天照大御神

登録日:2011/05/06(金) 03:13:01
更新日:2024/01/03 Wed 19:43:11
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■天照大御神


天照(アマテラス)大御神(オオミカミ)、または天照(アマテラス)大神(オオカミ)は『日本神話』に登場する神。
国家神道の最高位に在らせられる大神である。

【概説】

『古事記』では、宇宙の大地(オノゴロ島)を創った伊邪那岐命(イザナギノミコト)が最後に生んだ“最も貴き神”=三貴子の長姉にあたる。
『日本書紀』でも、伊邪那岐と伊邪那美命(イザナミノミコト)の夫婦神が生んだ最後の三人の子供(三貴子)の長姉。
『古事記』では、黄泉国より逃げ帰ったイザナギが禊を行った際に、最初に左目を洗った時に誕生した。
『日本書紀』では、日本書紀本文や異伝の一つではイザナギとイザナミからツクヨミヒルコスサノオと一緒に生まれ、他の異伝では古事記と同様の話のほかにイザナギが左手に白銅鏡を取ったときに出現したともされている。
このように、イザナミはアマテラスの誕生には関わっていない逸話もあるが、系譜としてはイザナギ・イザナミ夫婦の子の内の一柱となる。

父であり、国生みの主たるイザナギから、神々の国である高天原(タカマガハラ)の統治を任された日本神話の三人の最高神の一人で、太陽の女神と考えられる。
女神が最高位に居るのは世界的に見ても珍しいとされるが、性別に関しては異説もある(後述)。
また、最高位の神とはされるものの最強や最大の神とは言い難いのも大きな特徴と云える。

また、皇室の祖神=つまりは、ご先祖様であるとされている。
孫にあたり、天皇家の祖となった天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命(ニニギ)が、高天原から地上に降りて、大国主神(オオクニヌシ)より支配権を譲られ、以降は地上に定着したからで、これを天孫降臨と云う。

因みに、皇祖神と云うだけでなく明確に日本神話中の最高神と定められたのは、明治天皇の勅令によるものであり、それ以前からも大日如来と習合したり、浮世絵などで神々のトップに描かれるなど最高神としても見られる重要な神であったが、時代や所属に応じて最高位には造化三神や、同格の神として大国主神を推す声もあり、神道家達の間では意見が割れていた。

明確に国家公式で最高神となったのは上記の様に近代に入ってからであり、国家神道が日本の国体の礎として定められた近代化~世界大戦に掛けての間に完全に定着したのだとも云える。
現在では上述までの諸々の意見を併せた結果、天之御中主→国常立尊→天照大御神……と、中心となるカミは姿を変えつつ顕現していったという解釈がされるようになっている。

天神様などと呼ばれ、全国各地でも信仰されているが、矢張り「お伊勢さん」こと、全国の神社の総本山である『伊勢神宮』の内宮に鎮座坐しましておられるのが有名。
ご神体は三種の神器の一つとして有名な八咫鏡(ヤタノカガミ)であり、これは天照大御神みずからが高天原より地に降ろしたとされている。

尚、特に縁も無さそうなのに全国に天照神社があるのは、地方の特に他方に影響を持っている訳でもない神が、最高神天照の名の下に吸収、看板換えが行われた為である。
……ひでぇ!……と、言うようなこともなく、元々、『古事記』と『日本書紀』の記紀神話が編纂されたのも、各地の神話を纏めて“おふぃしゃる”たる国家神道が創設されたのも、天皇家と朝廷の名の下に改めて国家を平定しようとする目的があったからである。
とはいえ明治維新で寺どころか神社も書き換わりまくるまでは、むしろ朝廷の方が現代では忘れられた地方のマイナー神を大事にして土地を与えてたりと、時代によって国の動きもバラバラである。
小さな神社の場合は中世以降の御師による布教や江戸時代の御蔭参りや伊勢講など、近世以降に庶民の天照信仰が全国に広がったことによるものも多いと思われる。
神仏習合でも、宇宙神とも呼ぶべき大日如来と同体とする説が執られた為、ボンズにとっても重要な神様である。
まあ、坊さんとか以前に日本人なら当然と言えるのだが。
因みに、大日如来以前にも観世音菩薩(十一面観音)と習合していた時期もあったと云う。


