アーム・スレイブ

登録日:2009/06/03 Wed 16:55:14
更新日:2024/03/26 Tue 00:38:52
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ライトノベルフルメタル・パニック!』シリーズに登場する架空の兵器。


【アーム・スレイブ】
いわゆる人型兵器であり、名前は「アームド・モビル・マスター・スレイブ・システム」を略して〈アーム・スレイブ〉と呼ばれる。
直訳では“主従追随式機甲システム”である。略称は「AS(エーエス)」であり、ほとんどこう呼ばれる。

また、“強襲機兵”と呼ばれる場合もあるが、これはASが「アサルト・ソルジャー」の略だと間違って報道されたためにそれが定着したものである。
自衛隊でASを採用した際にこの「強襲」という言葉の是非を巡ってしょうもない議論が延々繰り広げられ、最終的に「主従機士」というだっさい名前がついた。
だが、市民の間では全く定着せず、公文書くらいでしか使われていない(因みに現場スタッフは気取らず普通にASと呼んでいる)。
ドイツでは「マシーネン・イェーガー(機械化猟兵)」と呼ばれている。

戦車や戦闘ヘリでも容易には近づけない存在であり、現在では陸戦の主力になりつつある。
ただし戦車を正面から破壊するような攻撃力はなく、撃ち合いすると当然負ける。そのため遮蔽物のない砂漠では圧倒的に不利になる。
だが、三次元的な動きや、二脚歩行による活動場所を選ばない汎用性ゆえに、非常に有効性の高い兵器である。



【セミ・マスター・スレイブ・システム】
ASの操縦方式。
〈マスター・スレイブ・システム〉という、人間の動きをそのままトレースするロボットの操縦方式がある(実在する)。
しかし、ASサイズの人型兵器の内部では人が自由に動くようなスペースを用意しては無駄が多い。

そこで発案されたのが、この「セミ・マスター・スレイブ・システム」である。

これはオペレーターの動きを何倍かに増幅して読み取るシステムで、例えばオペレーターが少し肘を曲げただけで、機体は大きく肘を曲げる。
この動きの増幅の倍率を『バイラテラル角(略称:BMSA)』といい、3なら三倍になる。
劇中でも宗介が「バイラテラル角、3.5」といっているのが確認できる。

バイラテラル角の設定は、状況に応じて、任意に設定が可能である。
例えば、狙撃等の、精密な動作をする際には、バイラテラル角を2に設定したり、激しい戦闘などでは、4に設定する…などである。
また宗介はサベージの場合は3.4、アーバレストやボン太くんの場合は3.5に設定している。

もっとも、全ての動作を搭乗者が律儀に行う必要は必ずしも無い。後述するマニピュレーターの操作もさることながら、歩行に関してもこれは同様。
逆に瞬発力が重視される戦闘機動においては、マスター・スレイブによる機動が行われる。

これらモードはかなり細かく分けられており、M9の場合だと
「操縦モードが10種類、火器管制モードが11種類、索敵モードが9種類、ECSの作動モードが4種類、通信モードが6種類、GPLが5種類」ある。
実際の戦闘では使用する組み合わせは限られているため、これらの切り替えは「マスター・モード」としてパターン化されている。


【マッスルパッケージ】
特殊な形状記憶プラスチック繊維の束でできた人工筋肉。最新式のものはこれ自体が装甲の役割も持つ。
全てのアーム・スレイブはこのマッスルパッケージで動くが、第二世代型までは足りないパワーを補うために油圧式の駆動システムと併用している。

消耗品なので適度な交換が必要だが頻度は運用する組織の経済状況により異なる。
ちなみに、毎回デリケートな任務を行う〈ミスリル〉は一回出撃したら全交換という贅沢っぷり。

瞬発力が高い代わりに損耗が早い実戦用と、耐久性に優れる代わりに瞬発力は低い練習用が存在。
なお、マッスルパッケージは交換後に微細な調整が必要であり、交換すればすぐに動けるという訳ではない。
この作業に使うOSはイスラエル製がベスト。日本製は処理に無駄が多いのでダメ。

また東側と西側で仕様が異なるため、そのまま流用することは困難で使うのであれば微調整が必要。
ソ連崩壊後の『アナザー』の時期でも似たような事情であり、作中達哉たちが苦労する場面がある。


【火器】
AS用の火器は、基本的に人間が使う装備をスケールアップした物であるが、発砲の方法は異なる。
ASは手のひらから火器に電気信号を送ることで弾を発射させる(M9タイプはこの電気信号の装備を対人用の電気銃にしている)。
一応トリガーは付いているが、これは接続不良で電気信号が使えない場合に強制激発するための最終手段である。

