地雷

登録日:2009/11/22 Sun 16:50:11
更新日:2024/03/30 Sat 00:51:43
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地雷とは、地中に埋めておく爆弾である。基本的なものであれば踏むと爆発し、踏んだものを攻撃する。
これらの地雷が在ると思われる区域を主に地雷原と呼ぶ。


地雷には種類があり、大別すると対人地雷と対戦車地雷にわけられ、また対人地雷もいくつかにわけられる。

★主な対人地雷種別

地雷は踏んだら即死という印象を持たれがちだが、実際は基本的に怪我を負わせる事を目的に作られている事が多い。
地雷で足を失った(死んではいない)という人をよく見るのもこのため。
理由としては情けなどではなく、一人の人間を殺害すれば敵の戦力は一人減る(死者として諦めがつく)だけだが、
一人を負傷させると負傷兵の救出、手当てなどにより最低でも三人分リソースが割かれ、そのために物資も消費するためである。
また単純な構造で十分なため、安くなるということも大きな理由。

ただしこれについては古典的なトラップ系の地雷に多い話であり、
現在はクレイモアを代表とする指向性散弾地雷など、多人数の殺傷(厳密には継戦能力を奪うこと)に主眼が置かれている地雷も多いので、絶対ではない。


◆圧力式

もっともポピュラーな地雷。踏むと中の信管が作動し、爆薬が炸裂する。
もっともシンプルなものは踏むと即起爆だが、普通は何回か踏んだのちに炸裂する。
これは行軍している際に先頭の方で地雷を炸裂させるよりも中程の位置で炸裂させた方が全方位に殺傷対象が位置に着くため被害を大きくできたり、より混乱させやすくなるためである。
地雷原にしっかりと引き込んでからそこに地雷があるとわかれば普通はパニックになるだろう。

◆張引式

ワイヤーなどを張り、それを誤って引っ張った際などに起爆する。ワイヤーカットなどの対応策にあわせて逆にワイヤーを切ると信管を作動させるものもある。
これに関連して、安全ピンにワイヤーを張って引き抜かせることで手榴弾を即席の地雷ブービートラップとしても用いることもできる。
「ベトコンの手製ブービートラップ」あたりが有名か。

◆遠隔操作

隠れて観察し、任意のタイミングで起爆させる。
その性質上もっとも効率よく攻撃出来るものの、観察眼が鈍いと地雷を撤去されたり鹵獲されたり設置方向を変えられて逆に自分達が被害に遭うなんてことも。
展開後すぐに兵士が現場を離脱できる、という地雷の重要な利点を捨ててしまっているのも課題。

◆地上設置型

赤外線などに反応があった場合に炸裂する。
指向性対人地雷などに見られるが、大体人間のようなものという程度のセンサー精度しか無いため、
人間とほぼ同じないしはそれ以上の反応が出る動物にも普通に反応してしまう。

◆跳躍地雷

地上に突き出た信管などを刺激すると、一旦地上に飛び上がってから炸裂して調整破片(鉄球等)をバラ撒く。複数人を同時に攻撃しやすい。
股間に被害が続出するケースもあって「タマ潰し」などと一部では呼ばれていた場合もあったそうな。

◆磁気反応

磁性金属が使われている大型の車両や地雷処理をするための金属探知機などから発せられる磁気に対し反応する。


と、様々である。これらの多くは敵勢力の侵入を食い止めるために埋める。
またゲリラ戦などのようにそれらを埋める時間がないときはヘリコプターやクラスター爆弾の中に仕込んで面状にバラ撒く。
が、それでは戦況の変化に対応できないためスマート地雷としてFASCAMが登場した。
このファスカムは散布後に一定期間で不活性化するため戦争終了後の脅威になりにくい。少なくとも同じ使用量なら古典的な地雷より戦後の被害は減少しやすい。
ただし信管の劣化等の要素での自爆失敗の確率も存在するため、完全だとは言えない。


★対戦車地雷

対戦車地雷はその多くが100kg以上の圧力感知で起爆する。元々対人地雷と対戦車地雷の区別は反応する重さなのだが、圧力感知の差はまちまち。
感度が低い理由は、戦車と比べれば効果的ではない対象である装備を携帯した兵士が踏んでも反応しないように、というもの。
踏み場所が悪いと兵士でも反応、起爆することもあるため踏んでもいいというわけではない。もちろん爆発したら無事では済まない。