【呼び名】

『古事記』では天照大御神
『日本書紀』では天照大神
とあり、項目名の様に、これが最も多く用いられる御名となっている。

この他、『日本書紀』では大日孁貴神(オオヒルメナムチノカミ)の名が天照大神よりも、前に出されている。
『万葉集』では天照日女之命(アマテラスヒルメノミコト)指上日女之命(サシノボルヒルメノミコト)
“孁(ヒルメ)”とは、霊的な力を持った女=巫女のことであるとされ、また、“日女(ヒルメ)”は太陽の巫女の意を込めている、とも考察される。
後述の男神説では、現在に知られているアマテラスを太陽神の妻(ヒルメ)であり、天照大御神その物ではない、とする考察もあったりする。

この他、皇祖神であることから『伊勢神宮』では天照皇大御神(アマテラススメオオミカミ)皇大御神(スメオオミカミ)
神職が神前にて御名を唱える時には天照坐皇大御神(アマテラシマススメオオミカミ)
更に、神社によっては大日女尊(オオヒルメノミコト)大日女霊(オオヒルメ)大日女(オオヒメ)……と呼ぶ等、表記や別名が多い。

尚、読み方については現代では“アマテラス”が一般的で、ほぼ統一されているが、この呼び名が広まったのは江戸時代に国学者の本居宣長が『古事記伝』を出版して一般層にも広めてからで、それ以前の平安後期~鎌倉時代には“あまてるおほみかみ”、“あまでらす”
中~近世までには“テンショウダイジン”の音読みも多く使われていたとされている。

……まあ『天照大御神』か『天照大神』でも、普段見かけない漢字のオンパレードな日本神話の固有名詞群の中では断トツで書きやすい部類だと思うが。

“アマテラス”とは“天”“照”“尊”の意。

……『てんてるだいじん』とか言わないように。
ショックを受けてお姉ちゃん引き篭っちゃうゾ!

【アニヲタ的主な神話】


◆誕生

あるとき、イザナギノミコト(以下イザナギ)は、亡くした妻に会うために黄泉の国へと出向いた。
その帰りのこと――

黄泉から戻ってきたイザナギの身体にはその穢れが染み付いていた。そこで、イザナギは川で禊をすることにした。
そして禊の最中、顔を洗うと、左右の目、そして鼻から飛び散った雫から三柱の神が生まれた。

末っ子にあたる一柱は須佐之男命(スサノオノミコト)
もう一柱は月読命(ツクヨミノミコト)
そして三柱のうち一番上にあたるのがアマテラスである。
この三柱は『三貴神』などと呼ばれる。

そんな三人の子供を見たイザナギは
「私は今まで沢山の神を生み出してきたが、最後に特に貴い子を得ることができた」
と言って大層喜んだ。
三人の子供に次代を任せることにしたイザナギは、スサノオには海を、ツクヨミには夜の世界を治めるよう命じた。
そして、アマテラスには、高天原(平たく言えば日本神話の天界といったところ)を治め、神々を統治するよう命じ、
さらにその証として自身が身に着けていた勾玉の首飾りを譲った。

こうして、アマテラスは創世神である父から最高神の地位を任せられたのである。


◆スサノオとの誓約

さて、アマテラスが父の言いつけどおりに高天原の統治者として君臨し始めた頃――

弟のスサノオはというと、なんと仕事もせずに一日中泣いてばかりいた。
見かねた父・イザナギが訳を尋ねると、
「ママが居なくて寂しいから、仕事したくないよ、ダディ」(意訳)
などとのたまった。
イザナギは息子の体たらくに怒り、スサノオは追い出されてしまった。

