乙女ゲーム

登録日:2009/07/15(水) 11:10:18
更新日:2024/04/01 Mon 22:15:46
所要時間:約 4 分で読めます




■概要

「乙女ゲーム」とは、いわゆる女性向けゲームのうち、女性主人公と男性キャラとの恋愛ゲームのこと*1
簡単に言えば、ギャルゲの逆である。

ギャルゲが「美少女ゲーム」と呼ばれることがあるのに対し、乙女ゲームは「美少年ゲーム」や「美男子ゲーム」とは呼ばれない。
全年齢対象が一般的だが、中には18禁の物もある。

ギャルゲでは主人公の目が髪で隠れていたり没個性なのが今でもちょくちょく見かけるが(特に声付きは少なめ)、
乙女ゲームでは主人公も基本的にしっかりとキャラデザがされていて、更に声有りなのも多い。
これはカップリングを楽しむユーザーも多いからとのこと。
時代の趨勢もあるが、登場人物に自分を重ねたり成り代わったかのように楽しむ“自己投影型”よりも、
推しであるキャラクターの恋愛模様を応援したり傍観したりする“観客型”の楽しみ方をするユーザーが増えているようである。
女性の場合、元々少女漫画や恋愛ドラマなど客観的な恋愛を楽しむ文化が馴染み深いのも要因か。
また女性は恋愛の過程を特に楽しむ傾向にあるので、主人公をヘタに没個性デザインにすると「イケメンがこんな没個性に惚れるのか?」と言われたりされかねないとか。

もっとも、主人公の名前変換機能*2やボイス・フェイスアイコン等のon/off機能は廃れていないので、自己投影型のユーザーが少数派となった訳ではない*3
事実、最近はソシャゲなど自己投影型主人公が登場するゲームの売り上げが伸びている。
自己投影型主人公が登場するゲームでは、キャラクターメイクが出来たり、ルートによって外見や口調が変化するものもある。

なお、自己投影型の主人公の特徴として、プレイヤー側の「プレイヤー=主人公」という意識が男性向け作品と比べて強いというのがある。
たとえば、自己投影型主人公を起用している某ゲームがアニメ化に際してビジュアルと声優を明確に付ける……というデレマスで言う武内Pのようなことをしたが、主人公はプレイヤーでありその少女ではないというスタンスだったため「誰よあの女!」状態となり、ちょっと界隈が荒れたりした。

さらに、近年自己投影型主人公の乙女ゲームはイケメンたちのキャラクター性を楽しむというものが増えており、恋愛要素が薄いということも珍しくないことから「これらは「乙女ゲーム」というよりも「女性向けゲーム」と呼ぶのが正しいのではないか?」という風潮が強まっている。
事実、制作スタッフ側によると「乙女ゲーム」と「女性向けゲーム」のユーザー層は微妙に異なっているらしい*4
もっとも一口に「恋愛要素が薄くイケメンを楽しむゲーム」と言っても『刀剣乱舞』のように主人公の性別すら決まっていないものから、『あんスタ』の主人公のように最低限女主人公と決まっているものもあるなど、どこまでが「女性向けゲーム」かの定義は人によって異なる。
まあ、「女性向けゲーム」という母体がありその中で恋愛要素が強いものが「乙女ゲーム」と呼ばれるというのが大まかなジャンルの分け方か。
そのようにゲームジャンルが多様化していることもありイケメンたちが出てくる=乙女ゲームと安易に認識されることを嫌うユーザーも結構いる。相手の気持ちを汲んだうえで発言しよう。

乙女ゲームの主人公キャラは10代が多いが、青年前期のキャラクターに感情移入や共感し難くなった層を取り込む流れなのか、
2010年代半ば以降はオンラインゲームやPCハードのみならず、コンシューマーでも社会人や成人のヒロインが増加傾向にある。
これは少女小説で先行して見られた現象であり、少子高齢化の影響もあるのかも知れない。