対戦車地雷が物資的に設置不可能な場合、多くは別の榴弾、迫撃砲弾、爆等を使い、その場その場で即席の物を作って使用する。
また旧日本軍では諸々の事情から敵戦車に通常兵器では対抗できなくなっていたために蛸壺(一人用の塹壕)で多量の爆薬を抱え、
車両到達と共に自ら信管を叩いて起爆させるという人間地雷作戦もやむなく行われている。

ロシアでは地雷犬(地雷を背負わせ、戦車の下に潜り込むように訓練した犬)というものがあった。
ドイツは若干苦しんだもののその犬の多くは訓練に使ったロシア軍の戦車の下に自分からやってきたため自爆が多発。
ドイツの戦車を使うようにしても結局怖くて逃げ帰ってきて自爆という事態が多発したためあまり使われなかった。


★撤去

物事は始めるよりも終わらせる方が大変だというが、地雷の撤去は地雷製造の百倍以上のコストが掛かると言われる。
これは地雷撤去のためには地雷の発見に多大な労力が必要・撤去にも専門の技能を持った人員が必要・失敗すると命に関わる危険な作業であるため。
地雷はそれよりもずっと安く作れて(信管と爆薬さえあればあとはその辺のもので即席ぐらいは造れる)、設置も簡単だからである。
一つ残らず撤去を終えるまでは安全と言えないことや、地雷の種類も増えて手法も巧妙な場合があったりと単純作業とはいかないことなどももちろん理由。
また、資金面も大きな課題だがそもそも地雷撤去の専門知識を持っていたり教えられる人員の絶対数が足りないというどうしようもない問題もある。
そのため、住民に地雷撤去を学んでもらってから雇うという取り組みが始まっている。もちろん本来ならば仕掛けた者達が責任持って撤去すべきだが現実はそうもいかない。というか地雷を仕掛けるのはたいてい不利な立場なので…


以下、行軍中での主な地雷撤去(地雷原啓開)方法


○強制起爆させる

地上に露出した地雷などに対し砲撃、射撃を加えることで信管を作動させ爆薬を炸裂させる。
ただし質のいい最近の地雷はこの手の砲爆撃の圧力では信管を作動しないようにさせてるものが多い。
対処法としては地雷を爆圧で”作動させる”のではなく、地雷を文字通り”破壊する”用に専用の爆薬を付けた地雷処理システムを用いること。
銃では主に大口径のアンチマテリアルライフルの焼夷榴弾系が用いられる、
これは焼夷榴弾系ならばたとえ信管が壊れていても撃ち込んだ弾の方で起爆を誘発する事が可能なためである。
日本の創作物では敵に爆弾を巻き付けて起爆させる武器として扱われがちな爆導索も本来は地雷原に投げ込んで地雷ごと爆破するための道具である。
主流ではないが、地雷原に燃料気化爆弾を投下したり、燃料気化弾頭のロケット弾を投射して爆破処理される場合もあった。

○専用車両を利用する

地雷撤去用に開発された車両や、戦車の前面に撤去用のローラーなどを付けて比較的安全に炸裂させたり地面を掘り崩して脇へ追いやりながら進む。
頑強な金属パーツを取り付けた巨大な車輪で地雷を圧し潰しながら進むミーネンロイマーや、
ジェットエンジンの熱風で地雷を吹き飛ばすProgvev-Tなどが知られる。
広範囲を効率良く啓開できるが取りこぼしも多く、行軍時の一時的な処理にしか向いていない。

○撤去処理をする

兵士が金属探知機やナイフなどを使って地道に撤去、またはマーキングしながら進む方法。確実性は最も高いが死傷リスクも当然高い。
二重以上の連携トラップが設置されている場合は大抵こういった地雷処理班狙いのものだったりする。
方法を見ての通り人力では探知するだけでとても時間がかかるので、ネズミに特殊な訓練をさせてその嗅覚を利用し探知する方法が使われたりしている。

○非人道的に撤去する

捕虜や奴隷や懲罰部隊などを先に歩かせて作動させる、要は負傷したり最悪死んでも別に良い自分たち以外の者を使って作動させてるだけ。

○無視する

地雷はない、踏んだら諦めろの精神でとにかく前進する。


とまあこの様に多数ある。
一部は撤去方法だとはとてもじゃないが言えないが、行われることはある。
ちなみにアンチマテリアルライフルとして名高いバレットM82は地雷処理用にスウェーデン軍が採用したのが軍用の始まりだったりする。


★地雷の問題点

前述通り撤去作業に莫大な費用が掛かる*1は言わずもがな、
地雷は炸裂するまで半永久的に残り続ける*2ため、戦争終了後の残留地雷が民間人に被害を与えたりしている。
そのせいで義足需要が増えたり、または失業者や貧困区などでの地雷撤去要員の募集で食いぶちを稼ぐ者もいるなど、皮肉な結果も一応あるにはある。
とはいえ負の側面の方が大きいことは言うまでもないだろう。

