弾幕系シューティングゲーム

登録日:2012/01/26 Thu 00:20:38
更新日:2024/03/17 Sun 18:02:48
所要時間:約 5 分で読めます



概要

弾幕系シューティングゲーム(弾幕シューティング)とはシューティングゲームのカテゴリの一つ。
広義には「単に敵弾の多いシューティングゲーム」を指すが、狭義には下記の特徴を持つシューティングを指す。
  • 敵弾は原則遅め(自機狙いで発射されたら避けられない弾は少ない)
  • 敵弾が画面を埋め尽くすほど発射され、幾何学的模様が形成される事もある
  • 自機や敵弾の当たり判定は見た目よりもかなり小さい
  • 自機の速度を変えることできる(低速と高速の切り替えが出来る)
これら全てを兼ね備えた初の作品が「怒首領蜂(1997年)」であり、弾幕系シューティングの始祖とされる所以である
CAVE製他社製問わず、後発の弾幕系シューティングの多くがこれを踏襲している。

なお、弾幕系シューティングはほとんどが縦スクロールシューティングで、横スクロール作品はかなり少ない。
その主な理由として「人間の目の構造上縦方向の弾道に比べ、横方向の弾道は識別に時間差が生まれ回避しにくい」という事が挙げられている。


成り立ち

シューティングゲームの中でも弾幕系という分類が確立したのは「怒首領蜂」からと見てよいが、そこに至るまでの様々な作品に始祖的要因を持ち、後年の弾幕系シューティング作品の開発者が参考にしたものが様々に存在する。その一例を挙げる。


・沙羅曼蛇

高次周回の敵弾の多さと、それを弾の塊ととらえ「ひとつの大きな弾」として避けていく攻略。5面ベルベルム地帯の連続弾が自機を紙一重ですり抜けていく様子など。

ガンフロンティア

非常にゆっくりとした弾速の敵弾が飛んでくる様子。その弾の密度と攻撃の厚さなど。

・サマーカーニバル'92 烈火、バトルガレッガ

敵の攻撃が、何重かの帯状になった幾何学的模様を形成する。自機の当たり判定が小さくなったこと。敵弾のばらまき方の激しさ、敵弾の多さ(表示可能数)がさらに増えたことによるインパクトなど*1
また、ハードコアテクノやデトロイトテクノを取り入れたBGMも後のCAVEシューティングに強い影響を与えた。
バトルガレッガのBGMを手掛けた並木学氏は怒首領蜂大往生にも起用され、以降のCAVEシューティングでもお馴染みの存在となっていく*2

・ヴイ・ファイヴ、BATSUGUN、首領蜂

二周目以降の撃ち返し弾によって、後年の怒首領蜂1面道中くらいの弾数が画面内に広く飛び交う。
東亜プランSTG最終作のBATSUGUN、首領蜂シリーズ1作目である首領蜂は、
既存の作品よりも敵弾と自機の当たり判定のバランスがさらに小さくなったことや、
ショットとレーザー時の移動速度変化(使い分け)ができる点など、システム面では怒首領蜂とほぼ同様の物となっている。
(なお、この3作のプログラマーも前述の怒首領蜂と同じ池田恒基氏である。)


弾幕系シューティングは難しい?

敵弾の数が非常に多く、ゲーム画面の大半が敵弾で埋め尽くされることも珍しくない。
それゆえに一見すると無理ゲーに見え、敬遠されがちなのだが、
実は以下の特徴のおかげで“見た目ほど難しくない”作品も多い

  • 基本的には敵弾の速度は遅い為、発射後に目視確認を行ってからでも避けやすい。
発射されてから自機付近に到達するまでの所要時間が長めなため、思考時間が確保されやすく、また後述の移動速度との兼ね合いもあって「避け」は快適になっている。
  • 自機の移動速度を変えられるので素早く動くだけではなく緻密な操作も可能。
敵弾の速度が遅めなものが多いため、さほど技量がなくとも「かするようなちょい避け」が非常にしやすい。
  • 自機の当たり判定が通常の(非弾幕)シューティングに比べて極端に小さいものが多く、敵弾の判定も見た目より小さくなっている。
  • 回数制限があるが高い攻撃力と敵弾の消去効果に加え、撃った瞬間から数秒間完全無敵になるボム。

上記の特徴のおかげで少しくらい弾がかすめた程度ではミスにならず、見た目よりも敵弾を回避しやすい。
たとえ追い詰められてもボムを撃てば確実に逃げられるので抱え落ち*3に注意していれば自機の生存確率はかなり上昇する。

