編では登場するたびにカイのガンキャノンをボコっては、救援に駆けつけたガンタンクに倒されている。
なお、漫画ではシャアと(後の)黒い三連星の機体のカラーリングも通常の緑基調で、オルテガが不満を漏らしていたが、
アニメ版ではシャアは赤、黒い三連星は黒と、お馴染みのカラーリングになった。


ご存知THEやられメカ。マシンガンの給弾方式がベルト式になり、「ハイパーライフル」なる正式名称がつけられた(連邦からは原作同様にザクマシンガンと呼ばれている)。
また、左腕に機関砲が追加された。
ガンキャノンのビームライフルを使用可。


胸部に機関砲が追加されている以外、機能面では通常の機体と変わらない。
オルテガから『他人より目立ちたいという意図が丸見え』とカラーリングを酷評された。
ゲルググと交代する形でフェードアウトしていた原作と違い、オデッサでガンダムと交戦して首を刎ね飛ばされ、乗り捨てられた。


  • MS-06R-1A 黒い三連星専用高機動型ザク
ガイア機は両肩にバズーカの予備弾倉付きシールドを備え、マッシュ機は長大な対艦ライフル、オルテガ機は両手持ちの巨大なヒートホークを装備。
因みに脚部のバーニアは強化装甲で保護されており、担当のエンジニア曰く『脚はMSの命だから特別手間をかけた』とのこと。ジオングの担当エンジニアとは不仲だと思われる


主武装がヒート剣ではなく、ビームサーベルになった。
ヒートロッドの先端は開くようになっており、敵を掴むことができる。
また、オデッサではブレードアンテナの無い量産型が相当数配備されており、マ・クベのギャンと共にジムの大部隊と果敢に戦った。


機体そのものには特に変更はないが、黒い三連星の機体はオリジナルのエンブレムマークが描かれている。
ヴァン湖近郊ではガイアとオルテガ率いる8機が登場し、「ダブルジェットストリームアタック」を披露した。結果は推して知るべし。


シールドミサイルの構造が若干変わった以外は特に変更なし。
友軍がオデッサから撤退する時間を稼ぐためにグフ部隊と共に連邦の大部隊に立ち向かい、最期は連邦艦隊を道連れに自爆するという大活躍を見せた。


全身のいたるところにスラスターが追加された他、ビームライフルはゲルググJのビームマシンガンと似たものになっている。
また、ビームナギナタは柄を両断されても2本のビームサーベルとして機能する。


ご存知ラスボス機であり本作最強最後のMS。
コクピットが首回りに1箇所だけになっており、脱出時には頭部と首回りがくっついた状態になる。
本作ではキシリアではなくギレンがシャアに与えた事になっており、ホワイトベースを轟沈寸前まで追いやる大健闘を見せた。
というかモブ艦船は一射で沈んでいるのだからホワイトベースが頑丈すぎるというか。


アイアン・ネイルではなく、それっぽい形のマニピュレーターを備え、手先が器用。
また、胴体には歩兵を収容するためのスペースがある。


機能そのものはあまり変わっていないが、体型がややゴツめになっている。見ようによっては豊満な女性のようにも見える
スレッガーからは丸頭とあだ名された。


恐ろしいことに量産されている。


パイロットはトクワンに変更。ビグロは最終回にて「一回も出撃してない」と言われア・バオア・クーから引っ張り出されている。


あまり本編と変わらないので省略。


単座式であり、量産されている。流線形の外装が外れることでおなじみの姿となる。
テキサス・コロニーでホワイトベース隊と戦うも、原作や小説版ほどの猛威を振るう事は無かった。


  • MW-01 モビルワーカー01式
モビルスーツの源流となる機体。
MS計画をカモフラージュするために月面資源掘削用の重機とされており、むき出しのコクピットと右腕のクローが目を引く。
クローの一撃でガンタンクを破壊できる程度の性能はあるが、腕周りの関節可動域が狭い、動力炉が剥き出しになっているなど、まだまだ課題が多い。
少し経った頃には実際の重機として運用されており、ジャブローの建設現場でもレンタルされた機体が登場した。
腕がアタッチメント式になっており、ヴァッフまでの機体とはパーツの互換性がある。


