学校であった怖い話(ゲーム)

登録日:2010/07/20(火) 00:55:49
更新日:2024/03/18 Mon 16:16:04
所要時間:約 4 分で読めます





1995年にバンプレストからスーパーファミコンで発売されたサウンドノベル形式のアドベンチャーゲーム。
開発はパンドラボックス。

概要

原作・演出・監督・脚本の基本は飯島健男*1が手掛けており、氏の名前を最初に知らしめたゲームである。
後に、本作(厳密に言うと後述のVNV版)は飯島が小説や同人ゲームとして展開させた『アパシー』シリーズに組み込まれたが、そっちを知らない人間も多い。
翌年に発売された後継作品『晦-つきこもり』と世界観が共通しているが、本作のキャラクターも登場した『四八(仮)』は『アパシー』に組み込めないために、同じ名前と性格の別人とされている*2

当時のサウンドノベルは『かまいたちの夜』のヒットもあり、背景部分であれば徐々に実写取り込みが使われるようになってきていたが、本作は登場人物にも実写取り込みを採用した史上初の作品として知られている。
スーパーファミコンのスペックでは実写取り込みといっても限界があるため、いま見ると画質はだいぶ粗いが、そんなグラフィックが逆に不気味な味わいを醸し、恐怖をかきたてる要因にもなった。
冷静に考えると雑な話も多いのだが、何故だかゲームとしてプレイしていると本当に怖かったりする
そもそも、本作の発売時には既に登場していた5世代ハードのゲームに比べれば容量が少ないのは確かだが、対応ハードのSFCのソフトとしては後期も後期の発売のゲームらしく24Mロムカートリッジであり、SFCでの数々の名作ゲームの殆どを超える位の大容量ではある。それだけに音楽なんかはスゴく綺麗。

売り上げは然程でも無かったと言われるが、本作の単純ながらもプレイヤーそれぞれにそれぞれのトラウマを生みつけた作風は語り種となり、ネット世代以降はプレイ動画やシナリオも拡散していった。

なお、アスペクト冒険文庫から没シナリオを中心としたパラレルの小説版も発売。
こっちは2007年(初版)・2008年(新装版)に新おまけシナリオを追加した『アパシー 学校であった怖い話 〜Visual Novel Version〜』(VNV版・同人版)として独自に同人PCゲーム化され、ここで新たに設定された舞台「鳴神学園」を中心とした「アパシー・シリーズ」へと発展することになる。

翌年の1996年には、早くもリメイクとなる件の第5世代のハードであったプレイステーション版『学校であった怖い話S』が発売。かつてはレアソフトだったが、現在はアーカイブ化され入手は容易になった。
一時期の一万円越えは収まったが、それでも三千円~四千円前後からの取引となっている*3

ハード性能の向上に伴って画質音質共に向上したのだが、原作での良い意味での「解像度の低さ」が損なわれ不気味さが減少したと批判されたりした。
人気のあったBGMも余計なアレンジが施されたことに不満の声も挙がる一方、これはこれで好きという向きもある。
また、SFC版では開発スタッフが演じていたために(設定と)年齢や見た目に違和感がある……として不評もあったキャラクターが、役柄と年齢の近い本物の子役を使ったことで、キャラクターが設定通りの見た目となり、これにより違和感が解消リアリティが向上されたと評価する向きもある。

また、主人公となる聞き役に女の子が追加され、男女の主人公それぞれでしか聞けないシナリオも出来たために、20話程ボリュームが増え、その出来は原作からすでにある話と比較して賛否両論あるも、見れる(読める)話の内容が単純に増えたことについては概ね好評。

その一方で、SFC版は僅か前年の発売なのに、一部シナリオの描写に既に修正が加えられてしまったものもあり、そうした追加要素に不満を持つSFC版のキャラクターを受け入れた層からはSFC版こそ至高と語る人間も少なくない。
実際、上記のアレンジの他に一部機能の廃止などがされているにもかかわらず、
完全版として評価する声が高いPS版に比べて、ネタ的な意味でも人気が高いのはSFC版のキャラクターである。

ゲーム内容

主人公が実体験するのではなく*4、順番に六人の語り手から怖い話を聞いていくという流れ*5
画面に表示される文章は縦書きで、書籍での閲覧を再現するかのようになっている。
語り手を選ぶ順番や、途中の選択肢によって話が変化していく。
最後に聞いた語り手によって決まる七話目や、隠しシナリオなどもあり、総数は50以上という膨大なものとなっている*6

あらすじ

高校の新聞部に所属している主人公は、旧校舎が取り壊されることを記念して企画された「学校の七不思議の特集」のため、在校の高校内で語り継がれる怖い話の取材を任されることになる。
取材当日の放課後、主人公は新聞部部室に集められた七人の語り手から話を聞く手はずだったが、そこには何故か六人しかいない。
業を煮やした一人の野次に押されるかのように、遅れた一人を待たず取材は始まる……。

