RPGツクール2000

登録日:2011/01/31(月) 21:47:00
更新日:2023/12/28 Thu 20:57:37
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『RPGツクール2000』とは、ゲーム制作キット「RPGツクール」シリーズの1作である。
2000年4月5日発売。

●概要



Windows系では『RPGツクール95』に続く2作目の「RPGツクール」作品である(PC系ではPC98の作品を含め4作目)。
「変数」の導入を始めとして、多くの要素が前作からパワーアップしている。

歴代のあらゆる「RPGツクール」の中でも屈指の名作と誉れ高く、過不足なく充実したイベントコマンドと変数システムにより、シンプルながらも奥深いゲーム製作が可能。
その優秀さから広く長く普及し、使用者・作品数ともに極めて多い。
もちろん、パソコン用RPGツクールは以後も続々とリリースされたが、永らく驚異的な普及率と認知率を保ち続けた。
そのため、ネットで本作のための素材を配布しているサイト等も数多く存在し、選択肢は非常に豊富である。
ただし、版権素材を使うなら一般配布は止めよう。約束だ。

基本的なシステムは、見下ろし型のフィールド画面&正面視点でコマンドを選択するターン制の戦闘画面…というドラクエを踏襲したスタイル。最大パーティーメンバー数は4人。
デフォルトの戦闘画面はちょっと野暮ったいため、イベントコマンドを駆使して戦闘システムを自作するツクラーもいる。
ここまでの事を実現するには相応の技量を必要とするが、最盛期にはそんな作品がゴロゴロしており、デフォルトシステムだけで済ませている作品はそれだけで物足りなく見えるくらいだった。
それくらい、『2000』の懐は深かったのである。

しまいには格闘ゲームやアクションゲームまで作ってしまう猛者も数多く存在した。
一応、ツクールシリーズは格ゲーやアクションを作る物が当時からあったはすなのだが、それらがロクに普及しない一方で、本作を魔改造する者がどんどん増えるとは…。

使用するうえで想定されているPCスペックやネット環境など、さすがに今となっては時代を感じさせるような要素も少なくないが*1、当時としてはかなりツボを押さえた良システムであり、また、今後の環境の変化にも対応できるものであった。
インターネット、ひいてはパソコンの急速な普及に重なった本作のヒットは、ネット上におけるアマチュアゲーム文化隆盛の立役者となったことは間違いない。
00年代の爆発的なフリーゲームブームは本作なしではなし得なかっただろう。

当然だが、PCのツクールは家庭用ハードのツクールに比べて圧倒的に自由度が高い(これは『2000』に限らず、あらゆるツクールに言える)。
特に、製作者のイマジネーションを刺激し夢を形にする「ツクール」において、自由度というものは何にも勝る最重要要素である。

●以下、家庭用シリーズより優れている箇所

  • 戦闘アニメ(技のエフェクト)を自分で作成できる。
  • 自分の描いたイラストをそのままゲーム内の顔グラフィックやモンスターグラフィックに使える。
  • 素材を集めるor作るかすればフルボイスのゲームも作成できる。
  • グラフィック表示等を利用して自作戦闘やRPG以外のゲームを作れる。
  • ゲーム(ツクール)内のあらゆる項目の数の増減が可能。
  • あらゆる素材を自分の手で作ることができ、かつそれらを容量の許す限りゲーム内に取り込める。
  • 作成中のデータは直接パソコンに保持できる(据え置き機版だと外部メモリを新規購入しておかないと保存できないケースが多い)。
  • 配布もサイト等にアップするだけで良い、プレイする側もRTPをDLしておけばプレイ可能(据え置き機版だとソフトとメモリが無ければプレイ不可能)。

無論、家庭用ツクールもまたシリーズを盛り立ててきた存在であり、従来PC用ツクールと家庭機用ツクールは、手軽さと自由度において一長一短の関係にあった。
しかしPC用シリーズが本作で躍進を遂げた一方、家庭用シリーズは『ツクール3』を最後に凋落の一途を辿ることになる。
そのうちパソコンの普及でハードルの格差も無くなっていったため、このあたりからツクールシリーズは主戦場をPCに移すことになる。


後に『RPGツクール2000 VALUE!』、『RPGツクール2000 VALUE!+』と、二度にわたり廉価・アップデート版が販売されている*2
最新OSへの対応、使用キーの増加、表示ピクチャ数の増加、MP3ファイルへの対応などが行われた。これを利用すれば「ラスボス戦にGONGを流す」なんて熱い表現をする事も…!!


