南部縦貫鉄道

登録日:2012/10/17(水) 14:45:37
更新日:2020/07/16 Thu 22:03:48
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南部縦貫鉄道とは、かつて青森県に存在した鉄道路線である。
現在も会社は存続しており、「南部縦貫」と名を変え、タクシー運営を行っている。

★歴史

南部縦貫鉄道が設立されたのは1953年。当初は沿線の開発を目的に自治体中心で建設が進んだものの、資金がすぐに底をついて工事が中断してしまった。しかし、沿線の村から砂鉄を採掘し、それをこの鉄道を使って輸送するという計画が持ち上がったことをきっかけに工事は再開。設立からかなり遅れた1962年、ようやく路線は開通した…


…のだが、その砂鉄輸送は最後までほとんど行われなかった。
海外の輸入鉄鉱石の値段が下落、国内産に頼らずとも需要が賄えるようになってしまったためである。貨物輸送という大きな柱をすぐさま失ってしまい、旅客輸送の方もバス路線が並行している事から低迷、開通数年後の1966年には会社更生法を申請し、実質倒産状態になってしまった。この状態は1980年代まで続く事になる。鉄道路線だけでは経営は成り立たず、様々な副業をこなしていた。

しかし、それでもなお鉄道の経営は続いた。その理由に、東北新幹線がある。当時計画されていた東北新幹線の青森延長時には、終着駅がある七戸町に駅が建設される予定であった。開業の暁には、新幹線との連絡路線として生まれ変わる予定があったのである。そのため、十勝沖地震で不通になった後も、東北本線の旧路線(高速化を目論んだ線路の付け替えが行われていた)を利用して一ヶ月後に復旧している。
1980年代には当時の国鉄赤字ローカル線であった大畑線の買収も計画したが、地元のバス会社の下北バス(当時下北交通)が最終的に引き受ける事になった。

1990年代まで残ったこの路線だが、前述した旧東北本線の部分に関して土地の買い取りを要請されてしまい、その資金が出せない事が分かった。この時点では1997年に廃止する予定だったそうだが、惜しんだファンが多数殺到した事や、東北本線との接続計画もあり、休止へと計画が切り替わった。
その後、土地は地方自治体が無事に買い取ったものの、長い休止期間が仇となった。車両が走らず、客も使わないまま放置された鉄道施設の荒廃は復旧が予想以上に困難だったのだ。
正式に路線が廃止になったのは2002年のこと。
東北新幹線・七戸十和田駅が開通したのは、その8年後である。


★車両

○キハ101・キハ102

南部縦貫鉄道を代表する車両。定員は僅か60人で、「レールバス」と呼ばれる車両である。
レールバスとはその名の通りバスの技術を応用して製作された鉄道車両で、日本では1950年代と1980年代にそれぞれ別に開発がおこなわれている。その中でもこの2両は1950年代に製造されたもので、運転も自動車のマニュアル方式に近いものとなっている。

1950年代のレールバスは、主に国鉄が乗客の少ないローカル線向けに投入していたが、当時はまだ道路事情が悪く、鉄道の需要は意外に高かった。そのためレールバスではあまりに輸送量不足となってしまい、早々と引退してしまった。バスの構造を流用したために老朽化がすぐに進んだ事も早期引退の原因となっている。
しかし、この2両はその後も活躍を続け、本来の寿命どころかバスの耐用年数をも上回り、開業から休止の時までずっと主役を張り続けたのである。


路線が廃止された今も旧七戸駅で保存され、イベントの時はエンジン音を震わせて走る姿も見られる。

○キハ103、キハ104

開業後に予備車として投入されたのが常総筑波鉄道(後の筑波鉄道、現在は廃止)から移籍したキハ103。最後の頃は客車代用となり、1980年に廃車。

それに代わって、国鉄の両運転台気動車キハ10形を譲り受け、キハ104として登場させた。当初は大型車体を利用してラッシュ時に運用されていたものの、利用客の減少やそもそも燃料費がかさむことから車庫でゆっくりする日々が続いてしまう。
だが、路線の休止が近付くにつれ、再びその巨体が役に立つときが来た。前述の通り、レールバスのキハ101・102は定員が少なく、休止間際に多数訪れた乗客をさばききれない事態が勃発。その手助けとして、このキハ104の続行運転が行われたのである。

廃止後もレールバスたちと共に動態保存されている、南部縦貫鉄道の頼もしい一員である。

○ディーゼル機関車

前述通り、砂鉄運用は結局実現せず、鉄鉱石を運ぶ貨物列車が通る事は無かった。
しかしそれでも沿線の需要から貨物列車が1984年まで運行され、D451が主に担当していた。他にも、別の鉄道からやって来たDC251が入れ換えや貨物列車の予備を担当、除雪用にDB11も在籍していた。
現在も三機とも旧七戸駅の車庫に残っており、DB11はイベント時に運転も行われている。


路線は残念ながら廃止になってしまったものの、休止時に在籍していた車両は全て残っており、有志を中心にした保存団体の手によって保存活動が行われ、町の観光協会の主催による一般公開も実施されている。
イベント時には動態保存されているレールバスや除雪車が動き、体験乗車が行われる事も。

また、地元の郵便局の風景印や東北新幹線七戸十和田駅の駅弁パッケージでも、レールバスが採用されている。

2012年で誕生からちょうど半世紀。地元に親しまれながら、南部縦貫鉄道、そしてレールバスの歴史はまだまだ続くのである。


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最終更新:2020年07月16日 22:03