戦術的には、一度起爆してしまえばそこに地雷は無いと判断されるため軍団が前進してしまう。
残留したブツが爆発してダメージを与えることはあるが、時間稼ぎ・足止めという意味はすでに失われている。
もっとも、時間稼ぎが主目的な兵器な上に要所に広範囲に設置するのが基本なので、実際には基本的に無意味にはならない。
設置するだけなら敵と対面して戦うより安全……というよりは圧倒的に戦力差があっても実行できるため、
戦略・戦術的に取れる方法がこれぐらいしかない場合が多い*3ということも大きい。
これらも戦争後に問題があると分かっていながらも地雷使用が続けられている害悪要因となっている。

前述しているが、戦争が終わった後そこに入ろうとする市民にとって、脅威はそのまま。
つまり、戦術的意味が終了した後でも戦略的、あるいはそれより上位の政治的不利益が残存する。これも地雷の重大な問題点である。
想像してみてほしい。戦後処理で発見できなかった過去の地雷が市民に被害を与え、その度に多額の費用を投じて再調査を行い、
過去の戦争当事国同士で外交問題が再発し、選挙に大影響を及ぼす様子を。
国を運営する上でどれほどの負担か、察せられるのではないだろうか。

…逆に言えば、市民生活や命がどうなろうと知った事ではないテロリストからすればこれほど安価で生産も簡単で有効な兵器はない。
ずさんな工業レベルで粗製乱造したり手近な爆発物と起爆機材で手作りしたりすれば、規格も原理もメチャクチャで、統一された撤去など不可能。下手をすれば、精度が雑でちゃんと起爆しない事すら武器になってしまう。
それでいて先進国の軍隊の行動を大幅に妨害できる。
例えば悪名高きカンボジアのクメール・ルージュが一体どれだけの粗製地雷をインドシナ半島の地に埋め込んだのか、いまだ解明されておらず、現地の人々の暮らしをおびやかし続けている。

そこまでの悪意が無かったとしても、使用側からすると両陣営共に死に物狂いだったりするために後先のことまで考えていないことが多く、
戦争に勝っても負けても地雷を全て回収することは難しいことも被害を拡大させている。*4

更に前述の通り地雷の撤去作業を狙う地雷もある。
例えば地雷そのものに加速度センサーを取り付けたり、地雷の下に更に爆薬を設置するなど。


このように地雷とは近代兵器の中では割とシンプルな兵器でありながら、それに見合わぬほどの闇を内包している兵器である。



★日本の状況

現在日本の自衛隊では訓練用の地雷以外はほとんどが廃棄された。
専守防衛の観点から対人地雷は最も優れた兵器なのだが*5、対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)を採択したために対人地雷の所持ができなくなってしまった。
そのため指向性対人地雷や高感度対戦車地雷などで補っている。

また、地雷を禁止する条約自体も、現在の紛争当事国、輸出国の多くが締結してないことから、有効性が疑問視されている。
とは言え数ある兵器の中でも地雷は民衆に飛び火する側面の強い兵器であるため、こういった活動を進めることも重要。
問題はいかに実効性を持たせるかである。


★広義の地雷

「踏んではいけない」ことから「見た目はまともそうに見えるけど、実際は関わってはいけない。踏み入ったらひどい目にあった」ものに対して地雷と呼ぶ比喩表現が成立している。
ex.「良さげな飲食店に入ってみたら…」「良物件っぽい異性と交際してみたら…」などなど。
また、会話において「何気なく出した話題が相手にとっては触れられたくないものだったため、機嫌を損ねてしまった」ような場合も「地雷を踏んだ」と表現されることがある。

