神州纐纈城(石川版)

登録日:2010/05/18(火) 23:52:25
更新日:2023/11/01 Wed 18:43:10
所要時間:約 5 分で読めます




国枝史郎の小説、神州纐纈城(しんしゅうこうけつじょう)をコミカライズした作品。

はじめに言っておくが、神州纐纈城は原作からして未完。
それを料理するは古今に比類なき原作ブレイカー、石川賢
知ってる人もいるだろうが、石川賢と言えば未完の作品を数多く描いてる漫画家。

未完×未完のコラボレーション、何が起こるか分からない超級の化学変化の予感がする恐るべき漫画だ。

大迫力のアクションは元より、創意を凝らした数々の残虐ギミックは一見の価値あり。


石川作品と言えば何も考えて無いような健全で健康的な狂気が魅力的だが、この作品のやや影を帯びている病的な狂気も良い。

「なぜお前は人を殺す」

「必要だからでございます」

「生きていく上で必要だから。こうお前は言うのだな?」

「はい、心の中に鬼がいて、それが私をそそのかして人を殺させるのでございます」

「もしそそのかしに応じなかったら?」

「あべこべに私が殺されます!はい、その心の鬼の為に食い殺されるのでございます、自滅するのでございます!」

「しかし、たとえ人を殺してもお前の心は休まらないはずだ…ただ、血を見た瞬間だけは心の休まる事もあろう、しかし二倍になった不安がお前を襲うはずだ」

「で、また人を殺します」

「すると四倍になって不安がお前を襲うはずだ」

「で、また餌食を猟ります」

「血は復讐する永世輪廻!」

「で、また餌食を猟ります」
「で、また餌食を猟ります」
「で、また餌食を…」
「で、また餌食を!」

「地獄だ地獄だ!!血の池地獄!!無間地獄だあ~~!!」



●あらすじ

舞台は戦国。甲府で武田信玄に仕える土屋庄三郎は、道で謎の男から血で染めたかの様な…と言うか血で染めてある真っ赤な布、「纐纈布」を渡される。
その布売りによれば、庄三郎は纐纈城なる所へ行き、その城主になるべき運命にあるのだと言う。
そして庄三郎は国を抜け、纐纈城が存在すると言われる富士へと向かう。
庄三郎の国抜けを知った信玄は、高坂甚太郎に庄三郎を捉える事を命じた。
富士山麓に入った甚太郎は庄三郎を見つけ、戦いを挑む。だが…戦いの最中、二人は凄まじい勢いの地下水道に飲み込まれてしまう。
そして二人は覚ましたとき、それぞれの地でとんでも無いような物を目にする。庄三郎は光明優婆塞という聖者が作った富士教団の穏やかな土地を。甚太郎は頭までおかしくなっている城主が居る、人の生き血を絞る纐纈城を。

そんな二人が辿る運命とは…?



●登場人物

◆高坂甚太郎
武田信玄に仕える鳥を取る鳥刺。竹竿から手ぬぐいに至るまで、なんでも敵を切り殺す武器に出来る。
信玄に命じられて庄三郎を追う。
甚太郎と庄三郎の間には隠された秘密が…


◆土屋庄三郎
信玄の家臣だったが纐纈城の城主が自分の父親である事を知り、国を抜けて纐纈城を探す。
光明優婆塞に救われた後に凄まじい力に目覚める。その後纐纈城主と相対し、自分こそが真の纐纈城の城主だと告げる。
元の性格はマトモだが纐纈城に入った後は石川作品有数の狂人になった、そのギャップがスゴいので余計危なく見える。


◆光明優婆塞(こうみょううばそく)
富士の樹海に居を構える富士教団を作った聖者。
地下の激流に流されてきた庄三郎を救った。
手をかざすだけで病人を治したりする凄い人。
纐纈城主とは浅からぬ因縁がある。


纐纈城主
纐纈城の城主。人々をさらっては城に押し込め、実にバリエーションに富んだ方法で人を絞り殺して布を染める。
特別な病にかかっていて、城主に近づく者は纐纈布を纏うなどの特殊な方法を用いない限り、たちまち腐り落ちてしまう。

この作品一番の狂人で、「甲府が~~!」と叫び発狂し、思い出話をブツブツ呟きながら人々を腐らせる姿と、側室の女に執拗に言葉攻めする姿は見もの。
纐纈布を使って空を飛べるのは城主しかおらん!とか言われる、いやそれおかしいだろ…


三合目陶器師(さんごうめすえものし)
富士の裾野に住んでる男で、女房を他の男に寝とられて心が狂った人切り。陶器を焼きながら人を殺す日常を送っている。
光明優婆塞とのキチガイ染みた問答は見もの、読んでてこっちの精神がまいるくらいヤバい。


◆月子
陶物師と同じく富士裾野に住んでいる女。
人の顔を造り整形する事が出来るという、三百年ほど時代を先取りした技術を持っている。
石川作品屈指の美人。


◆直江蔵人
富士の裾野に診療所を構えている医者、纐纈城主の病を抑える薬「五臓丸」を作っている。
ちなみに五臓丸の原料は人間の生き肝。



「人を生き血を絞って殺す」文にするとこれだけだが、作中では実に色んな方法で血が絞られる。

雑巾のように機械で絞られる、すりこぎですりつぶされる、巨大な餅つき器みたいな物で首から下を潰される、全身に針を刺されてじわじわ血を流す…など。
これだけの想像力を働かせる石川先生は流石と言わざるを得ない。
また、この作品は常識的な事について
「本当にそうか?」と疑問を投げ掛ける。これもまた魅力

「死者に対して非礼ではないのか……」

「こんな戦国の世、死んでしまえば人間も犬も同じでございますよ」

「犬と人間は違う…人間には喜怒哀楽という感情がある」

「ははは…あなた様は自分勝手な偽善の人だ、犬や猫だって喜怒哀楽があるかもしれないじゃないですか……」
「人だけが特別なんて思ってる、なんか滑稽ですよ」

神州纐纈城は石川賢の漫画の中でも割りと手に入りやすい部類なので、石川賢のトンデモ時代劇を見てみたいと言う人には、魔界転生と並んでこの作品をおすすめする。







お前らにこの項目を編集する事は出来ない、項目を編集出来るのは俺だけだ!!



ベ リ ッ


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最終更新:2023年11月01日 18:43