太陽系(天体)

登録日:2012/01/24 Tue 03:37:43
更新日:2024/01/14 Sun 16:11:52
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■太陽系(Solar system)■

「太陽系」は「天の川銀河(銀河系)」の辺境に位置する、黄色恒星「太陽」を中心とした天体の集まりである。
近年は「はやぶさ2」の話題等で、宇宙についての関心が高まっているため、今一度我々が暮らす太陽系について知ってみるのも良いかもしれない。

我々の住む第3惑星「地球」が所属しており、誕生から約50億年が経過。
直径は約1光年とされ、人類はいまだにその全貌を見ることが叶っていないのが現実である。
銀河系の回転に伴い、秒速約217kmの速度で移動し、2億5千万年で銀河を一周すると予測されている。

夜空に見える天の川は銀河系の星々を内側から見た姿である。
天の川は黄道(太陽や月の見かけの移動経路)に対して傾いて見えるが、これは太陽の赤道面(太陽系の惑星の公転面)が銀河系のディスクに対して傾いているからである。
また、夏と冬では夏の天の川のほうが明るく冬はかなり暗い(都市部ではまず見えない)が、夏は銀河系の中心方向が、冬はその逆で外方向が見えているため。
天の川の見え方からすると、太陽系の位置はディスクに比較的近いところで、なおかつ外寄りにあることがわかる。

以前は、06年に準(矮)惑星指定され太陽系の惑星から外されてしまった冥王星の軌道が太陽系の「果て」とされていたのだが、
さらに外側に「太陽系外縁天体」がいくつも発見されたことにより、冥王星のアイデンティティが揺らぎ、海王星以遠の領域を公転する天体の存在が珍しいものではなくなった。
冥王星軌道に近い位置にあるとされるのが「エッジワース・カイパーベルト」と呼ばれる空間で、太陽からの距離は30~50天文単位(au)。
現在は太陽から発生する太陽風が星間物質とぶつかる境界面「ヘリオポーズ」が太陽系の限界点だと考えられている。
※境界内を「ヘリオスフィア」とも呼ぶ。「太陽圏」もほぼ同義。
ヘリオポーズは、50~160天文単位が限界と考えられており、前述の通りこれが太陽系の限界となる。

惑星探査機ボイジャー1号、2号、パイオニア10号、11号は既にヘリオポーズを通過しており、現在は太陽圏と星間空間の間の遷移領域を飛行中と思われる。
ちなみに、パイオニア10号は太陽系の進行方向とは逆方向に飛行しており、おうし座(アルデバラン)の方向へ飛んでいるとのこと。
仮にパイオニア10号が無事(軌道を乱されたり破壊されたりすることなく)アルデバランのあった宙域*1に到達するとしても、それは約170~200万年後のことである。
他の3機、パイオニア11号はこと座、ボイジャー1号はきりん座、ボイジャー2号はおおいぬ座(シリウス)の方角へそれぞれ向かっている。
いずれも日本国内で見られる星座である。

……そして、現在ではさらに1万~10万天文単位の位置に太陽系を包み込む「オールトの雲」と呼ばれる、
原始状態の天体群(水、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン)の存在が予測されており、
かの「ハレー彗星」を始めとする彗星は、この空間からやって来たと考えられているようである。



【構成天体】

続いて「太陽系」の構成天体の基本データを簡単に説明していく。
いまさらと思われる方もいるだろうが、新たな発見があるかも……しれないですよ。

太陽(Sun)
※その名の通り、太陽系の中心となる黄色*2恒星で、寿命は約109億年。
現在は誕生から約46億年が経過しており、現在は「主系列星」と呼ばれる段階にある。
太陽系の全質量の99.9%*3を占める。
体積は地球の約130万倍。
質量は地球の約33万倍。
表面重力は27.9G(274m/s²)にも達する。

すべての生命活動の源であり、多くの宗教でも主神とされている。
恒星としては小さく、内部の水素を燃焼し尽くし、かつヘリウムの比率が多くなったあとには、最大で200倍ほどの大きさの「赤色巨星」となり「白色矮星」の状態を経て、最後は冷たい死んだ星になると考えられている。
※この過程で地球も飲み込まれるとされていたが、近年の研究では軌道の変化により地球は無事であるとの推測も出されている。いずれにせよ生物は無事では済まないが。
なお、太陽より8倍ほど重い恒星が最後に起こすのが「超新星爆発」で、あとには中性子星が残る。
これが太陽より40倍ほど重い恒星となると、重力崩壊を引き起こしブラックホールが誕生する。
余談となるが、太陽系の所属する天の川銀河の中心部も超巨大ブラックホールであると予測されており、これが銀河が渦を巻いている理由である。


【惑星(Planet)】
太陽系には太陽の周りを周回(公転)する9つ8つの主要な(比較的大質量の)天体が存在する。
特に地球に近い天体(主に水星~土星まで)については、有史以前から知られていたものもあり、それらにまつわる記録や伝承も多く、そのロマンに魅せられた者も少なくなかった。

「惑星」……というか「Planet」の語源は、ギリシア語の「πλανήτης」(プラネテス, ラテン文字転写:planítis)で、「さまよう者」の意。
こう呼ばれるようになった理由は、地球上から見た惑星の見かけの挙動に由来する。
       5
5
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   2
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       1
少々わかりづらい図かもしれないが、上図の左側の数字は地球の公転軌道上の位置を示し、右側の数字はその外側の惑星の公転軌道上の位置を示す。
3の位置は「衝」(太陽-地球-惑星の位置関係になる)にあたる位置である。
地球は外側の惑星よりも内側を公転している関係で、衝の前後で外惑星を"追い越す"ことが一定の周期で起こる。(会合周期)
このとき、地球から見て(図では右向きに見て)、外惑星は 5-2-3-4-1 といった順序で黄道付近を移動しているように見える。
そのため、普段は(一晩での天球上での位置が)西(右)から東(左)へずれていく惑星が、一時的に西に戻る(逆行する)ように見かけ上見えるのである。
この挙動は古来より人々を惑わせ、学者達でさえこの現象が見かけの現象だという発想に行き着くには、地動説の再発見および定着を待たなければならなかった。

原義的には、「惑星」とは"惑う星"なので、地球自身はこの意味においては「惑星」には当てはまらない。
……とはいえ、地球についても地球の外にいる観測者から見れば見かけの逆行現象が起こるため、若干こじつけのようだが、なんとか「惑星」と言えなくもない。
「惑星」という語の意味・用法が時代を下るにつれ原義から離れ、"惑う星"という意味合いよりも、"太陽(恒星)を公転する(自ら発光しない)天体"という意味合いのほうが強くなっていった。