登場人物

主人公

SFC・小説・VNV版の主人公にしてPS版の男性主人公。1年E組所属*7
無個性だが、隠された狂暴な側面がある。
  • 倉田恵美
PS版で追加された女性主人公。1年I組所属。
坂上同様無個性だが、VNV版のおまけシナリオとアパシー・シリーズで演技だったことが発覚。
この飯島による設定変更には批判が集まった。

語り部

3年D組所属。
見た目が不良っぽく喧嘩っ早いがスポーツマン。
主に部活動に関する怖い話をするが、その一方で意外に純愛的な話もしたりする。
またとある話でダジャレをいうことも
「スポーツはいいぞ」
2年B組所属。
暗い雰囲気をもち、常に俯いている。
物静かな口調で喋るが、激情家であり、時たま狂気じみた思想を仄めかせたり、人の神経を逆撫でしたりするような問題発言をすることも
また広い分野で教養があり、怖い話の最中に蘊蓄を語ることもある。
主に人間の負の側面について話すが、題材自体は定番の怪談から採られたものが多い。
「人形に履歴書はないんです」
3年H組所属。
つかみどころのない性格の自称カッコマンな謎の男。
守銭奴でナルシストでフェミニスト(なのでPS版の恵美だと坂上時と対応が変わる)であり、プライドが高いためか傷付きやすく、些細なことで逆ギレしたり根に持ったりすることもある。
まったく怖くも何ともない話をする*8、内容が現実のものとなることもあるため、時折ヒヤッとすることも。
ネタ枠で人を食ったようなキャラクターから嫌う人間もいるが、カルト的な人気があるキャラクターで、後継作『晦』では風間シナリオなんてものも生まれてしまった。
「よくわかったね。実は僕は宇宙人なんだ」
2年C組所属。
名前に似合わず太った男。穏やかな感じだが、どことなく粘着質が見え隠れする。
「友達」にこだわっており、主人公に対して友好的に接するが*9、いざという時には保身から見捨るなど、恩を仇で返す言動を取る時もある。
彼の話には必ずトイレが関わっている。また自身は霊感を持っていると思うせいか、霊に関する体験談も多い。
四八(仮)版の彼はとんでもなく怖くてウザい。
「僕たち友達だね!」
3年A組所属。
黒髪ロングの美人だが、懐にカッターナイフを忍ばせているなど、近寄りがたい雰囲気をもつ。
感情の起伏が激しく、興に召さない言動をとった時は、はっきりとした形で厳しい言葉を投げかけてくる。また裏切りなどに対して非常に嫌悪感を抱いている*10
主に男女関係の話をするが、彼女の性格自体が怖い話になったりもする。
「年上の女性は嫌いかしら?」
1年G組所属。
元気で無邪気な美少女。
基本的には和ませ役だが、笑顔のまま残酷な話や気持ち悪い話をさらりと話すなど、意外と冷めたところがある。
怖い話も様々で、話中にいきなり話を変えたりする。
シリーズを追うごとにグラフィックが設定に近づいて可愛くなっていく。
SFC版の中の人は名曲揃いの本作BGMの作曲家である。
「皆さん、水道の水って安心して飲めます?」

その他

生徒

  • 日野貞夫
新聞部の先輩で、今回の会の立案者。
数少ない眼鏡キャラ*11
裏表がはっきりしない切れ者で、頼れる先輩としての側面を持つ。
その正体は話によって超人だったり殺人者だったりガチホモだったりと実に多様。
おしるこドリンクが好き。
  • 元木早苗
福沢のクラスメイト*12
変な言動/妙な行動が目立つ。
実はその体には……。
  • 金井章一
荒井が一年生の時のクラスメイト。
いつも何かに怯えているような目でおどおどしている。
  • 時田安男
荒井が一年生の時のクラスメイト。
「見てない映画がない」と噂されるほどの無類の映画好き。
学校に映画関係の部活がないことを残念に思い、積極的に先輩や先生に呼びかけて映画研究会を立ち上げる。
  • 田口真由美
男性主人公の隠しシナリオに登場。
本編から2年後における新聞部新入部員で、先輩となった主人公に頼まれて七不思議の会合を行う。
  • まつげ
新堂の亡くなった友達の恋人。PS版で追加された。
なお、「まつげ」とは新堂が付けた呼び方で、彼女の睫毛が長く綺麗だったことに由来する*13