また、アスキーツクールの公式サイトにて体験版がダウンロード可能。

この体験版、無料なのにツクール2000のほぼ全ての機能を使用可能かつ作成データの保存も可能だった。
制限こそあるが、大作を作ろうとしなければあまり問題にならない。
(一応、音楽がピアノになるバグが存在する)
続編の体験版はプロジェクトデータが起動中しか保存されなかったり、他のゲームデータの読み込みができないと言った制約が大きい中で、
この作品の体験版は(自分で楽しむ範囲内ならば)無料でゲーム作りが出来る最高のソフトとも言えた。
…が現在は起動が30日制限が掛かっているVerに変わってしまった。
一応、2000と何故か2003のハンドブック付属のCD-ROMに素材データと一緒に搭載されているので、試して見たい人は購入を検討してもいいかも知れない。
今は製品版がネットで購入できるので、わざわざ有料体験版なんて必要ないと思われるが…



●RTP(ランタイムパッケージ)



本作から導入された要素。
ツクールに最初から入っている画像や音の素材、所謂デフォルト素材一式をまとめたものである。
ツクール2000は、これらのデフォルト素材をゲームプレイヤー側が予めインストールしておくシステムを採用している。
プレイヤーは公式サイトからRTPを予めダウンロード・インストールしておかないと、RPGツクール2000のゲームを遊ぶことはできない。

これによって、ゲーム制作者は作品を配布するとき、デフォルト素材をファイルに含める必要がなくなる。
当時はまだまだ回線やサーバーが未成熟で、数MBのダウンロードにも時間が掛かるユーザーも多かった。
そのため、ゲームの容量を最小限にするために考案されたシステムなのである。

追加した自作素材などについてはファイルに入れる必要があるが、全素材自作なんてケースは流石に少ないため、大抵はRTPによって軽量化の恩恵を受けられる。
デフォルト素材しか使っていない作品ならマップデータ以外はほぼ空っぽで配布することができたため、かなりの小容量で済んだ。

ネット環境が充実し、ADSL→光と高速回線が普及するにつれて必要性は薄れていったものの、『2003』『XP』『VX』と、作品を経てもRTP体制は続いた。
最終的に『RPGツクールMV』で廃止されるまで、このシステムは継承されていった。

また、「RTP」は単純にデフォルト素材を指す通称としても用いられる。
ツクール2000のRTP素材といえば、まあ安定した出来で汎用性は高いのだが……その分、何とも言えない地味さで、ハッキリ言ってかなりダサい。
そのため数々のゲームをプレイするうちにだんだんうんざりしてくる人もおり、時にはデフォルト素材を使っているというだけでマイナス点と見做されることもある。
しかし一方で、その独特の味に愛着を覚える層も現れ、デフォ素材のグラフィックに勝手に固有のキャラクターが付けられて、ユーザー間で共有されたりもしている。



●サンプルゲーム


ツクールにおいて忘れてはならない存在がサンプルゲームである。
長いツクラー道のほんの序章にして、ツクールの可能性を示す案内人たち。数日でエターナったツクラーにとってはこれがゲーム本体になる。
『2000』には粒揃いの7本が収録されている。
またこれらの作品に使われているオリジナル素材は、一部を除いて制作素材として使うことが許可されている。

  • SAMPLE1 『花嫁の冠』
ある意味本作の目玉である作品。
なんとプロのクリエイターを起用し、豪華声優陣によるボイスまであるたぶん世界一豪華なサンプルゲーム。
キャラクターデザインは『俺の屍を越えてゆけ』の佐嶋真実、シナリオは後に『GJ部』などを手掛ける新木伸。
出演声優は鈴村健一、今井由香、田村ゆかり、冬馬由美、堀江由衣うえだゆうじ釘宮理恵塩沢兼人などビッグネームが名を連ねる*3

内容は主人公カインが「好きな相手とは結婚できない」という村の呪いを解くため、元凶である魔王を倒しに行くファンタジーRPG。
RPGであるとともにギャルゲーでもあり、村に住む6人の女の子をパートナーにしてダンジョン攻略に挑んでいく。そして村の呪いを解いた暁には……?
魔王退治と言っても終始牧歌的な雰囲気が漂う作品なので、人気声優演じる女の子とイチャイチャしながら冒険しよう。
RPGとしては村1つとダンジョン1つにいくつかの寄り道を加えたコンパクトなスケールで、ツクールの主要な機能をひととおり使っているのでサンプルとしては至って堅実な作品。
残念なことに本作の素材はほぼ全て使用が許可されていない。声優の音声素材とかがあるので仕方ないが、出来のいいドット絵やMIDI素材も巻き添えを食って使用不可になってしまっている。

ちなみに新木伸の作品『GEφグッドイーター』では「7人の嫁をゲットしたカインおじいちゃん」が同作の主人公カインの曽祖父とされており、他に本作のストーリーを基にした『薪割りスローライフ始めますか?』も執筆している。


  • SAMPLE2 『Abyss-Diver #0』
コンテストパーク受賞作家、重歳謙治による作品。
人口爆発による居住区不足に陥った未来世界のサイバーパンクRPG。
主人公は、過去に投棄された地下居住区を暴走した警備ロボットやモンスターから奪還する「アビスダイバー」を生業とし、稼業の傍ら、行方不明になった同業の友人を探すため地下に潜る。
緻密な世界観と、アイテム収集に独自の成長システムなどのオリジナリティが光る。サンプルにして既にツクールの奥深さをこれでもかと掘り下げ、ユーザーに示してくれる秀作。
また本作に使われているSF風オリジナル素材は、中世ヨーロッパ風に偏ったデフォ素材の補強という意味でも非常にありがたい存在。
続編にあたる『Abyss-Diver #1』が『ツクールVX』のサンプルゲームとして収録されている。