水星(Mercury, 辰星)
※最も太陽に近い位置(平均0.38au)を回る太陽系最小の惑星で、質量は地球の約3分の1程度で、表面重力は約0.376G(3.70m/s²)ほど。

太陽に非常に近く、また大気がほとんど存在しないために日中の最高気温は430℃近くまで上がる。
反面、大気が存在しないために夜間は−180℃にまで下がるという、寒暖差が極端な星でもある。
1日の長さ(太陽日*4)は地球の176日に相当(公転を2回する間に自転を3回する関係で、太陽に向く面が88日でようやく入れ替わる)。
つまりは、約88日間ずつの周期で灼熱と極寒地獄を繰り返している計算となる。
また、自転周期(約58日)と公転周期(約88日)の比は2:3だが、同時に公転周期と太陽日の比は1:2でちょうど2倍になっている。
したがって、水星上で過ごす1日は2年という計算になる。

水星は金属元素の存在比が大きいことで知られており、実に70%近くが鉄やニッケル等、残りの30%はケイ酸塩でできている。
その説明として、「巨大衝突説」「選択集積説」「蒸発説」など諸説あるが確証は得られていない。
また、大きさ・質量のわりに強めの磁場を持つことでも知られる。
地球の磁場は流体核の循環によって発生しており、仮に水星もそうであるなら、コアの内部は何らかの理由で液状化していると考えられる。

水星はあまりに太陽に近いせいで(可視光での)観測が困難な惑星でもある。
とはいえ、条件が揃えば肉眼でも問題なく視認可能な惑星の一つであり、水星の存在自体は昔から知られていた。
最古の記録は紀元前14世紀のアッシリア人によるものと思われる星図表で、バビロニアにも紀元前10世紀頃の記録が存在する。
古代ギリシア、古代中国、古代インド、マヤ文明等でも認知されていた。
水星は内惑星(地球よりも内側を公転する惑星)なので、常に太陽の方向に位置し、夜間は地球の裏側(昼側)にあるため見れない。
日の出直前or日没直後というごく限られた時間帯で、かつ地平線よりも上に出ている状態でなければ基本その姿を拝むことはできない。

英名のMercuryとはローマ神話における泥棒と商いの神メルクリウス(ヘルメス)に由来している。どうやら水星がせわしなく動く様子が、彼の仕事ぶりを連想させたかららしい。元素の一つである水銀も、これと同じ語源から来ている。主に水属性を担当しているが、氷属性も該当する。
また、メルクリウスは死者を導く神である為、死の神という共通点のあるオーディンが水曜日(Wednesday)の語源となった。
それにしても他の惑星と違って和名との繋がりを連想しにくい英名である。
ちなみに、ベイブレードでは死の神繋がりでアヌビスが水星のポジションを担っている。

仮説上では高炉星(惑星バルカン)が水星の内側を回っているとされていたが、後に否定されている。


●金星(Venus, 太白)
※惑星の組成、大きさ共に地球と良く似た「双子星」とも呼ばれる惑星。
太陽からの平均距離は0.78au。
質量とサイズは地球よりも少し小さい。重力は約0.9G(8.87m/s²)。

スペック的には近いものの、大気の主成分は二酸化炭素で、その温室効果により地表の温度は水星をも上回る470℃にも達するという灼熱の星である。
大気圧が非常に高く、地表での気圧は地球の約90倍。
この条件では水の沸点は300℃になる。
分厚い二酸化炭素と硫酸の雲は、太陽から受ける熱量の80%ほどを反射している(いわば"核の冬"のような状態)のだが、すさまじい温室効果により残り20%の熱だけで高熱を保持している。
太陽からの距離よりも温室効果の影響のほうが強く、地球の大気も二酸化炭素の割合が極端に高くなれば、金星のような星になってしまう可能性もなくはない。

熱対流により時速350qの強風が吹き荒れ、二酸化硫黄の雲が硫酸の雨を降らせるという、美の女神の名を冠した美しい見た目とは裏腹の地獄のような環境にある。
ただし非常に高温・高圧の環境であるため、硫酸の雨は地表に到達する前に蒸発する。
地表は常に強力な風化作用と侵食作用に晒され続けているため、金星の地形は比較的(地球や火星に比べれば)なだらかになっている。

金星の公転軌道は、太陽系のハビタブルゾーン(生存可能領域)の内縁付近に遠日点があり、液体の水は存在できない*5
……が、気圧と温度が低下する高度(およそ55km前後)ならば液体の水が存在できるとのこと。

ちなみに、地軸の傾斜角は178°……つまり、パッと見では気付かないが、ほぼ真っ逆様に自転している星である。
つまり天才バカボンのOPの「西から登ったお日様が東に沈む」は金星では「これでいいのだ!」となってしまう。
地軸の倒立については過去の大規模な衝突に原因を求める説が主流だが、時期や規模などは手掛かりが少なく不明。
ついでに、金星の1年は地球で言えば225日だが、金星の1日は地球で言う243日。つまり、1年より1日*6の方が長い。
ただ、金星は逆方向に自転している関係で、1周する前に日没を迎える。そのため金星における太陽日は約117日である。
いずれにせよ、3日で滅ぼした誰かさんの面目丸つぶれである。"72時間"と言っておけば紛れがなかったろうに。

非常に遅い自転速度とは裏腹に、金星の最大風速は350km/hと非常に速く、「スーパーローテーション」と呼ばれる自転速度の60倍にも達する熱風が吹いている。
この高速な熱風は4日で金星を1周する。(向きは自転方向と同じ。)
また、この風により熱が惑星全体に効率良く伝達され循環しており、高度が同じなら緯度による気温の差は小さい。

「明けの明星」、「宵の明星」と呼ばれるだけあって、非常に明るく輝く惑星である。また、琉球王国の民謡集「おもろさうし」では金星が神の矢に例えられている。
これは金星のアルベド(反射能)が非常に高いためで、前述した分厚い大気に起因する。金星のアルベドは太陽系の惑星では最も高い。
明けor宵の明星が最も明るくなるのは、内合(地球-金星-太陽の並びになる状態。)の約5週間前後。
金星にも月のような満ち欠けがあり、影の部分は外合(地球-太陽-金星)の前後あたりが最も少なくなる。
しかし、相応に地球からの距離も遠いことになるため、明るさは内合前後の時期よりは暗い。
最大離角*7時は半月のような見かけになり、高度も30°程度までわりと高く昇るため非常に見つけやすい。
そこから地球に接近するにつれて影の部分が大きくなり三日月状になっていき、明るい部分の割合は1/4ほどになってしまう一方、
視直径(見かけの直径)は最大離角時の4倍にもなるため、結果的にはこの時期が最も明るくなるのである。
そのときの光度は-4.87等で、1等星の約170倍もの明るさになる。全天では太陽と月に次いで明るい天体である。
1等星の中では最も明るいのはシリウス(-1.09等)だが、それよりも明るく輝く星座からハブられた妙に目立つ星を見かけたら、
その星はおそらく金星をはじめとした惑星である可能性が高い。

