狼男(MTG)

登録日:2012/02/04 (土) 11:57:16
更新日:2022/05/19 Thu 19:04:53
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狼男/werewolfとはマジック:ザ・ギャザリングに登場するクリーチャー・タイプ。

前置き

狼男と言えば、一般的には「普段は人間として暮らしているが、満月の夜に狼じみた怪物となり人間に危害を加える」怪物として知られている。
中世ファンタジーやホラー映画、各種アニメや漫画などでも有名なモチーフであり、MTGでも昔からこのモチーフをカード化しようと様々なアプローチを試みてきた。

Greater Werewolf / 大いなる人狼 (4)(黒)
クリーチャー — 狼男(Werewolf)
戦闘終了時に、大いなる人狼をブロックしているか大いなる人狼によってブロックされている各クリーチャーの上に-0/-2カウンターを1個置く。
2/4

ひとつ目が、単なるクリーチャーとして使われたもの。しかし噛みついた相手に呪いを伝染させる非常に厄介な存在という部分は表現されているが、ぶっちゃけこれならゾンビでもホラーでも昆虫でも成り立ってしまうモチーフである。
狼男と言えばやはり、満月を見て変身して鋭い爪や牙で相手を打ち倒したり、呪いと言っても本当に厄介で破滅的なものを伝染させたりという存在であることが求められる。


Treacherous Werewolf / 不実な人狼 (2)(黒)
クリーチャー — 狼男(Werewolf) ミニオン(Minion)
スレッショルド ― あなたの墓地にカードが7枚以上あるかぎり、不実な人狼は+2/+2の修整を受けるとともに「不実な人狼が死亡したとき、あなたは4点のライフを失う。」を持つ。
2/2

Werebear / 熊人間 (1)(緑)
クリーチャー — 人間(Human) 熊(Bear) ドルイド(Druid)
(T):(緑)を加える。
スレッショルド ― あなたの墓地にカードが7枚以上あるかぎり、熊人間は+3/+3の修整を受ける。
1/1

ふたつ目が、条件を満たすと獣性を増すというもの。条件を満たして強くなるという意味ではいいのだが、クリーチャー・タイプの問題をうまく解決できていない
たとえば《熊人間》は、最初から熊としても扱われている。これでは変身感がうまく出せていないし、スレッショルドの条件上墓地の枚数が変動すると元に戻ったり戻らなかったりして面倒くさい。


Homura, Human Ascendant / 上位の人間、焔村 (4)(赤)(赤)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) モンク(Monk)
上位の人間、焔村ではブロックできない。
上位の人間、焔村が死亡したとき、それを反転状態で戦場に戻す。
4/4
―――
Homura's Essence / 焔村の本質 (4)(赤)(赤)
伝説のエンチャント
あなたがコントロールするクリーチャーは+2/+2の修整を受けるとともに、飛行と「(赤):このクリーチャーはターン終了時まで+1/+0の修整を受ける。」を持つ。

条件を満たして変身するカードといえば、反転カードというものがあった。「条件を満たせば完全に変質することを1枚で表現する」カードとしてはTCG随一であり、
インビテーショナルカードでも「反転カードとして成長する」ものを提出したプレイヤーがいた。
しかしこれはレイアウトの関係や紙での管理が面倒なことから非常に不評で、さらに開発側としても複雑なテキストを持たせられないというのが疎んじられた。



さて、西洋映画の題材としてしょっちゅう用いられている意匠として「ホラー」が存在する。吸血鬼、亡霊、ゾンビ、死体をつなぎあわせた怪物、殺人鬼……その中に狼男が入るのは自然な流れだった。
このホラーをモチーフとした「イニストラード・ブロック」で、狼男はクリーチャー・タイプとして初登場する。

イニストラードで初登場したデザイン「両面カード」の販促主要部族として。

Reckless Waif / 無謀な浮浪者 (赤)
クリーチャー — 人間(Human) ならず者(Rogue) 狼男(Werewolf)
各アップキープの開始時に、直前のターンに呪文が唱えられていなかった場合、無謀な浮浪者を変身させる。
1/1
―――
Merciless Predator / 無慈悲な捕食者
〔赤〕 クリーチャー — 狼男(Werewolf)
各アップキープの開始時に、直前のターンにプレイヤー1人が2つ以上の呪文を唱えていた場合、無慈悲な捕食者を変身させる。
3/2

カードの表面(昼)が人間、裏面(夜)が狼になっており、すべての狼男は変身という両面カード特有の能力を持ち、表裏が入れ替わる
両面カードは反転カードと同じように狼男の変身を再現しつつ、かつあちらと異なりカード1枚に2枚分のイラスト・テキストを盛り込むことに成功した。
この両面カードがMTGに与えた衝撃は大きく、狼男は以後、両面カードでデザインされる部族として発展していくこととなる。

性能・性質

昼から夜への変身条件は、「いずれのプレイヤーもそのターン中に呪文を唱えていない」というものである。使用に注意が必要となるが、達成すれば場の全ての狼男が変身する。一気に効果が強力になり、場を制圧する。
カードのデザイン的には「条件を満たすと強くなる」もののため、変身後の狼男はマナ・コストに対してスタッツも能力も破格の強さである。
対戦相手としては変身してほしくない。つまりこの変身条件は相手に呪文を唱えること、素早く消耗することを強いるため、自分のターンに動きたがらないパーミッション系統にはなかなかの嫌がらせになる。

逆に夜から昼への変身条件は「いずれかのプレイヤーがターン中に呪文を2回唱える」ことである。そのため、うっかり狼男を2体展開してしまうと変身が解除されてしまう。
当時はフラッシュバックという「墓地から唱えられる呪文」が存在したため、呪文を2回唱えることは比較的容易な環境だった。というか除去全盛だったので、「単体除去+適当なドロー呪文」で盤面が完全に弱体化してしまう。
呪文の管理がかなりめんどくさい部族である。

さらに多人数戦だと変身がかなり解除されやすい上に、なかなか変身できずにやきもきすることも多い。
手札事故で延々愚痴るプレイヤーが珍しくないように、カードが思った通りに動いてくれないというのは結構腹が立つことである。狼男はこの「思った通りに動かない」という性質をテキストの時点で持ってしまっている。
変身させたい・変身を維持したいがために呪文を我慢したり、対戦相手の何気ない軽量呪文のせいで人間側に戻されたりしては、使っている側はたまったもんじゃない。
一応専用のサポートカードこそあるが、それでどうにかできるような部族というわけでもなかった。

