ドローレス・アンブリッジ

登録日:2012/01/10 Tue 23:24:39
更新日:2024/02/18 Sun 21:36:10
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「ェヘン、ェヘン、ンフフフ♪」


ドローレス・アンブリッジとは、小説『ハリー・ポッターシリーズ』に登場する魔女

フルネームは「ドローレス・ジェーン・アンブリッジ」。
初登場は第5巻『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』。
魔法省高官であり、地位は「魔法大臣上級次官」*1

演:イメルダ・スタウントン
日本語吹き替え:小宮和枝



●目次


【人物】

『不死鳥の騎士団』でホグワーツ魔法魔術学校の教育改革の為に魔法省から派遣され、「闇の魔術に対する防衛術」の教授になった。
新学期の挨拶で「ホグワーツに戻ってきた」との発言どおりスリザリン寮の出身。
魔法省で高官を務められるほどには省内の人間からの評判は良い様子だが、アルバス・ダンブルドア派からは蛇蝎の如く嫌悪される。
特にマクゴナガルとは犬猿の仲であり、教育方針や拷問に近い罰則等について激しい言い争いになっている。

宝石のついた指輪やネックレスをつけ、ピンクのカーディガンを着用。
部屋も見渡す限りピンク色で、壁にはが描かれた皿が沢山飾られている。ちなみに守護霊も猫。
肥満体型で、顔は締まりがなくたるんでおり、その姿はガマガエルを思わせる。
一見穏やかな中年女性に見えるが、禁止されている「真実薬」や生徒から秘密を聞き出す為に法律に抵触する「磔の呪い」を使おうとするなど、その本性は残忍、傲慢、卑劣

さらに権力欲が異常なほどに強く、とにかく「他人より上の立場に立って優越感を感じたい」と願っている。
そのためなら手段を択ばず行動し、周囲からの批判や非難などものともせず、しかも上にはものすごい勢いで媚びへつらう。
節操もなく、コーネリウス・ファッジ(日和見主義者)、ルーファス・スクリムジョール(保守的武闘派)、パイアス・シックネス(死喰い人)とタイプも立場も異なる魔法大臣三人すべてに取り入り、どの政権でもそれなりの地位につけていた*2
「上の求めることならどんな卑劣で嫌われることだってやり遂げる」「それで周囲からいかに憎まれようと気にせず、むしろ弱者の怨嗟とみなして優越感に浸れる」という気性は上から使う分には便利(鉄砲玉や壁役、憎まれ役や汚れ仕事役としてはこの上ない逸材)だったので、どの政権でもそれなりに昇進できたのだろう。


また、狼人間や巨人、水中人といった「半人間」を非常に恐れており、魔法省で「反人狼法」を起草し、リーマス・ルーピンを始めとする狼人間の就職を困難なものにした。
さらには闇祓いを率いて巨人の血を引くルビウス・ハグリッドを襲撃する等、「半人間」に対して異常なまでの偏見と恐怖心を抱いている。
フィリウス・フリットウィックが一瞬で消滅させた障害物を数時間かかっても消滅させることができないなど、魔法の腕前は優秀とは言い難く、
セブルス・スネイプから偽の真実薬を提供された際にそれを本物だと疑わなかった上に使い果たした際に再調合の要求*3をするという、魔法薬学に対しての無知などを晒している。
それでも前述通りに守護霊を出す事が出来たり、罰に使う羽根ペンを発明する等、それなりの才能と実力はあり、
例えばミネルバ・マクゴナガルは「(忘却術以外取り柄がない)ギルデロイ・ロックハートですらアンブリッジに比べれば遥かに優秀」と評していたが、彼よりは魔法使いとしての腕前は上。

ただし、「闇の魔術に対する防衛術」の授業は非常に退屈、かつ実用性がないものであり、
それに比べれば、実践授業を行おうとしたロックハートは『「闇の魔術に対する防衛術」の教授として』みれば、確かに優秀と言えるだろう。
…そうは言ってもロックハート的「実践授業」が大惨事に終わった後は、「自分の著書から名場面を再現する」だけの自己顕示欲発散の舞台だったから、
「理論書を読む」ためだけにでも「まともなテキストを使う」点においてはまだアンブリッジのほうが……とも言える*4
とはいえ、真意は正確さとかではなくマクゴナガルの嫌悪感を示すためだろうが。


また、出身寮であるスリザリン生に対しては、選抜された高等尋問官親衛隊を設立した上、
その隊長には監督生をも上回る権限を与えるなど、露骨なまでの依怙贔屓を行っている。
しかしそんなスリザリン系統においても、同僚のはずのホラス・スラグホーンから「もともとあの女は好かん」とバッサリ切り捨てられるなど*5
スリザリン生の中ですらアンブリッジを嫌う人間は結構いたという。
…まあマグル(現実)の感覚でも、学校内でけばけばしく着飾っている上に、ろくな授業もしない癖に露骨な依怙贔屓をして来る教師など、よほど承認欲求に飢えた生徒でもない限り嫌われるのは当然と言えば当然か。
そんな彼女の政策にホイホイ乗っかって有頂天になったドラコ・マルフォイたちはどこまで底が浅いんだと