水星同様、内惑星ゆえに昼間と夜間は見れないものの、明るさ・サイズともに水星よりはるかに視認しやすいため、有史以前から目視で観測され、人々の間でよく知られている星の一つであった。
そのため世界各地にさまざまな神話や伝承が残っている。

英名のVenusとはローマ神話における美の女神ビーナス(アフロディーテ)に由来している。この為、金曜日(Friday)の語源は北欧神話における美の女神フリッグとなっている。
聖書においてはルシファー、アステカ神話ではケツァルコアトル、メソポタミア神話ではイシュタルと対応する神格が多い惑星でもある。
属性としては金属属性にあたるが、殆どの作品は光属性であることが多い。

英名と和名との繋がりは「美しいもの」という共通点がある。


地球(Earth)
※主に岩石で構成された地球(岩石)型惑星で、その中で最大の質量・サイズを持つ惑星。
太陽からの平均距離は約1億5000万km(1au)。重力は9.78m/s²*8(1G)。
平均気温は約15℃。大気は窒素(約78%)、酸素(約21%)、アルゴン(約0.9%)二酸化炭素(約0.03%)などが主体。
太陽系の惑星では最も高密度な惑星である。

我々の住む「奇跡の星」であり、太陽との絶妙な距離により海が形成されたことで複雑な生態系を持つようになった。
が形成されなければ、金星のような環境であったと想像されている。
実際、かつては地球も金星に近い灼熱の環境(※形成当時のドロドロ火球とは時代も状態も異なる)にあったらしく、
海ができ、そこに大量の二酸化炭素が溶け込むことで温室効果が弱まり、現在の気温にまで下がったとされる。
その後、植物(プランクトン)らが二酸化炭素を光合成に利用しせっせと酸素に変え続けた結果、大気中の酸素の存在比が徐々に増していった。
かつて大量に存在した二酸化炭素由来の炭素は、石炭、石油などの化石燃料や石灰などに形を変えて残っている。

仮に地殻中に存在する炭酸塩・炭素化合物をすべて二酸化炭素として大気中に放出したとすると、約70気圧に達するという試算がある。
この状態では大気の主成分は二酸化炭素となり、現在の主成分である窒素の割合はたったの1.5%ほどに低下する。
金星の大気圧に匹敵するとは言わないまでも、金星に似た相当な高圧になり、その温室効果もとてつもないものになる。

地球の赤道面は公転面に対して約23.44°傾いており、このことが複雑な季節変化をもたらす。
地軸が傾いている側が太陽の方向を向いていれば夏、外側を向いていれば冬である。
同じ理屈で北半球と南半球の季節は必然的に逆になる。
そして、赤道に近づく(緯度が低く)なるにつれ季節変化は小さくなる。
実を言うと、(北半球の)夏の時期のほうが太陽からの距離は遠いのだが、日照時間の長さで冬を上回るため、アニヲタ諸氏もご存じのように実際には夏のほうが暑い。

衛星として「」を持つ。直径・質量がそれぞれ地球の約1/4、約1/81と公転元の惑星と比較して異常な程デカい(例えば太陽系最大の衛星ガニメデの直径は木星の約1/27)。デカすぎて地上における重力の影響力が太陽の約2倍と大きく地上の生態系に対する影響力も計り知れない。
誕生過程として「親子説」「捕獲説」「兄弟説」などが唱えられて来たが、
現在は形成途上の地球に火星規模の原始惑星が衝突、地球と破壊された天体の物質が混ざり合って誕生した「ジャイアントインパクト説」が最も有力視されている。

earthの語源はバビロニア語で野営地を意味する『エリドゥ』に由来。ラテン語ではTeraと言うがこれはローマ神話における地母神テルス(ガイア)に由来している。アニヲタ諸氏も『ガイア理論』と言う言葉を耳にした事があるだろう。命が溢れる星の名前に相応しい神格と言える。


●火星(Mars, 螢惑)
※地球の10分の1ほどの質量の岩石惑星で、鉄酸化物を多く含む岩石と砂により赤く見える。
太陽からの平均距離は約1.5au。公転周期は約1.8年(約687日)。重力は約0.38G(3.71m/s²)。

水星と共に、地球と金星を生んだ物質の残りカスから生まれたと考えられている。
かつては、地球と同様に潤沢な環境が存在していたと考えられており、SFなどでも生物の存在が描かれたり、人類の移民先の舞台とされることが多い星でもある。

比較的地球に近い惑星ゆえ、惑星探査機による調査も数多く行われている。
内惑星である金星や水星も近い部類とはいえ、必然的に太陽に近い軌道での活動を余儀なくされるため、
熱や放射線による探査機や観測機器への負荷が大きく、外惑星探査よりも費用面や技術面での制約が増えるといった事情もある。
熱に関しては素材の選択やシールド・塗装などである程度対策できるが、特に放射線対策がネックで、
放射線は我々生物だけでなく電子機器にとっても天敵といえるもので、最悪の場合は機能停止、また故障や誤作動のリスクも相応に高い。

2018年、探査機インサイトが火星表面に着陸し、着陸から15か月間だけでも数百回もの地震(火震, Marsquake)を観測しており、未だ"地質学的に死んだ"星ではないことが明らかになった。
2021年2月、NASAの探査車パーシビアランスが、火星表面のかつて湖があったと考えられるジェゼロ・クレーターと呼ばれる場所に無事着陸した。
これまでの調査では主に火星の環境について調べていたが、このプロジェクトでは生物の痕跡を直接探ることを目的としている。サンプルリターンの計画もある模様。

太陽系最高峰のオリンポス山という山があり、その標高はなんと27000m。地球最高峰のエベレスト(チョモランマ)の3倍を優に超える。
なお、火星には海がないため海抜の定義は適用できず、水の三重点を基準に高度0が定義されている。
逆に火星で最も低い地点の高度は-4000mほどで、最高地点と最低地点の差は約31km。
ちなみに、地球のエベレスト(8848m)とマリアナ海溝最深部(-10911m)との差は約19.7km。
他にも深い渓谷や溝のような構造が見つかっており、中には液体の水による浸食とも取れる地形も存在する。
高い山と深い谷を持ち、非常に凸凹した起伏の激しい地形を持つ惑星である。
大気圧が地球や金星よりも低く、風化作用が弱いことも火星の地形が維持されやすい理由の一つ。