両面カード自体の問題点

両面カードそのものについては既に記事があるのでそちらを参照して頂きたい。
簡単に言うと両面カードはスリーブか差し替えカード(チェックリストカード)を使うのだが、スリーブを使う場合、表裏を入れ替えるのに手間がかかるというプレイビリティ上の問題が非常に大きい。
変身自体は狼男専用という訳ではないのだが、両面カード初登場だった上に狼男は何度も変身を行うため特にこの問題が大きかった。
実際の対戦でも、

A「呪文唱えなかったので変身させます」
次ターンB「呪文2つ唱えたので戻してください」

ということが普通に起きるし、狼男を複数枚出していれば手間もどんどん増えてしまう。
差し替えカードは差し替えカードで、デッキ内の大半が両面カードの狼男デッキの場合、差し替えカードを使うと手札が差し替えだらけでコストの判別がしにくい問題が発生する。
またイラストが無く、無味乾燥な差し替えカードはTCGをプレイするにあたりあまり気持ちのいいものではない。
主観的な意見と思うだろうが、これを理由に「両面カードが嫌いだ」と言いながらメインデッキに入れるプレイヤーも多いので結構切実な問題だったりする。

さらに裏面が通常カードと違うということはスリーブ裏面の厚みも問題になる。当時のスリーブは、カードの保護やわずかな傷みを隠すために使われるものだったので若干色が透けていてもそこまで大きな問題にはならなかったのだが*1
両面カードを使う場合「スリーブに充分な厚みがないと両面カードの裏側が透けて見える=反則行為になってしまう」ということでかなり気を使わなければならなくなった。イニストラードが出たばかりの頃はたびたび問題になっていた。

結果的に狼男の雰囲気がよく表現できているという点以外ではものすごく不評なカードだった。当時はメインデッキに投入する両面カードなんて常軌を逸した考えであり、そのせいでプレイヤーが受け入れたくなかったというのもある*2
カジュアルな環境では「裏面は専用のプロキシを使う」ことで代用する人も多かったのだが、これは公式の遊び方では認めていない。

狼男の歴史

イニストラードブロック

初登場した「イニストラード」では赤と緑の主要種族として登場。
しかし「イニストラード」スタンダード時代は、「変身するたびにメリットを得る」というデザインの《高原の狩りの達人》が使われた程度で、「狼の側を維持する」ことを考える部族デッキとしてはさっぱり成果を残せず、失敗扱いされた。
よくカードパワーが足りていない、安定性がない、というのが弱点のように言われるのだが、専用のサポートカードがあるので戦えないレベルではない。
この時期の狼男にとって最大の逆風だったのは「当時の両面カードのルール」である。
当時のルールでは「第2面のマナ総量*3は0として扱う」というものがあり、これのせいでスタンダードに存在していた《漸増爆弾》*4が2マナの全体除去として激烈に刺さるのである。
さらに「ラヴニカへの回帰」で登場した《突然の衰微》に至っては「打ち消されない2マナの除去」としてぶっ刺さる。
ただでさえ除去が強い時期にあって、不安定な上に除去耐性がないどころか「本来別のカードの対策のために入れられたもの」にすらついでに対策されるやつ主力にしなければならないデッキ。
そんなもんを誰が好んで使うというのか、という感じでトーナメントシーンでの出番はほぼ無かった。

そして大問題だったのが、先にも書いたターンをまたぐたびにいちいち変身条件をチェックしてひっくり返さなきゃいけない点。
単純に面倒くさい上、そんなに頻繁にスリーブから引っ張り出したり突っ込んだりなんてしてたら、カードもスリーブもすぐに傷んでしまう*5

ぶっちゃけ「呪文を唱えづらい」「除去に弱い」「めんどくさい」と三拍子そろっており、当時カジュアルMTGがほとんど流行っていなかったこともあって、ゲーム的にあまり人気のある部族というわけではなかった。
当時のレジェンド・ルールの関係から伝説のクリーチャーを作るとルール的に難解な部分*6があり、揉める可能性が高かった*7ため、
他のクリーチャー・タイプと違って伝説のクリーチャーが登場せず、「狼男の親玉」感のあるカードがなかったことも問題だった。

しかし狼男の変身というフレーバーは非常にわかりやすいため根強い人気があり、さらにイニストラードを特徴づけるカードとしてはこの上ない適任者でもあった。

イニストラードを覆う影ブロック

なんだかんだでフレーバー面での人気が高かったため「イニストラードを覆う影」でもめでたく主要種族として再登場。
両面カードギミックがそのまま残されている他、「異界月」ではエムラクールの影響下であることを示すために一度変身したらもう元に戻れない、異形への不可逆変身を持つ狼男も登場した。
環境面では《ラムホルトの平和主義者》はその名に反して高い戦闘能力を買われ実績を残している。
初の伝説の狼男《爪の群れのウルリッチ》や、設定上は狼男のプレインズウォーカーである《アーリン・コード》なども登場し、カジュアル方面で人気を博した。

イニストラード:真夜中の狩り

3度目のイニストラードである「イニストラード:真夜中の狩り」でも引き続き狼男は主要種族として登場。というかエキスパンション全体が狼男推しであり、従来いなかった白黒青の狼男も登場している。
変身の条件が「日暮/Daybound」「夜明/Nightbound」というキーワード能力に統一され、そのターンのアクティブプレイヤーだけを参照するようになり、夜の状態を維持しやすくなった。
昼夜は戦場全体で一括管理されるため、夜ならば最初から変身した狼男を出すことができ、夜であることを参照する呪文や、昼夜の切り替わりを条件に起動するパーマネントも登場した。
使い勝手は従来より大幅に改善された反面、古いカードとの互換性は失われた。

パイオニア・エクスプローラー

真夜中の狩りでの狼男は《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》を軸にした【ナヤ・ウィノータ】を大きく強化した。
変身する狼男の第一面は基本的に人間でもある。そのため人間以外のクリーチャーの攻撃に反応して人間を呼び出すウィノータの能力で場に出すことができ、変身すれば人間でなくなるためさらに後続の狼男を呼び出すことができる。
6/6と大型な上に狼トークンも出せる《トヴォラーの猟匠/Tovolar's Huntmaster》がまず第一に採用され、除去を行う《粗暴な聖戦士/Brutal Cathar》、場の狼男を変身させ人間でなくする《不吉な首領、トヴォラー/Tovolar, Dire Overlord》らを並べ、うまく回れば3~4ターン目には大量のクリーチャーを攻撃した状態で展開することができる。
しかもこのデッキ、デッキの中核を成すのが比較的最近のカードばかりである。そのためMTGアリーナ実装済みのカードのみで行われる準パイオニアフォーマットであるエクスプローラーにおいてもほぼそのまま持ち込むことが可能であり、初期環境を【ナヤ・ウィノータ】一色に染め上げた。
さすがにこれはまずいと判断され、エクスプローラーにおいては《軍団のまとめ役、ウィノータ》は秋に『団結のドミナリア』が出るまで使用禁止となった。