  • SAMPLE3 『クイーン・クー』
アーフィオ王国の女王でありながら、お転婆な14歳の少女であるサーリアは、クーハルサと名乗って街に下り、市井の世界と国の現状を学んでいく。
王女としてのスケジュールをこなしながら、ギルドの物資流通に関わったり、モンスターを使役してダンジョン探索したりするシミュレーションゲーム。
絵柄も女の子向けっぽいファンシーな感じで、『アトリエシリーズ』などを思い浮かべると近いかもしれない。
グラフィックはほぼ自作、さらには戦闘や探索、物資運送のシステムも全て自作で組まれている非常に気合の入った作品。
自作プログラムで最早RPGじゃない作品も数多く生み出したツクール2000だが、その萌芽はこの時点ですでに芽吹いていた。


  • SAMPLE4 『修道院』
探検家アーガルは行方不明の子供たちを探すため、魔物が蠢く修道院に挑むことになる。
ゼルダの伝説』のようなフィールド上で戦闘を行うアクションRPG。
単純なコマンドを使った物のためアクション性は高いとは言えないが、これも独自システムに挑戦した意欲作と言えよう。
グラフィックも自作だがそのクオリティゆえに非常にシュールな感じになっており、それを自覚してかホラーっぽいわりにノリは軽い。
魔物や死体の傍らになぜか携帯ゲームが転がっており、4種のミニゲームがプレイできる。……が、このミニゲームの方が明らかに本編より作り込みが凄い。


  • SAMPLE5 『蠢く闇の砦』
財宝を求めて廃墟の砦を訪れた冒険者アーテルだったが、仲間が悪霊に憑依され、悪霊蠢く砦に一人閉じ込められることになる。
「荒れ果てた建物内で、彷徨うモンスターから逃げながら謎を解き、脱出を目指すホラーRPG」という、ご存じ後のツクールの歴史において一大ジャンルとなる系統である。
後になって振り返ると意外な価値が見出せる作品かもしれない。惜しむらくはRTP素材が致命的にホラーに向いていない。


  • SAMPLE6 『Ⅲ』
コンテストパークプラチナ賞受賞作『囚人へのペル・エム・フル』の作者である八百谷真が手掛けた作品。
思想犯として捕らえられた主人公カレス・アクセリーは、ある時自分の霊的分身を作り出す能力「ゴースト」に目覚める。
同じ能力を持つ3人の囚人による脱獄計画に巻き込まれるが、失敗した彼らとともに異空間に閉じ込められてしまう。
狭いフィールド内で使い捨て可能な分身「ゴースト」を駆使し、隠れたり敵の不意を打ったりする、互いが鬼のかくれんぼのような独自のゲームシステム。
美麗なグラフィックとテクニックが要求されるゲーム性、中二病魅力的なキャラクターから特に人気が高い作品。非常に短いのが玉に瑕。


  • SAMPLE7 『海賊』
16歳を迎えた少年クレスは、小さな島から大海原に漕ぎ出し、「海賊王」となることを目指す……という海洋冒険物語。
色々と個性派ぞろいのサンプルゲームの中で、デフォルト素材のみを使った西洋風冒険ファンタジーRPGというあんまりにもストレートな作品。
ボリュームだけは随一なのだが、そのボリュームはだだっ広すぎるフィールドとお粗末なゲームバランスに水増しされており、中身は非常に薄く、おおむねクソゲーと認識されている。
本編は全部デフォ素材のくせに唯一EDムービーがある。そんなところまでクソゲーっぽくしなくても…
しかしそんなダメっぷりが逆に愛しかったのか、本作を弄るパロディ二次創作ゲームがツクられたりした。
ツクールの基本的な部分だけを使っているという点では、ある意味最も「サンプルゲーム」らしい作品と言える。……反面教師にしたほうがいい部分も多々あるが。



●RPGツクール2000で作られた有名作



※非常に数が多いので、有名所、もしくは項目が存在するものを優先します。
 なお、二次創作系については記載しないでください。



上記に述べたように、版権もの素材を利用して二次創作ゲームも作れるが、一般公開は控えよう。
それがもとで潰されたサイトは意外に多い。
さらに、どのゲームがとは言わないが、某動画サイトにて元ネタゲームプレイ動画にある二次創作ゲーム信者が荒らしを行った為、
取り込むべきファンを敵に回してしまい、以降、そのプレイツクールゲーのプレイ動画を投稿する事はタブーとなってしまっている。
そういった意味でも取り扱いは十分気をつけるべきである。


追記・修正はゲームを1作品でも完成させた人のみお願いします

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最終更新:2023年12月28日 20:57

*1 画面の大きさは最大でも640x480、BGMはMIDIファイルによる物が前提、デフォルトで想定されている記録媒体がフロッピーディスク等。これらは後述するアップデートにより幾分か見直しが図られた。

*2 無印版のユーザーは無料でのアップデートが可能。

*3 ただし、この頃はまだ新人扱いだった者もいる