  • MS-02
ペットネーム不明。
01式の欠点の多くを改善しているが、一番肝心な動力炉の小型化はまだされていない。
おかげでギレンにMS計画の中止を宣告されかけるが、小型化の理論そのものは既に出来上がっていたため事なきを得た。
見た目はちょっとズングリ感の減った01式。


  • YMS-03 ヴァッフ
ペットネームはアニメ版から。
ミノフスキー・イヨネスコ型核融合炉を初めて採用した機体。
本編には登場しておらず、ガイドブックで01式を細くしたようなビジュアルが公開された。
アニメ版ではデザインに大幅なアレンジを加えられて登場。
ザクや旧ザクのような体型になり、バズーカとシールドで武装している。


  • MS-04 ブグ
ヴァッフ同様、ペットネームはアニメ版から。
ヴァッフを元にしつつ、より実戦向けに調整された機体。主武装のマシンガンは連邦の100mmマシンガンによく似ている。
性能ではザクⅠを上回るが、コストパフォーマンスがあまり良くないため正式採用は見送られ、ラル機を含めた少数が生産されるに留まった。
ペットネームがG-SAVIOURに登場する「CCMS-03 ブグ」と被っているため、情報が公開された際に若干物議を醸した。



【登場キャラクター】

後発の作品を見ていると伏線と思しき描写が見受けられるキャラもいる。(アムロ、シャア、ブライト等)

地球連邦軍


主人公。ただし開戦前夜編では一介の学生に過ぎないので脇役。


開戦前夜編では実質的な主役。そのため、ア・バオア・クー攻防戦では思いもよらぬ活躍を見せた。


アムロの同級生だが留年している不良生徒。

開戦前まではカイに付き合わされていた苦労人。

今作ではガンキャノンやガンタンクが旧式の量産型扱いのため、ガンキャノンのパイロットとしてそれなりに出番がある。


今作では小隊を率いてGMで出撃するシーンも描かれたが、WB隊に配置換えの後部下が全滅。

  • ワッケイン
少佐がルナツー指令はまず過ぎるということで、今作では少将に。またパオロ艦長の教え子という設定も追加された。


  • ゴップ
ギレンの野望では腐敗した連邦の象徴として無能扱いされることが多かったが、
今作では”連邦の中でいち早くMSの重要性を理解した軍政家”としてなかなか有能に描かれている。
ある意味今作で以降の扱いが一番変わった人物

ジオン公国軍


もう1人の主人公にして開戦前夜編の主人公。裸馬すらさっそうと乗りこなす乗馬の達人。
とにかく人物の掘り下げ方が凄い。

旧ダイクン派名家ジンバ・ラルの息子。
独立戦争のあまりの非人道ぶりに怒りを覚えており、公式設定とは異なりルウム戦役には参加していない。

兵隊ヤクザと称される暴れん坊3人組。レビル将軍を捕らえ南極条約締結まで導いた功労者(であるが、マスコミは美男子であるシャアばかり取り上げ怒りを買った)。
倒され方が原作とは大きく異なる。

TVとは逆にジオン・ダイクンの暴走や突然死に翻弄された苦労人。

本編ではTV版と同じだが、前日談では弟サスロの暗殺に動揺したりドズルの暴走に呆れたりと若干人間味がある描写がされている。
「顔が老けすぎている」というツッコミを避けるためか、ガルマ以外の兄弟は皆原作より10歳くらい上。

