イヤホン

登録日:2013/10/28 Mon 20:44:17
更新日:2024/01/31 Wed 19:52:35
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イヤホン。時々イヤフォンと呼ばれることもある、皆さんおなじみの耳にかけたり突っこんだりするオーディオ機器。
ウォークマンやiPodを買えば付属品で付いてくるし、アニヲタ諸氏ならばアニソンを聞くため、ゲームをするため、一度くらいは所持したことがあるだろう。
だが二次元なんかだと、目に見えてキャラの記号になるヘッドホンと違ってイラストなどに使われにくい。
耳が隠れてるキャラだとケーブルが見えるだけだしね。




○基本的な部品

【ケーブル・プラグ】

イヤホンをダメにする原因ぶっちぎりナンバーワンの部分。
誰もが一度は断線を味わった経験があるだろう。「イヤホンは消耗品だから高いのなんて買ってられるか」と思う最大の原因。
ちょっと奮発して購入した万越えの高いイヤホンが断線して呆気なくゴミになる絶望は筆舌にしがたいものがある。
しかし最近はケーブルを脱着でき、断線したケーブルを交換できるイヤホン(所謂「リケーブル」)*1やBluetoothで音を飛ばすイヤホンもあり、対策が進んでいる。
ただし無線は仕組みの関係で原音の情報全てを飛ばせないため、有線より音が劣化する。もっともその辺も近年は音質の劣化を極力抑えた新規格も台頭しつつある。

それとそもそもプラグについてはどうしてもほこりや抜き差しによるメッキ剥げによる接続不良などでダメになっていくため、
潤滑剤(接点復活剤)を塗布しながら拭き取ったり抜き差しすれば復活することも多い。
そこまで危険なものではないが換気に気を付ける、電源を止めた状態で作業する、材質によっては色落ちや劣化を招くので対象部分以外にはなるべく付けないなど、作業の際はそれなりに注意。
過度の抜き差しはプラグは勿論端子の寿命も縮めるので避けよう。

・SBC
Bluetooth式イヤホンの基本的かつグレードの低い規格で、音の劣化や遅延は最も起きやすい。実質全ての無線イヤホンが対応しているが、安物の場合殆どがこの規格しか使えない。

・AAC
主にiPhone等のApple製品で採用される上位規格で、劣化や遅延もSBCとは雲泥の差。寧ろiPhoneはこれとSBCしか対応しないので、無線で良い音を聞きたければこれ一択となる。一応、Androidも機種によってはこれに対応している。

・apt-X
iPhoneがAACとくれば、こちらはAndroidスマホでよく採用され、音質・遅延の程度もほぼ互角。
更に派生として、遅延より音質優先の「HD」、転送速度優先の「LL」、いいとこ取り(実質apt−Xの最上位規格)だが対応機種は最も少ない「Adaptive」という規格もある。

・LDAC
ウォークマンの生みの親であるSONYが開発した、とにかく音質に特化した規格。SBC並に遅延は目立つものの、音質は無線規格の中ではぶっちぎりで良く、ハイレゾ音源にも対応可能。
SONY製品は勿論、Androidもapt-Xの次位に対応する機種が多い。


プラグにも規格により色々な大きさや種類があり、標準の3.5mmや6.3mm、主にバランス接続*2に使われる2.5mmや4.4mmがある。
通常は3極(プラグの線が3本)だが、リモコン用の信号をやりとりするために極を追加した4極や、R側とL側の音を完全に分離するバランス接続用の4~5極がある。

  • リケーブルについて
近年はGND分離やバランス接続の普及&質のいいケーブルの登場によりオーオタの間ではブームになっている。
曲げや引っ張りに非常に強い編み込み形のケーブルや、一般的なケーブルより多くの線を使ったり材質に極めて高い純度の単結晶銅や純銀、果てはその純銀に金メッキやパラジウムメッキなどでコーティングしたりプラグ自体の品質にもこだわったりした豪華なものも各メーカーがこぞって出しており、3万円を越えて10万円以上のケーブルまでちらほら見かけるようになった。
「ケーブルで音が変わるとかwwそれプラシーボだよ?w信者さんは今日もお布施大変ですねw」みたいな煽りをよく見かけるが、プレーヤーからイヤホン本体に届けるアナログ信号の劣化もイヤホンの音に影響をもたらす立派な要因なので、それを排除する&線量を多くすればより多くの音の情報を送ることによる電気的はもちろん実際の音も確実に変わるためプラシーボではない。劇的に変わる程ではない、というのは事実だが。
また音質以外にもタッチノイズの軽減や編み込み式のように耐久力や使い勝手の強化、バランス接続への対応……といった利便性の向上も大きいので、長く使いたいなら多少お金をかけてでもリケーブルをする意味はある。

