新機動戦記ガンダムW BATTLEFIELD OF PACIFIST

登録日:2012/11/10(土) 16:15:17
更新日:2023/10/03 Tue 00:20:56
所要時間:約 5 分で読めます





新機動戦記ガンダムW」の外伝ストーリーのひとつ。
覇王マガジンとコミックボンボン夏の増刊号に掲載された。シナリオは千葉克彦、作画はときた洸一。

時系列としてはTV版本編とEWの間の話だが、機体デザインは皆EW版になっている…が、単行本の表紙でゼロが持つバスターライフルの形状がTV版の物になっていた。

ちなみに同じ時期の話としてCDドラマ「BLIND TARGET」(発売元・キングレコード/現在廃盤)があり、そことの繋がりについて議論した際には

「ま、それはそれ。メディアの違いってことで別の話でもいいでしょう」

という富岡プロデューサーの鶴の一声であっさり決まったという(KCボンボン版のあとがきマンガより)。
ノベライズ版EWではこれらの出来事は全部発生した事になっている。
また、ときた氏作画のコミカライズ版EWは完全にこの話の後日談として話が進む。



あらすじ


イブ・ウォーが終結して1年近くが経ったA.C.196年の夏。
兵器を蓄えておこうとする者、極端な平和論を唱える者たちは未だに多く、安定にはまだ程遠かった。

そんな中、旧OZの無人プラント「ウルカヌス」がまだ存在しているという噂が立ち、調査に乗り出すヒイロ達。そこにOZ残党や平和主義団体「P3(パーフェクト・ピース・ピープル)」が介入。
果たして、「ウルカヌス」には何があるのか…。



主要登場人物


【Gチーム】

お馴染み主人公。
冒頭ではリーオーで兵器の生産ラインを破壊して登場。相変わらずやることが派手である。
今回は調査に徹しているが、終盤で大暴れするので地味な印象はない。
またリリーナに「おまえにオレが必要になったときには――もどってくる」と約束。(ときた版の)EWに繋がる。
「オレたちの暴走はオレたちがたがいにとめられる。そして、おまえたちの暴走もオレたちがとめるっ!!」


最初、ヒイロと行動を共にする。P3に不信感を抱いていた。
今回は戦闘面での活躍が多く、また貧乏クジは特に引いていない。
なおヒルデは1コマしか登場しないが、他のガンダムパイロット達と連絡を取り合っていた。
「へっ、うさんくさいとは思ったが―――とんだ平和主義者(パシフィスト)じゃねェか」


相変わらずカトルと一緒にいるが、彼が行方不明になったことでハワードの元を訪ねる。
今回はカトルのことを特に理解している発言が多い。
「だいじょうぶだ、こいつなら―――心の強い男だ。そうでなくては優しく生きられない」


序盤でウルカヌスの調査に赴くが、P3に捕まってしまい洗脳されるなど散々な目に合う。
ラストではP3の欠点を指摘し、そしてEWに至る決断をする。
「違う!!あなたのいう平和は、あなたたちだけのものだ―――」


今回はOZ残党と共に行動。
ブローデンの考えや理想に感銘を受けており、彼が倒された時には激昂。そしてEWでの行動に繋がることになる。
千葉氏も「当初意図はしなかったのだが、五飛が影の主役だな、これは……」と、KCボンボン版のあとがきで述べるほどの立ち位置を見せてくれる。
「心配するな、ブローデン。オレが人類の脅威になってやる」


【協力者】

兵器工場の調査に赴くなど忙しい身だが、ドロシーの手引きでヒイロと出会い、彼に協力する。
相変わらずの信じ合いぶりを見せてくれる。
「力による排除では再生を生みます。彼らには理解してもらわねば――地球圏には、もう兵器は必要ないということを……」


ヒイロの依頼を受けてウルカヌスに関する情報を提供した他、わざわざヒイロとリリーナの再会の場を設けるなど、相変わらずの重要人物振りを見せる。
なおシナリオの千葉氏はときた氏のドロシーを絶賛していた。
「わたしは知りたいんだわ。トレーズ様とゼクスが繰り広げたあの戦いが、ほんとうに人の心に平和をよび込めたのかを―――」


月でガンダムを管理していた。出番は多くないが、印象に残り易い。
ちなみにハワードはこれがシリーズ最後の出番だったりする。
「こいつが必要になったというのは―――また穏やかな話ではないな」


五飛の訪問を受け、彼にウルカヌスの情報を教える。
なお大統領の選挙に関わる問答をしていた。
なお、プリペンダーはこの時点ではまだ存在しない。
「設計段階の大型MDの話をきいたことはあるが、実戦配備にはいたらなかったが――たしか、『スコーピオ』……」


