当て屋の椿

登録日:2012/01/05(木) 15:39:48
更新日:2023/08/23 Wed 12:38:25
所要時間:約 20 分で読めます






椿が欲しがる「理屈」という字は

「世の(ことわり)さえ屈する」と書く



当て屋の椿は、川下寛次による(たぶん)サスペンス漫画。
帯に“ミステリー”と書いてあるが、事件の真相は大分ぶっ飛んでいる。

掲載紙はヤングアニマル(2008年~)→マンガPark(2020年~)。
単行本は既刊17巻まで発売中。
刊行ペースは遅いが、人気が徐々に出てきているんだとか。


+ 目次


概要


舞台は江戸時代。
失くしたものを探し当てる「当て屋」を営むヒロイン・椿(つばき)が、絵師の鳳仙(ほうせん)と共に様々な怪事件の謎に迫り、その真相を暴いていくストーリー。

事件の舞台は、主に下町や田舎、人里離れた山奥であることが多い。
ストーリーやキャラ設定等に江戸時代特有の文化がふんだんに盛り込まれており、人形浄瑠璃や神話・怪談、下町生活、性風俗、春画、堕胎などなどの濃ゆい描写が目白押し。

各エピソードは長編構成となっている。(1、2話程度で完結する短編も存在)
江戸時代を生きる人々の、怨み・悲しみ・恋愛等の様々な心情を描いた人間ドラマと当時の文化、そして博識な椿の推理がうまく合わさった、妖しくも哀しい物語が多い。
基本的にハッピーエンドにはならず暗い・切ない結末を迎えることが多いが、重すぎる話に鳳仙(と読者)の気が沈むと、だいたい椿がフォローしてくれる。

また、エロ・グロ描写にかなり力が入っているのも本作の特徴。
エロを目的に読み始めると、パンチの効いたグロ描写に心を折られるので、耐性のない方は要注意。

人が殺される場面が多いが、その殺害方法が非常に斬新で、読者の度肝を抜いてくれる。まさに人の狂気が成せる技。
奇怪な事件も真相が分かると納得…なんてことはなく、常軌を逸した真相が多いが、それでも理屈は成り立ってるんだから気にしない。ただ、髪の毛ってどうよ?

お色気要素に関しては、前述した吉原遊郭の濃厚な描写に加え、そもそも大半の女性キャラの着物は体のラインが分かるぐらい妙に布が薄い
桃のような尻の形までハッキリ分かる。
そして、ほとんどの女性キャラが乳見せする。
ただし主役兼ヒロインたる椿だけは非常にガードが固い*1。そこが彼女の魅力だと思います。

ちなみに、本作はエロ・グロに関して、幼女だろうが老婆だろうが容赦しない
幼女が悲惨な目に遭うシーンもあるし、老婆が男を襲う誰得シーンもある。
「過激な流血程度のグロなら余裕だぜ!」という読者も、精神的グロ描写に耐えられない可能性がある。



登場人物


CVは2014年のドラマCD版のもの。

主人公

椿(つばき)
CV:井上麻里奈
推理における主人公。そして本作のヒロイン。
江戸で何でも捜す「当て屋」をしている美女。年齢不詳。
ナイスボデーの姉御で度胸も人一倍。けど腹黒い。でも可愛い。
いつも読者に素晴らしい尻と扉絵でのセクシーな姿で魅せてくれる。
だが、肝心な部分は絶対に見せない。そこがイイ。
考え事をする時に爪を噛む癖がある。エロい。

鋭いカンを持ち頭の回転も速い。さらに、かなりの博識で毒舌家。
迂闊に彼女と口論すると、その圧倒的な知識量・語彙力もあって倍返しではすまない反撃を受ける。

あらゆるものに宿る“理屈”を何より好む。
どのような奇怪な出来事も、「そこには理屈がある」と考え、首を突っ込んでは真相究明に迫る。
ただ、暴かれた真実が“人の理屈”に反する場合は批判することもある。

