登録日:2012/10/08(月) 12:05:42
更新日:2024/02/17 Sat 20:34:29
所要時間:約 6 分で読めます
予測不可能な事態に対応しろ! 口じゃなくて……態度でな!
CV:糸博
性別:男
誕生日:?
年齢:?
身長:?
体重:?
所属:
ユニオン
階級:少佐
搭乗機
本編で多大な存在感を示した
グラハム・エーカーの上官。彼曰く「
空を教えてくれた」男であり、「
クール」且つ「
聡明」な男。
ドラマCDのみの登場で容姿が不明ではあるものの、糸博氏のダンディズム溢れる渋いボイスは老練のエースパイロットの風格がダダ漏れであり、非常にカッコいい。
その腕前は本編より1年前の時点で広く知れ渡っており、航空戦術飛行隊勤続30年、総飛行時間8000時間を超える「
生きる伝説」「
不動のトップガン」等と呼ばれていた。
ビリー・カタギリから見てもその技量は驚嘆に値するようで、並のパイロットでは追随すらままならないとか。
グラハムとの模擬戦戦績も残されており、
フラッグがまだ存在せず、グラハムが若かったとはいえ
46戦中46勝と圧倒的である。
もし本編でフラッグに乗って現れていたならば、
ソレスタルビーイングを再三に渡って苦しめていたことだろう。
スレーチャーには娘が1人おり、スレーチャーは当時部下であったグラハムを自分の娘と結婚させようと画策していた事が言及された。
親馬鹿の自覚を口にしながら「美人だし、器量もある」と愚痴気味に宣ったが、肝心のグラハムが空に夢中だった為にこの縁談は成立しなかったようだ。
因みに、娘さん本人は乗り気だったようで、グラハムに「袖にされた」と泣いていたらしい。
親子関係は非常に良好である。
……ドラマCDでは良好であるが故の悲劇が描かれるのだが。
【始まり】
ドラマCD2『ユニオンフラッグ』の舞台、
ユニオン軍の次期主力機を決める最終試験に於いてグラハムとフラッグに立ちはだかる存在として登場する。
ユニオンフラッグの対抗馬であるユニオンブラストを製造したベル・ファクトリー社が
「やべぇお……フラッグの方がうちのブラストより性能が上だお……このままじゃ負けるお」→「だったらパイロットを最強にすればいいんだお!」
という如何にもアメリカ的な発想から、病気に因りMSを降りていたスレーチャーにオファーが入ったらしい。
因みに、ユニオンブラストは巡航形態の空戦能力こそフラッグより高かったものの、それ以外の性能は軒並みフラッグ以下。
変形もリアルド同様換装と、スレーチャー自身ですらその性能には懐疑的だったようだ。
以下ネタバレ含む
【実情】
それでもスレーチャーはテストパイロットを引き受けた。
グラハム曰く「聡明なあなたがそんな事をするわけがない!」とのこと。
つまりスレーチャー本人もグラハム同様、元々権威や利益に動かされるような人物ではない事がうかがえる。
訝しんだグラハムの予想通り、これには裏があった。
スレーチャーの娘の夫が事業失敗により多額の借金を負い、それを知ったベル・ファクトリー社から多額の報奨を打診されていたのだ。
これは本来服務規定違反であり、通報すればそれで片が付く話だったのだが、グラハムは敢えて恩師と空で決着をつける事を望み、黙認する。
恐ろしいのは、スレーチャーはその事実を敢えて明言せずにグラハムを呼び出し、違和感を持たせて自分からその内情を調べさせるよう仕向けた点にある。
因みに調べたのはハワード・メイスンの諜報部の知り合いである。
知らない仲ではない娘の窮地や、それに対しグラハムが少なからず動揺するだろうという云わば心理戦を仕掛けたのだ。
これにはグラハムも「姑息な人だ、あなたは…」と口にするが、
“戦術”だよ。相手の隙を突いて動揺を誘う。基本中の基本だ。
とスレーチャーは鼻で笑った。
自分の為ではなく、誇りを捨ててまで家族の為に空を飛ぼうとするスレーチャーを、グラハムは「理解しかねます」と言う。
そんなグラハムにスレーチャーは
と寂しげに呟く。
そして、次期主力機を決める最後の模擬戦が開始されたのだった。
以下、結末のネタバレあり
闘いは終始スレーチャーの操るブラストが優位に進めていた。
空戦能力で勝るブラストとスレーチャーの技量により、ドッグファイトではグラハムの駆るフラッグを圧していたのだ。
しかし、ここぞとばかりに発動した「グラハム・スペシャル」により形勢は一気に逆転した。
ところが不利を察知したスレーチャーはブラストでフラッグに
特攻(ビリー曰く「
カミカゼ・アタック」)。
間一髪のところで主翼をソニックブレイドで切り裂き難を逃れるものの、ブラストはそのまま墜落、スレーチャーは帰らぬ人となってしまった。
これが
ジョシュア・エドワーズに本編で語られた「
上官殺し」の悪名の原因である。
レイフ・エイフマンとビリーはそれぞれ
少佐は…何故あのような愚かな行動に出たというのだ?次期主力機の選定とはいえ、たかが模擬選で特攻などと……!