レガシー

レガシーにおいてはドラゴン・ストンピィの一種として《血染めの月》《虚空の杯》《三なる宝珠》などでマナ拘束を掛けてお互いに呪文をほとんど唱えられなくした状態で狼男を変身させ、その状態を維持するワーウルフ・ストンピィというデッキが登場した。
決してファンデッキというわけではなく、《魂の洞窟》で人間を宣言することで各種狼男に加え《月の大魔術師》も恩恵を受けられるという点、条件さえ満たせばマナレシオが高いクリーチャーを運用できる点が強力で、しかも無理にデッキをゆがめる必要がなかった。
右手に依存するためメタゲーム内には入れないローグデッキではあるが、血染めの月の下で変身する狼男というフレーバーは非常に美しいため愛用者は少なくなく*8、海外においては時折結果を残していた。
このデッキは「フレーバー的に完成している」という一面から、たびたび狼男の熱心なファンが作ったような風説がささやかれるが、これは誤り。
ストンピィの理念には「3~4マナの制圧力の高いカードを素早く盤面に叩きつけて殴る」というものがあり、当時の赤にはその戦術に合致するクリーチャーが1ブロックに1~2枚登場していた。
それが偶然狼男だったというだけであり、これ以外にもスタンダードで活躍できなかった赤の中堅クリーチャーがいくつか採用を試みられている*9
現在では他にもっといい選択肢が増えたし、このデッキも「赤単プリズン」という形で完成しているため、このアプローチが取られることはまずない。

ヴィンテージ

ヴィンテージでは人間デッキのロード扱いで《アヴァブルックの町長》が用いられることがある。
特に人間のクリーチャー・タイプを持つ妨害札が多いことから、2021年現在でも【デス&タックス】で割と見るアプローチである。
変身することは考えず、単に人間のロードとして対戦相手のライフを削るための打点を増やす2マナのロードとして扱う。伝説のクリーチャーではないので戦場に複数枚並べられる(=その分打点が増える)のが魅力。
元々《アヴァブルックの町長》は人間デッキのロードとして用いるデッキが多いが、呪文を唱えないと勝手に変身して本来の「人間のロード」としての仕事を果たさなくなるという弱点がある。
そのためモダンやレガシーでも採用されることはあるがまったく主流ではなく、特にレガシーでは10年前にその流行が終わってしまっている。だがヴィンテージの場合は呪文を唱える動きが活発、かつ自分のやりたいことを無理やり押し通すデッキが強い環境なので、このデメリットを大きく軽減できるのである。


主な狼男


Mayor of Avabruck / アヴァブルックの町長 (1)(緑)
クリーチャー — 人間(Human) アドバイザー(Advisor) 狼男(Werewolf)
あなたがコントロールする他の人間(Human)クリーチャーは+1/+1の修整を受ける。
各アップキープの開始時に、直前のターンに呪文が唱えられていなかった場合、アヴァブルックの町長を変身させる。
1/1
―――
Howlpack Alpha / 吠え群れの頭目
〔緑〕 クリーチャー — 狼男(Werewolf)
あなたがコントロールする他の狼男(Werewolf)か狼(Wolf)である各クリーチャーはそれぞれ+1/+1の修整を受ける。
あなたの終了ステップの開始時に、緑の2/2の狼クリーチャー・トークンを1体生成する。
各アップキープの開始時に、直前のターンにプレイヤー1人が2つ以上の呪文を唱えていた場合、吠え群れの頭目を変身させる。
3/3

「普段は生真面目な市長が、実は怪物の長でした」というイメージのカード。他の狼男とまったく同じタイミングで変身するため、狼男のロードとしての力は随一。
しかし当時のスタンダードの狼男は、横に並べて戦おうとすると《漸増爆弾》で一掃されてしまう。そのため表面を維持することを前提に人間デッキで用いられることの方が多かった。
現在でも人間デッキで活躍しており、特にヴィンテージでは「シングルシンボルの2マナ、変身前を維持するのがたやすい」という軽さから好んで採用される。


Reckless Waif / 無謀な浮浪者 (赤)
クリーチャー — 人間(Human) ならず者(Rogue) 狼男(Werewolf)
各アップキープの開始時に、直前のターンに呪文が唱えられていなかった場合、無謀な浮浪者を変身させる。
1/1
―――
Merciless Predator / 無慈悲な捕食者
〔赤〕 クリーチャー — 狼男(Werewolf)
各アップキープの開始時に、直前のターンにプレイヤー1人が2つ以上の呪文を唱えていた場合、無慈悲な捕食者を変身させる。
3/2

1マナ3/2になる……かもしれないという狼男。イラストを見ればわかるが美人な女性である。ちんぽは多分生えてない
1マナにして3/2という最大値は魅力的で、当時の赤単でよく使われていたカードだが、どちらかというと他にろくな採用候補がないという方が正しいかもしれない
というのも変身させるために呪文を唱えないターンが必要になるため、カードの展開ができなくなる。しかも対戦相手に呪文を2回唱えられるだけで《さまようもの》に戻ってしまうのだ。


Instigator Gang / 扇動する集団 (3)(赤)
クリーチャー — 人間(Human) 狼男(Werewolf)
あなたがコントロールする攻撃クリーチャーは+1/+0の修整を受ける。
各アップキープの開始時に、直前のターンに呪文が唱えられていなかった場合、扇動する集団を変身させる。
2/3
―――
Wildblood Pack / 野生の血の群れ
〔赤〕 クリーチャー — 狼男(Werewolf)
トランプル
あなたがコントロールする攻撃クリーチャーは+3/+0の修整を受ける。
各アップキープの開始時に、直前のターンにプレイヤー1人が2つ以上の呪文を唱えていた場合、野生の血の群れを変身させる。
5/5

条件を満たせば、攻撃時に4マナ8/5トランプルという破格の性能になるカード。2、3回殴ると相手は死ぬ。
スタンダードでは見向きもされなかったが、レガシーではワーウルフストンピィのフィニッシャー枠として用いられたことで話題を呼んだ。
タフネス5なので当時レガシーでも大流行していた《四肢切断》の範囲に入ってしまっているのは惜しいものの、
相手が勝手にライフを4も減らしてくれるのだから殴る回数が2回に減るという意味では全然メリットだったり*10



