寄生獣

登録日:2009/06/28(日) 19:15:20
更新日:2018/05/20 Sun 00:38:14
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地球上の誰かがふと思った

『人間の数が半分になったらいくつの森が焼かれずにすむだろうか……』

地球上の誰かがふと思った

『人間の数が100分の1になったらたれ流される毒も100分の1になるだろうか……』

誰かが ふと思った

『生物(みんな)の未来を守らねば…………………………』



アフタヌーンで連載していた岩明均の漫画。
全10巻。完全版は全8巻。


普通の高校生、泉新一と寄生生物ミギーの物語。
一見、血や肉片の飛び交うグロ漫画だが、新一とミギーの種を越えた友情、家族、生命の価値とは?
人間とは? などのテーマが盛り込まれた感動作として月日が流れた今でも、多くの漫画愛好家や哲学者から高い評価を受けている不朽の名作。

長らくメディアミックスの無かった作品だったが2014年にアニメ化と実写映画化を果たす。
どちらも賛否両論ある作品だが、それぞれ味のある作品なので寄生獣が好きならば一度観てみると良いかもしれない。




◆寄生生物(パラサイト)
本作に登場するバケモノ。綿毛のような卵から産まれる。
先端がドリル状のミミズかヘビのような形をした幼体が人間の体に入り込み、脳を喰らい頭部と同化することで誕生する。
同化された頭部は見た目こそ元のままだが、細胞はパラサイトの【それ】となっており、髪の毛単位など小さく千切れると虫のように蠢く。
ゴムのような伸縮性を持ちながら鉄のように固く変質させる能力を持つ他、人体を容易に真っ二つにできる程の怪力も有している。
この特性を活かし、鋭利な刃の触手にして対象を切り裂く、硬質化して銃弾を弾くなど戦闘能力は非常に高い。
尚、頭蓋骨は存在しないので擬態する際はある程度自在に人相を変える事もできるが、擬態時に強打されると凹んでしまう。
捕食する時は頭部が丸ごと大きな口となり、人間の頭ぐらいのサイズを食い千切る。

また細胞全体が脳・眼・触手などの役割を兼ねていることから作中では「考える筋肉」と例えられている。
多くは人間のふりをして食欲を満たす為だけに行動しているが、稀に人間と同等以上の高い知能を持つ個体も存在する。
他にも寄生生物同士はテレパシーのようなもので信号を感じとり、相手の位置や感情を知ることができるといった能力を持つ。
これら特異な能力を持ってはいるが首から下は普通の人間の肉体であり、寄生の名の通り人間の内臓や消化器官に頼って生きている。
よって人間の肉体が死ねばパラサイトも死亡する・・・が、成功率は低いが人間の肉体を「乗り換え」して生き延びた個体も存在する。

彼らのほとんどは脳を奪ったときに芽生える“この「種」を食い殺せ”という本能に従い行動している。
しかし実は内臓の多くは人間のままの為、生命維持の為には人間を捕食する必要は全くない。
こういった特異な特徴として「無感情で無表情」「自身の名前に対して無頓着」という点も挙げられている。

弱点は前述の通り人間の肉体の破壊だが、実はパラサイト部分は劇物に対して異常に敏感で脆弱という特性を持つ。
その為、捕食した人間がアルコールやニコチン、薬物を摂取していただけで不調をきたし形状が維持できない。
劇物がパラサイト内に混入したなら細胞同士が我先に逃れようとして混乱し形を保てず、最悪爆発四散してしまう。

そして何より生物でありながら子孫を残す事ができないという矛盾をはらんでいる。


~登場人物~

泉新一(アニメ:島﨑信長、ムービーコミック:酒井広大、映画:染谷将太)
主人公。右腕に寄生されたため頭(脳)は普通の人間であり、そのため他の寄生生物からは「自分達の存在を知り探知できる存在」として危険視されている。
最初は普通の少年だったが、普通の高校生では考えられない血みどろの修羅場を幾度もくぐり抜け、同時に人間らしさに失っていく自分に苦悩する。
心臓を損傷後、パラサイトの細胞と融合して命を繋いだ事で身体能力が異常に強化され、中盤からは「ミギーに防御を任せて、彼自身が寄生生物を殴り殺す」という動きを見せる。
それと同時に大切な人を幾度となく目の前で奪われた経験も相まって、心身ともに人間とパラサイトが融合した中間のような存在と化していく。
世間では寄生生物のことは知られておらず、人類の為にも自分は名乗り出るべきではと考えるが、モルモットにされることを危惧するミギーと意見が対立する。
初めは前髪を下していたが、融合後はオールバックになった。
融合後は人間を片手で投げてコンクリの壁を破壊するほどの怪力と、助走なしで3mの壁を飛び越えられる跳躍力、オリンピック選手以上の俊足
300m先の人物の特徴を読み取るほどの視力、広範囲・遠方の会話も聞き分けられる聴力、パラサイトの攻撃に耐える強靭な肉体に変化した。