途方に暮れるスサノオ。母に会いたい思いは募るばかり。そこでスサノオはまずは姉であるアマテラスに相談しようと思い立ち、高天原を目指す。

これにアマテラスは肝を冷やした。あの愚弟がやってくるのは、高天原をのっとるために違いない……!
率直に言って、これは完全にアマテラスの思い込み、早合点である。

だが、弟への疑心暗鬼に駆られたアマテラスは止まらない。
まずは髪を結いなおし日本初の男装女子に。さらに弓を手にもち、背には矢が千本入る矢筒を背負って武装。
気合を滲ませ、足が股まで地面にめり込むほどの勢いで駆け出し、弟を迎え撃った。

頼りのお姉ちゃんに弓を突きつけられて震え上がるスサノオ。
「いじめないで! ボク わるい おとうとじゃないよ!」
弁解するがアマテラスは信じない。
そこで、二人はある賭けをして、もしスサノオが勝てば、アマテラスはその潔白を信じる、ということにした。

その内容はと言うと――
アマテラスはスサノオが持っていた剣を受け取り、
スサノオはアマテラスが持っていた勾玉を受け取る。
すると、ふたりはそれぞれ受け取ったものを噛み砕いて粉々にして吹き出した。
姉弟そろって歯は健康極まりないようです。

そしてスサノオの剣からは三柱の女神が、アマテラスの勾玉からは五柱の男神が生まれた。
スサノオは「僕の心が潔白だから、僕の持ち物から清らかな女神が生まれたのだ」
と主張。

アマテラスもそれを認め、スサノオを許して高天原に住まわせることにした。

……いまいち、ルールが曖昧だが気にするな!*1
この話はオブラートに包んだ比喩で、実際はスサノオと日本初のアーンをしたのだと考えるリアリストな研究者もいる。


◆天岩戸隠れ

アマテラスのエピソードで一番有名であろうお話――

さて晴れて高天原住みを許してもらったスサノオ。
だが、姉に感謝するどころか、調子に乗って増長しだす。
毎日遊びほうけて、他の神々に迷惑をかけてばかり。
挙句、畑を壊したり、神聖な社にウ○○を垂れたりとやりたい放題。
ママのことはどうした!?
当然、高天原の神々はアマテラスにスサノオを追い出すよう進言するが、アマテラスは弟を庇い続けた。優しい。

だが事は起こってしまう。
あるときスサノオが アマテラス達がいる機織小屋に逆さ剥ぎにした馬の皮を放り込むという派手な悪戯を敢行。
中に居た巫女(アマテラスの妹説アリ)が驚いた拍子にとても恥ずかしい部位を機織の道具で突いて、なんと死んでしまう。

そしてとうとうアマテラスも激怒。
「バカバカ! もう、弟くんなんて知らないんだから!」
とばかりに、洞穴に入り岩戸を閉じて引き篭もってしまった。
最高の統治者であるアマテラスがこもってしまったのだから、さあ大変。
さらに、アマテラスは太陽神でもあるため世界は暗闇に閉ざされ、悪神やら魑魅魍魎やらが跋扈する。
困り果てた高天原の神々は、岩戸の前から説得を試みるも、アマテラスは聞き入れない。
そこで、神々は一計を講じる。
岩戸の前に皆で陣取ると、大きな宴会を開いたのだ。
皆で楽しげに飲めや歌えの大騒ぎ。さらに美人の踊り子さん(アメノウズメ)のショータイム。ポロリもあるでよ。(←本当)

一方、岩戸の中のアマテラスは不信に思う。自分抜きで皆は何を楽しそうにしているんだろう……?
ほんの少しだけ戸を開けて訪ねてみると、
「貴女より凄くて貴い神様が現れたので、皆で祝っているのですよ」
などと、言われてしまった。
途端にソワソワしだすアマテラス。わたしより凄いって……!? みんな、わたしよりそっちのほうがいいの……!!?



計画通り!



アマテラスが動揺しているのを見て取った外の神は、隙間から覗くアマテラスに向かって鏡を向けた。太陽神アマテラスの放つ光を反射して輝く鏡。
アマテラスはその光を見ると、それこそがより凄い神なのか、と慌てて岩戸を引き開けた。
今だ!!