地球同様に地軸の傾き(赤道傾斜角)があり、値は地球(23.44°)に近い25.19°。つまり火星には四季が存在する。
しかし、公転軌道の軌道離心率が地球よりも大きい(楕円軌道を取る)ため、それぞれの季節の長さは北半球と南半球で異なる。
近日点付近では北半球の冬(南半球の夏)にあたり、その期間はやや短い*9。同様に南半球の冬(北半球の夏)は長くなる。
具体的には、北半球の秋冬は約296日、春夏は約371日という具合。(南半球は逆)
ただ、火星には大量の液体の水(熱を保持する物質)が存在しないため、地球のような太陽高度と気温のズレはほとんどない。
また、地球のように大きな衛星を持たないこともあり、地軸の歳差運動(≒ミランコビッチ・サイクル)は地球(約41000年、21.5~24.5°)よりもより長いスパン(約124000年)でより大きく(15~35°)変化する。

極地には極冠と呼ばれる巨大なドライアイスがあり、夏の間はこれが気化して大気の量が増加する。
二酸化炭素中心の大気があるため、植物を先に移し、温室効果ガスを出させて温めテラフォーミング…なんてことも研究されている。
……とはいえ、重力が3分の1程度しかないので地球人が住むに向くかと言うと…
大気が地球よりも薄い(オゾン層のような放射線バリアがない)ことに加え、磁場(これも放射線バr)が微弱なため、日中は常に太陽風(に含まれる放射線)の直撃に晒されている。
何の対策も講じずに火星で暮らしていると、ガン、遺伝子疾患、皮膚障害など、さまざまな病気を併発することが予想される。
仮に諸々の問題を無事クリアし移住に成功したとしても、何らかの肉体の変化(例えば筋肉や骨の劣化)は起こるはずで、適応もとい進化(退化?)は避けられないと思われる。
……しかしながら、灼熱地獄の水星や金星、極寒で明確な地表がないガス惑星だらけの外惑星などと比べると、火星のような環境でも他の惑星(衛星)よりかは超絶マシな優良物件なのである。相対的あるいは消去法的に。

火星はサイズが小さい惑星ながら、フォボスとダイモスという2つの衛星を持つ。
どちらも見た目は不細工で、球状ではなくただのでかい岩石のような、むしろ小惑星に近い形をしている。
それぞれの衛星の起源を示唆すると思われるデータは多少あるものの、仮説や推測に留まり詳細は不明。
火星近傍に接近した小惑星が捕獲されたものという説や、
火星版ジャイアントインパクトが起こり形成されたとする説もある。
どちらの衛星も火星に近い軌道を公転しているため、自転と公転が同期している(火星に同じ面を向け続けている)。

フォボスは火星の表面から6000km以内という至近距離を公転している。
サイズが小さいため、高緯度地域(70.4°以上)では火星の地平線に隠れて見えなくなってしまう。
火星のかなり近くを周っているため公転速度も速く、火星の自転速度を上回る速度で移動する。
火星上でのフォボスの見え方は、まず西から昇って高速で移動しながらの空に沈み、そして同じ日のうちに再び西から昇るというサイクルになっている。
ただ、フォボスは火星に近過ぎる軌道を持つがゆえに、その公転速度には火星の重力(潮汐力)によるブレーキがかかっており、徐々にしかし確実に速度を落としつつ軌道半径も狭まってきている。
今から3000万~5000万年後にはロシュ限界を越えて破壊され火星の環になるか、火星の地表に落下すると見られている。

一方、ダイモスはフォボスよりも小さく、静止軌道(衛星の公転と惑星の自転が同期する軌道)のやや外側を周っているため潮汐破壊を受けたり火星に落下したりはしない。
……が、火星から徐々に離れる軌道でもあるため、いつかは火星の重力から逃れ、衛星ではなく小惑星に戻ってなってしまうかも知れない。
ダイモスの公転速度は遅く、火星の自転に対してやや遅れるくらいのペースで公転している。
そのため、東から昇る点は地球の月と同じだが、その動きは非常に遅く、西に沈むまでに約2.7日かかる。
フォボスよりは広い範囲で見られるものの、ダイモスもまた高緯度地域(82.7°以上)では見ることができない。

さて、Marsの由来はローマ神話における戦の神マルス(アレス)から取られている。火星の赤色が戦争で流れる血を連想させたからだろう。戦の神だけあって和名との関連を見出しやすい。
ただ、火星は名前に反してかなり寒い。(平均気温:-63℃)
上記の理由からマルスと共通点の多い北欧神話の戦神トゥールが火曜日(Tuesday)の語源となった。
惑星の気温に反して、属性は炎属性であることが大半。


●小惑星帯
火星と木星の間に存在する無数の岩石や氷塊*10からなる一帯。準惑星サイズのものも存在する。
太陽系の形成初期に存在した微惑星の名残とされるが、(天文学的な意味で)頻繁に変化が起こっているため、当時の姿を保っているとは考えられていない。
木星の強大な重力により惑星形成を阻害された微惑星の成れの果てがこの軌道に追いやられて、そのまま太陽を周回している。
火星が地球や金星よりも小さいのは木星のせいかもしれない。
最大の天体はケレス(Ceres)で、小惑星帯の質量の1/3を占める。
ケレスは既知の小惑星帯の天体の中では唯一、自身の質量・重力により球形を保てている天体である。
フィクションでは物質が密集した危険地帯であるかのように描かれることもあるが、実際にはスカスカで、探査機がこの領域を通過しても特にトラブルはなかった。
八惑星の名前に採用されなかったオリュンポス12神所属の女神は4大小惑星の名前に採用されることに。(ケレス、ヴェスタ、ジュノー、パラスの四つ)


木星(Jupiter, 歳星)
※太陽系最大の巨大ガス惑星で、主成分は水素とヘリウム。
つまり、地表?そんなもの、ここには無いよの風船状態。
太陽からの平均距離は約5.2au。公転周期は約11.86年。
体積は地球の約1千300倍。
質量は地球の約300倍。太陽と木星を除く太陽系内の全物質の質量の2~2.5倍に相当する量にあたる。
重力は約2.34G(24.79m/s²)。

