井笠鉄道(鉄道)

登録日:2012/10/29 Mon 04:48:34
更新日:2022/10/17 Mon 10:34:03
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井笠鉄道とは、2012年までバス路線を経営していた会社である。比較的早い時期からトルコン式オートマチック車を導入していたことで有名。
岡山県と広島県を跨ぎ、多くの路線を有していたが、経営悪化に伴い2012年10月をもってバス路線から撤退、会社も清算される事になってしまった。現在井笠鉄道が運行していたバス路線は北振バス、中国バスへ引き継がれている。

一方、名前の通り1971年までは鉄道路線も経営していた。この項目ではこちらの方を取り上げる。


★概要

全盛期には本線(笠岡~井原)・神辺線(井原~神辺)・矢掛線(北川~矢掛)の三つの路線を有していた。
最初に開通したのは本線で、1913年の事。当時は「井原笠岡軽便鉄道」という長い社名であったが、二年後に井笠鉄道に改められている。
その後、1921年には矢掛線が開通した。

一方の神辺線は、途中の高屋駅を境に元は別々の鉄道であった経緯を持ち、井原~高屋間は最初から井笠鉄道の路線として1925年に開通した一方で、
高屋~神辺間は神高鉄道という会社を編入し、路線を統合している。
この神高鉄道、元は両備鉄道という名で大規模な路線を有していたものの、その大半が国鉄(現在の鉄道省)に買収されてしまい、
残った路線で営業を続けていたが利益が上がらず廃業してしまったという経緯を持つ。
なお、その後買収された路線は国鉄(JR西日本)福塩線となり現在に至っている。


国鉄の路線とは笠岡駅と神辺駅で連絡を取っており、矢掛線も終点の矢掛駅から国鉄バスが倉敷駅まで運行されていた。

線路の幅は762mmの「軽便鉄道」と呼ばれる鉄道は、大正から昭和初期にかけて数多く誕生したが、
そのほとんどがバスやトラックの進展、自家用車の普及などに押されて廃止されていった。
その中でも井笠鉄道の路線は比較的遅くまで生き残っていたものの、やはりそれらの影響から逃れる事は出来ず、1967年に矢掛線・神辺線が廃止となってしまった。

ただ、これらの路線が廃止となった理由にはもう一つ、神辺線の歴史にも影響を与えた国鉄の存在がある。
当時、神辺から分岐し総社まで行く「井原線」と呼ばれる路線が計画されていたのである。
この路線の建設開始に絡み、1971年をもって本線も廃止され、用地が活用される事となった。
その後、建設中止期間を経て第三セクターへと経営が変わり、
1999(平成11年)1月11日午前11時11分11秒、井原鉄道井原線として再びこの地に鉄道が戻ってくる事となる。
なお、矢掛駅からの国鉄バスはこの井原鉄道開通に合わせて井笠鉄道のバスへ経営が移管されている。


★車両

当然ながら最初の頃は蒸気機関車が活躍し、昭和初期からは気動車も投入された。実は中四国で初めてガソリン気動車が登場した鉄道路線でもある。
ただ、他の鉄道とは違いディーゼル機関車は最後まで投入されず、気動車が貨物列車の牽引も担当する事になった。

「ジ」「ホジ」など変わった形式名称を用いていたが、「ホ」がつく車両はボギー車(客車や貨車も共通)、「ジ」はエンジン付きの気動車となっている。
中にはエンジンを撤去し、客車として気動車に牽引される車両も存在した。

初期の気動車も最後まで活躍していた一方で、末期に登場した気動車はかなりの高出力となり、最高時速75kmを出す実力があったと言う。
ただし残念ながら線路の状態はその性能に追いついてなかったようだ。


★保存

軽便鉄道の中では比較的遅くまで活躍していた事や、廃車になった車両も解体されずに車庫に残っていた事から、現在でも数多くの車両が保存されているのも特徴。
貨車は1両しか残っていないが、蒸気機関車や気動車は各地で多くが保存されており、
客車に至っては現在もなお北海道の「いこいの森」で蒸気機関車に牽かれ、現役を維持する車両が存在する。
これらは西武鉄道山口線で運行されていたSL列車用に多く移籍した客車の一部であり、他の客車も各地で今も残っている。

なお、かつては車庫も残っており、その中に一部車両が保管されていたが、放火により大半が車庫ごと焼失してしまった。


残念ながら、「井笠鉄道」という会社は2012年でその歴史を終える事となってしまった。
しかし、そこで歴史を刻んでいた車両たちは今も各地で残り、その名を後世に伝えて行く事になるのかもしれない。


ちなみに、そのバス路線を一時的に受け継ぐ事になったのは「両備グループ」、かつて同じく岡山県の軽便鉄道であった西大寺鉄道をルーツに持つ会社である。



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最終更新:2022年10月17日 10:34