浮き世離れした雰囲気を持ち、人の心を知り得たような言動をする。
そんな椿の本格参戦によって、各エピソードは〆にかかる。

「どんな理屈が咲くのか楽しみだねェ……」


鳳仙(ほうせん)
CV:下野紘
人間ドラマにおける主人公。
天下の春画師。ただ本人は女が苦手(嫌っている訳ではない)。
むしろ女に恐怖心を抱いているからこそ、いい春画が描けるとのこと。
別にあちらさんではない。ED疑惑はあるけど。

本業は普通の浮世絵師だがそちらは全く売れず、春画を書いて生計を立てている。
絵師だが体は丈夫。

自他共に認める卑屈な性格であるが、根は熱い人物。
春画を描いた人物の喜びを自分のことのように喜ぶことから、人思いであることが分かる。
また、フラグ建築のスキルを持つ。

推理小説でいうところの「ワトソン役」で、事件のあらましは鳳仙の視点で語られ、そこから椿が関わって事件の真相が明らかになることが多い。

―それでいい―

「笑われて酒の肴になるのは得意なんだ」


準レギュラー

(かがり)
CV:西明日香
吉原の遊女。初登場から全裸で喘いでいる。
なぜか頭と心の成長が止まっており、体つきは女っぽいが中身は幼子のそれ。
子供っぽく人懐っこい性格だがかなりのヤキモチ焼きで、自分の客に他の女がいると聞いただけで暴れるほど。

右目を塞ぐ事で未来予知の力を使える。
彼女がもたらす突飛な託宣が事件のテーマとなることも。

椿の親友であり、普段は腹黒く毒舌な椿も、篝にだけは非常に甘い。

「つーちゃん カシ(はぁと)」

+ ネタバレ
第七十九話「天網(篝)」、第八十話「天網(篝)・二」の間で殺されてしまった。
しかも御多分に漏れずグロい死に方で……。


竜胆(りんどう)日輪(にちりん)
椿の友人。
竜胆は上方(かみがた)訛り(関西弁)で話す女医で、主に(違法だが)堕胎を行っている。
漢方に精通しており、医者としての腕は確か。ちなみに処女。
皮肉屋の椿とは対照的な、真っ直ぐな物言いが多い。
日輪は竜胆の助手で、寡黙な巨漢。


梧桐(あおぎり)
寺の和尚。椿の知人で、酒を好むなまぐさ坊主。
しかしその言葉には重みがあり、椿や鳳仙にたびたび助言を与える。


長屋の愉快な仲間達

椿や鳳仙も暮らすボロい長屋に住む住人たち。

侘助(わびすけ)菖蒲(あやめ)
長屋に住む兄妹。
兄の侘助は女好きの不埒な職人。尻派。
妹の菖蒲はしっかりものの少女。

花菱(はなびし)
美人な盲目の三味線奏者。たぶん長屋で一番大事にされている人。
目が見えないので、部屋の物の位置を変えられると生活に支障が出てしまう。

(やなぎ)
花菱にベタ惚れしている貧乏浪人。
基本的にヘタレだが、花菱のためならたとえ火の中、水の中。

◆イノ
物語の途中から長屋に住まうことになる女性。元は湯灌場(ゆかんば)買い。*2
美人だが顔の中心に非常に大きな×印の切り傷が刻まれており、なめらかに話すことができない。(言葉の節々でどもってしまう)
鳳仙に気があるようで、何かと彼の世話をやこうとする。



この他にも、各エピソードごとに魅力的で猟奇的な登場人物が多数出てくる。


エピソード紹介


狛犬の行方(4~7話)

鳳仙は、寺子屋で子供たちに読み書きを教えているという女性・桔梗(ききょう)と出会う。
女嫌いの鳳仙だが、彼の絵を好きだといった桔梗に興味を示し、桔梗もまた鳳仙の人柄に親近感を抱く。
意気投合した二人は寺子屋があるという神社へと赴くが、そこには何故か椿が居た。
椿は神主の依頼で、失くした狛犬を探しているという。この神社の狛犬は動くという伝説があるらしいが──?


