登録日:2009/10/28(水) 12:23:02
更新日:2024/04/06 Sat 20:27:02
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傀…と呼ばれています


人鬼と呼ぶ人も


或いはむこうぶちとも…


(カイ)とは近代麻雀連載、むこうぶちのメインキャラ。
Vシネマでは旧シリーズでは袴田吉彦、2020年からリブートされたシリーズでは旧シリーズで張学起を演じていた金子昇が演じている。

人物

高レートの雀荘に出没し、類稀な強さで対局者を破滅へ追いやる男。
その圧倒的な強さから、彼を知る者は彼を暴虎、人の姿をした鬼、等と語る。

本名、素性は一切不明。
それどころか飲食するシーン等も一切無く、闘牌が終われば幽霊のように消えたり、気配がなかったりと、人であるかも怪しいところ。
唯一人間らしいところと云えば煙草を吸っているところぐらいのものだが、これも一口吸っただけでねじ消してしまうため傀のタバコは常に長い。
長い付き合いの安永曰く年齢は自分より年下らしいが、そう呟いた若き日の安永(余談だがワイルドでかなりかっこいい)の頃からバブル期の80年代、そして59巻で描かれた2001年の世界に至るまで傀の見た目はほとんど変化が無い。
現場で何度か会っている警視庁のSPは、自分とは別の命令系統で動く同業者であり通り名も暗号名(コードネーム)であると盛大な勘違いをしている。
そのSPが写真撮影や(結果的に)傀の記録を残そうとした事もあったのだが、後に上司へ報告した際には写真は黒くなっていて傀が写った物はなく、「店長が傍観者、傀を入れた4人で対戦していた」はずが、「店長を入れた4人で対戦していた」事になっていたなんて事もあった。
店長が麻薬の売人であり、対戦していた部屋でも麻薬のお香が焚かれていた為、上司には「麻薬のせいで幻覚を見ていた」と判断された。


雀荘で案内された卓に傀がいたらそれは死亡フラグ
対面ならばさらに確率が和了る。

彼に根こそぎ毟り取られた者の末路は大別すると二種類。
基本的に金目的の欲深な人間は全財産から命まで文字通り全てを失う事が多い。
特にヤクザから金を借りている等、返せないと人生が詰む時に傀とあった場合、まず間違いなく御無礼からの絶望コース一直線である。
一方で、金は全て失ったものの大切な何かに気付き、結果的に救われる者も少なからずいる。
対局者にとってはまさにパンドラの箱である。


様々な場所で高レート麻雀を打ってはいるものの、特に金が目的であるという描写は無い。安永萬が言うには「敗者の姿が見たいから」。
辺鄙な場に立つ卓に出向いたり、ホームレスたちと対局してみたり、身内麻雀に突然現れたりすることもある。
安永の話を返事せず聞いたり政界の御隠居・及川翁や華僑の大物・劉などの権力者に紹介された場に足を向けたり、次期首相を決める闘牌に天の声として参加した事もある。
また、これらの上客に対しては傀なりに超高空からの義理立てをしている。
例として安永が代打ちの仕事に行けなくなった時は勝手に安永の代理を名乗って卓に赴き、及川と劉が利権で争うようなことになっても丸く収めている。

とはいえ、金はしっかりと取り立てており、傀の取り立てから逃げられた者はいない。
「勝負の借りは一日限り」が信条であり、金が足りない場合には一日だけは用意の時間をくれるが、それで逃げようと思っても最終的には取り立てられる。
作中では、不足分10万円から逃げようとした男が翌日競馬で購入ミスで大勝ちし、調子に乗って前日とは別の雀荘へ行ったところ、そこで傀に遭遇。
何も言わないので自分に気づいてないと思いそのまま麻雀したところ、残金ちょうど10万円まで負けたところで、前日の負け分を取り立ててすっからかんにされる事もあった。
別な例では取り立て相手だった画家の他界後彼の家に現れ、相手の遺言もあり遺された絵を掛けて画商たちと対決したが、
最後の勝負時他3人が有り金全部はたいて出した掛け金がなぜか取り立て分と一致していたため、それを頂いて満足し絵に手を付けず退場。だがなぜか直後家が火事で燃えている(人々と絵は何とか無事)。
また、不足分を別の場の紹介料として立て替えていることもあり、それが先述の神出鬼没さにも一役買っている。

