ハイルブロンの怪人

登録日:2013/06/30 Sun 02:45:32
更新日:2024/01/15 Mon 03:28:12
所要時間:約 4 分で読めます





ハイルブロンの怪人とは、
1993年から2008年にかけて、ドイツをはじめヨーロッパ各地で殺人事件を含む40件の犯罪を起こしたとして
ドイツの警察が血眼になって探した犯罪史に残る連続犯罪の容疑者
である。







  *  *
 *   + うそではないです
  n ∧_∧ n
+ (ヨ(*´∀`)E)
  Y   Y  *





















   *  * ・・・・・・
 *   + うそではないです
  n ∧_∧ n
+ (ヨ(*´д`)E)
  Y   Y  *


しかし、上に書いたような犯罪者は、「特定の個人としては実在しない」ことが明らかになっている。
誰が真犯人と一度でも書いた?

じゃあ推理小説や推理ドラマの怪人かというとそうでもない。
間違いなくハイルブロンの怪人はリアルドイツ警察が犯罪史に残る連続犯罪の犯人として血眼になって探していた存在である。

本当の意味で犯罪史に残ったのは、ハイルブロンの怪人の狂気ではなく、このハイルブロンの怪人を捜査した警察のお粗末さと、科学捜査への重大な警鐘であった。




ドイツ連邦共和国、バーデン=ヴュルテンベルク州ハイルブロン。
人口12万人。歴史的建造物の多く、ビール製造の盛んなのどかな町である。

そんな町で、2007年5月25日に、警官2名が頭を撃たれて倒れていた。
一人は死亡、生き残ったもう一人も重い障害が残る、凄惨な事件である。

警察はここで現場から犯人のDNAを採取。
データベースに登録し、このDNAの持ち主を探そうと躍起になった。

すると、このDNAが1993年の殺人事件で残されていた犯人のDNAとも一致。その上、フランスやオーストリアでも犯人のDNAが同じ事件がみつかった。

すわ、国際的連続殺人!! ドイツの警察は色めきたった。

更に、犯人のDNAは殺人事件だけでなく窃盗・薬物取引などの現場からも採取されるという異常事態。

DNAから、犯人像は女性、東欧やロシア系の人物であると考えられたが、それ以外の情報は一切不明。
犯行内容もあまりに無秩序で一貫性が見られず、プロファイリングによる捜査も難航。

犯人は「ハイルブロンの怪人(Heilbronner Phantom)」と呼ばれ、姿を見せない謎の凶悪犯罪者の存在にドイツ国民は恐怖した。

2009年1月、ドイツ警察はこのDNAの持ち主に懸賞金30万ユーロをかけ、DNAしか明らかになっていない「ハイルブロンの怪人」逮捕に全力を注いだ。









ここまではよかったのだが、その後何かがおかしい事例がちらほら出てきた。


2008年強盗未遂事件で、ハイルブロンの怪人のDNA検出。
だが目撃者の目撃証言およびそれを元に作られたモンタージュ写真はどう見ても男。アレ?
共犯者がいる、性転換手術をしたとか、さまざまな説があがった。

2007年7月、ガキどもが学校に泥棒に侵入した事件。
2009年3月に、そこでガキどもが残したコーラの缶からなんとハイルブロンの怪人のDNAが登場。
さてはこのガキどもが真犯人か?

と思ったら今度はフランスで難民の男性の焼死体がハイルブロンの怪人のDNAを持っていた。
さては罪の重さに耐えかねて自殺でもしたか?



ここまで重なれば、流石にいくらなんでもおかしいことには気づいた。
捜査当局が調べた結果……。











DNA=犯人のものではなかった。

ハイルブロンの怪人のDNAは、
捜査でDNAを採取するための綿棒を納入していた業者のおばちゃん

のものでした……。

つまり、


ヨーロッパ中にこのおばちゃんのDNAがついた綿棒が配備される。

ヨーロッパ中でこの綿棒で犯人と思しき人物のDNAを採取。

ヨーロッパ中のDNA鑑定で採取前からついていたおばちゃんのDNAが検出される。


もちろん、この従業員のおばちゃんはハイルブロンの怪人の一連の犯行とは全く関係がないことは証明されている。

結局、ドイツ警察もこのDNAは事件とは無関係なものと認め、捜査は振り出しに戻ってしまった。
ドイツ警察のこの失態は、新聞に「戦後のドイツ警察の歴史で最もお粗末」「我が国の警察職員の頭の中には綿が詰まっているのかと書かれてしまうこととなった。

ハイルブロンの怪人は、確かにハイルブロンで事件を起こした人間としては実在するが、ヨーロッパ中で事件を起こしたというわけではない、まさしくDNA鑑定が作り上げた、架空の殺人鬼だったのである。





ちなみに、本当の意味でのハイルブロンの怪人は2011年に焼身自殺した人物ではないかと考えられている(使用していた銃が一致したという)。ネオナチ系の犯行だったようである。


この事件は、DNA鑑定の捜査に重大な警鐘を鳴らしている。
DNA鑑定それ自体は、4兆7000億人に一人という非常に高度なレベルで個人の特定が可能であるとされている。
地球の人口は70億人でしかないから、一卵性の兄弟姉妹でもない限りほぼ個人の特定が可能といっていいだろう。
だが、どれだけDNAの精度が上がろうと、こうしたヒューマンエラーの可能性までなくなるわけではない。

もしこの件で、おばちゃんが犯行と関係ないと証明できなかったら?
おばちゃんはヨーロッパを震撼させた連続殺人鬼として冤罪で厳罰に処されていたかもしれないのだ・・・


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最終更新:2024年01月15日 03:28