ちなみに、火器の発砲機能には強力な暗号化が施されており、普通は敵機に武装を奪われても使えないようになっている。
この暗号を突破するには、最新鋭であるM9のAIでも数分の時間を必要とする。
「燃えるワン・マン・フォース」の際には暗号化がされていない武装を奪うことで宗介が反撃を開始している。



【アーム・スレイブ一覧】


《第一世代》
元々、ASは強化服として開発された。
しかしこれは、歩兵と組み合わせるには鈍重、戦車と組み合わせるには火力不足という中途半端な兵器にしかならなかった。
そこで『ジオトロン社』は通常ならサイズを縮小する所を逆に大型化。豊富な電子兵装と強力な火器を備えた試作AS「XM4」を完成させた。
こうして誕生した最初のアーム・スレイブ〈M4〉は米軍に正式採用されたのだが、この時点ではASの有効な運用方法は市街戦での待ち伏せ程度だった。

◆M4
アメリカ製。詳細は全く分かっていない。

◆Rk-89 シャムロック
ソ連製。
かつて宗介はこの機体でサベージ3機に勝ったことがあるらしい。
なお、最初は宗介が最初に乗ったASはこの機体であったが、後にRk-91に変更となっている。



《第二世代》
M4を発展させた新型、M6〈ブッシュネル〉は、M4よりはるかに汎用性が高く、様々な戦術が可能になった。
このM6の登場をきっかけに各国でも開発が開始され、メーカーもこぞってASとその武装開発に乗り出した。
この騒ぎは『M6ショック』と呼ばれている。
アナザーの時代は流石に旧式化しつつあるが、第三世代機が高価なため、未だ一線に立っている。
また、油圧シリンダーが採用されている関係で規格外の荷重に対しては第三世代機より強い。

◆M6 ブッシュネル
米軍が有するかなり高価な機体。
バリエーションとしてマイナーチェンジ型のA1型、海兵隊などで運用されているA2型、
そして一部の特殊部隊のみに配備されている「ダーク・ブッシュネル」ことA3型が存在する。
A3型には小型のパラジウム・リアクターや最新型マッスル・パッケージが採用されており、ごく短時間ならパラジウム・リアクターを利用した無音駆動が可能。
アナザーでは砲撃支援型のM6A2E2「ブッシュマスター」が登場した。


Rk-92 サベージ
世界中に一番普及しているロシア製AS。
性能は第2世代機最低クラスだが、コストは低く、過酷な環境、粗悪な燃料、お粗末な整備でも動き続ける傑作機。
Rk-91、81など複数種類があり、カスタム機のスーパー・サベージも売れ行きは好調。


◆ドラッヒェ
ドイツ製のAS。同国の戦車技術が活かされた強固な複合装甲を持つ、防御力重視の機体。
名前はドイツ語で“竜”を指す。


◆サイクロン
イギリス製のAS。
同国の航空機技術が用いられ、高い機動性を誇る。特にジャンプ力では第3世代機にも匹敵するとか。
また、前後に長く細い形状は前面被視認性が低く、被弾率の低下を狙っている。
更に最大の特徴としては小型ガスタービンエンジンを2機搭載していることが挙げられる。
これは状況に応じて片方を切る事で放熱量を抑えられる他、片方が壊れてももう片方だけで稼働し続けられるなど有用性が高い。
初期モデルは転倒事故が多発し欠陥機と呼ばれたが、それを受けて作られたマイナーチェンジ型のサイクロン2はこれといった欠陥は確認されていない。


◆C3-5ミストラル2
フランス製のAS。
頭部が無く、装甲車に手足をつけたような特徴的な見た目で、装甲と火器管制に優れる。
更に、機体のパーツの徹底的ブロック化や、装甲車との一部パーツ共用によって高い整備性を確保しており、
サベージには流石に敵わないもののかなりの人気機種となっている。
ベースになったミストラル1は技術試験のために少数生産された機体で、すでに全機退役している。
フランス兵器にもかかわらず型式番号があるが、色指定番号の誤植らしい。