一方でレートのそこまで高くない*1『東空紅』に姿を現すことが多い。
傀と安永が出会ったのもこの雀荘。
ここで行われる蒼龍會の定例会に唐突に現れ、安永の出した問題(という名の安永自身が抱えてた疑問)を解いていったりもしている。
主に東京とその近辺に神出鬼没に現れるが、香港に向かうクルーズ船や東北の地方都市にも現れたことがある。


打ち筋


その雀風は変幻自在で、ノー副露ノー和了で半荘を終わらせる事もあれば、親の第一捨牌から鳴いていくこともある。
おおまかに言うならばアナログ打法だろうか。

所謂「卓の流れ」を重視した打ち筋であり、傀の鳴きは手を進めるためのものではなく、相手の牌を喰い取ったり他家を降ろすためのもの。
低目に連続して差し込むことで相手の運を減少させたり、他家に有効牌を送ることで結果的に手駒の様に扱うなど、常識では考えられない打牌を良く行う。
流れが出来上がっている時は鳴いて手を作る事は殆どなく、面前で高い手を作り上げる。
このような鳴きによる流れの支配は、故・安藤満氏が得意としていた亜空間殺法に近い。

作品初期は鳴きで流れを掴み、ひたすら本場を積み他を圧倒していくという打ち筋だったが、途中から序盤は見に回り相手の打ち筋を把握、その上で完全に相手をやりこめて一気に捲る事が増えた。
いずれにしろ運や流れを根こそぎ奪っていく麻雀であり、対局者の方々には心から同情申し上げる。

流れを掴んだ状態、所謂『仕上がった』傀は、打点は高いわ手は早いわ、リーチをすればほぼ一発ツモという恐ろしい状態に。
またその場合、リーチ後見逃し次順ツモという荒業をよくやってのける。

徹底的に絞り尽くす事もあれば、微妙に残金を残して屈辱感を与えたり、敢えて表現するのなら、標的に最も敗北感を与える勝ち方で勝つ。

漫画そのものがイカサマ麻雀をテーマとしていない事もあり、イカサマは使わずに基本的にヒラで打つ。
しかしイカサマの技術そのものはかなり高いものを有しており、イカサマを勝つための手段ではなく同卓者や観戦者へのショーとする手品麻雀では、
敢えて場を荒らす事無く会の趣旨に則ってイカサマで和了っている。
上記のように状況に割と融通が利く事を見せてる場面もあり、数少ない傀の人間らしいシーンともいえる。
ちなみにその珍しくイカサマをした際だが、イカサマで牌を入れ替えずともトップを取れる引きをしており、観客だった安永に「おひねりを出しそうになった」とまで言わせた。

麻雀での勝ち金は駅のコインロッカーに現金の束がそのまま詰め込まれている。
持参金と勝ち金は別のロッカーにしているらしく、数百万ほどが入った小さな紙袋をロッカーから取り出す姿が目撃されている。
大金を持参しなければならない卓に行くときは、手提げのついた紙袋などそれなりの容量があるものに切り替えている。
劉の卓へ一億円を持ち込んだ時には、スーパーかどこかで持ち帰り自由で置いてそうな段ボール箱2つが劉の秘書が押す台車で持ち込まれていた。
残念ながらどうやって劉のビルまで持って来たのかは不明。しかもこれ以降劉の卓で使う金が劉の金庫に保管されるようになったため、大金を持ち歩く場面も見られない。
傀が作中で勝った金は実に億を軽く越えており、現在の貨幣価値に換算すると(ry
ちなみにコインロッカーを使ってる以上は小銭を使用しているわけで、何気に非常に珍しい 傀が小銭を使用している事を示すシーン である。


御無礼



「御無礼」

「36000点です トビましたね」

傀を妖怪御無礼たらしめているのはこの台詞。
主に見逃しからのツモや、『仕上がった』状態の傀が対局者からロンする時に発せられる。
『傀の御無礼が出た相手は死ぬ』という表裏問わずプロや場を設けている者、傀の名を知るそのスジの人など少しでも高レート裏麻雀を知る者であれば傀とぶつかることを諦めるほどのジンクスがあるくらい。
ちなみに幽霊と麻雀を打った時もこのセリフで除霊した。なんならその後貸した金を回収したことも。