浄瑠璃心中物語(9~14話)

椿の親友にして吉原遊郭でも人気の遊女・篝が、心中死を目論んだと思われる客に首を絞められるという事件が発生する。
幸い、篝は無事だったが、捕らえられた犯人は鳳仙の古い知人で人形師の八葉(やつは)であった。
八葉は吉原への出禁をくらうが、その後、吉原では立て続けに心中死が発生する。
“一蓮托生”──死後も来世で結ばれるため、愛し合う男女が互いの命を断つ心中死。
しかし椿は、連鎖する心中死に第三者の存在を見出だす。これは心中に見せかけた殺人なのだ、と。


尼寺に潜む怪物(15~23話)

ひょんな事から女医・竜胆の元に集まった椿と鳳仙は、彼女から奇妙な話を聞く。
曰く、厳しい戒律を守り、男の侵入を許さない女の蜜園・尼寺で、妊娠した女が見つかったという。
男には触れられたこともないという件の尼僧・笹百合(ささゆり)は、身籠った自身の子を「神仏から授かった御仏(みほとけ)の子」というが──?


富くじ七不思議(24~26話)

寺社が興行する賭博・富くじについて、巷ではある不吉な噂が流れていた。
「富くじを買った者は呪われる」
椿の頼みで富くじを買いにきた鳳仙と侘助だが、実は噂の出所が椿であることを知る。
この腹黒女は、事もあろうに富くじに関する悪い噂を流し、富くじの発行数を減らして自分の当選確率を上げようと企んでいたのだ。
椿の流布した噂は、富くじを持っていると殴られるだの獣に噛まれるだの、他愛のない7つの噂話。
しかし、7つ目の噂が次第に上書きされ、まことしやかに囁かれ始める。
「月夜に富くじを持つ者は死ぬ」
そして、月の出る夜、一人の男が殺される。


喰う者、喰われる者(27~36話)

天下の春画絵師(副業)・鳳仙の元に、珍しく浮世絵の仕事(本業)が舞い込む。
“養蚕農家の当主”という肩書きには不釣り合いな若い女性・深山(みやま)は、鳳仙の絵に惹かれたと言い、彼に鼠除けの猫絵を描いてほしいという。
鳳仙は深山の家へと赴き、養蚕業に従事する人々の世話になりながら猫絵を仕上げることに。

一方、椿は「若い女が歯を全て抜かれ殺される」という怪事件について調べ回っていた。
そんな折、深山の家で働いていた女・(なずな)が死体で発見される。
その口に歯は無く、代わりに花が飾られていた。


神の棲む山(39~49話)

当て屋の椿を訪ねて、山一つ越えてきたという少年・(あかね)
彼は椿に人探しをしてほしいと頼み込むが、椿は話の途中で突然布団にくるまり、周囲を寄せ付けず巣籠もってしまう。
鳳仙と侘助は、屈託なく笑う茜に心を開き、長屋に住まわせて椿の代わりに彼の話を聞くことに。
茜は、山で神隠しにあって以来見つからないという女友達・八重(やえ)を行方を追っていた。
鳳仙は動こうとしない椿に代わり、茜が育った神隠しの山へと向かう。


盗人草(ドロボウグサ)(50~60話)

ある寺で、死体が小姓を殺すという怪事件が発生した。
坊主曰く、寺で死体を清める“湯灌(ゆかん)”にあたっていた二人の小姓が、気づけば死体から逃げるような姿で死んでいたという。
小姓たちが湯灌を怖がったため、人手が足りなくなった寺の坊主は椿に寺の手伝いをしてくれる人を捜してほしいと依頼する。
事件に興味を持った椿は、侘助を小姓手伝いとして伴い、まんまと寺へ入り込む。

一方、鳳仙は、とある女を捜して朝から晩まで出掛けていた。
かつて自分の絵を好きだと語った、あの女を。
人捜しに疲れ、酔いつぶれた鳳仙。その時、笠をかぶり顔を隠した一人の女が彼に近づき、耳元で囁く。
「あなた、死にますよ」