Huntmaster of the Fells / 高原の狩りの達人 (2)(赤)(緑)
クリーチャー — 人間(Human) 狼男(Werewolf)
このクリーチャーが戦場に出るか《高原の狩りの達人/Huntmaster of the Fells》に変身するたび、緑の2/2の狼(Wolf)クリーチャー・トークンを1体生成し、あなたは2点のライフを得る。
各アップキープの開始時に、直前のターンに呪文が唱えられていなかった場合、高原の狩りの達人を変身させる。
2/2
―――
Ravager of the Fells / 高原の荒廃者
〔赤/緑〕 クリーチャー — 狼男(Werewolf)
トランプル
このクリーチャーが《高原の荒廃者/Ravager of the Fells》に変身するたび、対戦相手1人かプレインズウォーカー1体を対象とし、そのプレイヤーかそのプレインズウォーカーのコントローラーがコントロールするクリーチャーを最大1体まで対象とする。高原の荒廃者はその前者に2点のダメージを与え、その後者に2点のダメージを与える。
各アップキープの開始時に、直前のターンにプレイヤー1人が呪文を2つ以上唱えていた場合、高原の荒廃者を変身させる。
4/4

闇の隆盛の神話レア。当時はよく「唯一トーナメントで用いられた狼男」などと揶揄され、場合によっては「唯一の両面カード」とまで言われた*11
運用が結構複雑なのだが、狼男の「変身状態を維持できるかが不安定」という弱点がこのカードの場合は完全なメリットになっており、特に戦場に出すだけで狼トークンが出て2点回復というだけでも十分強い。
これが変身すれば4/4となり、プレイヤーとクリーチャーに火力を飛ばせる。人間に戻れば回復とトークン展開。
これを変身するたびに繰り返せるのだから、戦場に定着させておけばそれだけでアドバンテージが稼げてしまう。単体で見てもかなり高性能であり、狼トークンのおかげで戦場に出ただけで仕事が終わる。単体除去1枚では対処しきれない性質から、当時のトーナメントシーンでたびたび見受けられた。
モダンでも《血編み髪のエルフ》禁止後のグルールやジャンドなどで用いられた実績がある。さすがに血編みが戻ってくる前にすでに型落ちしていたが、それだけ力強いカードだったということだ。
狼男デッキに採用する場合は変身するたびに面倒なことをするので、変身を頻繁に繰り返させることをためらわせる効果がある。


Lambholt Pacifist / ラムホルトの平和主義者 (1)(緑)
クリーチャー — 人間(Human) シャーマン(Shaman) 狼男(Werewolf)
あなたがパワーが4以上のクリーチャーをコントロールしていないかぎり、ラムホルトの平和主義者では攻撃できない。
各アップキープの開始時に、直前のターンに呪文が唱えられていなかった場合、ラムホルトの平和主義者を変身させる。
3/3
―――
Lambholt Butcher / ラムホルトの解体者
〔緑〕 クリーチャー — 狼男(Werewolf)
各アップキープの開始時に、直前のターンにプレイヤー1人が2つ以上の呪文を唱えていた場合、ラムホルトの解体者を変身させる。
4/4

イニストラードを覆う影で登場した狼男。女性。
2マナ3/3というたくましいスタッツが魅力的。何が平和主義者だ、と当時はよくネタにされていた。ハリポタのルーピン先生みたいなもんなのかな?
《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》などの使いやすい相方に恵まれたため、様々なデッキで用いられた。
変身してなくてもそこそこ強いが、変身してしまうと平和でもなんでもない。


Ulrich of the Krallenhorde / 爪の群れのウルリッチ (3)(赤)(緑)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 狼男(Werewolf)
このクリーチャーが戦場に出るか爪の群れのウルリッチに変身するたび、クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは+4/+4の修整を受ける。
各アップキープの開始時に、直前のターンに呪文が唱えられていなかった場合、爪の群れのウルリッチを変身させる。
4/4
―――
Ulrich, Uncontested Alpha / 揺るぎない頭目、ウルリッチ
〔赤/緑〕 伝説のクリーチャー — 狼男(Werewolf)
このクリーチャーが揺るぎない頭目、ウルリッチに変身するたび、あなたがコントロールしておらず狼男(Werewolf)でないクリーチャー1体を対象とする。あなたは「このクリーチャーはそれと格闘を行う。」を選んでもよい。
各アップキープの開始時に、直前のターンにプレイヤー1人が2つ以上の呪文を唱えていた場合、揺るぎない頭目、ウルリッチを変身させる。
6/6

イニストラードを覆う影唯一の伝説の狼男。非常に残虐な男性で、人間でいるときも狼たちと過ごすことを選んだ「人類の敵」側の狼男。
設定だけは旧イニストラードから存在しており、伝説の狼男を作ってほしいという要望に応えるために作られたもの。
《高原の狩りの達人》のリメイクのような性能で、変身するたびに厄介な能力が誘発するようになっている。
えっ、実用性?……高原と違ってどうも物足りない。トーナメント実績はない。


Shrill Howler / けたたましく吠えるもの (2)(緑)
クリーチャー — 狼男(Werewolf) ホラー(Horror)
けたたましく吠えるものよりパワーの小さいクリーチャーでは、これをブロックできない。
(5)(緑):けたたましく吠えるものを変身させる。
3/1
―――
Howling Chorus / 多重吠え
クリーチャー — エルドラージ(Eldrazi) 狼男(Werewolf)
多重吠えよりパワーの小さいクリーチャーでは、これをブロックできない。
多重吠えがプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、無色の3/2のエルドラージ(Eldrazi)・ホラー(Horror)・クリーチャー・トークンを1体生成する。
3/5

異界月で登場した狼男で、二度と戻れない変身を行う。ゴシックホラーがコズミックホラーになる……というストーリーである。「怪物化」に近い変身能力を持つことからも、今までの狼男とは全く異質な存在。
確かに雰囲気は出ているのだが、異界月は人間や吸血鬼や天使などもこのような変身を起こしてしまい、これまでの世界観が台無しになったと忌避する声もあった。
そりゃ怪物くんのオオカミ男が突然タコのバケモンに変身したら子供はがっかりするよな。


Kessig Naturalist / ケッシグの自然主義者 (赤)(緑)
クリーチャー — 人間(Human) 狼男(Werewolf)
ケッシグの自然主義者が攻撃するたび、(赤)か(緑)を加える。ターン終了時まで、このマナはステップやフェイズの終了に際して無くならない。
日暮(プレイヤーが自分のターンに呪文を唱えなかったなら、次のターンに夜になる。)
2/2
―――
Lord of the Ulvenwald / ウルヴェンワルドの王
〔赤/緑〕 クリーチャー — 狼男(Werewolf)
あなたがコントロールしていてこれでないすべての狼(Wolf)や狼男(Werewolf)は+1/+1の修整を受ける。
ウルヴェンワルドの王が攻撃するたび、(赤)か(緑)を加える。ターン終了時まで、このマナはステップやフェイズの終了に際して無くならない。
夜明(プレイヤーが自分のターンに2つ以上の呪文を唱えたなら、次のターンに昼になる。)
3/3