前述のとおり安永や幾度となくその恐怖と対峙してきた裏プロ達と言った傀をある程度知る人間ならばこの御無礼の意味も知っており、
アガったのに御無礼と言わなかった場合「まだ流れの調整の途中であり巻き返す余地がある」…等という判断の根拠にしている者もいる。

御無礼が一度でもされるともう手遅れ。
その後は御無礼の嵐となり、一気に地獄に突き落とされる。


過去にはイカサマを駆使する対局者も数人いたが、傀はその全てを早々に看破し、挙げ句にそれを逆手に取ったり逆に利用したりして御無礼している。
その為、相手にとっての精神的なダメージはかなり大きい。
ちなみに、傀はイカサマを見破ってもそれを指摘せず、ただあからさまな打牌で見破っている事を伝えるのが常。
しかし唯一、積み込みに対しては何の動きも見せなかった。対面が上家下家の積み込みを邪魔していた事もあるが。


以上の様に、傀の打法は常人では理解不能。
全局を通し運気や流れを見通した上で最終的に場を支配する超高空から見下ろすような真骨頂。
セオリー外のこともよくやるので、傀と初めて会う人間は彼を初心者と勘違いすることも多い。
まあ初心者と甘く見た対戦者はその後酷い目に遭うんだけど。
ターゲットを沼に引きずりこむような打ち方をする事も多く、
  • 自身を弱者と見せかけて油断させ「次は勝てる」と思い込ませる
  • 特殊ルールを逆手に取ってあえて終わらせずにズルズルと金を搾り取る続ける
等、泥沼にはまっていく対戦者も多い。
対戦相手が弱い人ばかりと思って遊んだのか、「誰かが一度でも上がった役では上がらず、他者も一度上がった役では上がらせない」なんていうとんでもない卓の支配を他の対戦者に気づかせずにやってのけた事もある。
ある記者曰く人じゃない何かが打った麻雀と言ったほうがいっそ納得が行く」

ちなみに雀荘に入ってきての第一声は「打てますか?」が定番の台詞。
裕太対日陰戦では、突然雀荘に入ってきた中年男性が傀と同じ台詞で入ってきたため、裕太と日陰は傀を意識してしまい打ち筋が乱れるという事もあった。


傀にも運がない日もあるようで、保守党ルールという超ドラ過多麻雀において、ドラが一枚もこないという珍事もあったりした。
保守党ルールとは通常のドラに加え、二つの賽の目、更にその和がドラになるというもの。例えばドラ表示牌が9索、賽の目が1、4であれば、一萬四萬五萬1筒4筒5筒4索5索がドラに、1索がWドラとなる。
ちなみにゾロ目ならばWドラ、和が10なら七萬7筒7索がWドラ、和が11なら八萬8筒8索がWドラ、和が12なら九萬9筒9索がWドラとなる。
大半の読者が思ったであろう、どんだけだよ
こんな超ドラ過剰ルールでも一切ドラが来ない・ドラを使う形にするとアガれないという超絶不調でこの運ゲーに参加し、
差し込みと鳴かせを駆使してアガる人物を操り、トータルスコアの差を調整し、最後は抜き足の僅差で勝ち切った。
ただ傀なので、運がなかったのではなくあえて運のない打ち方で勝った可能性もある。*2


また、常人離れした感覚を持って麻雀を打つ人物の打牌には、傀と言えど不覚を取る事もある。
とある町工場の社長が参加している高レートの場で、その社長の代打ちとして参加した社員・石川と打ったことがあるが、
知的障害の気があり人並みの動作が満足にできないが特定の作業にのみ異常なまでの感性を発揮するこの石川に、
差し込みでなく素で直撃を取られ、傀には珍しく驚愕の表情で瞠目するシーンを見せた。
ちなみにこの石川、代打ちという立場ながら自身は金額を気にせず麻雀を楽しむタイプの打ち手であり、
傀が「敗北感を与える」事を優先して打ったため、傀と打って御無礼されたにもかかわらず、勝ち金自体は傀を上回っている。
さらには後に再登場して再戦した際は、敗北感による苦手意識を克服して再度立ち向かい、
御無礼され出した後にトップを取り返す等、最終的には負けたものの傀に食らいついた。

