テトリス

登録日:2010/08/25 Wed 23:12:11
更新日:2024/04/21 Sun 12:38:14
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(画像出典:編集者による自作)



◆概要

ソビエト連邦の科学者、アレクセイ・パジトノフ氏など3人が教育用ソフトウェアとして開発したパズルゲーム。
1984年6月6日に初めてプレイ可能な版が開発された。
画面上端から降ってくるパズルピースを組み上げて消していく、いわゆる「アクションパズル」「落ちものパズル」の基礎を築いた作品である。

開発のきっかけは、ソ連にこっそり輸入されたパックマンなどの西側諸国のコンピューターゲームに、パジトノフ氏が触発されたから。*1
具体的なゲームの内容は同氏が幼少期に遊んでいたペントミノパズルと、水族館に行った際にヒラメが重なり合うことなく水槽の床に沈む姿を見たことであるとか。

その数学性、動的性、知名度、並びに実装の平易性から、テトリスをゲームプログラミングの練習題材として用いる例がしばしば見られる。

日本では1988年にセガから発売されたアーケード版、および1989年に任天堂から発売されたゲームボーイ版から人気に火がつき浸透していった。

本来ならセガアーケード版移植であるメガドライブ版も発売される予定で、そちらもほとんど完成していたらしいがお蔵入りに。
その背景として、任天堂は版権管理をしていたソ連国営企業の外国貿易協会(ELORG)と直接交渉し家庭用ゲーム機版において独占販売権を取得していたのに対し、セガは実際にはパソコン版の販売権しか所持していなかった*2ため、発売出来なくなってしまったというエピソードがある。
この幻のメガドライブ版は後に発売されたPS2版のSEGA AGES テトリスコレクションに入っているが、後に販売されたメガドライブミニに収録されているテトリスは、改めてアーケード版を完全再現した独自の移植版が作られた。

とまあいろいろ複雑だった版権管理を一元化するため、1996年にゲームボーイ版発売の権利獲得の交渉を行ったヘンク・ブラウアー・ロジャース氏と原作者のパジトノフ氏らがアメリカにて「ザ・テトリス・カンパニー」を創業。
この際に独占販売権制度が廃止された為、同社から許諾を取ることでセガも再びテトリスを販売できるようになった。これが2000年版のアーケードとドリキャスで出た『セガテトリス』につながる。
ちなみにELORG自体も2005年にこのザ・テトリス・カンパニーに買収された。


◆ルール

4つの正方形を組み合わせて作られた、片面型テトロミノ状のブロックピース全7種(ゲーム内では「テト“リ”ミノ」と呼ばれている)が、フィールド上方から1種類ずつ落下してくる。
このテトリミノを回転させ、形を合わせながら組み上げていくのが基本ルールである。
横一列に隙間なくテトリミノがはまると、その列が消えてなくなる。
消せずに画面上端までテトリミノが積み上がってしまうとゲームオーバーとなる。

作品によってはまれに1ピースから3ピース、5ピースのものが混ざって落ちてくる場合もある。
個々のテトリミノの名称は特に厳密に定められているわけではないようだが、その形状から、アルファベットの名前が当てはめられることが多い。

  • Iテトリミノ(水色)
4列消し「テトリス」を決めることのできる唯一にして最高のテトリミノ。そして俺の嫁。
3マス以上の谷を作るとこいつでしか埋められなくなる。

  • Oテトリミノ(黄)
回転させても形の変わらないただひとつのシンプルなテトリミノ。

  • Sテトリミノ(黄緑)
人によっては地味に使いにくい。最初に来るとちょっと面倒。
ただしTスピンが存在するゲームであれば、それを狙いやすい利点はある。横倒しにして屋根を付けたりとか…

  • Zテトリミノ(赤)
Sを反転させたテトリミノ。
ホールド(後述)ができない古い仕様のゲームでSが欲しい時にZが来ると泣きたくなる。もちろん逆も然り。

  • Jテトリミノ(青)
3列消し「トリプル」をしやすい。綺麗に積みやすく使いやすい。

  • Lテトリミノ(橙色)
Jを反転したもの。向き違いでもSとZほどの影響は無いかも?

