フレイムヘイズ(灼眼のシャナ)

登録日:2010/08/31(火) 10:19:01
更新日:2024/01/02 Tue 00:51:00
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フレイムヘイズ【Flame Haze】



灼眼のシャナ』に登場する異能者たちの総称。


☆概要

この世の歩いて行けない隣にある異世界“紅世”の住人、“紅世の徒”の中でも強力な“紅世の王”と契約した元人間たち。
「フレイムヘイズ」という名称の由来は「炎(flame)の揺らぎ(haze)」から。
契約する王とその能力によって全員に『○○の××手』という「称号」が付けられる。称号は形式的なもので二つ名や異名とは別物。これは、それぞれの“王”と最初に契約した人間が勝手に名乗り、それが受け継がれる。
正式な名乗りでは「契約している王の真名」「王の通称」「称号」「通称」を続けて名乗るため、凄く長い。作中でも突っ込まれた。*1


例︰
「我が名は"天壌の劫火"アラストールのフレイムヘイズ⸺『炎髪灼眼の討ち手』シャナ!!」
「同じく"夢幻の冠帯"ティアマトーのフレイムヘイズ⸺『万条の仕手』ヴィルへルミナ・カルメル」


フリアグネ「まるで中世の侍だね」
マリアンヌ「名乗るだけで一行使っちゃいますし…」


☆存在理由・目的

何千年も昔、人間の感情を感知することで異世界の存在を知った“徒”たちはこの世に渡り来て、
本来この世の存在でない自分たちをこの世に存在させるために、人間の存在を喰らい、自分の力に変える。
しかし、この世の存在を食らうことは世界そのもの流れに歪みを生み、ついには捻くれたこの世に引きずられた両界の狭間に嵐が巻き起こり始めた。

狭間を渡ろうとする“徒”に、死亡者や行方不明者が多数出るまでになることでようやく彼らはその危険性に気づき、
世界への悪影響の拡大がいつか二つの世界を滅ぼす大災厄となることを恐れて「人間を喰らうの止めよう、止めさせよう」という考えが生まれた。

しかし、元来己の欲望を一義とする“徒”の中には、説得では応じない者、その恐れを杞憂だと信じない者、今が楽しければどうでもいい者なども多く(この世の側で顕現しているタイプはほぼ全て。そうでないものはそもそもこの世に来ていない)、世界の歪みは拡大を続けた。
その中で、たとえ力尽くでもこの世で暴れる同胞を止めねばならない、という考えが“徒”たちの中に生まれるが、無道を働く同胞を討つには強大な存在たる“王”が行かねばならなかった。

が、彼らもまた“徒”であるため、この世の“徒”を止めるためにも人間を喰らわないと存在できないため、歪みを生んでしまうという本末転倒に悩まされることになった。
そして、大災厄説の発生から数百年、多くの試行錯誤と実験の果てに、
歪みを生まずにこの世の“徒”を戦いで止めるためのシステムとして生み出されたのがフレイムヘイズである。

以後、彼らは世界の歪みの発生を止めるためという使命と大義名分、“徒”と戦う力を与えられ、この世で暴れる“徒”と戦っている。その活動内容から「討ち手」や、この世で暴れる“徒”からの蔑称として「同胞殺しの道具」とも呼ばれ、少なくとも三千年以上の長い時の中で、何千何万以上のフレイムヘイズが生まれ、死んで行った。



☆生まれ方
“紅世”における「神」の召喚の儀式の応用である「契約」を“王”が人間に持ちかけ、人間側がそれに了承することで生まれる。

契約が完了すると、人間はその全存在(人間としての過去・未来・現在への影響力・存在)を召喚の代償として失い、
その空白を『器』に見立てて“王”が召喚・転移してくる。
これにより、人としての外観・機能を保ち存在しながら、王の存在の力を持ち、振るうことが出来る異能者・フレイムヘイズとなる。
なお、この際には「元人間の持ち物」として認識されている以外の物、例えば周囲の人間の記憶なども失われます。
外界に接する器は人間、存在は“王”という一種のごまかしである。


☆人間との違い
フレイムヘイズは人間と一見何も変わらないが、巨大な“王”を内に秘める彼らは、存在を気配として感じ、同時に“存在の力”を操ることができる。

そして人間としての存在を失っている彼らは、契約時の姿から基本的に人間時代の姿や精神などはそのまま保持されているが、存在的には彼らは「人の皮を被った“徒”」に近く、“存在の力”さえ十分ならば食事も睡眠も必要なく、代謝なども精神的な作用以外では起きないため垢も出ない。
腕がもげようが「元の形」に戻る。

そして、死ねば彼らの存在や周囲との関連性を保つことが出来なくなり、死体も炎となって散り消え、持ち物なども消えてしまう。
乱暴な例えをすれば人間としての存在はトーチに近く、宝具の代わりに“王”が入っていると思えばいい。


☆契約している“王”