上記の説明を見るとゲームは必ず丁寧に作られているかのように思えるかもしれないが、残念ながら必ずしもそうとは限らない。
バグが酷い・全体的に手抜きなども散見され、結局ここらは他ジャンルのゲームと大差ないと言える。
乙女ゲー的KOTYの初代大賞が「低確率でブルースクリーンが発生しPCに重大なダメージを与える」という本当に洒落にならないものであったことは有名。


男性向け・女性向け文化の違いなどから、男性プレイヤーでも意外と楽しめたりする(乙女ゲーでの“普通”はちょっとおかしかったり。無論逆もしかりだが。)。
が、ネタとして扱い過ぎてファンとガチの討論に発展させて喧嘩したりしないようには注意。

中にはBLゲーム(ボブゲ)と混ぜたものもあるが、乙女ゲーユーザーだからBLゲーも好きだとは限らないので(その逆も同様)不評となる場合が多い。
BLメインのイラストレーターを起用した作品やブロマンス程度の関係性に抑えた作品でも、ユーザーから警戒されてしまうことがある。
例えば一時期の某ゲームメーカーは乙女ゲームに攻略対象キャラ同士の“友情エンド”ルートを組み込み、これが結構な賛否両論となった。
ここらのさじ加減や需要を読み取ることは非常に難しく、特にガチのBL要素を入れることは女性向けと言えどかなり勇気が居る。
最低限言えることとしては、途中でジャンルを変えるとまず間違いなく客がついていけなくなって客離れが起きるということだ。
メーカー側もそういった事実は把握している筈だが、令和を迎えても無頓着な例*5*6が確認されている。
BLも嗜む雑食なユーザーでも、女性向けでは取り分け重視されている棲み分けの観点から歓迎しない声もある。


他にも、ギャルゲー世界の乙女バージョンとして作られた作品群がある。
発想自体は90年代のマルチメディア作品『卒業M』(美少女育成ゲーム『卒業』の派生作品)から存在したが、増加したのは21世紀に入ってから。
※例

これらは基本的に「女性向け」ではあるが、主人公や親友キャラが可愛くてハマるのもあるので、男性にもそれなりにオススメ出来る。
実際主人公目当てでハマったという男性は結構いて、スタッフにファンレターが届くこともあるらしい*7
『私立ベルばら学園~ベルサイユのばらRe* imagination~』*8や『月華繚乱ROMANCE』のように百合エンドがある作品もある。
もっとも、両方ともビジュアルが男装の麗人な上、後者の八重原ダリアはCV.斎賀みつきなので、正直百合モノとして見るには勇気がいる。
18禁乙女ゲームでも『といろ小町~紅に染まるそのときまで~』『すみれの蕾』などのように百合描写が実装されている作品も存在する。
また百合とまではいかないが、親友エンドがある作品(『絶対迷宮グリム』など)がけっこうあるのでオススメできる。2010年代前後の作品は特に多い。
複数主人公の乙女ゲーム(『ファンタスティックフォーチュン』『NORN9 ノルン+ノネット』『女王蜂の王房』など)では主人公同士の遣り取り、
『アンジェリーク』シリーズについては正史で女王と補佐官に収まるヒロインとライバルの関係性に、百合を見出す一風変わった楽しみ方をするファンも存在する。


ちなみに前述のような男性向けの女性版、といったスタンスを取る作品は微妙と言われることもある。
理由としては「男性向け」の観点が残ることで女性の心を掴み切るのが難しかったり、そもそも手に取ってもらえなかったり、
他にもそういう観点なら素直に男性向けを遊んだ方が質が良いものが多かったり、量も多いので選択肢に困らないことも一因だろうか(※もちろん作品によります)。

流石に元々男性向けのギャルゲ・エロゲも楽しむプレイヤーだとあまり抵抗が少ない印象。


男性向けエロゲと違って性描写が大半の所謂「抜きゲー」に近いものは、極めて少ない(もちろん、男性向けエロゲもそればかりではない)。
購入層が女性であることもそうだが、恋愛描写に重きを置く作品が多いために、自然とそうなる。
しかし、乙女ゲームは基本的に「甘い恋愛」を主軸としており、そうなると到達点はやはりセックスということになるので、
ベッドシーンを仄めかすくらいのものなら、CEROの判定区分が低めであっても描写される場合が多い。
といっても、飽くまでデザート感覚であると嬉しい程度の話なので、ベッドシーンが妙に長かったり生々しかったりすると不評になりやすい。
ただし、『ニル・アドミラリの天秤』や『蛇香のライラ ~Allure of MUSK~』のように官能を売りにした作品も製作されている。
要するに、使い方によっては萌えにも地雷にもなる、乙女ゲーム最強のジョーカーなのである。