それでもケーブルに高い金なんて出す気になれない、という人もご安心を。Amazonなら3000円も出せばそこそこいい編み込み式の中華ケーブルがゴロゴロ売っている。2000円台のものも多くある。
あと、ケーブルにもプラグとは別にイヤホンに接続するための端子があるが、これもmmcxや2PINなど幾つか種類があるので、購入の際はお使いのイヤホンの端子の確認を入念に。丸っこい溝的なものは大体mmcx、オス側が二本の線になってるのが2PINと思ってもらって良い(例外あるが)。
いちいちケーブルを取り換えるのが面倒、という人はアンバランスをバランスプラグに変換できるコネクタもあるのでそれを活用しても良い。ただし実店舗だと安くて5000円以上、数万円を越える流石にボッタクリ市場なのでこちらはAmazonで買うのが吉。2000円前後のものが各種揃っている。
それでもコネクタのクセにお高い…と思うかもしれないがバランス接続の結線は普通のイヤホンの結線より複雑なのでコストが上がるのは仕方がない。とはいえ、こちらも大体編み込みケーブルなので断線しにくく長期間使用できるため案外元は取れる。
リケーブルとは少し違うが同じ要領で交換して接続するBluetoothレシーバーも存在しており、お気に入りの有線イヤホンを無線化させることも可能。電池が劣化しても交換すれば良いのでこちらも経済的には良いかもしれない…。

  • 断線させないためには
上にも記したが、ケーブルは消耗品なので使っていればいずれ負担によって断線する運命からは逃れられない。
だが、使い方にさえ気を付ければ寿命を大幅に伸ばせる。以下のことに気を付けるだけでもかなり変わる。
  • プレーヤーにイヤホンを直接差さず、短い延長ケーブルを噛ませる(プラグの根本に一番負担がかかるため)。
  • しまう時はプレーヤーに巻き付けず、ちゃんと結ぶかケースにしまう(筐体の角に添って負担がかかるので)。
  • イヤホンをしたまま寝落ちしない(寝返りなどによりケーブルに多大な負担がかかる)。
  • 両耳への分岐部の根本を少しテープなどで固定する(こちらもかなり断線しやすい箇所である)。
万一断線してしまっても、オーディオ専門店である良い☆イヤホンなんかでは独自の修理サービスを展開している。
数千円レベルの安いイヤホンは素直に買い替えた方が得だが、万越えのイヤホンとなるとそれはためらわれる…という人は利用してみると良い。


【ドライバー】

イヤホンの音を出す部分。現在イヤホンで使われているドライバーは以下の2種類が主流。

  • ダイナミック型
スピーカーやヘッドホンなんかと同じ原理で音を出す形式。たまに「D型」と略される。
ノウハウもあり安く作れるので、長年イヤホンの基本として採用され続けている。
基本的にドライバーが大きければ大きいほど良い音が出せる*3
が、大きいと装着感が悪くなりがち。中にはドライバーを複数搭載した物もある。
相対的に音域が広く、低音も出せて迫力があるが、音の繊細さでは同価格のBA型に劣る傾向にある。例外はあるけど。
また、音抜けを良くするために空気の抜け穴が必要なので、音漏れが生じたり遮音性に難があったりすることも。