イニストラード:真夜中の狩りで登場した新世代の狼男の代表格。攻撃するたびにマナを生み出す。
倒されてしまっても後続のカードに繋ぐことができ、首尾よく夜になればロードとして全体強化をもたらす。


Tovolar, Dire Overlord / 不吉な首領、トヴォラー (1)(赤)(緑)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 狼男(Werewolf)
あなたがコントロールしている狼(Wolf)や狼男(Werewolf)のうち1体がプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、カード1枚を引く。
あなたのアップキープの開始時に、あなたが合計3体以上の狼や狼男をコントロールしている場合、夜になる。その後、あなたがコントロールしている望む数の人間(Human)・狼男を変身させる。
日暮
3/3
―――
Tovolar, the Midnight Scourge / 深夜の災い魔、トヴォラー
〔赤/緑〕 伝説のクリーチャー — 狼男(Werewolf)
あなたがコントロールしている狼(Wolf)や狼男(Werewolf)のうち1体がプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、カード1枚を引く。
(X)(赤)(緑):あなたがコントロールしている狼や狼男のうち1体を対象とする。ターン終了時まで、それは+X/+0の修整を受けトランプルを得る。
夜明
4/4

イニストラード:真夜中の狩りにおける伝説の狼男。狼や狼男を展開することで戦場を強制的に夜へと変え、さらに旧世代の狼男をも変身させる。
戦闘ダメージを与えるごとのドローによりカード切れによる息切れも起こしにくく、変身後にはトランプルを付与してドローを確実なものにする。
すべてのクリーチャータイプをあたえるカードとの併用で、本来なら厳しい変身条件を持つカードを踏み倒すというテクニックにも引っ張りだこ。

これらの他にも優秀な狼男やそのサポートカードがイニストラード:真夜中の狩りでは多数登場し、1つ前のフォーゴトン・レルム探訪からも《群れ率いの人狼/Werewolf Pack Leader》*12《レンジャー・クラス/Ranger Class》*13などの有力なカードを採用することで、史上初めてまともな狼男部族デッキがスタンダードで成立した。

Brutal Cathar / 粗暴な聖戦士 (2)(白)
クリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier) 狼男(Werewolf)
このクリーチャーが戦場に出たか粗暴な聖戦士に変身したとき、対戦相手がコントロールしているクリーチャー1体を対象とする。このクリーチャーが戦場を離れるまで、それを追放する。
日暮(プレイヤーが自分のターンに呪文を唱えなかったなら、次のターンに夜になる。)
2/2
―――
Moonrage Brute / 月憤怒の粗暴者
〔赤〕 クリーチャー — 狼男(Werewolf)
先制攻撃
護法 ― 3点のライフを支払う。
夜明(プレイヤーが自分のターンに2つ以上の呪文を唱えたなら、次のターンに昼になる。)
3/3
こちらは狼男デッキに入らないタイプの狼男。《放逐する僧侶/Banisher Priest》の能力を持つ。
昼夜がコロコロ変わるような状況で真価を発揮し、複数のクリーチャーを捕まえられる。
色や役割が類似する《スカイクレイブの亡霊/Skyclave Apparition》と競合するが、あちらが土地とトークン以外ならなんでも追放でき追放した物が帰ってこないのに対し、こちらはマナコストの制約がない。
変身すると戦闘向けのステータスになる。先制攻撃と護法のおかげで破壊されにくいが、除去を使いたい状況で夜になっていると、変身した状態で出てきて困るという弱点でもある。

狼男のサポートカード


Moonmist / 月霧 (1)(緑)
インスタント
すべての人間(Human)を変身させる。このターン、狼男(Werewolf)でも狼(Wolf)でもないクリーチャーから与えられるすべての戦闘ダメージを軽減する。(両面カードのみが変身できる。)

不気味な霧が出てくるホラー定番のシチュエーションで人間を変身させるカード。
人間状態でブロックしてから使うことで対戦相手のクリーチャーを返り討ちに遭わせる使い方だが、人間状態で攻撃→突然狼男に変身してダメージ増加ということもできるので結構器用な動きができる。
……のだが、実はこのカード、非常に使い勝手が悪い。というのも狼男側に変身すると、そちらのテキストで「同一プレイヤーが2回呪文を唱えた場合、人間側に変身する」という条件を参照してしまうようになるため。
つまり変身したのはいいが、対戦相手が2回呪文を唱えていたり、自分がこれと他の呪文を唱えてしまった場合、終了ステップの開始時に人間に戻ってしまうというわけ。
霧が晴れて人間に戻るという意味ではフレーバー的には完成されているが、戦略的にはいい迷惑である。こんな部族カードしかもらえなかったから大成しなかったんじゃないかな……
また、「変身する両面カード」のみを変身させるのだが、人間なら何でも変身させるため狼男ではない《秘密を掘り下げる者》も《ヴリンの神童、ジェイス》も変身してしまう。もっと複雑な状況を作ろうと思えば作れてしまうため、昔はよくルールの穴を突く話で用いられた。
なお、日暮には「夜になる以外で変身できない」という効果が含まれるため対応していない。


Immerwolf / 常なる狼 (1)(赤)(緑)
クリーチャー — 狼(Wolf)
威嚇(このクリーチャーはアーティファクト・クリーチャーかそれと共通の色を持つクリーチャー以外にはブロックされない。)
あなたがコントロールする他の狼(Wolf)か狼男(Werewolf)である各クリーチャーはそれぞれ+1/+1の修整を受ける。
あなたがコントロールする人間(Human)でない狼男は変身できない。
2/2

「変身できない」と書いてあるとデメリットのように見えるが、要は狼男の状態を維持するためのロード。このカード自体は狼なので、おおかみこどもの雨と雪に出てきた狐の師匠みたいな「野生を教えてくれる狼の先生」といったところか。
狼男で部族デッキを組む場合はほぼ必須……と言いたいところだが、当時のルールでは変身状態を維持すると《漸増爆弾》で一掃される危険性が高まる上に《高原の狩りの達人》とはディスシナジー。
あと今は常盤木から外された「威嚇」という能力がこの上なく面倒くさくなるカードでもあり、このサイクルの他のロードが素直な性能でとても強かったこともあり、ぶっちゃけウケは悪かった。


Nightpack Ambusher / 夜群れの伏兵 (2)(緑)(緑)
クリーチャー — 狼(Wolf)
瞬速
他の、あなたがコントロールしている狼(Wolf)と狼男(Werewolf)は+1/+1の修整を受ける。
あなたの終了ステップの開始時に、このターンにあなたが呪文を唱えていなかった場合、緑の2/2の狼クリーチャー・トークンを1体生成する。
4/4

