牙狼-GARO- 暗黒魔戒騎士篇(小説)

登録日 :2012/07/05(木) 13:48:53
更新日 : 2017/04/28 Fri 21:52:33
所要時間 :約 7 分で読めます




雨宮慶太原作・監督の特撮番組『牙狼-GARO-』第1シリーズを原作とする小説。
2006年に朝日ソノラマから出版された。作者はTV版の脚本を手がけた小林雄次氏。
シリーズ10周年の2016年9月24日には、『妖赤の罠』とセットで文庫版としてホビージャパン社から再販されている。

「シナリオをそのまま小説に書き起こしたようなノベライズだけはやめよう」 という雨宮監督の提案により、原作の前日談や後日談、間隙にあった秘話や別の人物の視点から綴られたエピソードなどから成るオムニバス短編集の形式を取っており、TVの牙狼を知らない初見の読者にも一つの読み物として満足がいく出来映えとなっている。

小説内には原作では明らかにされていなかった設定や、以降の派生作品との矛盾点なども散見されるが、これは作者の考察を監督や文芸設定のスタッフからOKを受けて書いたためであり、それとは違う読者の中のイメージや解釈があるのならそれもまた真実であるとあとがきで語られている。
そう、『黒い炎と黄金の風』のラストのように……。


【DESIGN】
本編中に挿絵こそないものの各章冒頭にはおなじみの墨絵&サブタイトル題字、表紙や冒頭のカラーページには原作の写真を多用した登場人物紹介や原作ダイジェストが。
(鋼牙とカオル若ぇ!!) とか (龍崎全然変わってねぇ!?) とか思ってはいけない。

また、中表紙には雨宮監督の描き下ろしイラストが描かれている。
黄金の騎士 に染まる事で半ば 暗黒騎士 に変わりつつある一瞬を切り取ったような、象徴的なイラスト。


【CONTENTS】
各章冒頭には劇中でザルバも暗誦していた事のある『魔界詩篇』の一節が記され、物語の内容を暗示している。

  • 第1章『黄金』
主役はカオル。原作第1話『絵本』をカオルの側から描いた一人称視点の短編。
カオルの友人アサミや龍崎、後にホラー・モロクに取り憑かれる神須川美理も少しだけ登場。
初対面時のシチュは最悪だった二人だが、少なくとも絵のモデルとしてはこの時点でカオルは鋼牙にぞっこんだった事が判明。
初めてホラーと遭遇したカオルのどこかズレた内心の反応も可見所。
あんた、何回破裂すれば気が済むのよ!

  • 第2章『旅人』
主役は鋼牙。原作前半の総集編、第13話『約束』の裏話。
遠出の甲斐なくホラーが現れず、屋敷へ戻ろうと列車に乗った鋼牙とザルバ。
しかし、いつしか車内にはホラーの思念が漂い、乗客の誰が敵かもわからないまま閉じ込められてしまう。
そんな時、ある紳士が鋼牙に声をかけてきた。彼は何故か魔戒騎士の存在について知っており、
なおかつカオルの父、御月由児が描いたある人物の絵を持っていたのだ。謎めいた紳士に疑惑を深める鋼牙だが……。
カオルの料理下手を容赦なくDisる鋼牙さんマジ冷徹。
「俺は不器用じゃないし、冷徹じゃないぞ」
「なぁんだ。しっかり聞いていたんじゃないか」

  • 第3章『記憶』
主役はバラゴ。本編の前日談であり、本作の根幹を成す三篇の暗黒騎士・呀のエピソードの序章。
バラゴがまだ鋼牙の父、大河の弟子として修行に明け暮れていた頃。師である大河の課した『打ち寄せる波を斬る』という修練に挑むバラゴ。切り裂いた波間に彼の背負ったあまりにも無惨な過去、そして力を求める心の闇が浮かび上がる……。
後のスピンオフ作品『呀-KIBA- 暗黒騎士鎧伝』とは明らかな差違のあるバラゴの過去の描写は凄惨そのもの。
「牙狼剣は時間すらも切り裂く」
「あいつのいない世界へ行くんだ。そこは魔戒騎士もホラーもいない、理想郷だ」
「母さんも僕も、そこで自由に生きるんだよ」
「貴様は魔戒騎士の出来損ないだ!そんな根性なしは、ホラーにでも喰われてくたばれ!」