このように、傀でも完全勝利できずに終わったレベルの打ち手は存在する。


自分の狩り場を荒らす者やイカサマをする者、分不相応のレートに踏み込んでくる者は容赦なく御無礼するものの、引き際を知り去っていく者に対しては干渉していない。

また、傀と対局して生き残り、尚麻雀を続ける者は総じて雀力が跳ね上がる傾向にある。
江崎や多河、潤子、秀、祐太辺りが良い例。
水原は元々主人公候補だった*3事もあり、復帰戦では傀に名前を聞かれるという作中唯一の事を成し遂げている。

安永は付き合いが長い為、やってる最中に傀の目論見を察したりする場合もある。
ただし自分が傀に突っかかっていってない場合に限るので未だ傀の手の内から出るほどではないが。


現在でこそ無口無表情のキャラだが、作品初期はキャラが定まっていなかったのか、相手を挑発するような言動や、今では見られない邪悪な笑みを浮かべることもあった。
初期は絵柄が少しだけ劇画調なので尚更怖い。
大概長い連載なので絵柄の変化から昔よりもちょっと目が腫れぼったくなり老けた感じになってる。

対局前に新聞を読んでいる姿が良く描かれるが、そのどれもノット日本語。
また、中国語やフィリピン語を解しているようなシーンもあった事から、かなりの教養を持つ事がうかがい知れる。

たまに、『コミックドンドコ』なる雑誌や『月刊有機農業』、時には『ぐりとぐら』など読んでいる姿も確認されている。
ちょっとニヤリとしてしまうチョイスである。



◆戦国大戦~1600 関ヶ原、序の布石 葵打つ~


死んだ兵は戦場に帰ってこない
落城…それがあなたの男の価値です

CV:緑川光
セガのATCG戦国大戦が近代麻雀漫画とコラボした際の1枚に、「人鬼 黒田官兵衛」として登場。
イラストは髷を結った傀が本を読みながらこちらに刀を向けているというもの。恐らく読んでいる本はマキャヴェリの『君主論』。
コスト2武力7統率9 鉄砲隊 魅力 と数字上はパッとしないスペック。
この傀が使う計略はそのものずばりの「伝説の人鬼」
相手の計略発動に合わせてカウンターを仕掛けたり、こちらから相手の逃げ場を塞いで荒らしに行ったりと原作のように派手さはないが流れを支配していく戦い方を再現したカード。
計略発動時にデカデカと画面中央に現れる明朝体の「御無礼」の文字と緑川氏のイケボによる「御無礼…ここで勢いは殺せませんので」のセリフは屈指の格好良さ。

ちなみにこのゲームでは多数の漫画とコラボしており、同じ近代麻雀出身のアカギや小泉ジュンイチローと対面することもあれば、キン肉マンやゴルゴ13ともやりあうことも。
槍を持って進軍してくるアカギに傀が鉄砲をぶち込んでる場面を想像するとなかなかにシュール。



ネット上等では麻雀漫画の主人公同士が対局したら誰が勝つのかと良く議論されているが、傀は御都合的な役満、鬼ヅモ、豪運等が無いために地味に見えるのか、名前が挙がる事が割合少ない。
だがしかし、傀の負ける姿なんて想像出来るだろうか、いや出来ない。
哲也や天、竜、アカギ、ショーイチ等、人外に過ぎるチート能力を持つ者相手であろうと、最後にはニヤリと唇を歪め言うだろう。


「御無礼」、と。




追記・修正は傀と対局して生き残ってから行ってください。

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最終更新:2024年04月06日 20:27

*1 マンション麻雀と比べての話で、最序盤で「裕太の月給ぐらいは一晩で消える」と言われているので雀荘としては高い。

*2 この時の勝負が先述した次期首相を決める為の麻雀である。これは傀に一方的にやられて慌てふためく首相候補の醜態を及川が見たかった為に参加させられたものだったのだが、結果はこの通り。想定外の展開にジタバタしてしまった及川は(傀が見たかったのは政治家ではなくワシの醜態だったのか?)と予想している

*3 企画段階では水原の成長物語の予定だった。実際、最初の数話は彼の成長物語となっている。