瞬速4/4というスタッツが優秀だが、これに加え「自分のターンに自分が呪文を唱えなければ2/2の狼トークンを生成できる」という能力を持つ。しかも生成した狼は自身のロード能力で強化可能。
当時の緑絡みのスタンダードデッキでたびたび採用されたパワークリーチャーであり、テフェリーに瞬速を封じられつつもそのテフェリーに圧力をかけたり、逆にテフェリーと一緒に組んだりと、当時のスタンダードの環境を定義づけた1枚。
特に「シミックフラッシュ」というデッキでの活躍が目覚ましかった。
……で、実はひっそりと狼男も修正を受ける。スタンダードに狼男なんていなかったせいで知ってる人の方が少ない。
ロードとしては「自分が呪文を唱えなければいい=相手が呪文を唱えたかどうかは参照しない」という点が他の狼男と変身条件と微妙に異なるため見落とすことも考えられるなど、あんまり嚙み合った存在とは言えない*14。日暮とは条件が一致するためそちらで変身する狼男とは相性が良い。



その他


Arlinn Kord / アーリン・コード (2)(赤)(緑)
伝説のプレインズウォーカー — アーリン(Arlinn)
[+1]:クリーチャーを最大1体まで対象とする。ターン終了時まで、それは+2/+2の修整を受けるとともに警戒と速攻を得る。
[0]:緑の2/2の狼(Wolf)クリーチャー・トークンを1体生成する。アーリン・コードを変身させる。
初期忠誠度3
―――
Arlinn, Embraced by the Moon / 月の抱擁、アーリン
〔赤/緑〕 伝説のプレインズウォーカー — アーリン(Arlinn)
[+1]:ターン終了時まで、あなたがコントロールするクリーチャーは+1/+1の修整を受けるとともにトランプルを得る。
[-1]:クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。月の抱擁、アーリンはそれに3点のダメージを与える。月の抱擁、アーリンを変身させる。
[-6]:あなたは「あなたがコントロールするクリーチャーは、速攻と『(T):クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。このクリーチャーはそれに自身のパワーに等しい点数のダメージを与える。』を持つ。」を持つ紋章を得る。

史上2枚目の「両面プレインズウォーカー」。女性。設定では狼男だが、プレインズウォーカーには部族が付与されないため、カード的には狼男としては扱われない。ただし色といい設定といいイラストといい変身能力といい、狼男を強く意識しているカードである。
ウルリッチとは対照的に、人間のために戦う善なる狼男としてゲートウォッチとはまったく別の枠として活動した*15
第1面では人間の女性として、第2面では狼の姿として活動する……のだが、ぶっちゃけこのカードは成功したとは言いづらい。
というのも、能力をいくつも持っているとはいえ「特定の能力を使わなければ別面に行けない」ため、ある能力が必要な時にそちらの面ではない、ということが往々にして起こりうる。
つまり非常に使いづらいのである
ひっそりとヴィンテージの【インフェルノオース】で採用されてたりする。《ドルイドの誓い》で《業火のタイタン》を呼んで、第1面で+1を使い速攻を付与しぶん殴る、1発で最低10点*16なので2パンで終わる。攻撃誘発はプレイヤーを対象にする以外にも、クリーチャーにも最大3点を飛ばせるし、分割も出来るので、結構柔軟な対応が可能。


Arlinn, Voice of the Pack / 群れの声、アーリン (4)(緑)(緑)
伝説のプレインズウォーカー — アーリン(Arlinn)
あなたがコントロールしていて狼(Wolf)か狼男(Werewolf)である各クリーチャーは、それぞれ+1/+1カウンターが追加で1個置かれた状態で戦場に出る。
[-2]:緑の2/2の狼クリーチャー・トークンを1体生成する。
初期忠誠度7

灯争大戦でのアーリン。変身はしない。
狼及び狼男のロードとしての能力を持つが、灯争大戦に狼は1枚しか存在せず、狼男に至ってはスタンダードで共存したことがない。
狼デッキを組もうにも今度は6マナという重さがネックで非常に使いづらい。リミテッドならば増殖により忠誠度を回復しつつ狼トークンを強化できるのでそこそこ強い。


Arlinn, the Pack's Hope / 群れの希望、アーリン (2)(赤)(緑)
伝説のプレインズウォーカー — アーリン(Arlinn)
日暮(プレイヤーが自分のターンに呪文を唱えなかったなら、次のターンに夜になる。)
[+1]:次のあなたのターンまで、あなたはクリーチャー呪文を、それが瞬速を持っているかのように唱えてもよい。あなたがコントロールしている各クリーチャーは、それぞれ追加で+1/+1カウンター1個が置かれた状態で戦場に出る。
[-3]:緑の2/2の狼(Wolf)クリーチャー・トークン2体を生成する。
初期忠誠度4
―――
Arlinn, the Moon's Fury / 月の憤怒、アーリン
〔赤/緑〕 伝説のプレインズウォーカー — アーリン(Arlinn)
夜明(プレイヤーが自分のターンに2つ以上の呪文を唱えたなら、次のターンに昼になる。)
[+2]:(赤)(緑)を加える。
[0]:ターン終了時まで、月の憤怒、アーリンはトランプルと破壊不能と速攻を持つ5/5の狼男(Werewolf)クリーチャーになる。
初期忠誠度4

イニストラード:真夜中の狩りのアーリン。変身条件は同セットの狼男クリーチャーと同様の日暮/夜明。
第1面はクリーチャーの展開に特化した能力。夜にするために自分のターンに呪文を唱えたくない日暮と瞬速付与の組み合わせは相性がよい。マイナス能力によるトークン生成も4マナで2/2が2体出てくるのでマナ効率が良好。
第2面ではギデオンよろしく自分自身が狼男として戦う。速攻も持っているので別の手段で夜になっている状態で出れば、プレインズウォーカーではなくクリーチャーとして振る舞うことができる。
MTGではよくあることだが、ストーリー上敵対しているトヴォラーとは能力がうまく嚙み合っている。アーリンがトークンを生成すればトヴォラーが夜にし、トヴォラーのドロー能力もトランプル+破壊不能のアーリンならば安全確実に起動できる。

背景ストーリー

イニストラード~アヴァシンの帰還

ソリンの故郷イニストラードにて人間を脅かす存在。
散々狼男と連呼しているが、女性の狼男も存在する。むしろ多い。
多くの他作品の狼男と同じく満月の夜に変身(正しくは月の影響なので満月に限らず)し、銀を苦手とする。
狼男として産まれるわけではなく、普通の人間が突然狼男になってしまうらしい。
なぜ狼男になってしまうのか、その原理は証明されていないが大天使アヴァシンの加護呪文があれば変身衝動が抑えられる。
しかしそのアヴァシンが姿を消してからは加護呪文が弱まった為にイニストラード各地で狼男が増加、人間勢力への襲撃が頻発している。
特に、狼男が多く存在するケッシグ州の州都、アヴァブルックは狼男に滅ぼされ、今は廃墟ホロウヘンジと名を変えている。