  • バランスド・アーマチュア型
補聴器に使われていた形式。「BA型」と略されることも。
「バランスド・アマーチャー」とかカッコつけていう輩もいる。
痛々しい限り。
カナル型と共に近年人気を伸ばしつつある。前は1万円以上のものがほとんどだったが、ここの所は廉価なモデルも増えつつある。
ドライバーがダイナミック型と比べて非常に小型。比較的繊細な音が出せるが、音域が狭く低音・迫力面もやや苦手。
なので高級モデルでは複数のドライバーを搭載して音域を広くしたりする。
数年前は多くて片側2~3ドライバー程度だったが、最近では2桁搭載のモデルも出てきている。
ただし複数のドライバーを積むと各ドライバーの音が重なる部分が生まれてしまい、音が濁りがちになる。
そのためドライバーの数=音質、になるとは限らず、高級品だと単独ドライバーでも下手な多段ドライバーより良い音を出す製品もある。
やたら値段が安いのにドライバーの数を売りにしている所謂「多ドラ中華イヤホン」などは要注意である。
もちろん、色々対策はされているし気にならない人は気にならないが、比べるとシングルドライバーのがクリアに聞こえやすい。
空気の抜け穴が特に必要無いので基本的に密閉構造で作られており、遮音性や音漏れ防止に優れる。


またこの2種類を組み合わせたハイブリッド型も存在する。
要はどちらのいい所どりを目指したものだが比較的新しいタイプゆえ数はそう多くなく、廉価なモデルだとどっちつかずの器用貧乏でしかない音であることも。だがハマればそこそこの音場を維持しながらきらびやかな高音も迫力のある低音もそつなく鳴らす無敵の万能戦士である。


【ハウジング】

イヤホンのドライバーを収めている部分。
プラスチックだったり金属だったり木だったりと色々。高級イヤホンだとこういった所の外装にも拘っており結構豪華。
耳に直接触れる部分なので、装着感を大きく左右する。
また素材や内部の構造で音も左右される。


【イヤーチップ】

イヤホンの先っちょについてる物。
素材としてはシリコンやウレタンなど。
色んな形状やサイズがあるので、自分に合うものを探すのもよし。
これがフィットするとしないとでは遮音性と音質が天と地。
またイヤーチップによって音も多少変化する(高音がチップに吸収されて抑えられるとか)。
なので、一度聴いて合わない!と思ってもあきらめずに他のサイズのイヤーチップを試してみたら一変する場合もある。


種類

イヤホンの種類。

【インナーイヤー型】

耳のくぼみに乗っける形の、少し前まで主流だったイヤホン。有名どころだとApple純正イヤホンのEarPodsはこれに該当する。
構造上、音が漏れやすい上に遮音性も低いが、音がこもらないので開放感があるのが利点。
基本的には遮音性・音漏れ防止に優れるカナル型の方が人気だが、カナル型の装着感が気に入らない層からは依然支持されている。

【カナル型】

耳の穴にイヤーチップを突っこむ形のイヤホン。所謂「耳栓型」で現在の主流。
インナーイヤーと比較して遮音性や音漏れ防止に優れ、耳の奥に差し込むため音質的にも良い感じ。ただしチップが耳の穴にフィットするので圧迫感を感じて嫌う人もいる。
また装着中にケーブルが何かにあたるとけっこうノイズ(タッチノイズ)がする。近年はケーブルも対策されつつあるがそれでも多少は聞こえてしまう。

【モニターイヤホン】

音をモニタリングするための業務用イヤホン。
反響音や歓声で喧しいステージ上で耳を保護しつつ正確に演奏を聴きとったり、スタジオで音のチェックをしたりするために使う。
用途が用途なので遮音性に秀でるカナル型・BAドライバーの採用率が高い。
もちろん、普通のリスニングにも使える。が、人によっては「面白みの無い音」という評価も。

【カスタム】

耳の型をとってそれに合わせて作られる特注イヤホン。
基本的にプロがステージモニター用途で作るので、性能も良い。音楽番組でアーティストの耳元を注意して見るとよくつけてる。
当然フィット感は良く遮音性も高い。しかし1人1人に合わせて作られるので当たり前だが値段は高め。なので普通のモニターイヤホンで間に合わせる人もいる。
一部のイヤホンは中のドライバーを使ってカスタムに作り直すこともできる。こちらは比較的安価。まあ、普通の感覚ならじゅうぶん高いけど……。