◆ゲーム界隈における地雷

ゲーム関連で地雷と呼ばれる事柄は多い。DQN企業やクソゲーなどもよく地雷と称される。
たまに地雷にしか見えない・見えている地雷もあるけど。
地雷ゲーは300円から買えてしまうからコスト面からも恐ろしい。奇妙な事に、クソゲーだって300円そこらで買えてしまうこともある。
このアニヲタWikiで地雷タグを押すと「見た目はまともそうに見えるけど実は…」なゲームタイトルがわんさか出てくる。
  • ゲーム内のアイテムやスキルにおける地雷もよく話題になる。調整に失敗したのかわざとなのか、思ったような効果を発揮していないアイテムやシステム、選んでしまうと貴重なアイテムを失うなど取り返しがつかないことになる能力などが存在する。
  • 2D対戦型格闘ゲームTCGなどの対人対戦ゲームで、メタゲームから外れたキャラやデッキ、戦法も地雷と比喩される。
  • FPSなど複数人での対戦になるゲームで、他プレイヤーに害を与える味方プレイヤーも地雷呼ばわりされる事がある。戦況も考えず敵陣に特攻してやられるような初心者プレイヤーや、味方を撃つ、チャットで罵詈雑言を書き込むDQNプレイヤーを指したりする。前者後者の場合に問わず、大人の態度で接しよう。怒ったら負けである。初心者に対してはむしろ大切にしよう。
    • 最近では、モンスターハンターのオンラインプレイにおいて、状況を考えず採集を行う、全員装備を統一している時に限って一人異なる武器を装備しているなどのプレイヤーも地雷と呼ばれるようになった。モンハン用のwikiにそのあたりは詳しく記載されているので、地雷呼ばわりされないよう気をつけよう。

余談だがアメリカで志願兵のリクルートにFPSを用いていることがあるが、そんなFPS上がりの連中がもっとも被害に遭ったのが本物の方の地雷だと言う。
原因はモニタやスピーカー等でしか環境を知らないため、リアルの足元への注意がおろそかになりがちだからなんだとか。

◆腐女子業界における地雷

腐女子の世界ではカップリングは宗教戦争とも言われる事態を引き起こしかねないほど強くこだわる人が多い。
同じカップリングでも受け攻めがどのようなタイプなのかでまた火種となる。
また、シチュエーションやネタに関しても「これは受け入れない」と頑固なこだわりを持つひとが多い。
こうした「自分のこだわりで受け入れられない」ものを地雷と呼ぶことがある。

◆風俗における地雷

指名して出てきた風俗嬢が大外れだったという時を指す。
わかりやすい範囲では、写真修正をやりすぎて似ても似つかないような人相になっている人*6や、ドムジ・Oのような体型やすごいブスだったり、公開している年齢から明らかにかけ離れたおばさんだったり、肌荒れや酒焼けした声、タトゥーが入っている*7といった外見上の特徴が挙げられる。
また、サービスの手抜きをする、接客態度が非常に悪い、性格が悪すぎる、頭のネジが飛んでいるなどで一緒にいるのも堪え難いレベルの嬢もいる。
またこれを転じて、嬢の方から見た酷い客を「魚雷」という言い方もある。

◆野球における地雷

主に新戦力であるドラフト選手や外国人選手の中で、前評判だけで既に大外れする要素が多く失敗に終わりそうな選手を指す。
制球が悪い、選球眼がない、他何かが致命的に悪い、大口をたたく、故障が多い(特に大学時代)、どこそこの誰誰(有名プロ選手)というような異名を持つ、六大学リーグや関西学生リーグで活躍した(弱い東大京大がいるんだから当たり前、むしろ成績を下げてると…)といったものが挙げられる。
特に制球は速球派・左腕・変則フォーム・どこそこの誰誰と悪くなる要素が複合しやすいが改善を見込みにくく、選球眼は海を渡ろうと変わらない。
だが地雷認定されたからといって活躍してないというわけではなく、あくまで前評判の段階でのものである。
結果が全てなので地雷地雷と騒がずプロになってから長い目で見ていきたい。

カイジにおける地雷

村岡隆と行ったギャンブルである17歩が、お互いに地雷原を17歩あるいて進むと喩えられて命名されている。
元となった麻雀のルールからして相手の当たり牌を出さないようにするのが当然だが、このギャンブルでは百万円以上を平然と賭けるためリスクが高く、一度上がられただけで致命打になる事も当然ありえるのでこの喩えは的確といえる。


何も考えずに一歩踏み出した方は追記・修正よろしくお願いします

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最終更新:2024年03月30日 00:51

*1 とりわけ座標などを記録せず無差別にバラ撒いたものはこの傾向が強い

*2 信管の劣化等で見付けて回収した時はよかったが変なショックを与えて別な時に起爆したなんてこともザラにある

*3 他は狙撃によるヒットアンドアウェイやゲリラ行為(あるいはテロ)やドローンの様な無人機利用など

*4 それどころか危険を伴ったり道の状態が変わっていたりと、一部の撤去・破壊ですら難しい

*5 島国なので海岸線に地雷を敷設してしまえばあとは待っているだけでいい

*6 業界用語ではパネルマジックと呼ぶ

*7 ただしタトゥー好きという人もいるので、店舗によっては個性として喧伝していたりする。しかしそういった情報が無かったり、写真では分からないようになっていたりすると地雷認定されやすい