後藤(寄生獣)

登録日:2012/07/18 Wed 03:57:15
更新日:2024/03/18 Mon 02:51:26
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───そういえば田村玲子がよく言っていた
我々が生まれてきた目的は何なのかと……
───いまさらどうでもいいことだが しかし……1つわかったことがある 

おれにとっては戦いこそが……!!

CV:井上和彦、演:浅野忠信
後藤は漫画寄生獣の登場人物。

●目次

【概要】

作品におけるラスボス的存在にして田宮良子に生み出され、そして田宮良子と並ぶ作中のキーパーソンの一人である。
名前の由来は『五体』もしくは『五頭』あたりか。全身を統率できる事が主軸と考えると『五統』も考えられる。

別名『最強生物』
本来、作中の寄生生物は人間一人につき一匹ずつ寄生するのだが、後藤の場合は彼も含めて五匹が一つの身体に同居していることがその所以。
これにより全身を武器化、プロテクター化することで自動小銃の斉射を受け止め、自衛隊の一個部隊を文字通り「散らかす」ほどの戦闘能力を備えている。

後述するが「三木」と呼ばれる別人格のパラサイトを司令塔として代わりに運用することも可能。

【戦闘能力】

同じ肉体に宿る他の寄生生物を支配下に置き、四肢の寄生生物を自身の細胞が如く操ることが出来る。
敵の寄生生物すら自身の一部として取り込むことができ、一時期はこの能力でミギーを吸収していたため六人同居状態だった。
つまりこの時期の後藤さんは「武藤(むとう)」と言うべきかもしれない

考えてみてほしい、一匹でも銃を装備した警官隊を薙ぎ払える硬軟伸縮自在の考える筋肉がその五倍、全身に張り巡らされているのだ。
時には全身武器となり、1体の寄生生物では生成しきれないほど多数の刃や触手を振るい、伸縮する全身による高速機動を実現する。
その強さは作中屈指で、上記のようにショットガン等を携行した自衛隊の一個部隊が束になっても皆殺しにされる。
タイマンではあるが人間の中でトップクラスの戦闘力を持つ新一と、あらゆる策を持って寄生生物を撃破し続けたミギーのコンビすら敗北させている。

また、攻撃力より恐ろしいのがその防御力。
寄生生物の肉体の量は限られているため、通常は攻撃か防御どちらかしかできず、両方を同時に行うことはできない。
だが後藤は5体分も余裕がある為、攻撃の間も常に全身を硬質化した寄生生物によるプロテクターで覆っている。
従ってミギーの刃や銃などであっても、基本的に後藤に対して攻撃はまともには通らない
車同士の正面衝突や崖から転落してきた車と激突炎上で多少ダメージを受ける程度。
自衛隊の一個小隊に囲まれた状態からのショットガンの集中砲火にも耐える防御性能を誇る。
ただし、このプロテクターは動きを阻害しないよう鎧のようになっているため、多少の隙間がある。
そのためプロテクターの隙間から傷を負う場面もあり、傷跡を見た新一に反撃の機会を与えることとなった。
また、流石に長い間撃たれ続けると正面からは受け切れず、傾斜装甲の要領で受け流すことで対処している。

知能の高さから戦闘での応用力にも長ける。
  • 上述のように傾斜装甲の要領で弾丸を受け流してみせる。
  • 手元の動きで弾道や使用する武器を読み回避する。
  • 撃ち込まれた散弾を全身で受け止め、腕から遠心力で撃ち返す。
  • 変形しスーパーボールのように階段を跳ね回り、射撃を許さず圧し潰す。
  • 両足をシカのように変化させ、走行中の車にも追いつける。
このように寄生生物の強みをフルに活かして戦闘を仕掛けてくる。

更に付け加えると、普通の寄生生物であれば人体との接続部である首を切断すれば死亡する。
しかし後藤の場合は後述の三木のような頭部の代わりになる存在が複数いる為、頭部を挿げ替える事さえ可能。
前述の車との衝突でダメージを負った際も、失った血を捕食で補う事で回復してしまっている。
ミギーが人体の重要器官をいくつか引き千切った際でさえ、完全修復が可能である事を示唆している。
それどころか猛毒をねじ込まれ爆発四散までさせても、露出した内臓を破壊しない限り復活する可能性がある。
これだけ無敵のスペックを誇りながらもあくまでも冷静で計算高く、不確定要素が残る場合は深追いしない狡猾さまで持ち合わせる。
後藤時の統制力は凄まじく、他の寄生生物を瞬時に眠らせ操ることができ、新たに吸収する事さえ可能。

上記の理由から、「首から下は棒立ちの人間」「人間の部分を狙えば殺せる」という新一とミギーの経験則が通じず、二人を大いに苦しめた。

【作中の活躍】

『寄生獣』

初登場時はタンクトップにハーフパンツ、坊主頭で常ににこやかな顔をしていてパッと見裸の大将。
だが数ページ後にはヤクザの事務所に、カチコミを仕掛けて刀や銃による反撃をものともせず皆殺しにする。
まさしく最強生物に恥じない戦慄のデビュー戦を果たした。
カチコミを仕掛けた理由は単純で「戦闘訓練」。