理性なく暴れまわる狼男も変身が解ければただの人間に戻る。多くの場合変身時の一部の記憶を残しているらしく、自分の行いに、そして周囲の人間に狼男であるとバレることを恐怖し*17ひっそりと暮らす。
中には開き直って野性を受け入れ、略奪者や野生動物として生きることを選ぶ者もいる。
ちなみに狼男化している時に死ぬと身体が人間に戻る死後反転が起こる。

その後アヴァシンが復活すると、「呪い黙らせ」によって狼男たちの呪いを組み替え、人間サイドの味方であるウルフィーへと変身させた*18
これにより、不本意に狼男になってしまった者たちの中には「人間の味方をする」者もあらわれた。
中には「そのような善良ウルフィーになろうとするが、狼男に家族を殺された人たちに決して受け入れてもらえない」という憂き目に遭う者もあり、特に基本セット2013で登場したオドリックはウルフィー迫害の先鋒として描かれている。

イニストラードを追う影~異界月

アヴァシンが突如狂気化し、それに伴い狼男の呪いも復活してしまう。その後アヴァシンはソリンに《苦渋の破棄》されて消滅。アヴァシンの狂気の理由はソリンへ復讐を誓うナヒリによるものだった。
さらにナヒリが呼びよせた《約束された終末、エムラクール》の影響で狼男の中にはいつもの狼男ではなく「ドローン群れ」と呼ばれるコズミックホラーのバケモノに変身(しかも元に戻れない)する者も増えてしまう。
この時のイニストラードは天使や狼男が人間を襲い、ゾンビが街を荒らし、最終的に人間も獣もネズミも狼男も天使も町もどんどん異形化しソリンは岩に挟まれるとまさしく地獄であった。
あーもうめちゃくちゃだよ。ホラー次元を設定から育てたんだよお前よぉなぁ!
この顛末はイニストラードでは「大患期」としてさっさと忘れ去りたい出来事として語られている。

イニストラード:真夜中の狩り

しれっと設定がなかったことにされ*19旧来の狼男が登場。アヴァシン亡き後のイニストラードで吸血鬼とリリアナが呼び出したのにエムラクールとの決戦のあとはほったらかしにしていったゾンビともども着々と勢力を拡大している。
従来より強力な新種の狼男「凶兆の血」を中心とするトヴォラーの吠え群れはその中でも特に強大であり、昼夜のバランスの修復を阻止しようとしている。アーリンと人間たち、そしてゲートウォッチの面々は昼夜の制御装置セレスタスを起動させるべく、防衛戦を展開することになった。

アーリン・コード

狼男のプレインズウォーカーとして、イニストラードを覆う影でアーリン・コードが登場。
不本意に狼男になってしまったが、それを必死に抑えて敬虔に生きてきた。教会でもそれなりの地位まで上り詰めた。しかしある時ついに獣性を抑えられなくなり、数人の高僧を殺害。
その際にうっかり灯がともってプレインズウォークしてしまい、「狼の姿のまま人間の心を取り戻す」という稀有な体験をしたことで人間性を保つことに成功した。
その後自分の能力で変身を完全に制御できるようになり、さらに狼を従える能力まで持っているという、イニストラードの狼男から完全に逸脱した存在になった。
人間のために戦いたいという気持ちを強く持ち、しかし怪物として人と交わらず引き際はわきまえるという非常に人のできた哀しい女性である。
短編では狼男としての特質を利用して審問官のハル(ハラナ)とアレイナを助けたり、狂気にかられた天使を殺して人間を助けたりと善側として登場。
過去の行いを懺悔し、そして自分の存在自体がイニストラードで許されないことも理解している。
しかし家畜は襲うし同胞の狼たちを重んじて決して人と交わろうとしない、自分や同胞を駆除しようとする人間とは対立することも厭わないなど、彼女の哲学をよく語っている。
そのためか、他のプレインズウォーカーと絡むシーンはほとんどなかった。ロンリーウルフって言葉とかけてるのだろうか。
イニストラード:真夜中の狩りでは主人公に抜擢され、ゲートウォッチの面々との交流も描かれた。
ちなみに戦闘スタイルは肉弾戦。ワイルドだろう?

余談

イラストは温厚な人間の面と、殺戮する狼の面が対になるように描かれている。両面カードの人気はひとえにこのイラストのよさと効果の分かりやすさにある。
反転カードではできなかった「派手なイラストと複雑なテキスト」の恩恵をもっとも受けている……というか、反転カードを過去のものにするための販促と見るべきだろう。
実際プレイ感が悪いだけで、イラストだけならかなりかっこいいのである。フレーバーテキストもコミカルなものが多い。

他の両面カードもそうなのだが、狼男は両面カードという都合上、印刷には大きな制約がかかってしまう。
特殊セットである「統率者戦セット」「コンスピラシーシリーズ」「マスターズシリーズ」「モダンホライゾン」「バトルボンド」「統率者レジェンズ」ではいずれも両面カードが1枚も印刷されていない。
そのため統率者セットなどでも新規参入するカードはまずなく、両面カードの狼男はイニストラードに再訪するか狼男がいる次元を作ることでしか新規勢を増やすことができないという悲しい宿命が存在する。
アーリンも灯争大戦で登場したが、その時は通常の片面PWだったしね。
これらの理由で真夜中の狩りの統率者デッキでも狼男がフィーチャーされているにも関わらず狼男がテーマのデッキは作られなかった。

主にスタンダード勢やMTGA勢を中心に「過去の狼男もエラッタして日暮/夜明に統一するべきだ」という意見がある。
確かにプレイ感は大きく改善されて部族デッキが組みやすくなるし、大半の狼男は第2面の方が強いためそれで「強化」されるのだが、実はエラッタをしてしまうと使い勝手が完全に変わるカードが出てきてしまう。
エターナル環境の《アヴァブルックの町長》がその好例で、下手にエラッタされてしまうと「対戦相手が自分のターンに呪文を唱えなかった時、インスタントを打つことで変身条件を満たせなくする」というテクが使えなくなってしまうし、盤面が夜の状態だとこれまでできていた「出したターンに人間のロードとして使う」ができなくなる。
これでは現在でもたびたび使われているカードの完全な機能変更になってしまう。つまりMTG史上でもっとも長く使われている狼男にとっては、皮肉なことに夜なんて来ない方が断然いいのである。
他にも第1面で戦場に出ることを前提にしたカードも数枚存在しているし、それを期待してデッキに入れることもある。つまりこれまでの狼男使用者にとっては、このエラッタ案は強化どころかむしろ大迷惑なのだ。

