FN FAL

登録日:2012/03/28(水) 07:37:25
更新日:2023/12/15 Fri 20:27:19
所要時間:約 7 分で読めます




諸元
全長:1090mm
重量:4325g
口径:7.62mmNATO弾
装弾数:20/30
発射形式:S/F
製造:FN社(ベルギー)

西側の突撃銃としては最初期のものであり、世界70カ国(ノンライセンス含め90カ国)以上で制式採用されていた銃である。
M-16、H&K G3AK-47とともに「世界四大突撃銃」に名前を連ねている、チョコとワッフルの国が作った世界的な傑作突撃銃である。



○開発しましょう
StG44の影響を受けて欧州各国では、従来の小銃弾より短く口径が小さくフルオート射撃に適した弾薬とそれに適した歩兵銃の開発が進められていた。
FN社も同様に7.92mmクルツ弾(7.92mm×33)などを開発しており、FALもそれらの弾薬に合わせた作りになっていた。
しかし、アメリカのごり押しでNATO制式弾薬が7.62mmNATOになったことで開発途中だったFALもNATO弾仕様に変更されて世に出ることとなる。
元々は短小弾に合わせて作られた銃なのだが……
FALは当時アメリカの制式ライフルに採用され、そのことが新聞にも載ったのだが、なんやかんやでM14が米国の主力小銃になった上に使用弾薬を変更させられた。

哀れ過ぎる。



○案の定フルオートに難あり
短小弾用として開発されていた為か、反動の強い7.62mm弾のフルオート射撃は誉められた精度ではなく、
フルオート射撃機能を持ちながらセミオート射撃でしかロクに扱えない銃になってしまう。

イギリスがFALからフルオートを排除したSLR(Self Loading Rifle)をライセンス生産し、
L1A1として採用したように他の採用国の大半もフルオートをオミットしたタイプを発注するはめになっている。*1
最早突撃銃などではなく、半自動小銃である。
この為に西側諸国はAK-47のような『アサルトライフル』を手にする時期が大幅に遅れてしまった。
FusilAutomatiqueLegere(軽くて全自動なライフル)という名前を踏みにじる結果である。



○それでも優良な西側主力小銃
7.62mm弾を採用した為、フルオートライフルの利点は消し飛んでしまったが、威力と射程距離が向上した。それゆえ、セミオート射撃での命中精度は良好である。

これは削りだし加工のレシーバーや機関部が高コストながら耐久性に優れており、7.62mm弾の射撃で部品が歪むこともなかった為。
小口径用に開発されていたにしては過剰なほどの堅牢性が功を奏し、より強力な弾薬に対応できたのだ。
部品数も少なく工具なしで主要部品が分解できるので、整備において非常に有利であるなど、設計そのものも優れていた。

高い工業力を必要とされる*2プレス加工ではなく、手間はかかるが工業力が低くても生産可能な削り出し加工を選択したことでライセンス生産する国を選ばなかった事、
湿気や泥、暑さ寒さに強く過酷な環境でも充分な性能を誇ったことも、70カ国以上から採用され、長期間使用された理由の一つであろう。*3

反面、部品の精度が非常に高く遊びがないことが裏目となり、
砂粒がチャンバー内に侵入することで給弾不良を起こす場合が後続の突撃銃と比べて多い(改良型にはこれに対処したと謳うものもある)。
また、上記の削りだし&高精度のため比較的高価。
この辺りはAKと対極にある。

その他にも
  • コッキングハンドルが左側についているので、グリップを握ったまま操作可能
  • ワンタッチでマガジンを落下可能(M14やAK、G3系は無理)
  • 弾切れ後弾倉交換の際、ワンタッチで弾丸を装填可能。
  • 右側についた簡単操作のセイフティーレバー。

と、近代突撃銃のトレンドを全て備えている。*4



アメリカのごり押しもなんのその。
登場からしばらくの間、FAL並の性能を有するライフルが市場に皆無なんて事態も起きていたりした結果、FALはベストセラーライフルとなった。



○バリエーション
初期はグリップ、ハンドガード、ストックが木製だったが、ハンドガードをスチールにしたモデルが開発され、
後期モデルではプラスチックを多用したモデルも登場するなど改良・発展がみられる。