フレイムヘイズの肉体(器)の中にいる。
この世の“徒”を止めるために“紅世の王”がやってくるわけだが、人間をそのまま器とするには王の存在は強大に過ぎた。
そのため、契約する際、自分の大きさをフレイムヘイズの『器』に合わせて小さくすると共に休眠させることになる。
この眠る王から漏れ出す力が、フレイムヘイズの力となる。

そのため、フレイムヘイズはその『運命と言う名の器』が大きかった=世界への影響力が大きかった者ほど、
燃料タンクが大きく、“王”の力を大きく使える強力な素質であると言える。
例外はあるが、時代が古く文明が未成熟なほど、個人が及ぼす影響力は大きくなる傾向がある。
その為、単純な経験値の差もあるが、古代の王族や大部族を纏める神官等と言った経歴の人物は強大なフレイムヘイズになり易い。カムシンや大地の四神が典型例。

“王”は契約している(召喚され続けている)限りは、その存在の総量が固定され、時間経過で失った力も回復する。
その代わり、フレイムヘイズの身の内では動きが取れず、『神器』と呼ばれる通信機代わりの道具を形成し、それに意思を現すことで外部との会話や知覚を行うことになる。

この『神器』は大きく分けて三種類あり、一つは単なるアクセサリー、二つ目はそれ自体が武器となるもの、三つ目は自在法の媒体となるものである。
ただし、神器の形状自体は討ち手が契約した時に決定されるため、同じ神器でも多少形状が違うこともある(「コキュートス」の場合、マティルダは指輪、シャナはペンダント)。

一つ目の例としては『炎髪灼眼の討ち手』の「コキュートス」、『儀装の駆り手』の「サービア」、『震威の結い手』の「ドンナー」、『犀渠の護り手』の「ターボル」など。このタイプが最も多い。
二つ目の例としては『剣花の薙ぎ手』の「昆吾」、『極光の射手』の「ゾリャー」など。
三つ目の例としては『弔詞の詠み手』の「グリモア」、『輝爍の撒き手』の「クルワッハ」、『具象の組み手』の「B.S.I」など。

フレイムヘイズが死んでも直接的には“王”が死ぬことはなく、そのためその“王”が二代目以降のフレイムヘイズを作ることはむろん可能。
だが、戦闘で力を消耗した状態で、荒れた狭間を渡るのは“王”であっても命の危険があり、また使命やフレイムヘイズとの親交から、
自身の力を燃やしてこの世に現れて戦い、燃え尽きて死ぬ“王”もそれなりの数に登る。(討ち手と契約する“王”は召喚の契約によって「この世」に縛られた状態であり、人を食らって“存在の力”を得るというプロセスを経ないまま顕現する。劇中では「薪のない大火を燃やす」と形容されている)


☆能力
フレイムヘイズは自身の身の内の“王”の力を振るうことができ、
存在を気配として感じることや、自分(契約する“王”)や外部の“存在の力”を操ることができるようになる。
その力は元人間の抱く『強さのイメージ』と契約する王の能力の融合で顕現し、そして力への欲求によって引き出され、
それを元人間の技量で扱い、自分の身体強化や、この世に不思議を生む『自在法』として使う。

自在法は二つに大別され、“存在の力”を技量のみで扱う誰でも使えるものと、契約する王の能力による固有能力がある。

そのため、固有能力に関しては契約する王で千差万別、フレイムヘイズといっても『炎使い』はむしろ少ないほど。そもそも「フレイムヘイズ」という名前自体、契約の際に人間が幻視する両界の狭間が「渦巻き揺らぐ炎」というイメージだったことからついた呼び名である。

あまりに炎を連想させるイメージが多い上、基本の自在法として「炎弾」があり、トドメに主役のシャナが本物の炎使いなので読者も混乱することがあり、質問コーナーでフリアグネがフォローしていた。


☆活動

説得を聞き入れずこの世で暴れる徒を確実に止めるには、戦いと、彼らを殺すことが不可避であること、
人間が「人間としての全て」を捨てることに了承するほどの激情が必要な点から、
フレイムヘイズとなる人間は主に、徒に大切な人や者を奪われ、その復讐を望む人間が成る。
また、徒に復讐心を抱ける=存在の喪失を感じ取れる=徒という異物に反応するこの世の抗体、という存在でもある。

これは、封絶の発明により討ち手となる人間が減少した現在でも、相当数のフレイムヘイズが新たに生まれ、存在していることが裏づけとなっている。

その活動原理は主に、大災厄発生の阻止という大義と使命(世界のバランスを守る)、徒への復讐や怒り(徒を殺し、行動を阻止する)、
親交や矜持(友や人間社会を守る)などに分類される。
人間としての全てを代償に復讐の力を得た者が多い関係上、徒への復讐を第一の行動原理としている者が多いのは言うまでもない。