逆ハーレム的な展開やドラマチックな出来事が無いまま溺愛される物も全く無い訳ではないが、乙女ゲームの主流ではなく、
ヒロインが時には痛みを伴いつつ攻略対象に寄り添う物が多く、イケメンのカウンセリングゲーや介護ゲーと揶揄される程である
(※当然そればかりではなく、最近は逆に心に傷を負ったヒロインをイケメンが寄り添うというパターンも増えている)。
多股を掛けられる作品もあるが、最終的には誰かを選ぶ個別エンドか三角関係エンドに落ち着く場合が多い。


なお、2010年代にWEB小説で一ジャンルとなった「悪役令嬢」であるが、これらは架空の存在であるため、同人サークル制作物や恋愛オンラインゲーム*9を除いた実際の乙女ゲームには登場しない
黎明期には令嬢かどうかはともかく男を取り合うゲームはあったが、嫌がらせが一線を超えることは滅多になく(ないわけではない)、最後は和解するケースが多いため「悪役」というよりは「ライバル」である。
「主人公を虐げるが最後は破滅する」のは、女性向け漫画や女性向けレーベルに登場する悪役に多く、様々な「物語の世界に転生」作品が作られていくうちに混ざったものと思われる。
すごい身もふたもない話をすると、そもそも令嬢キャラが出られるような貴族モノの乙女ゲー自体がかなりのマイナージャンルであり数が少ない。
完全に余談だが、少女漫画の悪役に令嬢キャラが多い理由として、「金持ちだし1回ぐらい痛い目見せても別にそこまで後引かないだろう」と読者の罪悪感を打ち消しやすいという何とも生々しいものがある。
2020年の時点で悪役令嬢を取り扱ったコンシューマー乙女ゲームは存在しないが、『大正×対称アリス』公式Twitterでエイプリルフールのネタにされたことはある。
2022年にはオトメイト(IDEA FACTORY)で『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… ~波乱を呼ぶ海賊~』、
2024年にはオペラハウス(OPERAHOUSE)*10から『悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される』の発売が予定されたが、『華鬼』『伯爵と妖精』と同様に版権作品のゲーム化で、
ヒロインと敵対する悪役令嬢が登場する訳では無く、本来は悪役令嬢だったキャラクターが主人公になっている*11


なお、2010年代後半以降は
  • ソシャゲなどの流行
  • ハード移行の失敗
  • 移植の濫発
  • ぶっちゃけそろそろネタが切れてきた
などの要因によって、乙女ゲーム市場は洒落にならないレベルで売り上げが伸び悩んでいる。
2020年には、乙女ゲームの移植も請け負っていたプロトタイプからプレイ動画の投稿・配信の自粛を要請される事態にまで発展している。
……みんなもちゃんと乙女ゲー買おうな! 懐に余裕があるなら、関連グッズの購入も望ましい。


■アニメ
アニメ化した際は大抵誰にも落ちないノーマルEDである、そして地雷が少ない。
最近はギャルゲ・エロゲと同じくメインルート+端々で他のキャラのルートというものが増えてきた。