  • サリィ・ポォ
出番は多くないが、カトルの治療を行ったりウイングゼロを届けたりと相変わらず手際が良い。また五飛の行方を気に掛けており、ヒイロに尋ねていた。
サリィ「ねえ、五飛の消息は知らない?」
ヒイロ「地球(した)では――見かけなかった」
サリィ「そう……」


【OZ残党】

ウルカヌスに運ぶ資源衛星の調達に派遣されていた艦隊で、戦後の武装解除に従わなかった一部隊。
  • ブローデン
OZの元二級特佐。
「兵器の開発が人類を進歩させる」という考えの下、ウルカヌスを利用して自らが人類の脅威になり、進歩を促そうとしている。それが宇宙の広大さに魅せられての行動だったりと純粋な男であり、五飛も感銘を受けていたが…。
Wのよくいる強力なネームドらしくガンダニュウム製のビルゴをリーオーで一太刀の下に切り捨てている。
「……五飛……人類は……どこまで行けるの……だろう……な――」

  • クレメンツ
元OZ特士。
しかし実はP3のスパイであり、ブローデンがウルカヌスに侵入した瞬間、彼を殺害。←パンパンパン
中のビルゴを起動せんとするが、カトルとデュオにあっさり確保された。
「崇高なる使命のためです」


【P3(パーフェクト・ピース・ピープル、通称ピーキューブ)】

主にコロニーを舞台とし、戦闘に転用可能な大型宇宙船や作業用MSにまで規制を訴える過激な平和運動を展開する団体。
火種になり得ると懸念したトロワが侵入してコンピューター内の情報を検めたときは「ただの政治団体としか思えない」との結論だったが……
  • ビクター・ゲインツ
P3代表。
ガンダムを平和を脅かす存在として糾弾するが、本心は自分達が兵器を独占した上での「平和」を画策していた。
実は元ホワイトファングであったが、ゼクスをリーダーに据えようとするカーンズと対立し、離脱した過去がありそのことが行動原理になっている。
ウルカヌスに格納されていたスコーピオの制御を奪い、ウルカヌスを確保せんとするがヒイロ達に阻まれ、さらに自分達の行動は独善に過ぎないと指摘され、斃された。
「カーンズ、なぜゼクスなのだ!なぜわたしではダメなのだ!!」



本作オリジナルのMS


ウルカヌスを防衛していた「番犬」。その名の通りサソリの形をしており、またサイズも大きい。
MA形態は専用パーツをつけて行い、変形するときはパージするというリ・ガズィのような構造になっている。
デザインは石垣純哉(MA形態はときた洸一)。

P3が所持していたビルゴ。
プラネイトディフェンサーは2基のみだが、充分な出力のバリアを張れる。
戦闘プログラムが改良されており、初めて戦った時はトロワも驚かせた。

MSから農業機械の生産に転身したはずのオースターインダストリが地下の秘密工場で生産していたリーオー。
通常のリーオーとは目の上の庇と肩の装甲の形状が異なる。
生産ラインをリリーナ率いる査察団に見つけさせるためにヒイロによって派手に爆破された。
デザインではさらに後頭部にトサカ、アゴに四角い突起、背中にバーニアパック、太腿にスラスター、両肩にプラネイトディフェンサーも一基ずつ装備した リーオーIII の予定だったという。
完成版が漫画に登場しなかった理由については作者も記憶していないようだが、担当さんに止められた記憶は無いため、自分の気まぐれではないか、と述べている。



結末


この事件の後、カトルの提案でヒイロ達はガンダムの廃棄を決め、314体のビルゴが積んであるウルカヌスと共に太陽に廃棄することを決めた。
時にA.C.196年夏のことであった。その冬のクリスマス・イヴの厳しい寒さを恐れずに…。

ノベライズ版EWでは、マリーメイア軍の籠城に対し、丁度ウルカヌスに到着したプリベンターの部下にレディ・アンがビルゴの起動を命じるがゼクスに制止されている。
コミカライズ版EWでは、「ガンダムの入った資源衛星=ウルカヌス」となり、一緒に戻ってきたタイミングで上記の一幕も挿入されている。


余談


ヒイロがゼロシステムでビクターの過去を知った後に「了解したぜ」と口にするのだが、実はこれ写植ミスだったりする。
本来は「了解した ゼロ」となるはずだったが、字が汚かったらしく「『ロ』が『。』に見えたのかも」とツイッターで作者のときた氏が語っている。
単行本でも直っていなかったが、電子書籍版でようやく直されるとのこと。

スーパーロボット大戦には「BATTLEFIELD OF PACIFIST」は参戦していないが3Z時獄篇ボーナスシナリオ「兵士と世界と平和と」の舞台がウルカヌスの別名であるムルキベルであり、五飛がマリーメイア軍に加わる前日談となっているためネタが拾われている。
一方、Gジェネレーションクロスレイズにおいてはシナリオやキャラは無し、スコーピオが参戦しただけに終わった。貴重な機会なので残念な所である。



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最終更新:2023年10月03日 00:20