その上、一部のゲームには上記の特徴に加え、
  • プレイヤーの意識を「避け」に専念させるべく、自機側の殲滅力も高く設定されている(怒首領蜂シリーズなど)。
  • 敵と敵弾の速度を低下させるシステム(エスプガルーダシリーズなど)。
  • 初心者の悩みの一つ、ボムの抱え落ちを防止してくれるオートボム機能(怒首領蜂大復活など)。
  • 自機の当たり判定が可視化されている(近年に出された多くの弾幕系シューティング)。
  • 敢えて敵の弾に近付き、自機にかすらせる事で恩恵を受けられる(サイヴァリアシリーズや怒首領蜂Ⅱなど)。
  • ボム以外にも特定の条件や特殊な武器で通常は消すことが出来ない敵弾を消去できる(CAVEシュー全般など)。
  • 家庭用機に移植の際に搭載された入門者向けのノービスモード(敵弾が極端に減っていたりする低難易度モード)。
  • ゲーム開始前に難易度を選べる(東方Project、一部CAVEシューなど)。
  • あえて処理落ちさせることで、ゲームスピードを遅くして精密な弾避けの場面に有利に働くようになる(多くの弾幕シューティング)。
…など様々な配慮がされており、近年の弾幕系シューティングは初心者にも優しく制作されているのである。
実際、高難易度化とマニアック化→過疎化が進んでいたシューティング界において「初心者にも易しいシューティング」として、STGというジャンルの一定の復権を果たしたと言う経緯があったりする(ただし、これについては反論もある)。
あくまでジャンル全体の話であって、個々を見れば高難度の作品も多い。

以上のように、実は弾幕系シューティングゲームは初心者が触れやすく制作されている。


ジレンマ


先に記述したように、敷居を低くし触れやすい設計を追求した各メーカーの日夜の製作努力があった。
…にもかかわらず新規プレイヤーの増加傾向はあまり見られず、現在の商業作品/非商業作品を問わず、シューティングゲームがニッチなジャンルのままである事は否めない。

この原因は、いかに丁寧な制作を行っても、シューティングゲーム自体が元々保有している

①『先に進むだけでも基本的には何度も同じ場面をミスしては繰り返しの試行錯誤で、上達を実感しづらい
 例)○面の難所Aが難しい→パターン構築とミス、ゲームオーバー・コンティニューや再スタ―トの繰り返し→やっと越せたと思ったら難所B…(この流れがクリアまで続く)

②『トライ&エラー(繰り返しの練習)のプロセスが極めて地味で、しかも時間と手間がかかる
 例)→せっかく構築したパターンがヒューマンエラーでブレたり、パターンをなぞることを失敗して被弾→ミスからのゲームオーバー・何度も見ることになるタイトル画面・1面+ゼロからのやり直し

③『アーケードスタイルが大元であるがゆえの“1プレイに全力を注ぐ”方式が未だに変わりない事実
 例)先に進めず、度重なるゲームオーバー→「面倒だからコンティニューしまくって最後まで強引に進んでクリアしたら終わりにしちゃおう」→コンティニューしたらステージの最初からやり直し(あるいはコンティニュー出来ない)になったんだけど!?(彩京系作品等)

④『プレイするにあたって必要不可欠となる基礎的技術量や一定の動体視力、弾道計算能力、パターン化能力、そしてそれら全てに紐づく知識などと言った要求量が比較的多い
 例)作品を俯瞰できる経験者にとって「敵弾が本当に遅い弾速で、弾数も少ない」ものであっても、未経験者・初心者にとっては非常に速く感じられ、たった数発放たれただけでも大変な脅威となりパニックに陥るほか、雑な適当レバガチャプレイが通用しない

といった点などがその大きな足かせとなっている。


独特の魅力を持つジャンルではあるが、基盤となっているもの全ての根底が「80~90年代に完成したモノの発展・延長線上」でしかなく、事実シューティングゲームにおける最後の革命的な“発展”は、本項目で記述している『90年代に完成した「弾幕系シューティング」が最後』である。
裏を返せば、ゲームの基礎が大きく変わるような発展はシューティング黎明期の時点から無きに等しく『2024年現在でも1980年代に登場した作品とルールや基礎等の根幹部分が全く変わっていないまま』とも言える。

また、特に「ゲーム一作品に対する手軽さ」や「短期的爽快感」が追求されがちな現代では逆風ともなり、相対的にやりこみ型プレイヤーも減少傾向にあり、それらの作品・ジャンル群とは真っ向から対極の位置にあるシューティングゲームが持つ“とっつきづらさ・プレイ継続のしづらさ”は特に大きなハードルとなっている。

それゆえに「弾幕系シューティングは難しい?」項の冒頭にて記述したように『見た目ほど難しくない』とされていても、それが未経験者・初心者にとっては尋常ならざるハードルの高さであることを充分に考慮せねばならない。