  • Tテトリミノ(紫)
場所を選ばずに置ける便利なテトリミノ。
これを回転させて隙間を埋めるテクニック「Tスピン」があり、最近のゲーム(後述するテンプレ仕様)でのスコアアタックや対戦ではI以上に重要。


このテトリミノを落とす場となるフィールドのサイズは、公式には縦20行×横10列。

テトリミノがフィールド最下段、または他のテトリミノの上に着地するか引っかかると、少し間をおいてブロックとしてフィールドに固定され、新しいテトリミノがフィールド上方に出現する。
ゲームによって次1〜6個のテトリミノが「NEXT」として画面の右上などに姿を見せており、慣れてくるとこの予告表示が重要になる。

N E X T

↑こういうの

最近のゲームでは「ホールド」というシステムも存在する。テトリミノの落下1回ごとにテトリミノ一つをキープ・交換できるという便利機能だ。
大抵のコントローラーではLかRボタンでホールド可能。

横の1~4列分がすべてブロックで埋め尽くされると、その段が消滅して上の列がその分だけ落ちてくる。
このとき、同時に多くの段を消去する程高得点が得られる。特に4列消しはクアドラプルではなく「テトリス」と呼ばれる。
Iテトリミノをホールドして一番端に隙間を作る「1列空け」「平積み」(冒頭の画像の形)は誰もが通る道。

1段消し…シングル
2段消し…ダブル
3段消し…トリプル
4段消し…テトリス

ただし、隙間の上のブロックが落ちて埋まることはない。なのできっちり組まないで穴を作ってしまうと、消えない段がたまっていき、いずれ死ぬ。

最近ではTテトリミノを回転させて、一見入らなさそうな隙間にねじ込む「Tスピン」が判定される作品が多い。
Tスピンをしながらラインを消した場合、テトリスよりも効率よく高得点が得られる(Tスピンの最大は複雑な組み方が必要な3段消し「Tスピントリプル」)。
コレを連発することを目指す上級者は平積みを卒業し、中央から少し横にずれた1マスを開ける構えの「6-3積み」を基礎としているとか。

Tスピンダブルの例

テトリスまたはTスピンを2回連続で行うと、「Back To Back」となり、さらに得点が高くなる。(テトリスとTスピン両方で組み合わせたり、ラインを消さずに積むだけなら問題無い)
またラインを連続で消すと「REN」あるいは「コンボ」となり、これも得点がちょっと高くなる。


◆テトリス・ハイ

『テトリス』に慣れ、瞬間的な判断・操作を数多くこなすようになると、次第に思考が自動化されてくる。
考えるより感覚で操作している感じというとイメージ出来るだろうか。
後半、NEXTテトリミノの形を見ながらサクサク組み上げていくあれである。

ゲームが進むにつれ、次第にテトリミノが高速で落下し、もはや目にも留まらぬ速度にもなるのだが、それでも数十分から数時間もゲームが続けられるようになるのである。
試しにいきなり最速でゲームを始めると、ゲームの仕様次第だがよほど慣れていない限り長持ちはしない。
人間の脳はこのような状態に置かれると、一種の催眠状態となり快感が引き起こされる。
この快感は「テトリス・ハイ」と呼ばれ、ときには中毒的にもなる。
まあ落ちものゲーにはよくある現象。

ちなみに、日本大学教授の森昭雄はこの中毒的な状況を元に、『テトリス』などのコンピュータゲームを行なっているプレイヤーの脳波の特徴が認知症患者のそれに似ているとして「ゲーム脳」仮説を提唱した。
……が、これは科学的根拠に乏しい点が多い。

それでも、難儀な事情を抱えた国で発明され、世界中であまりに爆発的ヒットしたゲームだったので、「労働効率を低下させ資本主義を崩壊させるために、共産党が作り出した精神破壊兵器」なんてジョークもある。
どっちが先に崩壊したかは皆の知るところだが。まぁパジトノフ氏もヘンク・ブラウアー・ロジャース氏と一緒にアメリカに会社立てて版権管理してるし…


◆特殊ルール

テトリスを発売している会社・ハードなどにより、多種多様なルール・仕様の違いがある。
単純に並べて消すだけではなく、ソフトによって様々な楽しみ方が出来るのがテトリスの大きな特徴なのかもしれない。
単純なゲームだからこそ、可能性は無限大。