※アニメ化した作品
  • アンジェリーク(~白い翼のメモワール~、~聖地より愛をこめて~、オリジナルビデオアニメーション アンジェリーク※シリーズ10周年記念)
  • 恋する天使アンジェリーク(心のめざめる時、かがやきの明日)
  • ネオ アンジェリーク Abyss、ネオ アンジェリーク Abyss -Second Age-
  • 遙かなる時空の中で(~紫陽花ゆめ語り~、-八葉抄-)
  • 遙かなる時空の中で2(~白き龍の神子~)
  • 遙かなる時空の中で3(紅の月、終わりなき運命)
  • 耽美夢想マイネリーベ
  • 十三支演義(OVA)
  • 金色のコルダ
  • 金色のコルダ3
  • 薄桜鬼(一期~三期&OVA&映画&ドラマ)
  • Starry☆Sky
  • VitaminX(OVA)
  • ハートの国のアリス(短編映画)
  • うたの☆プリンスさまっ♪(一期~四期&映画)
  • 緋色の欠片(一期&二期)
  • アルカナ・ファミリア
  • 華ヤカ哉、我ガ一族(OVA)
  • BROTHERS CONFLICT
  • AMNESIA
  • 黒と金の開かない鍵。(OVA)
  • DIABOLIK LOVERS(一期&二期)
  • 神々の悪戯
  • Dance with Devils ※ゲームと同時進行
  • NORN9 ノルン+ノネット
  • プリンス・オブ・ストライド
  • スカーレッドライダーゼクス
  • OZMAFIA!!
  • マジきゅんっ!ルネッサンス ※ゲームと同時進行
  • 喧嘩番長 乙女
  • イケメン戦国◆時をかけるが恋ははじまらない
  • DYNAMIC CHORD
  • 戦刻ナイトブラッド
  • Code:Realize ~創世の姫君~
  • ニル・アドミラリの天秤
  • 夢王国と眠れる100人の王子様(Webアニメ&TVA)
  • 明治東亰恋伽(映画&テレビアニメ)
  • スタンドマイヒーローズ PIECE OF TRUT(TVA&OVA)
  • 恋とプロデューサー~EVOL×LOVE~

※アニメ化企画進行中


■『Kaléidoscope -天使の狂宴-』の特典DVD
  • 王子の休日(高見沢俊彦との恋愛体験ができるゲーム)




追記・修正お願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 乙女ゲーム
  • 乙ゲー
  • 女性向け
  • 落とすんじゃない
  • 落とされるんだ
  • 何気にBADENDが多かったりキツイ作品も
  • 意外と良作が多い
  • 親友が高確率で可愛い
  • 豪華な男性声優を起用
  • 神ねーさま
  • ゲーム用語
  • ゲーム

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年04月01日 22:15

*1 『薄桜鬼 黎明録』のようにシリーズ派生作品で男性主人公が登場したり、『時計仕掛けのアポカリプス』等のように男性視点のパートが存在する場合もある。

*2 『殺し屋とストロベリー』のように変更不可能な例もあれば、『私立ベルばら学園~ベルサイユのばらRe* imagination~』のように苗字だけ変更可能な例もある。

*3 『ピオフィオーレの晩鐘』等のように、自己投影型のプレイヤーに配慮して、ゲーム本編では明かされる設定を制限している例もある。

*4 間口の広さから、“夢女子”と“腐女子”の需要も取り込めるためである

*5 『乙女剣武蔵』が『英国探偵ミステリア』とのコラボレーションを公式生放送で宣伝した際に、自社のボブゲともコラボしたいというコメントとともにボブゲが受け入れられない乙女ゲーユーザーをノイジーマイノリティーのクレーマー認定する発言を流してしまい、公式HPに謝罪文を載せる事態へ発展した。

*6 『終遠のヴィルシュ -ErroR:salvation-』では攻略対象に惚れる同性のサブキャラクターが登場するが、発売前に知る機会が無かったことから制作陣やメーカーに対して不信感を募らせるユーザーも生じた。

*7 オトメイトパーティーでは、男性プレイヤーから祝花が届けられることもあったという。

*8 公式HPのオリジナルカップリング表で、凰寿華瑠と望の組み合わせは恋愛対象に指定されていたが、友情END寄りでライト路線である。

*9 『悪役令嬢、旅に出る~そして彼女は、伝説になる~』が該当するが、原作は小説家になろう書籍化作品である。また18禁ブラウザ乙女ゲーム『PLUSMATE』で悪役令嬢ネタを使用したイベントが配信されたこともある。

*10 同社の乙女ゲームにおける代表作は『帝國カレイド』。

*11 そもそもこの作品自体が悪役令嬢モノのなろう小説原作であるので例外ともいえる