教師

  • 荒井
校長先生。人のよさそうな顔をした壮年の男性。
めったに人前に姿を現さないことで有名らしい。
  • 比田
生活指導の先生。厳しい性格だが生徒の話を真剣に聞いてくれる。
  • 芦村
進路指導の先生。昔気質の大柄な人。
  • 米山
新米の数学教師。
  • 若月
体育教師。よく居眠りをしている。
  • 黒木
体育教師。なぜかいつも宿直室で寝泊りしており、見回り時に主人公たちに出くわすことが多い。
堂々たる体格と厳めしい言動によって、目に見える粗暴性から疎んじる生徒も多く、悪い噂が絶えない。
  • 白井
科学教師。常に白衣をまとった白髪の人物。
マッドサイエンティストを連想させる外見で、生徒から恐れられている。
学会では権威ある人物らしいが、なぜか学校の科学実習室に実験室を構え、人を寄り付けない様相から、怪しげな噂が絶えない。

人外

  • 飴玉ばあさん
童話に登場する魔女のような外見をした謎の老婆。
学校の校門付近に現れ、出会った者によれよれの包装をされた大きな飴玉を配って回る。
その飴玉はとても美味らしく、意を決して舐めた者には大きな幸運が齎されるという*14
飴玉を渡した者には必ず「ある注意事項」を伝えており、それに従わなかった者は悲惨な末路を辿ってしまう。
ただし展開次第では本作でも珍しい純粋なハッピーエンドも用意されていたりする。
  • 仮面の少女
口がなく目に細い線が二本開いた白い仮面をつけた謎の少女。旧校舎に潜んでいる。
  • 逆さ女
常に逆さ吊りになっている女の妖怪。出会った者に「破ったら殺す」との脅しをかけた上で「ある約束」をするよう迫ってくる。
SFC版では赤系の実写取り込み、PS版では実写に近い険しい表情となっている。
そのグラフィックが与えたあまりの衝撃から印象は強く、脅かし役の定番となっている*15
  • 瀬戸さん
水泳部のロッカーに潜む地縛霊。
生前は水泳部に所属していた生徒で、「魚が泳いでいる」と噂されるほどの泳手であったらしい。
将来を嘱望されていたが、泳いでいるときに心臓麻痺を起こして水死。以来、人に害を為す悪霊と化してしまう。
本作のトラウマ要因候補。
  • 人形
肌は真っ白で、髪は黒く、大きな瞳が特徴の美しい人形。作者は不明。
大きさは等身大で、全ての関節が動くように作られており、実に精巧にできているが、口だけは開かない。
顔立ちは男性とも女性とも受け取れる中性的な美しさという。
在校者のただ一人に見えるらしく、その人形が見える者の運命は……。
本作のトラウマ要因候補。

余談

●『弟切草』などと共に、真夜中にプレイしていると「出る」ゲームとして語られていた。
● 本作のタイトル「学校であった怖い話」の意味は、いわゆる「学校の怪談」と解釈されがちであるが、
 そもそも作中で主人公が耳にする物語の多くには、人間の悪意、狂気、未練、妄執、欲望などの暗い心理が関係している
 そのため「学校の部室で怪談話を聞く集会を開いたら遭遇してしまった怖い話」とするのが妥当といえる。
 以上のような作風のため「怪異以上に生きている人間の方が怖い」と評価されることもあるが、
 数々の超常現象はそういった人間の負の感情を後押し現実だったらできないようなことも実行せしめているので、
 邪悪さはともかく怖さで言ったら本作の人外の化生どもは人間以上ではあろう。

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最終更新:2024年03月18日 16:16

*1 現在はペンネームの飯島多紀哉 名義

*2 ただし、設定通りの見た目の演者が揃えられてるので、アパシーのキャラデザの参考にされたりしているらしい。

*3 価格が高騰したのは、出荷本数は少なくなかったが手放さない人が多かったのが原因らしい。

*4 シナリオの展開次第では実際に体験することがある。

*5 このシステム自体が本作の大きな特徴といえる。

*6 隠しシナリオを考慮しなくとも、単純に6人×7話で計42話になる。

*7 小説版ではA組とされている。

*8 場が白けるような冗談を言ったり、一発ギャグをかましたりなど。展開次第では荒井との喧嘩に発展することもある。

*9 シナリオによっては過度な接し方をしてくる。

*10 話の中で聞き手に誠実さを求めるキーワードとして頻出する。

*11 PS版では眼鏡をかけていない。

*12 彼女のシナリオに絡んで登場する。

*13 彼女の本名は作中で明らかにされていない。友達の本名も不明のままになっている。

*14 例として、勉強の苦手だった者が成績優秀になったり、運動神経のなかった者が突然スポーツマンに変身したり等。

*15 セルフパロディの常連として、多くの作品で彼女の存在が囁かれている。