そしてその血だらけの外見には仲間からもツッコミを入れられたため襲撃後には出来る外見の後藤さんが誕生する。
一般的に後藤さんと言えばこの顔。その後は体の操縦訓練としてパンツ一丁でショパンを弾いたりしている。
ちなみにショパンの曲はどれもこれも難曲で知られており、後藤の体の操縦がいかに上手いかを間接的に物語っている。

前述の通り自衛隊による市役所での寄生生物殲滅戦では、圧倒的な強さで自衛隊を皆殺しにした。
新一との戦いではミギーのあらゆる策を真っ向から叩き潰して勝利、ミギーを吸収する。
だが新一が再度挑んできた際、プロテクターの「すき間」に毒性の強い成分*1が付着している産業廃棄物の鉄棒を刺され形勢が逆転。
毒が体内に侵入したことで体の各部がパニックになり、統率が乱れた隙を吸収していたミギーに突かれ、頭を含む全身の寄生生物が爆散。

しかし「後藤」は完全に死んではおらず、再度復活を試みるも…



スピンオフ『寄生獣リバーシ』

太田モアレ筆の、広川市長の息子を主人公とした、『寄生獣』の裏側で起きていた物語を描くスピンオフ*2にも登場。

「後藤」は作中当初では「三木」と名乗っており、逆に後の「三木」は4体?の統率を担当していた個体として別の名前を名乗っていた。
しかし10話にてデモンストレーションで三木に倒されたことで当時の頭は統率にふさわしくないと頭を入れ替えさせられてしまう。
そして「お前が三木だ」ということでその時統率していた個体が三木となって自身が後藤となった。
それでも制御には習熟が必要で、26話では練習用に握っていたルービックキューブをバラバラにしてしまっている。


また、広川と後藤の交流シーンが増やされた。

統率の訓練のためショパンを弾く後藤に対し、広川は「寄生生物は“音楽”を理解できるのか」「いずれ“音”を“楽しむ”個体が出てくるか」と疑問を抱く。
後藤は「さぁな。ただ譜面の通り弾いているだけだ」「あんたのいう敵がこちらを向いている間はそんな“暇”な仲間がいると思えんが…」と無愛想に返した。

田村の死後、他のパラサイト達が「群れを作って目立った故に人間の警察などに警戒され始めた」としてコロニー計画に疑問を抱き始める。
勢力拡大もうまくいかない中、後藤に広川が意見を聞いたところ「俺はこの体を手に入れたからな…」と興味を持たず、広川はパラサイト達の「個人主義」に悩まされた。

市役所にて追い詰められていく中、広川自身、コロニー計画が上手くいくとは思っていなかったと語った。
そして後藤に対して「私のような存在が地球の…君たち寄生生物の未来を繋ぐ…私はその契機であればと思っている」と吐露した。

【体を構成するパラサイト】

「三木」

後藤の肉体に寄生するパラサイトの五匹の中の一匹。後藤と同じく司令塔を務めることが出来る。

名前の由来は普段後藤の右手だから三木。ミギーと一緒である。
後は同居したパラサイトを自分含めて三匹まで操作出来るという点も含めて三木かもしれない。

パラサイトとしては珍しく表情が豊かで言葉もくだけている。一見すると陽気な人間。
ただしエサとなる人間を誘いやすいよう明るい人間の真似しているだけなので、その場に合ってない言動をする。
なのでしっかりと彼を注視する人間から見れば不自然に見える点は他のパラサイトと変わりない。
いざ戦闘になると表情や会話に気を配らなくてもいいため無表情になることも。しかし敵を撹乱しようと言葉を発する狡猾さを見せた。

新一とミギーに興味を持って自分が戦いたいと言い出した。
その事から後藤に近い戦闘狂、あるいは好奇心旺盛と言える性格をしている。

後藤と比較すれば司令塔としての能力は数段劣る。
体の操縦が下手でよく転んだり、走るのが遅い上、戦闘時には両手を操作するのに精一杯で頭を変形させて攻撃に加わることが出来ない。
更には両手の触手を自分で空中衝突させたりと、戦い方自体も未熟かつ不慣れ。
後藤にも「お前には右手が分相応」と低評価を下されている。
本人も格下であることは理解しており「いやー面目ない」と後藤に謝っていた。
司令塔になれるのは後藤と三木だけなので司令塔になることすら出来ない他のパラサイトよりは優秀、という見方もできるが。

新一とミギーを最初に襲撃した際には、後藤ではなく三木が司令塔となっていた。
首を切り落とされるという大ダメージを負わされた為に後藤と選手交代する形となり、それ以降は直接的な登場はしない。

佐々木 昇

太田モアレによる『寄生獣リバーシ』の第29話「右脚の場合」に登場したキャラで、後に後藤さんの右脚になったパラサイト。
中年男性「佐々木 昇」の肉体を乗っ取ったが、生前の佐々木は親友を借金の保証人にして蒸発するなどかなり人間性が腐っていた。
そのせいでトラブルによく巻き込まれており、上述の親友「芦原 正志」が復讐のために襲ってきたのを返り討ちにした後、芦原の顔と経歴を乗っ取った。
…だがこちらはこちらで女癖が悪かったらしく、今度は彼をずっと探していたという若い女性に付きまとわれる結果となる。