ミギー(アニメ:平野綾、ムービーコミック:太田陽湖、映画:阿部サダヲ)
もう一人の主人公。寄生に失敗し右腕になってしまった寄生生物。後の右腕のみが怪人化しているアンクの原型とも言える。
新一の体から血液を通して栄養を貰っているため、人を食べることも食べたいとも思わない。趣味は読書。
好奇心旺盛で高い知能を持ち穏やかな性格だが、他の寄生生物同様冷徹で自己の利益のみを優先しており、
正体が人間にばれたときは容赦なく殺そうとする等融通が効かないことも多い。
新一を気遣うのは新一が宿主だからであるが、だんだんと奇妙な友情が芽生える。
名前の由来は右手を食って育ったから。ミギー自身が名付けた。
ただし海外版では見開きの関係上名前がレフティに。


◆村野里美(アニメ:花澤香菜、ムービーコミック:奈波果林、映画:橋本愛)
新一の同級生でヒロイン。途中で新一と付き合う。ヒロインではあるが、出番はあまりない。
しかしその存在が新一を常に大きく支え続けた。
聖子ちゃんカット。

◆加奈(アニメ:沢城みゆき)
スケバン。普通の人間とパラサイトが見分けられる能力を持つが、その自覚がない。


◆田宮良子(田村玲子)(アニメ:田中敦子、映画:深津絵里)
ミギー以上の高い知能を持った寄生生物で、パラサイトの生殖能力を確認するために寄生生物同士でセックスして子供を作った作中唯一の人物。
新一とミギーを『貴重なサンプル』として観察したりといった日々生まれる疑問の答えを探求しており、自分達は一体何なのかを常に考え続けている。
その高い知能故に戦闘能力は高く、三体の寄生生物相手を翻弄し返り討ちにするほどで、単体で戦略のみの勝負なら最強の個体と言える。
ミギーをして「正面から戦った場合に勝ち目は無い」と言わせ、後藤からも「良い戦いができそうな相手」と認められているほどの実力者。
劇中に登場する彼女は最初からパラサイトされた状態であり、本物の田宮良子(田村玲子)は既に死亡している。
彼女の母親は連絡を寄こさない娘を心配して会いに来たのだが、その際に何の兆候も見せていないはずの田宮良子を自分の娘でないと見抜かれた。
後に出産した我が子には愛情らしき感情を見せており作中の寄生生物とは一線を画した成長をする。
実写版映画で深津絵里は
「パラサイトに寄生される以前の田宮良子には子供を産みたいという願望があったのではないか」という独自の解釈しており
それを監督の山崎が拾って設定として反映させたという。

因みにやけに完成度の高い同人誌があるとかないとか。


◆A(アニメ:保村真、映画:池内万作)
新一が初めてまともに戦った寄生生物。
(厳密にはその前に犬に寄生したタイプと人に寄生したタイプ一匹と戦っているが、どちらもミギーが瞬殺して新一は見てただけ)
檻から脱走したライオンを飛び掛かられた一瞬で頭部を粉砕して撃退してみせたように、自身の実力に絶対の自信がある。
性格はつるんでいた田宮良子と正反対で、警戒心は強いが野生動物のように好戦的で思慮が浅く人間を甘く見ている。
真っ昼間に新一の学校に殴り込みをかけて、無警戒だった新一に胴体部分を攻撃され瀕死の重傷を負う。
その後、田宮良子の肉体と同居を目論むも事が大きくなった事で証拠隠滅の為に田宮の手で爆死させられた。
田宮良子のセックス相手でもある。すなわち、田宮良子が産んだ赤ん坊の父親という事になるが、その影は薄い。
しかし実写版では前編のラスボスという大出世を果たした。


◆宇田守(アニメ:鈴木琢磨)
新一と同じく脳を奪われる事が無かったメタボで気が弱く涙もろい中年男性。
唯一の新一と同じ境遇の仲間。新一と違い顎に寄生されている。
体格と年齢の関係で体力が無く、しかもジョーが気管を圧迫して余計に消耗が激しいなど、あまり強くはない。


◆ジョー/パラサイト(アニメ:村瀬歩)
海に転落した宇田の呼吸を確保を優先したため脳を奪えなかったパラサイト。
元々パラサイトと呼ばれていたが、パラサイトの名が世間で一般化したため、後に差別化のためジョー(顎)と名付けられた。
図鑑で言葉を覚えたミギーと違い映画等で言葉を覚えたため言葉遣いが荒い。


◆島田秀雄(アニメ:石田彰、ムービーコミック:亀山雄慈、映画:東出昌大)
新一を観察するために田宮良子が送りつけたパラサイト。新一の同級生として転校してきた。
イケメンで運動神経も良いため女生徒から注目を集める。表面上は理性的であるため、ミギーからは「話せば分かるタイプ」と分類された。
そのことから生前の島田秀雄も同様の性格だったと推測されるが、その実「人間は食べない」と嘘を吐いて普通に捕食しているなど狡猾。
新一とミギーに警戒されながらも学校生活を送っていたが、ある事が原因で女生徒の一人に正体がばれる。
女生徒にそれを告白され始末しようとしたところ、彼女が護身用に用意していた硫酸をかけられ暴走、校内で大虐殺が発生してしまう。
最期は新一の遠距離から投石により心臓を貫かれ絶命。遺体は回収され研究のサンプルとなった。
この事件がパラサイトが初めて世間に周知される一端となる。