◆九六式
M6に改良を加えた自衛隊用のAS。
アニメでは右肘関節が弱いとされている。
本来機動性を重視すべきASという兵器だが、半端に防御重視な設計のこの機体はあまり良いASではない。
一応、冷戦終了後は戦車やヘリを相手取った非対称戦が多くなってきたのでこれはこれで有用性が無くもないらしいが。
更にFCSにも課題が多く、銃さえ持てれば十分と三本指にした事もあって本機専用の武器しか使えない。
アナザーにおいては有明でベヘモスにボコられた反省から改良された九六式改が登場。
こちらは互換性や運動性が向上しており、第2世代機最強と呼び名が高い。

因みにベヘモス戦で登場した3機はマッスルパッケージ交換の時間が無かったので練習用のまま出撃したらしい。
実戦用なら勝てないでももう少し善戦できたとの事。



《第二、五世代》
第三世代機を開発するのに十分な技術はあるが、まだ確立されたばかりの技術に全面的に頼ることを危険視する国家が開発した機体。
パラジウムリアクターの他に小型ガスタービンエンジンも搭載し、あえてマッスル・パッケージと油圧シリンダーのハイブリッドを採用している。
パラジウムリアクターは半端に整備が煩雑なガスタービンエンジンよりも整備性が高いらしく、この手の機体は特に旧第三勢力国家に重宝されている。

◆ゴブリン
スウェーデン製。
仮想敵としてサベージを想定しており、サベージに匹敵するタフさや整備性を追求して開発された結果として機体形状がどことなく似ている。



《第三世代》
まだ極一部でしか実用化されていない最新鋭機。低温核融合炉〈パラジウム・リアクター〉による完全電気駆動が特徴。

M9 ガーンズバック
対話型のAIや圧倒的運動性など、従来のASなど問題にならない高性能機。
米軍では開発中だが、極秘傭兵部隊〈ミスリル〉ではすでに実用化されている。
アナザーにおいては米軍でも実戦配備されているが、電子兵装と使いやすさこそミスリル仕様を上回っているもののそのほかの性能と外見(特に顔)は劣化気味。
マオ姐さんには陰で「ブサイクでノロマなデブ」呼ばわりされ、製作陣にすらがっかりM9と称される。

ARX-7 アーバレスト
〈ミスリル〉製のM9特殊派生機。〈ラムダ・ドライバ〉を使った試作機だが、完全に実戦を想定して作られている。
基本性能はM9と同じだが稼働時間はちょっと短め。


ARX-8 レーバテイン
アーバレストの後継機。圧倒的パワーを持つ代わりに電子兵装がほとんどオミットされた極端な機体。
一応ミスリル製のASだが、開発された過程に事情があり正式な機体ではない。ARXの番号も便宜上のもの。


◆Zy-98 シャドウ
ロシア製の第三世代AS。詳しいスペックは不明だが、M9と同等かそれ以上と思われる。
アナザーではマイナーチェンジ型のZy-99の輸出仕様が登場、主役機として要所要所で活躍した。


◆コダールタイプ
シャドウを元にアマルガムが製作した、〈ラムダ・ドライバ〉搭載の特殊派生機。
Plan-1056 コダール
Plan-1058 コダールi
Plan-1059 コダールm
の三種類が存在する。
なお、アニメやコミックにおいてはコダールiのみデザインが異なる。


◆エリゴール
コダールの発展機。
3機存在する。
デザインはアニメ版コダールiの流用。


AS-1 ブレイズ・レイヴン
日本製の第3世代機。
両肩と腰に装備した「アジャイル・スラスタ」による高い機動性が強みだが、頑強さを追求したフレーム構造が災いして機体そのものの運動性は低い。
しかし頑丈さが幸いしてペイロードに優れ、日本のお家芸である魔改造の余地もある。


◆Rk-02セプター
サベージを手掛けたOKBリャカが開発したロシア製。
装甲やパワー、信頼性などに優れた名機だがもろもろの事情で全然売れない悲劇の機体。


◆アルカンシェル
フランス製で、ミストラル2の後継機。
ミストラル2同様に頭部がない。
胴体に装備したサブアームで火器を保持できる。


◆ヴォルフ
ドイツ製第3世代機。
重装甲ながら運動性が高く電子兵装もそこそこ優秀ななかなかの高性能機だが、稼働時間が若干短い上に値段がバカ高い。
AS同士の対称戦での有用性は非常に高く、米軍からは「ソードマン」と呼ばれている。
ラシッド王国王家は儀礼用に8機購入し、豪奢に飾り立てている。


◆サイファー
イギリス製。
徹底的軽量化によって極めて高い機動性を獲得している。
更に、本機はフルメタにおいては極めて珍しい可変機。
とはいっても某トランスフォーマーのように飛行形態や自走形態になるのではなく、収納スペース節約の為に関節をコンパクトに折りたたむのみ。
一応、機体軽量化と変形機構の恩恵で同じスペースあたりの積載可能な機体数はかなり増えている。