さすがに太陽にはかなわないが、それでも太陽系の重心は太陽の中心ではなく、木星の重力によって太陽の表面付近までずらされている。
また、この重心はその時々の太陽と木星の位置関係により常に変動しており、太陽から出たり入ったりしている。
地球含めどの天体から太陽を見ても、ほとんど静止しているようにしか見えないが、太陽はこのずれた重心の周りを公転(?)している。
俗な表現をするなら、公転というよりはかすかに揺れているような感じだろうか。
このような恒星の"揺れ"は、系外惑星の探索に用いられる手法の一つでもある。(ドップラー分光法)

強大な重力を持つため、衛星の数が(2023年現在見つかっているだけでも)95個*11と桁違いに多い。
特に大きくて目立つイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストは、発見者にちなみ「ガリレオ衛星」と呼ばれている。
その重力によって捕獲されたと思われる衛星の数も多く、逆行軌道や楕円軌道を持つ衛星(不規則衛星)の数もこれまた多い。
……というか、木星の衛星のうち規則衛星に分類されているのは、前述のガリレオ衛星(4個)と、それらの内側を公転するアマルテア群(4個)だけである。

木星の軌道上の前後60°(ラグランジュ点、L4とL5)にはトロヤ群と呼ばれる、木星と公転軌道を共有している小惑星の集団がある。
直径1km以上の天体の数はおよそ100万個と見積もられていて、この数は小惑星帯に匹敵する。
このような偏りがあるのは、木星の重力による影響でさまざまな小惑星規模の天体が木星軌道上から排除され、この領域に追いやられたor領域外へ追い出されたため。
実をいうと、土星、天王星、海王星、そして我らが地球にもトロヤ群が存在するが、特に断りなく「トロヤ群」と言った場合は、木星のそれを指す。

表面温度は約-140℃だが、内部に何らかの熱源を有しており、惑星全体の平均気温は約-121℃。
中心に近づくほど温度と圧力が増していき、中心部では35000℃、4500GPaを超えるという。
熱源は水素よりも重いヘリウムが落下する際の重力エネルギーではないかと推測されている。
なお、この熱の一部は、「ケルビン・ヘルムホルツ機構」と呼ばれる断熱過程によって生じているとされ、そのせいで木星は年間約2cmずつ縮んでいるらしい。
現在の木星は誕生時の半分くらいの大きさになっている模様。

組成が太陽に近いことから「太陽になれなかった星」と呼ばれ、SFでも木星を太陽化するエピソードが作られたりしているが、
実際には木星は太陽の0.1%程度の質量しか無いため、恒星となるにはあと80倍は重くないと核融合反応は起きないらしい。
もっとも、木星が今の80倍デカくて、本当に太陽(赤色矮星)になっても地球の環境にはなんら影響は無いそうである。…間違ってもゲッター炉心をここに捨てないでください。
ただし、地球に隕石がめったに落ちてこないのは木星が吸ってくれているからとも言われている。
一方、過去に彗星などの天体の軌道を乱して地球(などの内惑星)を爆撃した張本人なのではないかという噂も聞くが。(後期重爆撃期説)
このときの太陽系外縁部に存在した彗星(要はでかい氷)の爆撃衝突によって、地球上に大量の水をもたらしたとする説もあり、
現代で起こったらたまったものではないが、この説が正しければ、木星の存在が生命の誕生において必要不可欠な役割を果たしたとも言える。
木星自身、現在は形成当時の軌道とは異なる軌道で公転していると考えられており、後期重爆撃期と現在とでは彗星の軌道に与える重力的な影響が異なるため、どちらの仮説も矛盾しない可能性がある。

木星はその巨大さに見合わず非常に高速で自転していて、なんと10時間かからずに1回転している。
さらに(地球型に比べて)密度が低いこともあり、自身の自転による遠心力で完全な球体ではなく赤道方向に少し膨らんだ形をしている。
また、ガス惑星なので緯度によっても微妙に自転速度が異なる。
ちなみに最大風速は360km/hほど。これは地球のジェット気流の最大(瞬間)風速と同程度の値。
内部はいくつもの層に分かれていて、大雑把に分けるなら、気体が存在でき暴風が吹き荒れている層、圧力が強くなり金属水素とかいう我々にとって馴染みのない水素からなる層、金属や岩石などからなるコアがあると考えられているが、はっきりしたことは木星に特攻しなければわからない。

木星の衛星写真を見ると一際大きな赤い渦が映っているが、これは「大赤斑」と呼ばれ、地球2、3個を飲み込めるほどの巨大な高気圧である。
大気表面のマーブル模様のような雲・渦が発達したものなのか、あるいは地球の台風と似て非なるものなのか、はたまた雲の内部の下層に渦を発生させる何らかのメカニズムがあるのか、その構造の詳細はやはり木星大気を直接調べないことには依然謎のままであろう。
この渦は20世紀後半あたりから年々縮小してきており、このまま消滅してしまうと見る向きがある一方、渦の原動力自体は健在なのではないかと見る向きもある。

1995年7月、探査機ガリレオによる木星大気へのプローブ投下の試みが行われた。
このミッションにより木星大気についての貴重なデータが得られたものの、潜れたのはせいぜい表面から159km程度までであった。
なお、プローブとの通信が途絶した地点で既に地球の28倍もの気圧と185℃もの高温に達していたという。特攻してもダメかも知れない。
ちなみに、ガリレオも運用終了とともに木星に落下させられ、プローブ共々木星に飲み込まれその一部となった(衛星の環境に配慮しての処置らしい)。

Jupiterの由来はローマ神話における神々の王ユピテル(ゼウス)。木星では雷(やオーロラ)が起こる事を考えるとさすがは太陽系最大の惑星にふさわしい名前である。
そんな惑星の和名が『木星』という名前には首を傾げるが、五行では雷も木属性にカウントされる為、全く問題はない。故に、木属性よりも雷属性である場合が多い。
上記の雷神という共通点から木曜日(Thursday)の語源は北欧神話のトールとなっている。
この他、『龍』という漢字一文字で木星という意味があるが、奇しくも四神の一柱青龍が司る属性もまた『木』であったりする。この惑星…属性過多すぎやしないか?