  • FALO
LAR-HB(ヘビーバレル)とも呼ばれ、二脚と肉厚銃身を追加した分隊支援火器モデル。

  • FAL50.63
金属製折り畳み銃床モデル。カービンタイプは50.63、機関部下部をアルミ合金製にしたものは50.64と呼ばれる。

  • L1A1
イギリス製でフルオート機能のオミット、泥や塵を排出する為ボルトキャリアにスリットを入れるなどしたイギリス制式採用モデル。
単位がインチで設計されていた為に本家その他大半とは互換性がない。イギリスの他にオーストラリアやニュージーランドで採用された。



そのほか、カナダではC1、ドイツではG1、南アフリカではR1、オーストリアではStg58として採用されている。
リビア、トルコ、オランダ、インド、ポルトガル、イスラエル、ベネズエラ、ペルーなど世界70カ国で採用されている。
しかし、FN社はドイツでのライセンス生産は認めなかった。第二次世界大戦中、ナチスドイツがFN社を接収した事実が色褪せず、
「またベルギーの銃でベルギーを踏みにじられるのは絶対に嫌だ!」
という恐怖があったためである。
これが後の(セールス的にも性能的にも)好敵手となったH&K G3の出現とHK社の拡大を促してしまったのだが。



○活躍とその後
NATO諸国やアフリカ等旧植民地国に広く採用されていた為、ベトナム戦争や中東戦争その他紛争で使用された。
フォークランド紛争は冷戦期には珍しい西側同士の戦争で「FAL対FAL」の戦いとなった。*5
だが、アルゼンチン軍のFALにはフルオートが残されており尚且つ二脚まで装備していたので穴倉に籠る敵軍にイギリス軍は相当てこずったそうだ。
折り畳み式ストック、フルオート機能を持つアルゼンチンFALは英兵士に羨ましがられ、鹵獲・使用されたという。

白人政権時代のジンバブエ(旧ローデシア)ではもともとイギリス政権と親交がありL1A1を主に用いていたが、
南アフリカと同様アパルトヘイトを行っていたため他の西欧諸国から孤立して武器を禁輸され、
更に工業技術が未熟だったため個人防衛用の拳銃やサブマシンガン(しかも性能はともかくデザインはかなり不格好)くらいしか作れず、
軍用銃においては南アフリカから供給されたR1やポルトガルからFALを入手するなどしていた。

現在は小口径高速弾が主流で、AUGやL85、G36へと更新済みの国も多い。しかしM14のように7.62mmの利点から見直しが行われている。
アメリカではDSA社がFALを近代したSA58シリーズ等を販売しており、民間向けでもコア人気は高い。
しかしオリジナルは規制により輸入出来ず、ピカティニーレールもないためアメリカ人にはイマイチなようだ。


またリビア内戦で見られたように、過去生産された各FALは他所に流れながら今も使用され続けている。



■登場作品

  • うぽって!!…ふぁる姉。擬人化されており主人公FNCの姉として描かれている。
  • 砂ぼうず…小砂が4巻にて使用。
  • 緋弾のアリアAA…火野ライカが10話の身体測定時に所持。
  • アヴァロン…小説版の主人公「カバル」の主装備。ストーリーそっちのけでこの銃について語る語る。まあ、押井守だから仕方がない。
  • The Division…古いタイプの「クラシックFAL」と、近代版の「ミリタリーSA-58」、「SA-58 Para」の三種類が登場。なぜか3点バースト専用になっている。



追記・修正はFALに言い様のないトキメキを覚えた方にお願いします。

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最終更新:2023年12月15日 20:27

*1 SASなど一部の特殊部隊は20連弾倉を30連にし、銃身を切り詰めてフルオート機能を復活させる等々の改造をしていたが。

*2 「均一で高品質な鋼板を大量生産できる体制」と「精密な金型」が必要で、地味にハードルが高い

*3 開発時点でライバルが存在しなかった、という面もあった。

*4 ピストルグリップ、箱形マガジンを西側突撃銃で初めて標準化したライフルでもある。

*5 他にもFN ハイパワーやブラウニングM2重機関銃なども両軍で採用されていた。