  • サスロ・ザビ
アニメ未登場の次男。登場してわずか13ページで爆弾テロで死亡。出番は15コマ。ダレノセイナンデショウネエ

基本本編と同じであるが、ラブロマンスも描かれている。マレーネ・カーン? 誰だそりゃ。

該当項目参照。需要不明な入浴シーンもある。

開戦前夜編の実質的ヒロイン(ウソ)。
本編では原作通りシャアからボロカスに陰口をたたかれているが、開戦前夜においては奇妙な友情が描かれている。

今作では独特の美学と威厳を持つ大物に。

アムロを「ひとりぼっちな人」と称した。

見た目が年齢相応になった。

TV版では故人だが開戦前夜編で登場。色んな意味で原作とは180度違う人。

  • ガルシア・ベロン・デ・ジブリデス・ロメオ
ジ・オリジンのオリジナルキャラ。
マ・クベに対して異様なまでのライバル心を持っている。 

  • シャア・アズナブル(本物)
本作オリジナルキャラ(まあ原作に存在しないという証明は出来ないが)。
キャスバルとアルテイシアの兄妹が荒廃する前のテキサスコロニーで出会ったキャスバルそっくりの青年。
キシリアの謀略に気づいたキャスバルによって入れ替わることにより身代わりにされてしまう。
見分け方は、青い瞳の方がキャスバルで、鳶色の瞳の方が真シャア。ニヒルでかっこつけな方がキャスバルで、おっちょこちょいな方が真シャア。

アニメ版

連載終了と同時にアニメ化が決定。
2015~2018年にかけて全6エピソード(原作での単行本9~14巻部分)が制作され、『機動戦士ガンダムUC』と同じく映画などでのイベント上映された。
ちなみにシャア・ギレン・アムロ・カイ以外のキャストはオリジナル版と異なっている(ブライトは『UC』版準拠)。
結果未来の自分の背中を追ってアムロ・カイと兄弟の契りを交わしそうなチビキャスパルや、シャア似の男に忠誠を誓いそうなガルマ、ギャグ世界ララァの様なセイラ、キャスバルに心酔し迷いの果てに銃撃しそうな真シャアと微妙に中の人が入っている様な感じの配役になったが。
2019年4月から8月にかけて、NHKにてOVAシリーズ全6章を再編集したTVアニメ版『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』の題で放送された。全13話。

本作は前述の通り「1st」の再映像化という側面もありながら各種設定が大きく異なっており、宇宙世紀の正史とすると色々ひっくり返りかねない事態が起こる。
そのためかアニメ化された後でも本作は宇宙世紀のパラレルのようなものという取扱いがされている。冒険王版「んだ、んだ」
同様に設定が大きく異なるがアニメ化された事でパラレルのようなものとされた作品は『機動戦士ガンダム サンダーボルト』がある。

【余談】

公式ガイドブックの二巻目の最後には特別版『THE ORIGIN〜誕生〜』が描かれている(24巻に再録)。
ORIGIN世界の正史かどうかは不明だが、バリバリの不良のドズルやロリなキシリア様が見れたりする、ある意味ファン必見の代物。

インタビューによると安彦良和はニュータイプ論の選民思想を肯定するような扱いやそのような描写になっている作品は否定*4しており、
それ(の肯定感を取り除くこと)がサンライズに要請に応じて本作を描いた動機とのこと。

2022年には「ククルス・ドアンの島」がまさかの劇場化。
タイトルは『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』。
1stの当該エピソードのリメイクなのでTHE ORIGINのスピンオフ・エピソードではないがTHE ORIGINの要素が多く取り入れられている。
しかしTHE ORIGIN自体のスピンオフでも「THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島」が連載されていたので、
製作が発表された際にはそちらの映画化だと勘違いするファンが続出したという。ややこしすぎる。





追記・修正は一年戦争を生き残ってからお願いします。

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最終更新:2024年03月13日 15:15

*1 ザニー自体もどちらかと言えばガンキャノンのプロトタイプ機寄りの設定である

*2 最もこっちはモブの雑兵だったのに対し、相手は黒い三連星・青い巨星・赤い彗星というムリゲーみたいなメンツであったが

*3 実際、TV版でも本作でも、ジャブローで量産されたGMを見てキッカが「ガンダム!」と言っている。

*4 現に、本作内においても『機動新世紀ガンダムX』のD.O.M.Eとザイデル達を思わせるニュータイプ否定的な論争を、セイラとシャアが行っている。