後藤(アニメ:井上和彦、映画:浅野忠信)
最強の寄生生物。戦いと殺戮を求め続ける戦闘マシーン。
ビキニパンツ一丁でショパンも弾ける。五統さん。五頭さんでもある。
田村玲子が実験により創りあげた か弱い「仲間」の一人ではあるが……無敵だ
五体の寄生生物で体が構成されている為、全身を自由自在に変形、硬質化できる。
三木とは違い統制も完璧で、身体能力もパラサイトと融合した新一すら遥かに凌駕している。
単身で武装したヤクザの事務所に乗り込み皆殺しにし、対パラサイト装備で重武装した自衛隊でもかなわない。
走行車同士の正面衝突をしても即回復し、崖から落ちてきた車の直撃&二台分の大爆発に巻き込まれても死なない。
時速60km以上で走り続けられ、ショットガンの散弾をただ弾き返すどころか体内に一度取り込んで射出する事さえできる。

以上のようにラスボスにふさわしい無敵の戦闘能力を持つが、弱点がないわけではない。
唯一、寄生体同士の隙間だけは人間体と同じでダメージらしきものを与えられる。
最期は新一にその隙間から付けられた傷口から「猛毒」を体内に捩じり込まれ、統制を失って爆発四散した。
トドメまでの一連のシーンは単純なバトルものと違い、ミギーや新一の台詞なども相まって色々考えさせられる。


◆三木(アニメ:浪川大輔、映画:ピエール瀧)
後藤さんの右手だから三木。あと三匹統率だから。
「三木がやりたいっていうならやらせてみるさ。……何事も慣れ、だ」と後藤さんの許可を得て頭になり新一を付け狙う。
人間の表情の擬態は得意だが寄生生物五体の統合はイマイチで、体の操作はかなり不器用。ミギーの作戦の前にあっさり敗北。
モグラ叩きすらまともにクリアできない様子だったが、これがナンパの為だったのかマジだったのかは不明。
ミギーに負けて頭を後藤に譲った後はずっと右手状態のまま登場しないが、毒を捩じり込まれた際に真っ先に逃げようと焦っている。


◆広川(アニメ:水島裕、映画:北村一輝)
田村玲子や後藤さん達の寄生生物集団のリーダー的存在。後藤さんからボスと呼ばれる。
新一の家のとなり町の市長選に立候補し、環境問題を訴え見事当選する。
以後は自分の市に寄生生物のコロニーを作り上げ、「食堂」などを用意する。
彼の演説により、タイトルの「寄生獣」の意味の一つが明かされる。というより、劇中で唯一「寄生獣」という言葉を使った人物。


◆草野(アニメ:青柳尊哉、映画:岩井秀人)
広川が率いるコロニーの幹部。強引に事を進める短絡的なタイプで、その性格から田村玲子とよく衝突する。
田村玲子の態度から不審を抱き、自身の独断で行った新一と倉森の殺害計画失敗を咎められた事で、仲間と共に田村を闇討ちする。
しかし田村の知略により仲間と同士討ちをした挙句、返り討ちにあって始末された。
怒ったり嫉妬したり怨んだり仲間の好で最後の望みを聞いたりと、本人に自覚はないが非常に人間に近い思考をしている。


◆浦上(アニメ:吉野裕行、映画:新井浩文)
連続殺人犯。性格は楽観的且つ軽率で軽薄な快楽主義者。
過去に「人間で遊んだ」ことから寄生生物と人間を見分ける能力を持つ。ナイフがお気に入り。
新一を「混ざっている」と見抜き興味を抱く。


◆倉森(アニメ:二又一成、映画:大森南朋)
シャーロック・ホームズに憧れて私立探偵の仕事を始めた、冴えない中年男性。推理小説を愛読しており、妻子がいる。
田村玲子に新一の身辺調査を依頼されたことで、好奇心が災いしパラサイト事件に深く関わっていく事になる。
彼が遺した「倉森レポート」が後のパラサイト駆逐作戦へと繋がった。



【主な発言】
完全版裏表紙より


「シンイチ……『悪魔』というのを本で調べたが……いちばんそれに近い生物はやはり人間だと思うぞ……」


「泉くん……きみ……泉新一くん………だよね?」
「……さぁ どうなのかな」


「もう死んだんだよ……死んだイヌはイヌじゃないイヌの形をした肉だ」


「おれ一人気づかないうちとっくに……脳まで乗っ取られてるんじゃないのか……?」


「人が死ぬ…ぐらいのことじゃ大して驚かなくなってんじゃないの?」


「寄生生物(われわれ)はなぜ生まれてきた……?」


「……地球上の誰かがふと思ったのだ……生物(みんな)の未来を守らねばと……」


「誰が決める? 人間と……それ以外の生命の目方を誰が決めてくれるんだ?」

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