○イヤホンにまつわる言葉あれこれ


【解像度・分解能】

平たく言うと、音がどれくらいハッキリ聴き取りやすいかということ。
これが良いイヤホンはサンホラなどの曲で、音とセリフが重なってごちゃごちゃになってる部分なんかでも1つ1つの音が判別しやすくなる。
一方で音源のアラもハッキリとわかるようになってしまい、容量重視でかなり音源を圧縮していたり*4情報が細かすぎて疲れるなんてことにも繋がる。


【スペック】

パッケージやカタログの記載されているアレ。対応周波帯域やインピーダンス、ケーブルの長さなどなど。あんま意味は無い。
というのも、周波帯域なんかはメーカーごとに測定方法が異なる上に、実際にどんな音がするかなんてカタログスペック見てもわかるもんでもないからである。
インピーダンスもヘッドホンならともかく、イヤホンレベルなら音をとるうえで問題になることはまずない。
ただし一部の高級イヤホンにはヘッドホン並にインピーダンスが非常に低いものがあり、こういうタイプはプレーヤー側のパワーが求められるので、スマホや安いプレーヤーだとパワー不足で音量が満足にとれなかったり、音が露骨に細くなったりといったことが起こる。上記のリケーブルで非常に線量および芯数の多いケーブルを使っていると標準のケーブルより多くの出力を必要とするので猶更である。3万円以上の高級イヤホンを買い求める際は一応ここに注意されたし。


○購入の際の注意点。

イヤホンの音は千差万別。
個人の感性も視聴環境も千差万別なので他人のレビューの類はあてにならないと考えていい。精々音の傾向を知るくらいに留めておこう。
10万クラスのハイエンドイヤホンであっても絶賛する声もあれば、数千円のイヤホンの方がマシ!というレビューまであるのだから。
なんで、高いイヤホンを買うなら一度はお店で視聴してみると良い。特に装着感の確認は大事。(それでも使ってるうちに不満が出ることもあるけど……。)
また、そこらの電気屋やドンキではソニーやオーディオテクニカ、boseあたりの1万円程度までのイヤホンしか置いてない場合があるので
高いイヤホンを色々聞きたい場合は駅前にある大きなカメラ屋とか、淀橋なカメラ屋とかに行く必要がある。秋葉原や日本橋近くにお住まい・お勤めならオーディオ専門である良いイヤホンなんかが最も確実。
ただし、高い物になると5万とか平気で飛んでいく。リケーブルなども考えるとそれ以上の出費になることも。
中にはAKGで11万、ゼンハイザーが16万のモデルを出している。身近なSONYでさえ近年15万クラスのモデルを発売している。

自分が求めている音の傾向も事前に知っておくことが大事。高音重視なのにダイナミック型を探しても満足しないし、逆に低音重視なのにBA型を探しても永遠に終わらないだろう。
それと、試聴の際は出来れば普段使っているプレーヤーと聞き慣れている曲で行うこと。馴染みの環境に近づけることでより差異などがわかる。
一聴して合わない、と思ってもすぐ切り捨てず、プレーヤーのイコライザーで調整することを薦める。調整次第で化けるイヤホンも少なくないからだ。イコライザ?そんなん邪道た!な原音派はあきらめましょう。

なお、試聴機のイヤーピースには他人の耳くそがついている場合もあるのでそこは注意してね。
大体近くにウェットティッシュが置いてあるので視聴前にイヤーピースや本体をよく拭いておくことを勧める。もちろん視聴した後はそのままにせず次の人の為にしっかり拭いておくのがマナーである。

【有名なメーカー】

オーディオテクニカ
BOSE
SHURE
DENON(旧デンオン)
JVCケンウッド
ONKYO
SONY
Panasonic
Philips
Final
ゼンハイザー
AKG(旧アカギ音響)


追記・修正はケーブルの端子を間違えないようお願いします。

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最終更新:2024年01月31日 19:52

*1 ただし接続部が接触不良を起こす場合もある。

*2 技術的な解説は省くが、普通のイヤホン接続(アンバランス接続)に比べるとノイズが少なく出力も高く、音も明瞭になる上位変換的な接続のこと。

*3 なので、同じ値段ならヘッドホンやスピーカーのが音が良い傾向にある。

*4 圧縮技術が進歩している為多少圧縮した程度では分からないが、それでも流石にMP3の128kbps以下にするとブラインドテストでも音源の粗が顕著に現れだす。