翼を失ったとはいえ、何故少佐は墜落を…!?機体を立て直す時間はあった筈です……!
とその死を不審がった。そしてグラハムはその死に対し
スレーチャー少佐は、全てを手に入れたのだ……。
家族への愛を、自らの誇りを、そして…この空を……!
と表し、その死を悼んだ。
【結末】
スレーチャーは自身に多額の保険金をかけ、もし自分が勝てなくともその金で家族が助かるよう仕向けていた。
つまり、わざと墜落して死んだという事になる。
グラハムの前述の台詞はそれを予測し理解した上のものであり、
姑息な人だ…。家族を守る為と言いながら、そんな理由で戦う自分を自ら律し、
更には空戦で私に黒星をつけさせないまま…逝ってしまった……。
全て独り占めだ…。リベンジの機会すらありはしない……!
と嘆いた。
グラハムは行かなかった葬儀の場で、ビリーはスレーチャーの娘から、生前から彼は「俺の跡を継ぐのはあの若造しかいない。グラハム・エーカーしかいない」と度々口にしていた事を知らされたと告げる。
恐らく、劇中の姑息な手段や特攻も、グラハムに負い目を持たせない為の行為だったのだろう。
グラハムはその言葉に再び
と呟き、
と涙を飲んだ。
ベルファクトリー社「…………」←結果、何百億ドルという開発費が散りました。
なお、スレーチャーはグラハムの事をよく「若造」と呼んでいた。
グラハム・エーカーという人物を若造呼ばわり出来るのは、恐らく後にも先にもスレーチャー少佐くらいであろう。
【台詞集】
「失礼します!この度、ランドルフ空軍基地から第3航空戦術飛行隊に配属されました、グラハム・エーカー准尉です」
「よお、お前さんだろ?訓練基地で歴代トップの成績を残し、この部隊に入ってきた若造というのは?」
「ハッ!恐らく…」
「お前さんに…1つ聞く。モビルスーツパイロットに必要な素養とは何だ?」
「冷静沈着な状況判断、自らの力量に見合った戦術飛行を取る事です」
「優等生だな…。訓練基地で教わった通りの答えだ。そうじゃなくて……お前自身が…どう思ってるんだ、若造?」
「今言った言葉に嘘偽りはありません。……但し……予測不可能な状況に陥った時、機体性能や戦術マニュアルは、無用のものとなります。
そういう事態に対応するのが、本物のパイロットであると…私は考えます」
「“予測不可能な事態に対応する”か…。フッフッ…面白い奴だな、お前は……」
「ありがとうございます」
「なら…早速見せて貰おうか。機体に乗れ」
「ッ…?今すぐにですか?」
「予測不可能な事態に対応しろ!口じゃなくて…態度でな!」
「ハッ!了解しました!」
「よぉ…。元気そうだな、若造。おっと、その言い方はイカンか…。
今や…フラッグとやらの栄えあるテストパイロット、グラハム・エーカー少尉だからな」
「“若造”で結構です。少佐」
「……何か飲むか?」
「では、同じ物を」
「……どうだ、若造?フラッグとやらの乗り心地は」
「敵情視察ですか?」
「そういう訳じゃない。お前さんがパイロットを引き受けたんだ。それなりの性能だと思ってな」
「では……フラッグは最高であると言っておきましょう」
「宣戦布告か?」
「如何様にでも」
「だが……こっちの機体はそうでもないな…」
「ブラストがですか?」
「ああ……。“最新鋭機”等と謳ってはいるが、結局のところ…現行機であるリアルドのパワーアップバージョンといった感じだ…。
無論、出力や旋回性は上がっている。だが…根本的な機動は、リアルドと変わらん」
「不可解です。少佐は何故そのような機体のテストパイロットを引き受けられたのですか?」
「何となくだ…」
「そんな筈はありません!聡明なあなたがそんな事をするわけがない!」
「お前に…俺の何が分かる?」
「分かっているつもりです!共に空を飛んでいたのですから…」
「そりゃあ空の上での話だろ?ここは違う」
「ッ……。私を呼び出した理由を、まだ聞いていないのですが…」
「意味は無いよ……。“お互い頑張ろう”って言いたくなっただけでな…」
「はぐらかされている感じがします」
「生真面目だな……」
「……娘さんは…お元気ですか?」
「ああ……。来年には2人目を生む」
「それはおめでとうございます」
「ヘッ、よくも言う…。俺が色々と御膳立てしてやったのに…。お前ときたら…娘に目もくれず、モビルスーツモビルスーツ…。