●土星(Saturn, 鎮星)
※美しいリングを持つ、最も特徴的な姿の星。
太陽からの平均距離は約9.5au。公転周期は約29.5年。
重力は1.16G(8.96m/s²)。平均気温は-130℃ほど。
木星に次ぐ規模を持つ巨大ガス惑星で、比重(0.69)が最も軽いために、なんと水にも浮かぶ計算となる。

木星ほどではないが、土星も強い重力を持ち146個(2023年現在)もの衛星を持つ。
突出した特徴を持つ衛星がいくつか存在し、中でも土星最大の衛星タイタンは衛星としては質量が大きく、土星の衛星の質量全体の96%以上を占める。
直径(体積)は惑星である水星を上回るほどだが、質量比では(高密度な)水星に比べて4割ほどしかない。
地球の月との比較では、直径は約1.5倍弱、質量は約1.8倍ほどになる。
質量つまり重力も相応に大きいため、窒素やメタンからなる厚い大気を持つことでも知られている。
タイタン自身の赤道傾斜角(地軸の傾き)は1.942°と(土星の赤道面に対して)垂直に近いが、土星の赤道傾斜角が25.33°あるため、従ってタイタンにも四季が存在することになる。

大気のせいで長らく地表の様子は謎に包まれたままだったが、探査機カッシーニによる赤外線や電波を用いた観測で、液体炭化水素の湖や氷の火山と思しき地形があることがわかっている。
つい最近(2019年)、カッシーニの観測データをもとにしたタイタン全球の地質図が作られ公開された。
また、同じくカッシーニによりホイヘンス・プローブという子機がタイタンの地表に投下された。
このミッションにより、タイタンには地球の水のようなメタンの循環が存在することが明らかになった。
つまり、メタンの雲からメタンの雨が降りメタンの川や湖ができており、実際の現地の画像も撮影されている。
もし、水ではなくメタンをベース(生体反応の触媒として利用する)とする生物がいるとするなら、酸素のかわりに水素を吸い、グルコース(ぶどう糖)ではなくアセチレンで代謝を行い、二酸化炭素ではなくメタンを吐き出して呼吸を行うだろうと考えられている。
SFでは土星本星ではなく衛星に着目し、固体の表面と大気を持つタイタンが植民先の候補に挙がることも。

他にもデス・スターに例えられる程星の大きさに対しデカすぎるクレーターを持つミマス、軌道を共有してる癖にうまい具合に衝突を回避しているヤヌス・エピメテウス、ブレブレな公転軌道を持ち不規則に自転するヒペリオン、表面がくっきりツートンカラーなイアペトゥスと個性派揃い。

土星は木星に比べ水素の割合が多くヘリウムの割合がかなり少ない。
そのため木星よりも低密度で、土星もまた1周(日)が10時間超という高速で自転をしているため、写真でもはっきりわかるほど上下に潰れた形をしている。
赤道半径が極半径よりも10%近く長く伸びてしまっている。
風速も非常に速く木星以上の暴風で、最大風速は1800km/hにもなる。

最大の特徴である大きく美しい環は、他の惑星のものと比較して圧倒的に規模が大きい。
ガリレオの時代の望遠鏡の性能でも、その輪郭をおぼろげながらも捉えることができたほどである。
(なお彼の目には、土星の左右に"こぶ"のようなもの(衛星)がくっついているように見えたという。)
この環は土星上空6000km~12万kmに渡って存在するが、厚さは20mほどしかない。20kmではない、20mである。
長さのわりに非常に薄い構造になっているため、地球から見て環の真横を見る位置関係になると、見かけ上この環は消えてしまう。
さすがのガリレオもこの挙動についてはかなり困惑していたらしい。
(後に彼は環の再出現も確認し悩みはさらに深まった。)
組成は大半(約93%)が水の氷で、残り7%は炭素とのこと。氷が主体なのでアルベド(反射能)が高く比較的明るい。
この環は浮き輪やフラフープのように連続した物体ではなく、様々なサイズの無数の氷塊が土星の周囲を公転しているに過ぎない。いわば極小の衛星群のようなものである。
最も目立つ環は「メインリング」と呼ばれ、ほかの暗くて目立たない環や間隙にも名が与えられ、天文学者らの間では細かく区別されている。
某漫画では土星の環を使ってスケートに興じているという描写があるが、あれは完全にフィクションである。

英名Saturnは魔王の事ではなく、ローマ神話の農耕の神サトゥルヌス(クロノス)に由来。この神様は時間の神クロノスと同一視される事が多く、聖闘士星矢Ωでもそれに倣っている。
土曜日(Saturday)の語源はどういうわけかこの神と全く同じ。北欧神話に対応する神格が見つからなかったからだろうか?
属性は地属性であるが、闇属性が入る事もある。


●天王星(Uranus)
※地球の63倍ほどの大きさのやっぱりガス惑星(氷惑星)。
太陽からの平均距離は約19au。公転周期は約84年。
重力は1.15G(7.77m/s²)。気温は-200℃以下。
衛星の数は27個。

大気組成が木星や土星とは違い、アンモニアやメタンの割合が多いために、より細分化し「天王星型惑星」として「木星型」と区別する場合がある。
天王星の組成は木星および土星の金属水素の層を除いたものと似ており、分類の区別は金属水素の有無を反映してのこと。

しかし、最大の特徴は地軸が横倒しになっていること(傾斜角98゚)で、ほぼ横向きに自転している奇妙な星である。つまり昼夜が異様に長い。
天王星の公転周期は84年なので、およそ42年間昼または夜が続く。
ただし赤道方向から太陽光が当たる春分と秋分の時期に限り、他の惑星と同様に自転周期(約17時間)に対応した昼夜がある。
横倒しの自転軸のせいで気温変化に乏しい星だが、春分と秋分の時期は例外。
なお、太陽からの熱を受けている極地域よりも赤道地域のほうが気温が高いらしく、なぜそうなっているのかは不明。

地軸が傾いている理由については推測の域を出ないものの、地球サイズの巨大天体の衝突や、(現在は何らかの理由で失われた)巨大衛星の引力により徐々に傾いていったなどの仮説がある。
衝突説の場合、シミュレーションによる検証では、少なくとも2回は衝突する必要があるという報告がある。

天王星は地球磁場と同程度の磁場を持つ。この事実はボイジャー2号による探査で明らかになった。
しかしながら、磁場の中心は惑星の中心から大きくずれており、自転軸から60°も傾いている。
そのため、地球の磁場よりも形が乱れやすいと考えられている。
放射線帯も土星並に強く、内側の衛星や環の物質は黒く変色し(アルベドの値が下がっ)てしまう。
天王星の環が写っている画像も存在するが、これは主に赤外線の領域で撮影されたものか、あるいは可視光+赤外線の合成写真である。
また、磁場が存在する以上、天王星ではオーロラが発生する。(2011年、実際にハッブル宇宙望遠鏡によって観測された。)

天王星の主要な衛星は内側から順にミランダ、アリエル、ウンブリエル、チタニア、オベロンの5つ。
ミランダの軌道はちょうど環の外縁にあたる距離にある。
不規則衛星は全てオベロンの外側を公転している。
これらの衛星は逆行……というか地軸の傾きを無視した軌道を周回しているため、天王星の重力に捕獲された天体と考えるのが自然である。