海処(うみが)の情け(61~64話)

紆余曲折を経て、鳳仙たちが住まう長屋で暮らすことになった女・イノ。
侘助の提案で、長屋住人一行は飯の確保(と、やたらイノに突っかかる不機嫌な椿の気分転換)のため海へと赴く。
海岸で食料を探す鳳仙たちは、そこで自らの腕を鉈で切り落とそうとする謎の老婆を見かける。
突然降りかかった不可解な光景に、機嫌が上向く椿。
その夜、一行は宿にてこの海岸に隠された“お宝”の存在を知る。


あがほとけ(65~78話)

侘助の妹・菖蒲は、ある日孔雀(くじゃく)という少女と出会う。
孔雀の案内で向かった長屋には、彼女の同居人である酷く痩せた男・鈴懸(すずかけ)が居た。
(ふみ)の代筆を生業にしているという鈴懸は、常に柔和な笑みをたたえており、椿を思わせる博識さと饒舌ぶりで菖蒲に次々と面白い話を聞かせる。
孔雀も仲良く接してくれ、居心地の良さを感じた菖蒲は「また来よう」と心に決めるのだった。

一方、吉原ではとある商家の男が、篝の託宣を聞くために遊郭を訪れていた。
しかし篝は最近、託宣によってずいぶん怖い未来を見てしまったらしく、男の依頼を断ってしまう。
そんな時、男の前に二人の女が現れ、「有難いお言葉を聞かせて下さる方がいる」と語り、男を長屋へと案内する。
長屋で鈴懸と出会った商家の男は、少しの問答で自身の生業を廻船(かいせん)問屋と即座に言い当てた鈴懸に興味を持つ。
そして鈴懸は、とある託宣を男に聞かせる。

「…そうだね、近々入る船───ひと儲けしたいなら、同じ荷を買いつけておけば良いよ。届かないからね。」
沈むよ、その船 可哀想に


夜鳴く(84~98話)

ある日、鳳仙は幼馴染みの女・糸葱(あさつき)と再会する。
鳳仙を“平太郎”という幼名で呼び、昔から変わらないするどい眼光とぞんざいな物言いが印象的な糸葱は、絵師・鳳仙に頼みたい仕事があると語り、彼をとある家へ連れていく。
そこは、かつて幕府お抱えの御用絵師だった男・秋海(しゅうかい)の家であった。
“百畳間の(ふすま)絵”という大仕事を引き受け、忙しく働く秋海の門下生たちであったが、鳳仙は早々にこの家が抱える大問題を知る。

絵師の最高峰たる御用絵師まで上り詰めた生ける伝説・秋海は、既に気が触れており、とても絵が描ける状態ではなかったのだ。

弓矢を抱え、家中を駆け回り、何かを狩るかのように騒ぎ立てる秋海。
果たして、その目には何が映っているのだろうか。


天の果て 海の角(101~109話)

これはまだ、椿が言葉も話せないほど幼かった頃の話。
流刑となった罪人が集められる島に生まれた椿は、親の愛も知らないまま育ち、まともな飯も与えられず、痩せ細るばかりの体は骨と皮だけで動いているかのようだった。

彼女の儚い命が尽きようとしていたその時、一人の青年が椿の体を掬い上げる。
青年はセリと言い、体躯の良い金髪碧眼の異人であった。
セリと、そして彼の明るい人柄を慕って集まった少年・棕櫚(シュロ)、ハルらと共に暮らすことになった椿は、貧しい暮らしの中たくましく育っていく。

そんな折、流刑島の管理をまかされた役人・(なら)が島へ到着する。
彼は、自身の前任であった兄を殺した犯人を探していた。



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最終更新:2023年08月23日 12:38

*1 布は薄いし半裸程度には脱ぐが、乳見せは無い

*2 死者の着物を集め、転売する生業のこと