  • 第4章『越境』
主役は。初登場以前の彼がいかにして黄金騎士を仇と付け狙うようになったかを描いた前日談。
陰我のゲートのある彫刻家(後にホラー・ガーゴイルに取り憑かれる倉町公平)のアトリエを調査するため、東と西の管轄の境界を越えようとする零。その時無数の素体ホラーが突如現れ、彼に襲いかかる。
無我夢中で応戦するがやがて意識を失い、目覚めた零の前に阿門と名乗る魔戒法師が現れる……。
幼少期の零とシルヴァの出会いや、本編でのキーアイテム『変化の秘薬』が本来何の目的で作られたのか、など、原作補完要素も高い。
「無名の魔戒騎士よ、また会おう」

  • 第5章『古傷』
主役は邪美。鋼牙の背に走る大きな傷痕のできた経緯が描かれる。
原作16話『赤酒』の後、阿門法師の元に訪れた邪美は鋼牙の近況を聞いた事で遠い日の記憶に思いを馳せる……。
ロリ邪美のツンデレを満喫できる初々しく甘酸っぱいエピソード。また、魔戒法師が修行する『閑岱の里』や騎士と法師の間に横たわる確執など、以降のシリーズに繋がる設定も見られる。
「じゃあ、何になりたいんだ?」
「あたしも、魔戒騎士になる(ドヤッ)」
( ゚д゚)ポカーン
「邪美、女は魔戒騎士にはなれないぞ。知らないのか?」
(゚ー゚)ニヤニヤ
「それくらい知ってるって///!あたしは魔戒騎士より強い魔戒法師になってみせるって意味さ!」

  • 第6章『暗黒』
主役はバラゴ。3章の続きにあたる。
力を求めるあまり空回りする日々。大河、鋼牙、幸福な冴島家への嫉妬からついにバラゴは師弟の縁を切り、闇の力を手に入れるため独り奈落への道を突き進んでいく。
バラゴを導く死んだはずの母の姿、それを斬り捨てた大河に向けた憎悪が爆発する時、最強の魔戒騎士同士の禁忌の死闘が幕を開ける!
……そしてバラゴは……。
「素晴らしい策略」
「まさか本人も気づいてはいないでしょう」
「メシアの降臨が楽しみですこと」

  • 第7章『希望』
主役はカオルの父、由児。本編開始時は既に故人である彼の数奇な運命を描いた短編。
画家としての自分に行き詰まりを感じ、スランプに陥っていた由児は病床の妻や娘カオルへの贖罪として幼稚園の片隅に壁画を描き始める。しかしその甲斐なく、妻は完成した絵を見ることなくこの世を去り、母の死に目に姿を見せなかった父にカオルは心を閉ざしてしまう。
自責の念に押し潰されて深夜の裏通りを歩く由児はホラー・ハンプティに襲われる。傷を負い、あわやここまでかと思われた瞬間、由児を救ったのは黄金の馬に跨った金色に輝く騎士だった!
限られた時間で、娘に画家としての自分が何を残せるのか?
由児の「死に際の再生」と、先代牙狼・大河との友情には感動必至。また、御月親子の手がけた絵にまつわる因縁が紐解かれている話でもある。
「お前の描く絵が、誰かの力になることもある。――いいや、きっと力になる。俺はそう信じている」

  • 第8章『同士』
主役は原作第5話『月光』のゲストキャラである刑事・羽根沢。
社会の闇で繰り広げられる騎士とホラーとの闘争に巻き込まれた3人の男達が出すそれぞれの結論。
ホラーに魅入られ、騎士に救われながらも騎士を憎む殺人犯・戸沼。
大切な者を騎士に奪われ、騎士への復讐に生涯を捧げる『黒衣の男』。
2人の語る怨恨を知ってなお、騎士の正義を信じる羽根沢。
相容れないと悟った時、黒衣の男の『魔弾』が戸沼を貫き、ホラーに変える!
人間対ホラーの激闘が幕を開けたところで物語は終わりを迎える。
「ヤツと戦って、勝つ。人間として」

  • 第9章『転生』
主役はバラゴ。6章の続き。原作終盤の展開をバラゴの側から描いた物語。
メシアのゲートとして選ばれたカオルへの妄執。三神官の裏切りで断ち切られた野望。
全てを喪失し、孤独と絶望に沈みゆくバラゴ。その前に現れる過去からの使者。
本当の強さとは?守りし者とは?闇に堕ちた魂の遍歴の果てにあるものとは?
「旧魔界語で“希望”という意味さ」

  • 第10章『故郷』
主役はカオル。最終回後、絵の修行でイタリアへ旅立った彼女が鋼牙に宛てた手紙の形で綴られるエピローグ。
古代ローマ時代の遺跡に残された魔戒騎士の痕跡、そしてそこでカオルが出会った人物とは……。
あなたの心に、今、私はいますか?
私は、私はね……
どうせ出さない手紙だから、正直に言うね、鋼牙。






私は、あなたが好きです。







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