弾幕系シューティングゲームが難しいのではない。
シューティングゲームというジャンルとシステム自体が既に完成しきっており、これ以上変えることができない基盤が、プレイするにあたって大前提となることが、初心者にとっての一番の壁なのだ。


比較的簡単と言われる作品でも、初心者が数回のプレイでクリア出来るものでは無い。

しかし、恐れてはいけない。

攻略サイト等を閲覧し、決めボム(予め難しい地帯を覚えておきボムを使うこと)や、
パターンとアドリブが必要な箇所を頭に叩き込めば意外にもすんなりクリアできたり…もする、かもしれない。
難しく聞こえるが、いずれにしても練習すれば必ず上達するので、上手く避けた時の悩汁を是非体感して欲しい。
また動画サイトで凄腕プレイヤー達のパターンを参考にするのも上達に繋がる。

そして何より、弾幕系シューティングに限らずゲームをクリアするに当たってもっとも大事なことは。

決して諦めないことである。

動画サイトなどで見かける凄腕プレイヤー達も最初は例外なく初心者。最初から上手い人なんていないのである。
惜しまぬ努力の積み重ねでここまで上達した人達である。

弾幕系シューティングに興味をお持ちのお方は尻込みせずにぜひ挑戦してもらいたい。


弾幕系シューティングをプレイするには?


アーケードの弾幕系シューティングはゲームセンターにあるアーケードゲーム筐体でプレイするのが理想であるが、
STG自体がマニアックなジャンルになっている昨今では、そもそもお目にかかれないことも多い。

やや限定的ではあるが、NESiCAxLiveに収録されているタイトルもいくつか存在する。
NESiCAxLiveは設置店舗が非常に多いため、自分のプレイしたいタイトルがあればとても心強い。
但し配信タイトルは非常に限定的であるため、サポートされていないタイトルである確率が非常に高い点に注意。

ゲーセンに近い感覚でプレイしたいのであればジョイスティックと縦画面に出来る専用モニター(液晶の場合はできる限り対応速度の速いもの)を用意しよう。
また、筐体と基板を買って自宅に置くという選択肢もあり、多くのシューターの夢でもある。

また、スマートフォンやPC、各種ハードでのDL販売が活発になった結果、商業、同人共にDL販売が主流になってきている。
特にSteamでは、「怒首領蜂大復活」や「虫姫さま」に代表されるCAVEシューに加え、知名度の高い「東方Projectシリーズ(風神録以降)」、
商業化も果たした同人ゲーム「Crimson Clover」、「Graze Counter」、
海外制作ながら日本作品へのリスペクト溢れる「Danmaku Unlimitedシリーズ」など、名作が数多く揃っている。


主な弾幕系シューティング、関連作品

縦スクロール弾幕系シューティング



横スクロール弾幕系シューティング

  • プロギアの嵐
  • デススマイルズ
  • デススマイルズⅡ
  • 赤い刀


スマホ、タブレット向け作品

  • 弾幕月曜日 ※Steam版も有り
  • 弾幕月曜日黒
  • 弾幕月曜日終章
  • 弾幕デス
  • アカとブルー
  • Phoenix
  • Phoenix2
  • rRootage Online
  • .Decluster
  • Danmaku Unlimited
  • Danmaku Unlimited 2 ※Steam版も有り
  • Danmaku Unlimited 3 ※Steam版も有り
  • ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~※CAVEによるF2Pゲームだが、一部弾幕シューティングを彷彿とさせる要素がある。


広義の弾幕シューティング

  • サマーカーニバル'92 烈火
  • バトルガレッガ
  • 斑鳩


関連作品




弾幕系シューティングをこよなく愛するお方からの追記・修正をお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • シューティング
  • CAVE
  • 覚えゲー
  • 美麗
  • ゲーム
  • アーケード
  • Xbox360
  • 死んで覚えろ
  • 死ぬがよい
  • 君ならできるよ
  • 必ず死なす!
  • こうやってかせぐのだ
  • Q、大佐蜂が落ちてくれません。どうしたらいいですか?_A、攻撃を与えつつ気合で避けてください。
  • 弾幕
  • STG
  • 弾幕系シューティング
  • 弾幕シューティング
  • ゲーム用語
  • ゲームジャンル
  • ゲーセン
  • アーケード
  • 同人ゲーム
  • CAVE
  • ケイブ
  • スマホゲーム
  • Steam
  • 弾幕系シューティングゲーム

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年03月17日 18:02

*1 「サマーカーニバル'92 烈火」と「バトルガレッガ」のメインプログラマーは同一。さらに「怒首領蜂」のメインプログラマーは「バトルガレッガ」に影響を受けていることを公言している。

*2 並木学氏以外の作曲家が手掛けた作品もある。

*3 ボムを持ったままミスをする事。