そして、専用の緊急展開ブースターを併用すれば航空機型になることも可能で、航続距離や値段もM9が使用するXL-1緊急展開ブースターより優れている。
勿論空戦が出来るレベルではないが、ゆっくり宙返りするくらいなら可能。


《その他》
上記の世代にカテゴライズされない機体。

◆Plan-1501 ベヘモス
超巨大AS。
サイズ故に機体が自重に耐えられず、ラムダ・ドライバで無理矢理支えている。
構造自体は第二世代型と同じ。


◆Plan-1211 アラストル
人間サイズの自立AS。
あまり高度な判断力は持たず、目標の殺傷や要人の警護、警備に使用される。


Plan-1055 ベリアル
レナード・テスタロッサの〈ラムダ・ドライバ〉搭載専用機。
圧倒的なスペックを持つ作中最強のAS。


◆Plan-0601 リヴァイアサン
ASの技術で造られた二人乗りの小型潜水艦。なので正確にはASではない。
単分子カッターでの接近戦も可能な水中戦闘機という新たな位置付けの兵器。


◆ケントゥリア
M9のメーカーであるジオトロン・エレクトロニクスが「カエサル・プロジェクト」に基づいて開発した完全無人制御型AS。あだ名は「十字目」。
無人機にも関わらず有人機にも引けを取らない強さを誇る。


◆レガトゥス
ケントゥリア部隊の指揮官機として開発された機体。こちらは有人機。
性能はかなり高く、ミハイロフの技量により、フル装備の第三世代機2機を単分子カッターのみで瞬殺し、
左腕と引き換えに達也のレイヴンを大破させるという衝撃的なデビュー戦を飾った。
あだ名は「一つ目」。
初登場の4巻では名前が不明だったため、巻末のAS紹介コーナーでは「ミハイロフのAS」と表記された。


◆トゥリヌス
カエサル・プロジェクトに基づいて開発された新型機。
操縦桿も音声入力も使わず、TAROSによる思考操縦で機体を動かすというかなり異質な機体。


《パワー・スレイブ》
ASのノウハウを利用して作られた人型重機。
通常の重機が入れないようなところでも作業ができるので重宝されており、無印からアナザーの11年でじわじわ普及している。

◆ダイダラ
小松重工製のPS。脚部にタイヤがついており、自走形態に変形可能。
日本国内のPSシェアの60%を占めるベストセラー機で、ユンボよろしくPSの代名詞となっている。
市ノ瀬建設も使っているが、自走形態への変形機構は故障しており(わりと無茶な機構であるため)、治すお金も無いのでそのままほったらかし。


◆エイプE-50
アメリカ製のPS。パワーではダイダラを上回るが故障率と燃費は劣るアメリカンな機体。
機体の構造上後ろが見えにくいため、現場で後付のミラーがゴテゴテ装備されることが多いらしい。


◆タイニー・サベージ
アメリカのツーソン・インスツルメンツ社(社長はみんな大好きコートニー爺さん)がPSを改造して作った、金持ちの道楽用のなんちゃってAS。
見た目はサベージそっくりだが性能はエイプとどっこいどっこい。
レーシングカー用のエンジンを使っているのでいい音で速く走るらしい。



《アーム・スレイブ?》
ボン太くん
寂れた遊園地のマスコットの着ぐるみ。諸事情により宗介が強奪し、その後ASの技術などで改良を加えられてパワードスーツ化した。
性能は見た目とは裏腹に凄まじく、作者曰くアラストルより強いとのこと。
スパロボでもユニットとして参戦している。



【AS関連用語】

《カクテル・シェーカー》
激しい運動を行うASの内部では、オペレーターは凄まじい振動にさらされる。
それが「カクテルの中の氷のようだ」という意味の隠語。


《ジャック・ナイフ機動》
仰向けに横たわった状態から背筋の力で跳ね起きるAS独自の機動。
普通に起き上がるより断然速い。
別名『V字型腹筋運動』




アーム・スレイブが誕生した時、世の中では人型機械といえば歩くのがやっとという状態だった。
だが、異様な技術の塊であるはずのASは普通に世界に受け入れられ、目覚ましい速度で発展していく。

アーム・スレイブ……こんな物は“あるはずがない”のである。




追記・修正はスタンバイのポーズでお願いしますorz


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