字面が矛盾しているが、MTGには女性の狼男も存在する。《ラムホルトの平和主義者》をはじめ、美人な女性が描かれた狼男のカードは多い。
さて、MTGに限った話ではないが、「女の狼男という字面は明らかにおかしい。せめて人狼かワーウルフと呼ぶべきだ」という意見は根強く存在している。

この事について、翻訳を担当した進藤欣也氏は自身のTwitterにて「「人狼」と「人間」が文字かぶりが多くて認識しづらい」という理由で「狼男」と訳したと述べている。*20
特に狼男は異界月の異形化するものを除き「第1面は必ず人間、第2面は人間ではない」という性質を持つので、この見間違いがかなり顕著になる。
ではワーウルフと呼べばいいではないかという話なのだが、実はwerewolfのwereは古英語で男のことを指す*21
そのため、海外でもまったく同じように「どうして女のwereなんて奇妙なもんがいるんだ?」ということが話題にのぼるらしい。ファンタジーの世界もなかなか世知辛いようだ。
ちなみに古英語では女性のことを「wife」と呼ぶ。現在では間違いなく妻のことを指すし、wifewolfなんて言葉は存在しないためますます奇妙になる。

このため一見矛盾して見える「狼男」という訳語も、実は苦悩の末に選ばれているのである。



「おい、月が昇るぜ。 奴が追記・修正をするのを眺めるにゃ最高だな。」

「奴を見てみろよ、編集と推敲に必死になってら。 何とも哀れ――えっ。」


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最終更新:2022年05月19日 19:04

*1 遊戯王などは裏面が若干違うが、カード下部のロゴがちょっと違うという程度であり、多重スリーブやキャラクタースリーブに寛容な文化だったのでそこまで問題にはならなかった。当時のMTGはまだまだ意識高い系のゲームであり、当時のキャラスリが傷みやすかったことや、ちょっとしたことすらマークド扱いする風潮もあり、これらのことでモグリ扱いされるという閉鎖的な空気があったのである。

*2 現在公式コラムでは両面カードがさも大歓迎されているように書かれているが、テーブルトップをプレイすると前述したスリーブ裏うつりの問題や、いちいちスリーブから引っ張り出さなきゃいけないのでスリーブが傷みやすかったり、専用の差し替えカードという本来不要のはずのものを買わなきゃいけなかったりと資金面がかさむなど、他TCGから移ったプレイヤーなどには非常に敷居が高いものである。差し替えカードを使うかどうかもショップで支配的なコミュニティに依存するところがあり、いちいち両面カードの文句を対戦相手に聞かされたり、マークド扱いで揉め事の種にもなるためあまり使用感のいいものではない。逆にMOやMTGAではまったく問題にならないため、こういった人間由来の揉め事が起こらないこちらでプレイする人が増える一因にもなった。

*3 当時は「点数で見たマナ・コスト」

*4 タップで蓄積カウンターを積むか、タップして積んだ蓄積カウンター数に等しいマナ総量のカードを全て除去する2マナアーティファクト。

*5 スリーブの傷みというのは競技シーンで最も指摘されやすいものである。渡辺雄也氏がその名声を失った直接の原因は「スリーブの傷をマークド扱いされたから」である。この件の是非については話が逸れるので問わないが、つまり「競技プレイヤーとしてはスリーブは一番気を使わなければいけない部分」ということの一例である。

*6 表と裏で別名扱いの為、各1枚ずつ出せるが両方変身して同名になるとルール処理で全て墓地に置かれる

*7 変身を完全にコントロールできるわけではないため、不本意な変身をしたせいで両方が墓地送りになる、それに気づかずにゲームを進めようとして相手に指摘されて揉める……などの事態が発生してしまう。現在のルールでは片方を墓地に送ればいいだけなのでそこまで問題にならない。

*8 モダン需要で《血染めの月》が高騰するまでは、ストンピィは貧乏デッキ扱いだった。《裏切り者の都》も入るデッキを著しく選ぶため3000円程度で買えたのだ。ただし右手にかなり依存する引きムラの激しいデッキであり、熱心なプレイヤーが研究するだけであまり人気のあるアーキタイプではなかった。

*9 当時はミッドレンジという戦術自体が大成するような時代ではなかった。

*10 プラス思考がどうという話ではなくこのライフロスが《四肢切断》の弱点で、それにつけこみやすいデッキということ。《月の大魔術師》のように切断で狙いたい奴もいるし、《三なる宝球》があるとライフ4点も減らして3マナも使わなきゃいけないのだから地獄を見る。

*11 「たびたび変身能力を使うカード」という意味合い。《秘密を掘り下げる者》はテキストが単純であり、横着な環境ではカウンターを乗せたり裏返したりすることで代用する人も多かった。とはいえほぼ詭弁である。

*12 裏返るのではなく「起動型能力でパンプアップし人間でなくなる」ことで変身を表現した狼男

*13 攻撃時に+1/+1カウンターを乗せるエンチャントだが、戦場に出た時に狼トークンを生成する

*14 言いがかりのように思えるだろうが、テーブルトップだとこれが結構問題になる。微妙に強化範囲が違うカードというのは組み合わせると見落としが発生しやすく、かなり面倒くさい。逆に言えばイニストラードと関係のない範囲だったからこそ出せた条件なのだろう。

*15 残念ながらメインストーリーとは一切絡まない。狼男のプレインズウォーカーで人間の味方という魅力的なキャラクターを出しておきながらこの扱いは批判されることも多かった。

*16 《業火のタイタン》のパワーが6、アーリン・コードの能力でパワー+1、《業火のタイタン》の攻撃するたびに3点ダメージが誘発。

*17 イニストラードの人間は「怪物絶対殺すマン」として描かれることも多い。後の「イニストラード:真夜中の狩り」のストーリーの骨子にもなっている。

*18 ただし「イニストラードを覆う影」にはアヴァシンが帰還してから一般的な人間として暮らしている男性が狼男に戻ってしまうストーリーがあり、ウルフィーの設定と矛盾している。

*19 10のギルドがしのぎを削るラヴニカも、ラヴニカへの回帰の前手では「ギルドは力を失ってしまった」という設定があったがなんやかんやで力を取り戻したし、ウギンもタルキール出身と言われていたのにドミナリア出身でタルキールは第二の故郷ということになってしまった。アメコミの設定は割と流動的なのである。

*20 尚、氏が言及した時点ではスポイラーリストにはまだ女性イラストの狼男は発表されていなかった。

*21 狼男という一般的な翻訳そのものが古英語を訳したものなのだから、これを指摘する時点で割と矛盾している。