ねぎまの殿様(古典落語)

登録日:2012/10/07(日) 02:00:30
更新日:2023/05/07 Sun 05:56:39
所要時間:約 5 分で読めます




「ねぎまの殿様」は古典落語の一つ。
ショタ先生…ではない。

お忍びで市井を歩いていた(些か世間知らずな)殿様が、庶民にはお馴染みのある物に出会って…という、「目黒のさんま」と似た趣を持つ作品である。



【あらすじ】


とある殿様、お付きの三太夫を連れて向島の雪見にお忍びで出掛けた。

すると道中、煮売り屋が軒を連ねていた。
冬の寒い最中でどの店も、『はま鍋』、『ねぎま』、『深川鍋』などの小鍋仕立ての料理のいい匂いが漂っている。

殿様、その匂いにつられて、三太夫が下々の料理屋だからと止めるのも聞かず、一軒の煮売り屋に入った。

大権現様の下に醤油樽を床几(しょうぎ)がわりに座ったが、何を注文して良いのか分からない。

小僧は早口で何を言っているのか分からず、隣の客が食べているものを尋ねると『ねぎま』だと言うが、こちらも早口で殿様には「にゃあ」としか聞こえなかった。

とりあえず『にゃあ』を注文してみると、マグロは骨や血合いが混ざったブツ切りで、ネギも青いところや芯が入った小鍋であった。
殿様には三色で三毛猫の様に見え、それで『にゃあ』かと一人納得。

一口食べるとネギの芯が鉄砲のように口の中ではじけ飛んだ。
殿様、大いに驚くも初めて食べた熱くて味の濃い料理にご満悦。

ついでに酒を注文すると、並は36文、上のダリは40文で、ダリは灘の生一本だからというので、ダリを頼んだ。
いつも飲んでいるような上品なおちょこではなく、一合枡に並々と注がれている。

2杯呑んですっかり上機嫌になった殿様、結局向島には行かずに屋敷に戻ってしまった。


殿様が煮売り家でその様な食べ物を食べたと分かると問題になるので、ご内聞にと言う事になったが、どうしても『にゃあ』の味が忘れられない。

殿様のお屋敷では昼の料理の一品だけは殿様の食べたいものを所望できた。
殿様、役目の留太夫に『にゃあ』を所望する。

「にゃんのことやら」と聞き返す事も出来ず留太夫が悩んでいると、三太夫に「ねぎまの事である」と教えられた。

留太夫も殿様が下々の料理を所望することに驚いたが、命令ならばと『ねぎま』を作ることにする。

ところが、いらぬ気を利かせ脂が強すぎるとマグロは賽の目にして蒸して脂ぬきし、ネギは固い青い部分や芯を捨ててしまい、残りの部分も茹でてしまった。
殿様の健康第一と考え、味付けも薄い塩味。

殿様の舌を火傷させてはならぬと十分冷ましてから『にゃあ』を持っていく。

三毛ではなく、灰色の『にゃあ』を見て更なる珍味かと期待した殿様、一口食べるもパッサパサ、も一つ食べてもパッサパサ、当然殿様大激怒。

「灰色のこれは『ちゅう』である。三毛の『にゃあ』をもてい!」

どうすることもできずに留太夫が悩んでいると、三太夫から「丁寧に作りすぎ」と教えられる。

慌てて捨てようとしていたブツのマグロとネギの青い部分と芯で、三毛の『にゃあ』を濃い味で作り、温かいうちに持っていく。

ようやく殿様ご満足。ついでにダリを所望した。


三度悩む留太夫であったが、三太夫から「いつもの酒を枡に入れて持っていけ」と教えてもらう。
そんな大量にお飲みになってはと思いつつも酒をなみなみと升に注ぎお膳出し、ようやく役目を終えて一安心。


腹も膨れて酔いも回り大変ご満足の殿様だったが、何か物足りない。
はたと気づき、膝を叩いて一言、

「堅苦しく座っていては面白くない。醤油樽をもてい!」



【余談】


「目黒のさんま」とは異なり、現在では余り演じられない演目。
というのも、現在では材料のマグロ(しかもトロ)が高級魚の代表になってしまったからであろう。

江戸の当時は脂は下品な味であり、保存もできないため、トロは最下級の下魚だったのである(詳細は「トロ(食べ物)」を参照)。

近年では、故・5代目古今亭今輔師匠が得意とした。





追記・修正はトロを豪快に鍋にぶちこめる人がお願いします。

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最終更新:2023年05月07日 05:56