Uranusの語源はギリシャ神話における天空の現初神ウラノスに由来。
なお、天王星以遠の天体は、近代以降に観測技術や理論の発展により発見されたため、それにまつわる神話や伝承がない。
そのため、名前をはじめ、惑星記号、占星術における意味づけ・属性など、当時あるいは後世の人々によって後付けされたものである。
とはいえ、前例に倣って、原則「未使用の神話上の大物」の名を与えることになっている。
属性は風属性が該当するが、光属性雷属性であることも。


海王星(Neptune)
冥王星の追放により、再び太陽系最遠の惑星となった「天王星型」のガス惑星。
太陽からの平均距離は約30au。公転周期は約164.8年。
軌道離心率(約0.008)が木星(約0.048)よりも低く、真円に近い軌道を持つ。
大きさは地球の約58倍。
重力は1.14G(11.5m/s²)。気温は-200℃以下。
質量自体は天王星よりも大きいが、密度も高いため、サイズは海王星のほうが少し小さい。(重さで天王星よりも収縮している)
実際見えないが、土星と同様にリングがある。規模・性質は木星の環に近い。
天王星の軌道が予想よりも遠くに発見されたことから、その存在が仮定されたという、やや変則的な経緯により導き出された歴史を持つ。

海王星もまた巨大ガス惑星の例に漏れず多くの衛星を連れており、14個が確認されている。
海王星の規模のわりに数が少ないようにも思えるが、あまりにも遠く暗いため、まだ発見されていない衛星もそれなりに残っていると思われる。
また、主星(太陽)から離れているため、海王星の形成当時、周辺宙域にはもともと衛星や小惑星等の天体の材料となるような物質自体が少なく、
仮に今後の観測・研究にて全ての衛星の存在が明らかになったとしても、木星や土星ほどの数にはならないと考えられる。

最大の衛星トリトンは自転の向きとは逆に公転(逆行)している珍しい衛星。
海王星の重力に捕獲されたカイパーベルト起源の天体という説が有力。
しかし、捕獲された天体にしては軌道離心率が異様に低く、真円に近い公転軌道を持つことが特徴で、かつ未解決の謎でもある。
なお、トリトンは海王星の自転と逆行しているため、徐々に公転速度が低下しており、実際には円軌道ではなく海王星に落下するゆるやかな螺旋軌道を描いている。
将来的には海王星に近づき過ぎてロシュ限界を越え、潮汐力によって崩壊しリングの材料になる運命にある。

海王星は太陽系内でも最も強い風が吹いている領域であり、その風速は最速で2200km/hにも達する。
この風速は超音速(相対速度が音速以上)の領域に入っており、海王星の大気の活動は非常に活発である。
ボイジャー2号が海王星を訪れた当時(1989年)には木星の大赤斑に(見た目的に)似た「大暗斑」と呼ばれる暗い渦が存在したが、現在は消えて別の場所に似たような小さな渦がある模様。
これは渦ではなく、物質の密度が低い領域が暗く見えているのではないかという説もある。
いずれにせよ、この気象現象が海王星において普通なのか異常なのかはよくわかっていない。

海王星の大気はメタンの割合が比較的多く、メタンには赤色の光を吸収する性質があるため、結果的に青みがかって見える。
とはいえ、大気の主成分は木星や土星と同様に水素、ヘリウムで、氷(炭化水素、窒素、水)の割合が他の惑星よりも相対的に多いだけである。
ただ、メタンの割合(1.5%)が天王星(2%)よりも少ないにもかかわらず、海王星のほうが青く見える理由については不明な点が多い。

Neptuneの語源はローマ神話における海神ネプチューン(ポセイドン)から。
属性としては間違いなく水属性。水星と属性被ってんじゃねえかという突っ込みもあるが、水星の水を『水銀(mercury)』として解釈すればネタ被りはしないはず…。なんなら淡水と海水で区別したっていいし、氷属性と水属性に分けたっていい。

ウルトラマンタロウではここでタイラントが誕生し、ゾフィーと戦っているが、そもそもな話、海王星は陸上のないガス惑星である。多分、陸地のある衛星あたりで戦闘をしていたものと思われる。(木星までの惑星にも同じような事が言えるが。)


●冥王星(Pluto)
06年に、惑星とよぶにはあまりに小さいために準惑星へと降格しました。……だって、月より小さいんですもの。


●太陽系外縁天体
海王星以遠に存在する天体群の総称。英語では trans-Neptunian Object(s) (TNO)という。
そして準惑星のうちTNOに属するものを冥王星型天体と総称している。
今のところ、小惑星帯にあるケレス以外の準惑星は全てここに分類されている。
未だ分類の途中であり、今後の議論の経過次第では、このカテゴリに分類される天体の数が増える可能性がある。

●冥王星(Pluto)
かつての第九惑星。現在(2006年以後)は準惑星に分類されている。その後与えられた小惑星番号は134340。
最大級の準惑星であり、主要な太陽系外縁天体であり、それらの筆頭である。
太陽からの平均距離(軌道長半径)は約39auで、公転周期は約247.7年。
大気は希薄だが存在し、組成は窒素、メタン、一酸化炭素が主体。
近日点(29.574au)付近では太陽から受ける熱量が大きくなり、物質が昇華するため大気の量が増えるが、遠日点(49.316au)付近ではそのほとんどが凝固する。
夏の時期は気化熱によって気温が10℃程度下がるため、(地表の)気温は夏のほうが低いという妙なことになっている。

衛星のカロンとはいわゆる連星系(重心が主天体の外にある系)を成しており、互いの(共通重心の)周りを公転している。
互いの距離が近いため、両者は常に同じ面を向き合わせている。
この冥王星-カロン系は太陽系で最大の連星系である。
この他に冥王星はステュクス、ニクス、ケルベロス、ヒドラという4つの衛星を持つ。