挙句の果てに…娘は軟弱な金持ちの所に嫁いじまった……。あれが、俺の娘は…そんなに駄目か?親の俺が言うのもなんだが、美人だし、器量もある」
「承知しているつもりです」
「だったら何故!?……“お前に袖にされた”と、娘はよく泣いてたぞ……」
「娘さんを傷つけた事は、謝罪のしようもありません。しかし……それ以上に私は…空に魅せられていたのです…」
「“子供の頃からの夢”、か…」
「孤児であり、金銭的余裕の無い私が空を飛ぶ為には、軍に入るしかありませんでした…。その空を……誰にも渡したくはなかったのです…」
「ガキだな…」
「少佐の半分も生きていない若輩者です」
「ハッキリ言ってやる。―――俺はお前が嫌いだ」
「ッ……!」
「それが…パイロットを引き受けた理由だ。我儘で頑固で融通の利かないお前を、空戦で叩きのめしたくなったんだよ」
「……そのあなたの気概…喜びを以って迎え撃ちましょう」
「俺に勝つ気か?」
「…答えるまでもなく」
「だったら見せ付けてやる!格の違いというものをな……」
「遂に雌雄を決する時が来たな、若造」
「姑息な人だ、あなたは…」
「何がだ?」
「私を呼び出し、何かを言いたそうな素振りを見せ、娘夫婦の事情を調べさせようと仕向けた…」
「“戦術”だよ。相手の隙を突いて動揺を誘う。基本中の基本だ」
「まんまと嵌められました…」
「お前が娘を貰っていれば…こうはならなかった…」
「私が元凶ですか?」
「親の恨み節だ」
「……娘さんの為に、空を飛ばれるおつもりですか?」
「いけないか?」
「理解しかねます」
「フッ、フッフ…。お前とは分かり合えそうにねえなぁ……」
【余談】
スレーチャー少佐のパーソナルマークは「銀と漆黒の一角獣(チェスのナイト?)」である。
当時のグラハムのパーソナルマークは「両翼を携えた剣」が描かれているのだが、本編では「右翼と一角獣の頭」に変わっている。
スレーチャーの真意を知り、後継者としてユニオンのトップガンとなったグラハムの決意の表れとも取れるだろう。
奇しくも『
劇場版 ガンダム00』の時グラハムの階級はスレーチャーと同じ少佐であった。
誰かの為に空を飛ぶ事を否定した男は、最終的に人類の未来の為、「
未来への水先案内人」として地球を救う一翼を担ったのだった。
因みに、同作でグラハムは「全機、フルブラスト!!」という台詞を口にしているが、これにはスレーチャーを始め、これまでの彼の10年が込められているという。
NGワード:男色家 ガンダム ブシドー 仮面
予測不可能な事態に対応しろ!口じゃなくて…追記・修正でな!
- もしフラッグに乗ったとしたら、彼もまた空中変形くらいは出来るのだろうか?
正直最後まで実力は未知数のままだったのが悔やまれる -- 名無しさん (2013-07-16 01:19:45)
- ジョシュアやハワードすら即興で出来るからそら余裕 -- 名無しさん (2013-07-16 01:29:56)
- 即興ではなくかなりの練習はしてるだろう
空中変形をあっさりやってのけたのはグラハムだけ
「いつまでも自分だけの~」という言葉からも、あれが彼らの本番初成功であるはず -- 名無しさん (2013-07-16 01:42:43)
- ハムが恐ろしいのはフラッグ自体そんな変態機動を想定した設計してない事すら知らずに初搭乗且つノリでやらかしてしまった所 -- 名無しさん (2015-07-18 02:46:12)
- ぜひスパロボなどで拾われてほしいエピソード グラハムの人物像にかなりの深みが加わる -- 名無しさん (2016-07-22 22:11:34)
- ブレイヴのに乗った際の台詞「全機フルブラスト」ってそんな意味があったのか。そして道先案内人として刹那を引っ張り上げ命を落としたグラハムは・・・・・・・・・・・・・・死ぬ死ぬ詐欺の常連となった -- 名無しさん (2020-02-16 07:50:56)
- スレーチャーの娘婿が事業失敗したのは自分達に都合が悪いリボンズ達の工作だったんだろうか? -- 名無しさん (2020-05-30 22:44:05)
- 担当声優の糸博さんが飄々としながらも哀愁のあるいい演技をしているんだ。グラハムもどことなくピリピリしてるから対照的で。 -- 名無しさん (2023-08-10 16:06:42)
最終更新:2024年02月17日 20:34