外で待ち構えていた神(タヂカラオ)は隙間から手を突っ込み、一気に岩戸をひき開け、さらにアマテラスを引きずり出す。
こうして、高天原にアマテラスは戻り、世界は光を取り戻したのであった。
なお、この一件を引き起こした元凶たるスサノオは、髭と爪を引っこ抜かれて*2地上へ追放され、
有名な八岐大蛇退治のエピソードへとつながる。

その後は、アマテラスも反省したのか、真面目に高天原の統治を続け、地上に弟との間にできた子孫を派遣したりしている。
やがて地上に大王(おおきみ)、神話の流れは歴史へと変わっていくのである――




で終わらないのがアニヲタwiki。




さて、それなりに長々と説明してきたが、ここはアニヲタWiki。
この、ちょっと困った女神様をアニヲタ的に解釈してみよう。
  • 女神
  • お姉ちゃん属性
  • 妹でもある
  • 弟と子作り
  • 弟を甘やかす
  • (多分)処女ながら子持ち
  • 最高神 偉い
  • 厳格 勝気
  • 自ら武装する男勝りな面も
  • でも早とちりしがち
  • 優しくて寛容な面も
  • でも、部下(女)の死のショックで引き篭もっちゃったりもする
  • でもでも、引き篭もり中に仲間外れにされると、気が気でない

……どうだろう。なにやら、妙にかわいい感じがしてくるから不思議だ。
古代人共……わかっててやったんじゃなかろうか……?

ついでに、『パパがお風呂に入っているときに、突然湧いて出てきた』なんて言うと…
こんなのが最高神だなんて……

いい国じゃないか、日本は











……え? 男神説?
あーあーキコエナーイ!

……と言いたいところだが、一応触れておくと、

元々日本の太陽神の位置には男神がいたが、そこに仕える巫女と混同され、いつしか女神になったのでは、というのが主な男神説の大雑把な概要。
より、詳しく云うと巫女神としてのアマテラスの成立には、

造化三神高御産巣日神(タカミムスビ)が真の皇祖神=アマテラスであり、上記の様な理由、若しくは新たに同じ役割を持つ巫女神としてアマテラスを『古事記』と共に生み出した、とする説。

②元々は『古事記』や『日本書紀』でも男神とされていたアマテラスを、飛鳥時代に権力の中枢を独占してイケイケドンドン(死語)だった、藤原氏の藤原不比等が、女性天皇も即位可能にするべく、書き換えた説。

③サーヴァントに出来る位の半神的英雄に片足突っ込んでる神功皇后や、お飾りではなく有能な統治者であった持統天皇や元明天皇の姿をモデルにしたのでは?
……といった説がある。



まあ、どちらにせよ、現在では女神説が有力。
上記の説もそれぞれに濃い研究がされているので、興味があれば覗いてみよう。
女神アマテラスに萌えておきたい人は、巫女さん属性も兼ね備えた女神、とでも脳内補完しておけばいい。
信仰は自由なのだ。


……ちょっと違うか?


尚、未だに正体不明の邪馬台国の女王卑弥呼もアマテラス(或いは、同じ経緯でモデルになった女性支配者達の話の集合体)のことではないか?との説もある。


勿論現代の創作でも大人気で、結構な?作品で登場する。
地下遺跡のボスだったり、わんこだったり、学園長をしていたり、ネノクニで戦争をしていたり、橋田壽賀子っぽいおばちゃんだったり何故かガチャのハズレ枠だったりと大忙しである。
自称日輪の申し子も当然のように武器銘に採用している。
あと、太陽のイメージからか、得意技は大抵高威力のビーム。



追記・修正は岩戸から出てからお願いします。

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最終更新:2024年01月03日 19:43

*1 尚、この神話を皇祖神アマテラスと、出雲系神話の集合体たるスサノオとの結婚・統合を顕した構図と見なす考察もある。禁断の愛!……というでもなく、古代の皇族は有力氏族との間で三等親以内の近親婚がごく普通だったことが背景にある。

*2 神としての力を奪われたことの暗喩とされる