【活躍】

5巻『不死鳥の騎士団』

権力への執着とヴォルデモート卿への恐怖心に支配された魔法大臣コーネリウス・ファッジにより、教育改革の一環として、
真意は「魔法省を乗っ取る為に武装集団を編成しているダンブルドアもといホグワーツを監視する為*6魔法省から派遣され、ホグワーツの「闇の魔術に対する防衛術」の職に就く。

そもそも教師ではない彼女に満足な授業など出来るはずがなく、その実践を重要視する「闇の魔術に対する防衛術」に「防衛術の理論」という教科書を生徒に読ませるだけという、役に立つ授業とは到底思えない代物であった。
これは彼女の素質もだが、戦闘に転用できる防衛術を骨抜きにする意図があった。

そんな低レベルの授業の一方で、本来の監視という任務に対しては熱心で、「ホグワーツ高等尋問官」に就任すると、スリザリン生を中心に「高等尋問官親衛隊」なるものを設立し、シビル・トレローニールビウス・ハグリッドを停職に追い込んでいる。
ヴォルデモート卿復活を主張するハリー・ポッターに対しても、クィディッチを生涯禁止にしたり、理由を見付けては罰則を科す等、立場を悪用して多くの嫌がらせを行った。
この横暴は、学生時代に監督生や首席など満足する地位に就けなかったことを逆恨みし、今度こそ上に立とうという歪んだ私欲も絡んでいたらしい。
夏休み(本編冒頭)に吸魂鬼を送り込んだのも彼女で、独断でハリーを「夏休み中マグル社会で魔法を使わざるを得ない状況」に追い込み罠にかけることでファッジに取り入った。
フレッド&ジョージが退学する際に置き土産として仕掛けた罠に引っ掛かって散々な目にも遭ったりしたが、マリエッタ・エッジコムの密告で『ダンブルドア軍団』の存在を知ったアンブリッジは、ハリーたちを拘束。
しかもその責任を取る形でダンブルドアが学校を去るとホグワーツ校長を僭称した(ただし手続きを全く踏んでおらず、校長室の守衛をするガーゴイル像も入室・引き渡しを断固拒否した)。
その後、ハリーとハーマイオニー・グレンジャーと一緒に訪れた「禁じられた森」で、ケンタウルスを「ヒトに近い知能」「汚らわしい半獣」と侮辱し、激怒したケンタウルスによって森の奧に連行されてしまう。


「ポッター、何とかして!私は悪者じゃないって言って!!」

「すみません先生、僕はをついてはいけない…」


一体どんなお仕置きをされたのか……。

そして魔法省がヴォルデモートの復活を正式に認めた為、ホグワーツから除籍。
こっそり立ち去ろうとした際にポルターガイストのビープズに見つかり、マグゴナガルから借りた歩行杖等でひっぱたかれながら叩き出されていった。



6巻『謎のプリンス』

「見え透いた悲しみの表情を浮かべながら」のうのうとダンブルドアの葬儀に出席。
「禁じられた森」から出ずにひっそりと参列していたケンタウロスを目撃するとそそくさと隠れるなど、相当トラウマになっている様子。


7巻『死の秘宝』

魔法省がヴォルデモート陣営に陥落すると、新たに創設された「マグル生まれ登録委員会」の委員長に就任。
実際にはマグル生まれの魔法使いたちに死者まで出す『魔女狩り』とも呼べるメチャクチャな弾圧だった。
そんな中、分霊箱を探すハリー達3人組はマンダンガス・フレッチャーが賄賂としてアンブリッジに「サラザール・スリザリンのロケット」を贈っていたことを知り、ポリジュース薬を使って魔法省へ潜入。


「ロケットのSの字はセルウィンのS。私はセルウィンの血筋で実のところ純血の家系は殆ど私の親戚筋なの♪」

ハリー「ステューピファイ!」


平気で嘘をつくアンブリッジはハリーの失神呪文をくらい、ロケットを奪われ出番終了。
物語終了後、マグル生まれへの悪行が災いして、アズカバンへ投獄された。

    m9
     ノ
プギャー (^Д^)
    ( (9m
    < \



余談だが、スリザリンのロケットは分霊箱になっていた関係で、周囲の人間の精神を邪悪に歪め、人間関係に亀裂を生じさせるという特性がある。実際これを回収した後、ロンは性格の狷介さが露骨になり、一時離別した。……が、アンブリッジは元々邪悪だったために分霊箱の影響をまったく受けなかったらしい。ある意味凄い。
しかしこのような性格でありながら、「幸福な記憶を思い出し、プラスのエネルギーを結晶化して使役する」守護霊の術を行使できる。彼女はいったいどんな「幸福の記憶」を用いて守護霊を出しているのだろう。
DVD、Blu-ray収録の未公開シーンによれば、過去に何かあったらしいことが仄めかされているが、何がアンブリッジをここまで歪めてしまったのか……。

