M1ガーランド

登録日:2011/06/06(月) 02:35:59
更新日:2024/01/06 Sat 09:16:27
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M1ガーランドとは、アメリカ合衆国が採用していた30口径こと.30-06スプリングフィールド弾(7.62×63mm)を使用する半自動小銃である。
主に第二次世界大戦で活躍し、米軍の勝利を支えた。
正式名は『U.S.Rifle Cal.30 Model.1』て、Model.1と設計者のガーランドからとって『M1ガーランド』と呼ばれる。




■開発経緯
1930年代、世界の列強国は半自動小銃の開発ブームの中にいた。
それまで、歩兵用の銃はボルトアクション式ライフルが主流であった。

ボルトアクション式ライフルは、1発撃つ毎に排夾作業を手動で行う必要があった。
ムーミン谷の白い悪魔なんかは、とんでもないスピードで行えたようだが、連射速度にはやはり限界があった。
それを改善するため、各国は躍起になって半自動小銃を開発していた…のだが…
半自動小銃と言うのは、非常に高度な技術の上に成り立っていた。

第一に、弾の火薬の量が多すぎるので、精密機器でありながら丈夫で無いといけない。
第二に、連射ができるとなると自然に弾の消費が多くなる。それに追いつく生産力と、部隊に十分に行き渡らせる補給能力が必要になる。
第三に、…「性能が良いのは分かった、でも、お高いんでしょう?

事実、ドイツやソビエトが生産段階まで行ったが、技術的な問題があったり、数を揃えられずに終わっている。まぁドイツさんはStG44たる便利な銃を開発したが……

因みに日本も作っている。M1をろ獲して制作したパクリだが。
(しかも四式自動小銃の名を持つのにアメリカの軍事書類にタイプ5と書かれたことから国外ではずっとそう呼ばれ続けている。
 海外FPS等でもずっと タ イ プ 5 と表記され続けている。本体にも刻印されているのに……)
そんな半自動小銃、扱える国家がいるのか?


いました、アメリカ合衆国さんです。

伊達に1930年代には高速道路がはしり、現代と遜色ない街並みだったチート国家ではない。
ドイツやソビエトが1940年代になってから半自動小銃を作り出したのに対し、1936年には正式採用と言うレベルの違いを見せてくれている。
と、言っても数が揃い始めたのは1942年辺りからだが。モンロー主義が最大の敵。



M1ガーランドを作る前はフルオート小銃を作ろうとしていたとか、
そのフルオート小銃が分隊支援火器の祖となったとかはまた別の話。

アメリカ合衆国はM1ガーランドを「妥協」して選択したのである。何だこの国



■本銃の特徴
さて、本銃の長所はやはりそのセミオート性能であろう。
ロータリーボルトロッキングと言う、弾を発射するガス圧でボルトを動かすような仕組みで、閉鎖性が高くボルトアクションライフルに劣らない命中精度を見せた。


また、装弾方式も独特で8発入りのクリップを使っている(ボルトアクション式ライフルは5発が普通)。
弾を撃ちきると、空のクリップが自動で弾き出されるので、新しいクリップを詰め込めば、すぐに弾を撃つことができる。
しかしまだ弾が残っている状態での給弾は不可能であった。
このクリップが弾き出される時、「ピーン」と言う特徴的な金属音*1が鳴り、撃ち手に弾切れを知らせてくれる。ある程度近場にいる敵兵にも知らせてくれるが。
マニアの間ではこの金属音が人気で、精神を静める効果があるとか何とか。
しかし上記の理由で前線の兵士はあまり良くは思ってなかったらしい。



そして、兵器として一番重要であると思われるのは、部品の規格化である。
それまで銃と言うのは、職人が一人一人作っていたので、ネジが微妙に大きかったりと銃によって個体差があった。
こうなると、銃の部品を現地で取り替えようとすると厄介である。
これは世界各国で悩みの種であったが(特に日本軍でよく聞く話)、これを解決したのが、本銃である。
部品を完全に統一する。アメリカ合衆国のような工業力のある国として地力があるからこそ、できる技だろう。

今でこそ、当然のように銃の部品は規格化されているが、小銃としては本銃が初めてである。まさに発想の勝利。
(リボルバー等で言えばコルトが既に行っていた)
半自動化に隠れがちだが、とても重要だと思う。



■大戦後
第二次世界大戦後は朝鮮戦争でも活躍した。凍った大地では、クリップの落ちる音が響いたそうな。
自衛隊でも64式小銃が採用されるまで使われていた。


アメリカ軍では、1957年にM1の正統な後継であるM14の採用と共に身を退いていった。
しかし、儀式などでまだ姿を見ることはできる。やはり木製は栄えるのだろう。



エアガンでは、マルシン工業がライブカート仕様のガスブロでモデルアップしており、お馴染みの

「ピーン」

も再現!
屋外での使用には十分に気をつけるべし。
クリップ無くして泣きをみます…



Semper Fi!(追記・修正を!)

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最終更新:2024年01月06日 09:16

*1 外れたクリップが振動する音