公転軌道は黄道面から大きく傾いており、近日点は黄道面の北側-8auほどの位置にある。
また、軌道離心率が高く楕円軌道を描くため、近日点(29.574au)は海王星のそれ(29.886au)よりも近い。
直近の近日点通過は1984年12月頃で、1979年2月~1999年2月の20年間は海王星よりも太陽に近かった。
海王星とは2:3の軌道共鳴を起こしており、冥王星が太陽を2周する間に海王星は3周する。
そのため、冥王星(と冥王星族)は海王星に近づき過ぎず、捕獲されたり弾き飛ばされたりすることなく安定な軌道を保てている。
結果論で考えれば、冥王星は海王星との軌道共鳴が起こる軌道に乗れた(追いやられた?)からこそ、現在も太陽系の惑星天体として存在できているとも解釈できる。
属性としては闇属性の場合が多い。
地球からの距離が遠いため、中々鮮明な画像が撮影できなかったが、探査機ニューホライズンによって遂にその画像が撮影された。その画像を見たNASAの人はたいそう驚いた。なんと!冥王星の表面には氷でできたハート♡があったのだ。後にこの領域は冥王星を発見したグライド・トンボーの名を取って「トンボー領域」と名付けられた。
英語名のプルート(Pluto)は冥府の神プルトーが由来。衛星の名前にあの世に関する物の名前が付けられているのはこのため。

+ 太陽・惑星・冥王星・月データ
天体名 太陽からの距離(億km) 直径(km) 質量(※垓t) 重力(地球=1) 公転速度(秒速) 公転周期(地球年) 自転周期(地球日) 表面温度(℃) 衛星の数
水星 0.579 4880 3.3 0.38 47.1 0.24 58.65 167(-180〜430) 0
金星 1.082 12104 48.69 0.91 35 0.62 243 464 0
地球 1.496 12756 59.72 1 29.8 1 1 15(-89〜56) 1
(月) - 3476 0.73 0.16 1 0.074 27.3 -20(-170〜110) -
火星 2.279 6792 6.4 0.38 24.1 1.88 1.03 -43(-140〜20) 2
木星 7.784 142984 18986 2.37 13.1 11.86 0.41 -120 95
土星 14.267 120536 5688 0.93 9.6 29.53 0.46 -130 146
天王星 28.709 51118 868.6 0.89 6.8 84.25 0.72 -220 27
海王星 45.044 49528 1024 0.91 5.4 164.79 0.67 -227 14
(冥王星) 59.151 2370 0.13 0.06 4.7 247.74 6.39 -223 5
(太陽) - 1392000 19891000 28 - - 27.3 6000(4500〜2000000) -
※垓は兆の1億倍。兆の1万倍は京。

●エッジワース・カイパーベルト天体
この領域(30~50au程度)に存在する天体は、その筆頭である冥王星を含め、海王星との整数比の軌道共鳴を起こしているものが多く、それらの天体は比較的安定した軌道を保っている。
その中でも冥王星と同じ2:3の共鳴を持つグループを冥王星族と呼ぶ。
その一方、この領域内で海王星との軌道共鳴を起こしていないグループも存在し、それらはキュビワノ族(古典的カイパーベルト天体)と呼ばれ、ハウメア、マケマケ、クワオアーらが該当する。
しかしながら、どの天体も軌道が黄道面から傾いていて、軌道離心率が高い(楕円軌道)という特徴があり、真円に近く(ほぼ)同一平面上にある惑星の公転軌道と比べて歪な軌道要素を持つ。
クワオアーはこの手の天体としては軌道離心率が低いことが特徴で、太陽からの距離は約42~45auの間に収まっている。
軌道要素だけを見れば冥王星よりもよっぽど惑星"らしい"軌道を取る。(ただし軌道傾斜角は8°程度ある)
黄道面に対してリング状ではなくドーナツ状に分布していることも特徴。

●散乱円盤天体、分離天体
冥王星やカイパーベルト天体よりも遠くにある天体群。
Extreme trans-Neptunian Object(s) (ETNO) とも。
要するに太陽系外縁天体(TNO)の下位区分なのだが、天文学者や研究機関によって区分はまちまちで、未だに議論が続いている。

散乱円盤天体については、カイパーベルト天体と明確に区別するグループと、本質的には同類と見ているグループとが存在する。
主に冥王星の近日点と同等あるいは少し内側に近日点(概ね30au未満)を持ち、冥王星よりもはるかに遠い遠日点(50au~150auなどまちまち)を持つ歪な軌道を持つ天体が多いことで知られる。
軌道傾斜角(黄道面に対しての傾き)もバラバラでつかみどころがない。
代表的な天体は準惑星エリス(136199 Eris)。※小惑星のエリス(11980 Ellis)とは別人別の天体。

分離天体の"分離"とは惑星による重力的な干渉から分離されている、という意。
とりあえず、"海王星の重力が軌道に影響を及ぼさないほど遠くにある"ことが一応の基準だろうか。

代表的な天体はセドナ(90377 Sedna)。
近日点は約76auで、遠日点は約900~1100auと見積もられている。公転周期は1万年以上。
発見当時は約90auの距離に位置していた。
この軌道はエッジワース・カイパーベルト天体および散乱円盤天体のどちらにも該当せず、オールトの雲(1万~10万au)の領域にも当てはまらないため、セドナの発見はかつての分類を見直す契機となった。


【太陽系がモチーフの作品、キャラ等】

【余談】

各惑星の英語名はギリシャ・ローマ神話の神々に由来する。(詳しくは上述の構成惑星を参照。)
漢字名は中国の五行説に基づくが、土星でネタ切れしたためにそこから先は英語名の中国語訳(天王星、海王星)になる。

……あっ!冥王星は日本人の発案(「星の文学者」と呼ばれた野尻抱影氏による)である……やったね!!






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最終更新:2024年01月14日 16:11

*1 距離約53~67光年。ただしアルデバランも銀河系に対して公転しているため、パイオニア10号がアルデバランに到達することはない。

*2 黄色い星ということになってはいるが、実際の色は白で、黄色に見えるのは地球の大気を通して見ているため。

*3 すなわち、太陽を構成する物質の組成を調べれば、それが太陽系全体の組成とみなせてしまう。

*4 水星上での太陽の子午線通過の間隔

*5 水蒸気の水を宇宙空間に逃がさないだけの重力と大気圧は備えている。

*6 恒星日換算での話。

*7 地球-金星-太陽を線で結んだときに地球-金星と金星-太陽のラインが直角(90°)になる位置関係。

*8 赤道上の値。両極では自転に伴う遠心力による相殺がなく9.83m/s²ほどになる。

*9 ある天体を公転する天体は近日点付近のほうが公転速度が速く、遠日点付近では遅くなる。ヨーヨーを振り回したときの挙動を思い浮かべるとイメージしやすいだろうか。

*10 天文学では水の「氷」だけでなくメタンや窒素などの「氷」も含め、高密度な物体の総称として「氷」と呼ぶケースが多い。時には液体すら「氷」と呼ぶことすらある。ざっくり言えば、気体でなければ全部まとめて「氷」くらいの意味合い。

*11 うち命名されているのは57個。