昔はTスピンもホールドもなく、ミノの回転も今ほど融通が全然利かなかったりした(なので端開けが基本だった)。
近年ではザ・テトリス・カンパニーによって基本のルールと仕様(ミノの色や回転の処理、HOLD機能、落下速度や着地〜固定までに操作できる時間、タイトルロゴ等)が公式にテンプレ化されており、いわゆる「テトリス・ガイドライン」(たまに「ワールドルール」)と呼ばれている。
作る側からは「独自色が出しにくい」との意見もあるが、基礎がしっかり固められたが故にテトリスとしての品質、プログラミングで作る際の指針は保証されているし、そんな中でも慣れた人は作品ごとに操作感の細かな違いを感じている。
なお、一見無理っぽいバグめいたねじ込み方で有名なTスピントリプルなどの回転入れテクニックはガイドラインにちゃんと認められている。
それでも30周年という節目にKOTYで覇を競うほどのクソゲーが爆誕した2015年には激震が走った

  • 消去トライアル
決められた一定数のラインを消せばクリア。一番ポピュラーなゲームモード。
古いゲームにはフィールドに最初からブロックがある状態からスタートするタイプが多く、そういう場合はたいてい接地したあとに位置をずらす遊び時間がない実装が多い。
最近では何もない状態からスタートするのが基本。10ラインごとにスピードアップする中で150ライン以上のクリアを目指す「マラソン」や、40ラインクリアまでのタイムアタック(公称「スプリント」「40ライン」)が一般的。

  • 対戦
複数ラインを消すことで、対戦中に相手にお邪魔ブロックを送れる。TスピンやBack to back・RENを決めながらラインを消すとさらに強い攻撃ができる。
ぷよぷよやパネルでポンをイメージしていただければだいたいあってるが、それらとは逆に
任天堂ゲームボーイ版で初登場した「隙間の1個だけ空いたラインが下からせり上がる」スタイルが今はすっかり定着しており、
それで実際にぷよぷよと共演したり最大99人で怒涛の潰し合いを繰り広げたりしている。

  • 特殊能力
キャラクターが存在しているなど、対戦ゲームに変わり種を搭載しているテトリスもしばしば見かける。
選択するキャラクターによって違う能力がついてきたり、ランダムでミノに混ざってくるアイテムをライン消しで使ったり…
必殺技で逆転なんかも可能。

  • 20G
1フレームで20マス分を落下…つまり地面から操作ミノが出現し、素早く滑らせながら積んでいく高難易度状態。
アリカの「テトリス・ザ・グランドマスター」で初めて登場した概念であり、高速プレイを極めるプレイヤーが超えるべき試練。
ゲームによっては、滑らせることのできる操作猶予が高レベル時に短くなったりもする。

ガイドライン仕様ではマラソンのLv19以上でこの状態になる。TETRIS 99では、999ラインマラソンの後半がこの状態。
1マス動かすごとに操作猶予がリセットされる仕様と回転処理のおかげで、ガイドライン仕様の20Gは多少緩い方ではあるが、
中央が凹んでいるとろくに動かせないので、対戦とは逆に中央(左から5・6マス目)を適度に盛り上げるのがコツになる。


◆余談

開発者がロシア出身であることから、かつてはテトリスに使われているBGMや背景にロシア系のものがやたらと多かった。
特にコロブチカは大ヒットしたゲームボーイ版のAタイプBGMでも使われており、テトリスと言えばこのBGMを思い浮かべる人も少なくない。
あの頭から離れなくなるBGMの中毒性といい、魔性のゲームといえるかもしれない。
実はGB版の初期版ではオリジナルの曲(メヌエットと呼ばれる)が使われていた。こちらも隠れた名曲。
後期版でコロプチカに変更され、同時にパッケージとカセットのシールも変更された。

アリカがPSに出した「TETRIS with カードキャプターさくら エターナルハート」は原作CCさくらのBGMを起用。こちらも、あの曲が頭から離れない。



追記・修正はBack-to-Back T-spin Tripleを行ってからお願いします。


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最終更新:2024年04月21日 12:38

*1 冷戦真っ只中のソ連は当然ながら西側諸国からの輸入品に対する検閲が厳しかった。

*2 しかもELORGから直接許諾を受けた権利ではなく、欧州の別の会社を経由した物だった