そのため、基本的には一人一党気質であり、共闘やコンビを組むことは稀。討ち手同士の争いも、殺し合いこそ珍しいものの衝突自体は珍しくない。
現代でこそフレイムヘイズの情報交換・支援組織「外界宿(アウトロー)」なども整備され、
情報交換レベルのことは頻繁に行われるようになったが(シャナのように外界宿をほとんど利用しない者は前時代的な存在)、
それ以前は外界宿も溜まり場程度で、フレイムヘイズ同士の繋がりは個人の親交程度以上のものは基本的には無かった。

徒との戦いが前提の存在であるフレイムヘイズにとって戦死は当然のことであるが、生き延びられたとしても、
いかに肉体的には超人であろうと精神は人間のままであるため、その性格や生き様によって心への影響は避けられない。
復讐心を保てず戦いに倦む者もいれば、復讐を成した後にも目的を失い自殺同然に果てる者、
使命の追求などの新たな目的を見つける者、あるいは道を踏み外した者、
使命感から『歪み』を均して二次被害を防ぐ『調律師』や支援施設『外界宿』の管理者に就く者など個々によって異なる。
ダンタリオンが強制契約実験*2によって生み出したフレイムヘイズなどは、使命感も復讐心も持たず目的がないどころかわけもわからずフレイムヘイズとなったため、
多くが道を踏み外したり自殺するなど悲惨な末路を迎えている。例外はサーレ・ハビヒツブルグくらいか。

そんな個人個人の思想でバラバラ、後手後手に回らざるえない彼らも、「使命」という共通の行動原理があるため、世界の危機には一挙団結できるという強みもあり、
中世にはとむらいの鐘、現代では仮装舞踏会という徒の大集団と戦うために、
「フレイムヘイズ兵団」という呼称の軍隊としてまとまって行動したこともある。

☆フレイムヘイズ兵団
大規模な“紅世の徒”の組織に対抗するため、本来徒党を組むことがめったにないフレイムヘイズ達が集い結成された軍団。
16世紀の『とむらいの鐘』との大戦と現代の『仮装舞踏会(バル・マスケ)』との大戦時に二度にわたって結成された。

【16世紀】
“紅世の徒”たちの戦闘集団『とむらいの鐘』に対抗すべく、神聖ローマ帝国(現ドイツ)において結成された。
その結成には“炎髪灼眼の討ち手”マティルダ・サントメールと“万条の仕手”ヴィルヘルミナ・カルメルが大きく携り、組織編制、人員結集、物資調達など兵団の組織としての体裁は、“犀渠の護り手”ザムエル・デマンティウスが整えた。

軍団としての最低限の体裁はあるが、基本的に一人一党気質のフレイムヘイズたちを寄せ集めただけの烏合の衆に近く、戦略的な団体行動は苦手とした。
さらに、フレイムヘイズ側は大戦の発端となった『都ぐらい』を目的とするオストローデでの戦いや、『小夜啼鳥』争奪戦を始めとする、『とむらいの鐘』との長期に及ぶ激戦の中で多くの強力な討ち手を失っていた。
そのため、決戦の際には総大将のゾフィー・サバリッシュ以下、幹部や部隊長こそ数少ない腕利きのフレイムヘイズが配置されたが、兵力のほぼ全ては、万を越す『とむらいの鐘』の軍勢と正面から渡り合うために急遽“紅世の王”と契約した、独自の技も磨いていない新米フレイムヘイズたちから成っていた*3


【現代】
中世の『大戦』の終結により解散して以降、『内乱』、ハワイ解放戦、対[革正団]戦争などの大規模な戦争でも再結成されることはなかったが、『仮装舞踏会』との全面戦争に突入するに当たって数百年ぶりに再結成された。
欧州のみであった中世の兵団とは違い、全世界規模の討ち手らで構成されていた。

☆新世界「無何有鏡(ザナドゥ)」では

新世界では、存在の力に満ち溢れているために契約した王たちはフレイムヘイズを介さず、王たちが自分で顕現して活動することに支障がない。
そのためフレイムヘイズを生み出す必要はなくなった。(生み出すこと自体は可能と思われるが)

多数のフレイムヘイズも新世界にわたっているため、いなくなったわけではない。
しかし、作中でフレイムヘイズと契約していた王たちは新たなフレイムヘイズとの契約を結ばず単独で顕現し、「秩序派」としてフレイムヘイズたちと協力している。
そのため、現在生存しているフレイムヘイズが死亡すればフレイムヘイズも絶滅すると考えられている。
フレイムヘイズと徒の間が改善に向かいつつあり、更に秩序派の応援のある中では、かつてほど戦死するとは思われないが。

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最終更新:2024年01月02日 00:51

*1 ちなみに“革正団”の一件以降、挨拶などをする場合は討ち手⇒“王”の順で呼びかけることが作法になっている模様。

*2 要は、王と人間の合意を前提とせず強引にフレイムヘイズを生み出す実験。

*3 この時に「粗製濫造」されたフレイムヘイズは、後世で「ゾフィーの子供たち」と俗称された