彼女が忌み嫌う「半人間」と過去に何かあったのかもしれない。





過去

以下、「ポッターモア」にて明かされた過去

魔法使いで魔法省魔法ビル管理部勤務のオルフォード・アンブリッジとマグルのエレン・クラックネルの娘として出生。スクイブのが存在。

魔法省勤務でありながら野心に乏しく低い役職に甘んじた父と杜撰できまぐれなマグルのは結婚し子を設けておきながら非常に不仲である上に、
父の仕事から非常に貧しい生活を強いられており、その事がドローレスの人生に影を落としている。

ホグワーツではスリザリンに所属。
卒業後は魔法省魔法不適正使用取締局のインターンに就職するなど優秀な成績を収めているものの、
貧しく半純血というスリザリン内において深刻なハンデがあった為に学生時代は責任ある仕事を任されることはなかった。
……という話だが、実際にはスリザリン生でも大半は混血である。というか、魔法界全体でも完全な純血などはまずいない*7
そのため、半純血という点以上に、元から性格面に狷介な要素があったものと思われる。後述するように魔法省に移っても人格は不評だった。

さらには学生時代にスクイブの弟について父と自身、母と弟で断絶状態となり、それ以降マグル社会に去った母や弟とは絶縁状態となる。
以降、低い役職の父、マグル出自の母、スクイブの弟の存在は劣等感へと繋がり、
それは半純血である自身を純血と偽るようになり、ついには批判的で攻撃的、差別的な性質になるなど歪みに歪んでしまった。

それでも魔法省の仕事は真面目に行い、相応に優秀な働きをしながら自身の本性を巧みに隠したり他人の功績を横取したりと30歳を前に若くして室長へと出世。
その頃には父に対しては引退を促すようにカネをよこしたりするなど、自身の身辺を綺麗にしようとしていた。
無論、周囲は周囲で父親の話題を出したりする形で彼女の足を引っ張ったりしてはいたりする等、魔法省はかなり腐敗していたのだが。

だが、酒に弱く一杯の酒で馬脚を現したり、時として反マグル主義者ですら引く程のマグルやスクイブの扱いに関する苛烈な発案をするなど、
その真面目さや能力と野心を評価こそされながらも人格面での評価はされず、自身の野心を満たすほどの出世はできず、一生独身であった。

そんな中、例のあの人の復活を知り疑心暗鬼に陥ったコーネリウス・ファッジに取り入って自身が望む更なる出世への糸口を得るようになる。



以上の事から、お世辞にも清廉だったとは言えないものの、歪みの原因が魔法使いとマグルである両親の不仲、
魔法使いでありながら父親の役職の低さとそこから来る貧しい生活、スリザリン所属という点での半純血である事などから、
優秀でありながらも不遇だった部分があるなど、映画版の未公開シーンでそれとなく示されていた過去に関しての伏線が回収されている。



【余談】

一部からは英国の「イギリス病」とまで揶揄された福祉政策と教育政策に大きな改革を行ったマーガレット・サッチャー元英首相がモデルの一人と噂されている。
イギリス病克服のための一方で大きな反発を招き、ローリング女史*8 自体もサッチャー政権の福祉転換で散々辛酸を嘗めさせられた過去があったりする。

その強烈な悪役ぶりは、あの「ホラーの帝王」として名高い作家スティーヴン・キングからも激賞されており、アンブリッジのことを「ハンニバル・レクター以来最高の悪役だ」とまで書いている。

映画にて演じた役者さんからの印象は「クズすぎ。」だそう。バッサリ。

手に入れた「スリザリンのロケット」を「セルウィン家のゆかりの品」と誤解していたり、死喰い人の中に当のセルウィン直系(セルウィンとだけ呼ばれている)がいるのにその家系を僭称したりと、無知さを見せている。






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最終更新:2024年02月18日 21:36

*1 上級次官は日本の「事務次官」に当たる為、大臣の地位に次ぐポストということになる

*2 スクリムジョール政権でのみ、どの立場だったかわからない。

*3 真実薬は調合に1か月を要する

*4 よくよく考えると「まともな授業をやらない」のは、アンブリッジの場合は自身の請け負った使命を実行しているからなのだが、ロックハートの場合はそうした使命など一切なしに自分の欲求だけでやっている。その意味だとむしろロックハートの方がタチが悪い。ただし、ロックハートの著書は脚色が入っていたとはいえ内容自体は誰かが闇の魔法使いや怪物と戦った本物の体験談であったことを考えると、どちらが生徒にとってマシだったかは微妙なところである。

*5 もっともスラグホーンは普通の良い先生なので、同じ寮出身と言えど、アンブリッジとは馬が合わなかったのかもしれない。

*6 完全にファッジの妄想であり、事実無根

*7 唯一、限りなく純血らしいのはゴーント家(いとこ婚を家訓として厳守した)であるが、あまりに純血を固守したために、精神病を患っていた。このような精神になるほど純血化した人物は他に例がない。

*8 このシリーズを始まる前は極々普通のシングルマザーだったそうな