橘 美咲

後述の太田モアレによる『寄生獣リバーシ』の番外編「左腕の場合(ただし不適合)」に登場したキャラ。
女子高生の体を乗っ取って「食堂」になる候補を探していたが、弟の少年に見つかった挙句チンピラ3人に絡まれる。
自分を庇う少年を押し退け、三人を頭部を変形させて惨殺。
少年だけは一瞬の隙でギリギリ逃げ出し助かった。その後は顔を変えて田宮涼子と共に街中を歩いていた。
タイトルから察するに後に後藤さんの左腕に移植されたが不適合だったと思われる。




【人物像】

最強の寄生生物ではあるが、他のパラサイトと比較しても割と理性的で物分かりのいい人物。
人間の姿をしている時は役所で寄生生物の「食堂」の確保という恐ろしい会議をしつつも、パッと見はただの出来る人間にしか見えない。
作中では同じ寄生生物から後藤さんと呼ばれており、読者の方も呼び捨てではなく「後藤さん」と呼ぶ人は結構多い。
強さだけでなくセリフ回しもかなり秀逸で、人間の感情を理解しているかのような皮肉やジョークをたびたび口にする。

「もっと工夫しろ………… 人間は地球上でもっとも賢い動物のはずだろ」
「こう言う場合…『しゃらくせえ』とか言うのか?」
「おまえ1人だ 後ろの連中は片づけた いや……ちらかしたと言うべきかな」

しかし、新一との戦いや市役所での自衛隊との戦闘の中で、彼にも個性が芽生える。
あるいは寄生生物の本能である「この種を食い殺せ」が五匹分集まった結果なのか、激しい怒りと憎悪が倍増されて戦いを求める戦闘マシーンと化した。
普段は冷めた目で何事にも興味のない様子だが、互角に戦える相手だと判断すると一転して好戦的な性格が表れて戦闘自体を楽しむ傾向を見せる。
作中で「何事も慣れ」と語る通り、実戦を通じて敵から戦闘技術を吸収することを何より好む修行者でもある。
初登場時のカチコミが後藤さんの本性と言えば分かりやすいか。

【余談】

伏線

28話にて、東福山市市長選の選挙活動をしている広川剛志と後藤ら六人立っているのをミギーが「パラサイト6人が高いところに立っている」と認識している。

その後、41話にて後藤が「(5つのパラサイトの意識を)完全に一つにできるようになったのは実はつい最近の話でね」と明かしている。

「無敵」

田宮涼子は後藤について「彼はわたしが実験により創りあげたか弱い「仲間」の1人ではあるが…無敵だ」と評している。
この「か弱い」の部分は寄生生物全体に言える事だが、これは「寄生生物」単体では生きていけない事…
半死の状態でも再度復活を試みる生への執着≒つまり必死に生きようとしている、という事である。

肉体的な意味でも、後藤たち5体のパラサイトは四肢・頭部・体表こそパラサイトでできているが、胴体の消化器官といった複雑な内臓部分は人間のものをそのまま流用している。

復活しようともがくこの姿を見た新一は「人間以外から見た生命の見方」を考えるに至り、寄生生物も地球に住む一つの生物として一度はトドメを刺すことを辞めている。
だが直後のミギーとの話で「地球」の事ではなく「人間」としての考えを優先し、生きてる限り人間を殺戮し続ける人間に害を及ぼす生物としてトドメを刺した。

その後、新一はこの一連の流れを通して一つの答えに至る。


また、吸収されたミギーにもある変化を及ぼす事になり、ミギーは新たなる道に向かっていくことになった。









ラスト案


後藤は実は死ぬ予定はなく、その場合は二つのエンディング案があった。

一つは完全復活したが汚染された日本を嫌い、美しい自然を目指して飛び去って行くパターン。
もう一つは完全復活出来ずに人間に無害の別の生き物になって山中でひっそり生きるパターン。
これは甘ったるく、無責任な結末と作者は思っていた。
だが作者は後藤のことを「美しき野獣」「偉大なる大自然」の代表だという考えでいた。
それを環境破壊の元凶である「愚かな人間」がただ殺してしまっていいのか、という考えがあった為である。

しかし当時の環境問題に対する現実の人々の変化を見ていく中で、
(第一話時点では環境問題は余り取り上げられてなかった)もう少し先を考えた結果、この結末に至ったとの事である。






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最終更新:2024年03月18日 02:51

*1 この成分の詳細については原作・TVアニメ版・実写映画版で異なっており、原作では「有機塩素化合物(明言はされていないが劇中の表現からして恐らく猛毒のダイオキシン類)」、TVアニメ版では「アクリル製品の燃焼で発生したシアン化水素(青酸)」、実写映画版では「放射性物質」としている

*2 『もうしませんから。』File.22「生存競争裏話」によれば、原作者の岩明均は「自由に描いて下さい」と任せたので、「こういう解釈もある」といった形のスピンオフとなっている。